憂「和さん、来てたんだね」

梓「うん、意外」

純「私の名前、覚えてもらえたかなー」

憂「記憶力いいから大丈夫だよ、きっと」

梓「和先輩って、大学どこ行ったの?」

憂「N女より偏差値が高かったと思うよ」

梓「あ、早稲田とか?」

憂「ううん。国立だから……東工大とかかな」

純「すご! エリートじゃん」

憂「うん、なんか差を感じちゃうよね」

梓「……ま、いいじゃん! それより食べようよ、冷めちゃう」

憂「そうだね、焼きそば食べようか」

三人は焼きそばをずずず、と口にする。

しょっぱい。

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同日  夕方

帰り道

梓「あー! 楽しかった! 久々に体動かした気がするよ」

憂「うん。ここ最近勉強漬けだったからね」

純「やっぱ、受験生って大変なんだなー」

梓「うん。去年先輩達も、大変だったんだろうね」

純「あーあ、やだやだ」

憂「でもさ、努力はやった分だけ報われるって言うじゃん。合格するためだって思えば、全然苦にならないよ」

純「そうは言ってもなー」

梓「あれ? 明日ってどこ行くんだっけ?」

憂「明日は動物園だった気がするよ」

純「つーかさ、遊んでて大丈夫なんだろうか」

梓「休むことも大切だよ」

憂「うん。それに、10月くらいになってくると、もう遊べないんだから」

純「あー、そうだよね」

純(受験生、か……)

純(大変だなぁ、もう)

純「大学生になったら、何か変わるのかな?」

憂「え?」

梓「変わる、かぁ……あまり変わらないと思うけど」

純「そっか」

憂「私は、変わらないで欲しいな」

純「へ?」

憂「だって。変わっちゃったら皆でこうして遊ぶことが、出来なくなるかもしれないでしょ?」

梓「あー、うん。そうかも」

憂「私ね、たまに思うんだけど。ずっと高校生のままでいたいなって」

純「あ、わかる。こうやって、三人でずっとさ、高校生活をエンジョイしてたいよね」

憂「うん。ずっと」

梓「……なんか、どんどん大人になりたくないって気分が増してくるよ」

純「梓、ピーターパンみたい」

憂「うーん、でも、梓ちゃんの言うことわかる気がする」

梓「でしょ?」

憂「でも、大人にならなきゃいけないんだよねぇ」

梓「……うん」

純「理不尽だね」

梓「理不尽、か。確かにそうだね」

憂「うん」

憂(時間って酷いなあ。いやでも私たちを大人にさせようとするんだから)

憂(皆といられるこの時間を楽しまないと!)

憂「そういえばさ――」

そうして、三人の会話は続いた。


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八月一日

駅前

梓「唯先輩達はいつここに来るの?」

憂「9:00ごろって言ってたよ」

純「今何時?」

梓「八時半」

純「もう少しか、たのしみだなぁ」


三十分後

憂「そろそろ来るよ」

梓「なんか、私どきどきしてきた!」

純「テンションあがるね」

と、憂の後ろから声が聞こえた。

唯「ひっさびさ~、皆元気にしてた?」

憂は振り向く。

憂「――お姉ちゃん!」

律「よっ、憂ちゃん。それに梓も」

梓「律先輩!」

律「あれ、えーと、そちらの方は……」

純「鈴木純、です」

律「ああ、そうそう」

澪「何だか、懐かしいな」

紬「本当ね」

澪「まだ一人暮らしを始めて、半年も経ってないのに。十年ぶりに帰って気がする」

紬「私も。郷愁ってこんな感じなんでしょうね」

唯「逢いたかったよ、うい!」

憂「私もだよ! お姉ちゃん!」

二人は頬をすり寄せ合う。

律「やっぱ二人は、こうじゃなくちゃ」

梓「あいかわらずですね」

律「梓の胸もだな」

梓「り、律先輩もじゃないですか!」

律「へへー、私はカップが一つ上がったのだよ!」

梓「く、くやしい! なんか負けた気がする!」

律「そういえば。梓、志望校どこにしたんだ?」

梓「私は――私も、N女です」

律「お、私の後輩になるのか!」

梓「そういうことになりますね」

律「じゃあ、今のうちに言っておくかな」

梓「? 何をです?」

律「大学でもよろしく。梓」

梓「――はい、律先輩」

純「……私空気?」

紬「大丈夫よ、自信もって」

純「は、はい」

紬「いかに扱いが酷くても、皆に尽くす気持ちだけは忘れちゃ駄目よ」

純「は、はい!」


平沢家

憂「お姉ちゃん達のために、焼肉用意したんだよ!」

唯「うわー、美味しそう! 流石うい!」

憂「えへへ、照れちゃうな~」

律(よく出来た妹だよなー)

憂「まだお昼前だけど、もう食べようよ! ね?」

唯「うん、食べよう食べよう!」

澪「焼肉かぁ、このごろ食べてないな」

紬「一人暮らしの時は、ずっと切り詰めてたものね」

澪「うん。あ、でも、また太っちゃうな」

紬「本当ね」

ピンポーン

憂「あ、お客さんだ! 出てくるね」

憂は玄関を開ける。

和「皆、もう来てる?」

憂「うん!」

和「そう。じゃああがらせてね」

憂「お姉ちゃん!  和ちゃん来たよ!」

和「人の前では和ちゃんって呼ばない方がいいわよ」

憂「えへへ、ごめんごめん」

唯「あー、和ちゃん! こっちこっち」

和「うん。久しぶりね、唯」

唯「うん。本当に久々だよ! 大学生活どうだった?」

和「順調よ」

唯「そっか、よかった」

和「そっちは?」

唯「私も順調だよ。何せ皆がいるからね!」フンス!

和「何よりだわ」

唯「えへへ~」

純「私また空気?」

憂「大丈夫だよ。みんなはしゃいじゃってるだけだよ」

純「はしゃぎっぷりが尋常じゃないね」

憂「でも、すぐに落ち着くと思うよ。その後焼肉食べようよ」

純「うん」

憂「みんなさ、再開が懐かしくて、テンションがあがりっぱなしなんだろうね」

純「来年は、私たちもあの中に加わるのかな?」

憂「うん。きっと」

純「……大学生か」

憂「遠い未来のことじゃなくなってきたね」

純「中学生のころは、もっと後のことだったんだけどね」

憂「うん――、成長したなぁって、感じるよ」

純「確かに、ね」

憂は未だ騒がしい室内を見て、楽しそうに微笑んだ。
                                  終わり



最終更新:2011年10月18日 01:55