~~~~~

和「ごめんね、ムギ。我侭言って」

紬「ううん! そんなことないよ!
  それよりも和ちゃん! 抱きつくんだよね!? さぁ、ばっちこ~い!」キラキラ

和「ふふっ……本当、唯の言った通り」

紬「え? 唯ちゃんの?」

和「ええ。正直に話したら、ムギだったら『どんと来い』って言って受け入れてくれるって。
  それで、確かにその通りだなって」

和「たぶんムギは、軽音部の中で誰よりも真っ直ぐなのね」

紬「そ、そんなことないわ。真っ直ぐなら、唯ちゃんだってそうでしょ?」

和「確かに唯も真っ直ぐだけど……そうね、そう言ったら、軽音部の皆が真っ直ぐね。
  ただその中で、ムギが一番真っ直ぐなんだと私は思うわ。
  誰よりも純粋で、友達思いで、影から皆を支えてる……それが、私から見たムギ」

紬「和ちゃん……」///

和「ねえ、ムギ。
  手、繋いでも良い?」

紬「う、うん」///

ソッ

紬(あっ……指と指が絡まって……)

和「やっぱり……ムギの手は温かいわね」

紬「で、でも、まだ暑いこの季節じゃ、繋いでても辛くない?」

和「そんなことはないわ。ムギの手は、ちょうど良い温かさよ」

紬「そ、そう……ありがとう……。
  で、でもほら、手が温かいと、心が冷たいって言うでしょ?
  だから私、あんまり好きじゃないの」///

和「そんなのはただの迷信よ。現にムギは、心の温かさが手に出てるでしょ?
  きっと皆を支えてるから、熱を帯びてしまうのよ」

和「髪、触るわね」

紬「ど、どんとこい……!」///

和「ふふっ、やっぱり、ムギってば可愛い」

ソッ

和「繋いでない方の手だけで触ると、乱雑に触ってるみたいになってしまうわね。ごめんなさい」

紬「べ、別に良いよ……」///

和「そう?
  まぁダメと言われても、この温かい手を離すのなんて無理だったんだけど」

「……」///

スンスン

紬「ひゃっ……の、和ちゃん……!?」///

和「ああ、ごめんなさい。
  キレイな髪だったから、つい香りを嗅いで見たくなったの」

和「やっぱり、イヤだったわよね?」

紬「う、ううん! そんなことない……けど……。
  ……でも、突然されたら……恥ずかしいわ……」///

和「恥ずかしがるムギも確かに可愛いけど、別に恥ずかしがることは無いわ。
  こんなに良い匂いしてるんですもの。
  やっぱり触りたくなる髪って、総じて香りも良いものなのね」

紬「そ、それはほら、香水を使ってるから……」///

和「ムギの家のシャンプーとリンスの匂い、それと香水の匂い……これが、ムギの髪の香りなのね」

(の、和ちゃんの雰囲気のせいかしら……お、思ってたより……恥ずかしい……)///

和「ふふっ、さっきから顔を真っ赤にして。本当、ムギは可愛いわ」

紬「の、和ちゃんだって、可愛いよ。髪だって、私と違ってサラサラだし」///

和「あら、ありがとう。ムギに褒められるなんて、嬉しいわ」

紬(ダメ……! 全然反撃になってないよ……! 恥ずかしがる気配がないんだもん……)///

和「だからこうして――」

ギュッ!

紬「っ!!!」

和「――抱きしめたくなっちゃうのよね」

紬(て、手が離れて……!/// 背中に手が回されて……!///)

和「ふふっ、動揺してるムギも、本当に可愛い」

ギュッ!

紬(さ、さらに強くだなんて……!///)

和「……本当、ありがとう、ムギ」

紬「の、和ちゃん……?」///

和「私が勝手に不安を感じていただけなのに、それを解消してくれて。
  私と、友達でいてくれて」

紬「……和ちゃん……」

ギュッ…!

紬「……ううん。それを言ったら、私もよ。
  私と、友達でいてくれて、ありがとう。
  私に、我侭を言ってくれて、ありがとう」

和「抱きしめ返してくれるのは嬉しいけど……我侭を言ってくれてって……ちょっと、おかしくない?」

紬「そんなことないよ。だって我侭を言い合えるのって、友達だからでしょ?
  友達じゃなかったら、我侭なんて言えないよ」

和「……そうね……確かにそうだわ。
  でも私、ムギの我侭を聞いてないんだけど?」

紬「それは……ふふっ、まぁ、またいずれ、ね」

和「貸し一つ、ってことかしら?」

紬「ううん。貸し借りゼロよ。だって私も、こうして抱き合うようなスキンシップが取れて、今は満足してるんだもの。
  だから次、私が言う我侭は、友達としてのお願い、かな?」

和「そう……本当、ありがとう、ムギ」

チュッ!

紬「っ!!!」///

バッ!

和「ああ、ごめんなさい。可愛らしい耳があったものだから、つい」

紬「つ、つい……?」

和「キスしちゃった」

「~~~~~っっっっ!!!!!」///

ガチャッ!

バタンッ!

和「……顔を真っ赤にして飛び出しちゃった。
  ……ちょっと、悪いことしちゃったかな……?」


~~~~~

バタンッ!

ビクッ!

梓「む、ムギ先輩……?」

律「ど、どした~? そんなに顔真っ赤にして~?」

紬「つ、次の方どうぞ!」///

澪「ここは病院かっ!?」

唯「というよりムギちゃん、本当にどうしたの? 和ちゃんに何された?」

紬「き、気にしないで!? ちょっ、ちょっと、恥ずかしかっただけだからっ!」///

唯律澪梓*1))


紬「み、皆もほらっ、入ったら分かるから!」///

澪(いやいや……)

梓(ムギ先輩であれだけ恥ずかしがるって……)

唯(和ちゃん、何したんだろ……?)

律(ちょっと入りづらくなったなぁ~……でもまぁ……)

チラッ

律(……このままだと誰も入りそうに無いし。ここは――)

律「よぅしっ! それなら次は、軽音部部長のりっちゃんが行って来るぜ!」

~~~~~~

ガチャ

パタン

和「あら律。どうしたの?」

律「どうしたのってお前……ムギの次は私かなって思って」

和「え? あ、もしかして、軽音部みんなで?」

律「そうだよ。っつか、それが和の望みなんだろ?」

和「それはそうだけど……良いの?
  これでも私、今上がりに上がってたテンションを下げて、いつもみたいな私になって皆の前に戻ろうとしてたのよ?」

律「でもそれって、いつもの周りに気を遣ってる和だろ?
  まぁそれも和だし、それはそれで良いんだけど……今日ぐらいは、いつも思ってることをそのまま打ち明ける和、で良いんじゃないか?」

和「……良いの?」

律「良いも何も、私達は和の友達だぞ?
  だったら、友達の前でぐらい、たまには気を遣わずにいても良いんじゃないか?
  そりゃ、友情の前にも気遣いが必要なのは確かだから、あくまでも今日だけになっちゃうけど。
  っつか、今日だけじゃないと、和のあんな要望に応えてられないってのが本音だけど」

和「全く……あなた達は」

律「あっ、でも梓は分からないぞ?
  澪は和の気持ちを知ってたから大丈夫だろうし、唯もまぁ大丈夫だろうケド……梓はそもそも、和とあんまり面識無いからな」

和「確かにね。私が一方的に仲良くなりたがってるだけで、いきなり抱きつくなんてことしたら可哀想だものね」

律「いやいやそうじゃなくて」

和「え?」

律「梓も、和とは仲良くなりたいと思ってるはずなんだよ。
  でもさ、やっぱいきなり階段を飛び越す勇気ってのは沸かないもんじゃん?
  だからたぶん無理だろうなって」

和「……」ジッ

律「? なんだ、人の顔ジッと見て」

和「いえ。律ってなんだかんだ言って、一番部員のこと見てるなって思っただけ」

律「うっ……! い、いきなり恥ずかしいこと言うなって……! 照れちまうだろっ///」

和「でも本当のことよ。
  律ってば、なんだかんだ言って、さり気なく人をフォローするのが上手よね。
  そういうところ、本当軽音部の部長なんだなって思うわ

律「……」カァッ///

和「ま、その調子で申請書とか部長会議とかも、部長らしくして欲しいのだけれど」

律「あっ、それは無理だわ」

和「だと思った」クスッ

律「むっ、思ったとは失礼だな」

和「何言ってるのよ。それだけ軽音部の皆と一緒にいたいって事でしょ?
  むしろ私だって、生徒会長って立場じゃなかったら羨ましく思うわ、そういうの。
  あなた達五人は、たぶん五人全員が揃うこの“軽音部”自体が、素直になれる場所なのよね」

律「ま、確かにそうかもな。クラスの皆の前で出来ないことも、ココなら出来ちゃったりするし」

和「そう言えば、今年の一年生が入ってこなかった理由として、五人の一体感があるから入り辛かったのかも、っていうのを、唯から聞いたわ。
  私、その言葉に思わず納得しちゃった。
  だって私も、今まで皆の前で素直になれなかったのは、きっとそういうのを感じてたからなんでしょうし」

律「一体感、ねぇ……」

和「そ。ま、それが悪いこととは言わないわ。
  チームワークが良すぎるってだけの話しだもの」

律「んまぁ、その話は良いや。今はとりあえず、和が私に抱きつくって話だろ?」

和「ああ、そうね。でも律、少し勘違いしてるわよ」

律「は? 勘違い?」

和「そ。私、皆に抱きつきたいわけじゃないの」

律「んな……! じゃあ私は友達じゃないって言うのか!?」

和「違う違う。そうじゃなくて、私は皆それぞれの良いところに触れたいのよ。
  触れても許してもらえるところに触れてみたいの」

律「良いところ……?」

和「そ。
  例えば律なら、このおでことか」

ソッ

律「っ!」ピクッ///

和「あら、驚かせちゃったかしら。指先でちょっと触れただけだったんだけど」

律「い、いきなり触るからだよ!
  そ、それに私としては、抱き付かれるつもりで来てたから、その……心の準備が出来てなかったって言うか……」///

和「そうね。ごめんなさい。
  ならまずは普通に抱きしめることにするわ」

律「えっ?」

ギュッ

律「~~~っ!!!」///

和「うん。なんだかんだ言って、律ってば軽音部の中で一番女の子よね」

律「は、はぁっ!?」///

和「と言うよりも、ギャップがあるせいかしら」

律「ぎゃ、ギャップ……?」///

和「そ。いつもは皆を引っ張っていく頼もしい子だけれど、こうして抱きしめたり、ふとしたところで女の子の部分を見ると、それが際立って見えるのよ。
  ほら、アイスに塩を混ぜると甘味が引き立つような感じ」

律「わ、私はほら、塩アイスとか食べたことないし……」///

和「ふふっ、そうして照れて、見当違いな反論する律も可愛いわ」

律「か、可愛いとか言うなって! 日頃言われ慣れてないからムズ痒いんだよ」///

和「皆も思ってるだろうけど言わないだけよ。
  だから今度、軽音部の皆と食べに行きましょ、塩アイス」

律「お、おう……/// ってか、だからってなんだよ///」

和「食べたこと無いんでしょ? だから食べましょうって話。
  私、軽音部の皆と遊んだことはあるけど、寄り道したことは無いから」

律「ああ~……そう言えばそっか」

律「……うっし! 分かった。覚えておくよ、和」

和「ありがと、律。絶対だからね?」

律「おう! 絶対だ!」

和「ふふっ、そうして抱きつかれながらも私の顔を見てくれる律って、やっぱり可愛いわ」

律「だ、だからそういうのは――」

チュッ

律「――っ!!!」///

和「それじゃ、約束通り、おでこにキスでもさせてもらうわ」

律「……~~~~~~っ!!!」///

和「でもこれって事後承諾かしら?
  って、律ってば顔を真っ赤にしちゃって。
  ほら離すから、許してちょうだい」パッ

律「……――ぞ」

和「ん?」

律「ふ、不意打ちとか、卑怯だぞ~~~~!!!」///

ガチャ!

バタン!

和「……ふふ、やっぱり可愛いわ、律ってば」

~~~~~~

バタンッ!

ビクッ!

唯「お、おかえり、りっちゃん」

律「はぁ……はぁ……はぁ……」///

澪「り、律……?」

梓「どうしたんでしょう? 律先輩……顔が真っ赤ですけど」

紬「きっと……私と同じことされたんだわ」///

澪「お、同じことって……?」

紬「それは……。…………。……ポッ」///

澪「無言で頬を染めるなっ! 余計に気になるだろ!」

律「じゃ、じゃあ次は澪が行けば良いだろ!?」

澪「ん……! ……ま、まぁ、確かにそうだな。
  梓は行く必要ないし、唯もまぁ、昨日相談されてたみたいだしな。
  私以外選択肢に無いだろう」

梓「いえ、別に私でも良いですよ。だって――」

紬「和ちゃん……!」ポーッ///

律「……っ」カーッ///

梓「――中で何されたのかが気になりますし」

澪「それはでも、ほら、二人から聞きだすことも出来るだろ?
  もし私が戻ってきても聞き出せなかったら行けばいい」

梓「まぁ、そうですね。澪先輩がそこまで行きたいと言うのなら、私も止めません」

澪「や、別に行きたいとかそういうのじゃなくてだな……」

梓「まぁ、澪先輩も気になりますもんね」

唯「さすがの私も、幼馴染として気になるかなぁ」

梓「唯先輩には聞いてません」

唯「ひどいっ!」

梓「まぁともかく、澪先輩が怖いと思わないのなら、行っても良いと思ってるのなら、行ってきてください」

澪「む~……なんか梓が妙にトゲトゲしいような気がする……」

梓(だってなんだか、私だけ除け者にされてる気がするんだもん)

澪「まぁ良いや。ともかく行って来るよ。
  律もほら、いつまでも扉の前に立ってないで、席に座っておけ」

律「お、おぅ……///」

澪「じゃ、行って来るよ」

ガチャ

パタン

唯「…………」

梓「…………」

紬「…………」///

律「…………」///

梓「で、中で何されたんですか?」

律「な、何されたって言うかだな……うん、抱きしめられたり、普通に会話したりだ」

梓「それでそんなに照れてるんですか?」

律「ん……まぁ……っつか、梓に一つ聞きたいんだが……」

梓「なんですか?」

律「私って、そんなに可愛いのか?」


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最終更新:2010年10月02日 22:35

*1 ((どんだけ~!?