2-1教室
梓「おはよう憂ー」
憂「あ、梓ちゃん。おはよう…髪型どうしたの!?イメチェン?」
梓「あー、ボーっとしてて結ぶの忘れてた」
憂「もう、そんなに腑抜けて一体どうしちゃったの…あ、昨日夜更かししてたんでしょ。犬の特番やってたもんね」
梓「あれは唯先輩がメールで知らせてきて、見なきゃ後で煩そうだったから仕方なく」
憂「でも可愛いよね、犬。私も飼いたいんだけど親が許してくれないんだー。梓ちゃんは?」
梓「私はいいよ… あんまり生き物飼うとかそういうのはちょっと」
憂「純ちゃんの猫の時も苦労してたもんね。苦手なの?」
梓「うーん、苦手とかそんなんじゃないんだけど……」
梓「そんな事より、なんで唯先輩の髪型真似してるの?」
憂「あ、ヘアピン付けっぱなしだった」
梓「へ」
憂「朝ね、お姉ちゃんと色々髪型とか研究してて」
梓「へぇ」
憂「もうすぐ卒業アルバムの個人写真撮るんだって。だから私がお姉ちゃんのヘアピン付けてモデルになってたの」
梓「ほぉ…」
憂「今から返しに行こうと思うんだけど、付いてくる?」
梓「あ、うん行く」
3-2
憂「お姉ちゃん居るかな」
梓「あ、居た。…なんかやってるね」
紬「はい、できましたー♪」
唯「ありがとー」
澪「何してるんだ?」
唯「ヘアピン忘れちゃって、いつもピタッとしてる所がしてないと変な感じだったからムギちゃんに結ってもらってたんだー」
律「なんか純ちゃんみたいな髪型だな」
唯「変かな?」
律「ん、可愛いぞー」
和「こんな犬、居たわね」
唯「犬!?」
唯「犬……犬って…」
和「うそうそ。可愛いわよ」
唯「恥ずかしいー…」
憂「お姉ちゃーん」
唯「あ、ういー」
憂「ヘアピン、持ってきたよ」
唯「わぁ、ありがとう!」
憂「えへへ」
梓「あ、犬だ」
唯「あずにゃんまで!?」
梓(でもちょっと可愛いかも。あんな犬なら飼ってもいいかな)
憂「私もだよ、梓ちゃん!」
梓「わ、勝手に人の心読まないで!?」
憂「じゃあ私達戻るね」
唯「うん。あ、あずにゃんもありがとね」
梓「私は付いてきただけですけどね」
唯「あ、そう言えば昨日の…
キーンコーン
憂「チャイム鳴っちゃった!早く戻らないと!ごめんねお姉ちゃん」
梓「すいません、また後で」
唯「あ、行っちゃった」
放課後 帰り道
梓「独りで帰る道が寂しい…あ、あれは憂。ういー、こっちー!」
憂「あれ?お姉ちゃんも部室に行ってたみたいだけど帰りは一緒じゃないの?」
梓「それが髪型の研究するって言って他の皆より早く帰っちゃって」
憂「じゃあ丁度良かったね」
梓「?」
憂「んーん、なんでもない」
憂「お姉ちゃんどうだった?」
梓「ずっと髪型気にしてた」
憂「そう言えば今日の朝の可愛かったよね」
梓「あー、あの犬みたいな」
憂「あんな犬飼ってみたいよね!」
梓「実の姉を犬ですか(ていうか憂は毎日唯先輩のお世話してるし、既に飼っている様なもんなんじゃ…)」
梓「んー、でも生き物飼うのはやっぱりちょっと苦手かも」
憂「そっかー」
憂「あ、ここでお別れだね」
梓「また明日ね」
憂「また明日ー」
梓(犬を飼う…か。大変そうだけど、今日の唯先輩みたいな犬なら飼ってみたいかな)
翌朝 通学路
憂「」キョロキョロ
梓「あ、憂だ。…あんなにキョロキョロどうしたんだろ」
梓「うーい」ポン
憂「わぁっ」ビクッ
憂「梓ちゃんか……」
梓「どうしたの?明らかに挙動不審だったよ」
憂「……」
憂「梓ちゃんになら話しても良いかな…」
梓「えっ、何か深刻な話?」
憂「実は」
憂「あのね、お姉ちゃん昨日から家に居ないの」
梓「えっ」
梓(そう言えば何時も憂と一緒に登校してる唯先輩の姿が見えない…)
梓「ていうか一大事じゃん!」
梓「はっもしかして誘拐!?」
憂「あうぅ…」
憂「誘拐…そうなのかな……」
梓「何か手掛かりとか無いの!?」
憂「手掛かりかどうかはわかんないけど、1回帰って着替えた後はあったんだけど」
憂「何故かリビングに部屋着のズボンとパンツが脱ぎ散らかしてあって、それくらいしか…」
梓「ちょっと意味わかんない」
憂「私、今日学校休むね」
梓「もしかして1人で探すつもり?」
憂「うん。だってお姉ちゃんが居なくなっちゃったの私の所為かもしれないし」
憂「一昨日のカレーが辛過ぎたのかもしれないし、お風呂熱く沸かし過ぎちゃったのかもしれないし、
ギターの練習の途中で夜遅くなっちゃってたから無理矢理寝かしつけたのが気に入らなくて家出しちゃったのかも……!」
梓「ちょt、ちょっと落ち着いて憂!大丈夫だよ、あの唯先輩が憂の事嫌になったりする訳ないよ!」
憂「じゃあやっぱり誘拐とか…こうしちゃいらんない!早く助けに行かなきゃ!」
梓「ちょっと待って!」ガシ
梓「ここは一旦捜索願い出して、ちゃんと学校に行こうよ。私達でも出来る対策考えよ?ね?」
憂「……うん」
下駄箱
純「おはよー!」
純「?どしたの、2人して暗い顔して」
憂「ん、おはよ。なんでもないよ」
憂「じゃ梓ちゃん、先に教室行ってるね」
梓「あ、待って…」
梓「なんで置いていかれたんだろ」
梓「しかし唯先輩が失踪かー。何があったんだろう。なんかモヤモヤするなぁ。
…朝礼までまだ時間あるし少し気を紛らわせてこよ。中庭辺りが丁度いいかな」
中庭
梓「唯先輩の身に何があったのか…」
梓「昨日の部活終わりに1人で帰ってたけど、憂が言うには一旦帰って来てはいるんだよね」
梓「それから部屋着に着替えたとして、残されたズボンとパンツ。これが意味するところは…」
梓「もしかしたら今唯先輩の下半身は無防備という事に…
家の中に無理矢理押し入り強姦、そして口封じの為に誘拐…」
梓「ああ、駄目だ。考えがマイナスの方向にしか向かない……」
モップ?「」
梓「…ん?あそこに何かモップみたいなのが落ちてる。ちょっと行ってみよう」
梓「これ、よく見るとモップじゃない……もしかして犬?」
犬「スゥスゥ…zzz」
梓「寝てる…」
梓「ていうか学校の中に犬なんて良いのかな?」
犬「」ピクッ
梓「あ、動いた」
犬「くぅ~」セノビー
梓「あ、背伸びした」
犬「」ぷるぷるぷるっ
梓「あ、体振った」
犬「」じーっ
梓「あ、目が合った」
犬「……」
梓「……」
犬「……」うるうる
梓「えっ、ど、どうしたの?どこか痛いの?」
犬「わおーん!」ガバッ
梓「きゃ!わわっ」
犬「わんわん!」スリスリ
梓「ちょ、え、えっ」
5分後
梓「ふぅ、やっと収まってくれたみたい」
梓「それにしても…」
犬「わんっ」ハッハッハッ
梓「なんだかよく分からないけど懐かれちゃった。この犬をどうしよう」
犬「くぅん」
梓「と、とりあえず」
犬「?」
梓「私は授業に出なきゃいけないからココで大人しく待っててくれないかな」
犬「わんっ」
梓「本当にわかってるんだろうか…」
梓「お昼になったらご飯持ってきてあげるからそれまでジッとしてるんだよ、いいね!」
犬「わんっ」
授業中
梓(この窓から丁度犬が見える…)
梓(ジッとしててとは言ったけど、あんなにも動かないと少し心配になるかも)
犬「」ゴロゴロ~
梓(なんかゴロゴロしてる)
梓(今までずーっと寝てばっかりだし、なんか既視感があるんだよね…)
先生「コラ、中野!」
梓「ひゃいっ!?」
先生「授業中はボケッとしない!それとも何か、窓の外に何かあるのか?」
梓「いえ、何もありません!」
先生「だったら授業に集中する!いいな?」
梓「はい……」
モブ「くすくす」
犬「くぁぁ~」セノビ
梓(犬はお気楽でいいなぁ…)
昼休み
純「憂、梓ー、ごはん食べよ」
梓「あ、私ちょっと用事あるから2人で食べてて」
憂「?何かあるの?ひょっとして…
梓「あ、それじゃなくて違う用事!」
純「それって何よ」
梓「あー、まぁ、それはそれよ。じゃ行ってくる!」
憂「あ…行っちゃった」
純「気になる。跡、付けてみない?」
中庭
梓「約束通り来たよー」
犬「わんわん!」ガバッ
梓「にゃっ!」
犬「わん」スリスリ
梓「もう、どっかの誰かさんみたいにいきなり飛びついてくるんだから」
梓「ほら、パン買ってきてあげたからお食べ」
犬「わんわん」パクパク
梓「ふふっ、いい食べっぷり。余程お腹空いてたんだね」
梓「じゃあ見付かったら色々と面倒だからもう行くね」
犬「くぅん」
梓「放課後にもまた来るからそんなに心配しないで」
ガサガサ
梓あ、あそこに居るのは純!つけて来たんだ…
じゃあもう行くね!またね、ワンちゃん」
放課後
梓(ふぅ、なんとか犬を見付からずにここまで乗り切った…)
梓(これからどうしようかな。唯先輩も探さなくちゃだし。あ、犬どうしよ)
憂「梓ちゃん」
梓「あ、憂」
憂「どうしたの?なんか心ここにあらずって感じだけど」
梓「お互い様でしょ。私だって唯先輩の事も心配だし」
憂「も?」
梓「あ、ごめん、今の無し」
梓「で、どうしよっか。1日経ったけどこれと言って良い方法考え付かなかったね……」
憂「うん… とりあえず歩きながら考えよっか」
渡り廊下
梓「…」
憂「…」
梓(気まずい…何か話さなきゃ。…ん?あのこっちに向かってくるモップは)
犬「わんわん!」タタタタ
犬「わん!」ガバッ
犬「くぅん」スリスリ
梓「またこのパターンなのね……」
梓(ああ、折角隠し通してたのに、憂に見付かっちゃったら意味ないじゃん)
憂「あ、この子」
梓「え、この犬知ってるの?」
憂「うん。この子ね、昨日からうちの周りをうろついてたの」
梓「へぇ~。あ、この子の事は…」
憂「大丈夫だよ。誰にも言わない」
梓「良かった。なんか学校に知られたら大変そうだし」
犬「」ハッハッ
憂「よしよし」ナデナデ
梓「で、この子の話に戻るけど、憂ん家の近所に居たんだよね」
憂「うん。帰ったらうちの玄関に居てね。でも家に上げる訳にはいかなかったから」
梓「なんでそんな所に居たんだろ。?そう言えば何かTシャツ着てるね。もしかして何処かの飼い犬で迷子だったりして」
憂「うーん、どうだろ…って、あれ?このTシャツの柄……」
犬「?」
梓「Tシャツの胸のプリント!今まで気付かなかったけど『ザ☆ドッグ』って!これ唯先輩の部屋で見た事ある!」
憂「確かにお姉ちゃんが持ってたのと一緒だ…」
梓「憂!もしかしたらこの犬は唯先輩失踪の重要参考犬かも!」
梓「昨日、家に帰って部屋着に着替えた唯先輩はきっと寝惚けてズボンとパンツを脱いだ!」
梓「そして自分が着ているTシャツを玄関にいたこの犬に着せたんだよ!」
梓「ここから導き出される回答は1つ…」
梓「唯先輩は今、全裸なんだよ!」
最終更新:2010年10月05日 20:29