憂「……」

梓「憂?」

犬「?」

憂「怒るよ」

梓「ごめんなさい」

犬「くぅん」

憂「それにこのTシャツは市販品だし、お姉ちゃんと同じ物だとも限らないよ」

梓「そうだね。元々の飼い主が同じデザインのシャツを着せてたのかもしれないよね」

憂「でも、これでまた白紙に戻っちゃったって訳か」


憂「はぁ、お姉ちゃん。今頃どこで何してるんだろ。無事だと良いな……」

梓「憂…あ、犬」

犬「」スリスリ

憂「慰めてくれてるの?ありがとう…」

憂「よしよし良い子良い子」ナデナデ

犬「くううん…」スリスリ

憂「こんなに私の事心配してくれるなんて」

憂「決めた。この子の飼い主がもし見付からなかったらうちで飼う!」

憂「お姉ちゃんと一緒にお母さんに頼んであげるからね」ナデナデ

梓「あの、その事なんだけど、その子の事、私に任せてくれないかな?」

憂「いいの?動物飼うのは…

梓「お願い!なんだかどうしても他人事に思えなくて」

憂「梓ちゃんがそこまで言うなら、うん。任せる」

梓「ありがと」

憂「で、これからなんだけど」

梓「唯先輩を探しに行くんだよね。私も行く!」

憂「待って。梓ちゃんは何時も通りに部活に行って欲しいの」

梓「そんな!私だって…」

憂「わかってる。けど、軽音部の皆さんに迷惑掛けたくないの…」

憂「学校にはお姉ちゃんは風邪で休みだって連絡してあるし、絶対変に思われちゃうよ」

梓「…そんなのその場凌ぎにしかならないよ?」

犬「わう」パタパタ

憂「…わかってる。今日見付からなかったら明日私から皆さんに言うから」

梓「ちょっと納得できないけど、今日は憂の言う通りにするよ。さっきは私がお願い聞いてもらったしね」

憂「ありがとう、じゃあ行ってくるね!」

犬「くぅん」

憂「私はもう大丈夫だよ」ナデナデ


梓「…じゃあ私達は部室行こっか」

犬「わん!」



部室前

犬「わんわん」パタパタ

梓「あ、普通に連れ込んじゃった。今まで隠し通してきた私の苦労が……」

犬「わんっ」スリスリ

梓「…はぁ」


ガチャ

律「なんか部屋の前が騒がしいと思ったら梓か」

梓「」

律「今度はなんだ?猫に飽き足らず犬の鳴き真似か?」ニヤニヤ

梓「そんなんじゃありません!」

犬「わんわん!」

律梓「」

律「鍵掛けろ梓!さわちゃんが来たら面倒だぞ!」

梓「は、はいっ」


ガチャ



澪「で、なんでこんな校舎の中に犬が居るんだ?」

梓「それが  中略  という訳でして」

犬「わう」

律「なるほどな。大体分かった」

律「しかし犬に服を着せるのは感心しないな。という訳で脱がす!」ガシ

犬「きゃわんきゃわん!」

梓「や、やめて下さい律先輩!ワンちゃんが嫌がってます!」

律「駄目だ、ペットに服を着せるという行為は一歩間違えれば虐待なんだぞ!」

梓「澪先輩、ムギ先ぱ~い…」

紬「梓ちゃん、残念だけど動物に服を着せるという行為は自然に反する事なの…
  ヤフー知恵袋に書いてあったから間違いないわ」


犬「わんわんわんわんわん!」ジタバタ

律「ちょ、なんでこんな暴れるんだ」

紬「シャツ脱がされるのが嫌なのかしら…?」

律「澪、お願い抑えて!」


澪「」ガタガタ


紬「ワンちゃんが暴れだしてからずっと部屋の隅っこで震えてるみたい…」

律「梓!これはこの犬の為でもあるんだ!私が押さえつけているうちに早く!」

紬「そうよ、ヤフー知恵袋に書いてあったもの!」

梓「うぅ…、ごめんねワンちゃん……」ガシ


ビリビリーッ

犬「いやーん」マイッチングー


律「こ、これは…!」

梓「まさか、犬がブラジャーを着けている……だと??」


犬「きゅぅん……」


律「急にしおらしくなったな」

紬「乙女なのね……」

澪「犬に服を着せるのは聞いた事あるけどブラジャーなんて聞いた事ないぞ」

梓「…あの、見てるこっちが恥ずかしくなってくるんですが」

紬「可哀想だけどやっぱりブラも取るべきね。犬に服なんて邪道だわ。ヤフー知恵袋にそう書いてあったもの」

律「という訳で梓、はい」

犬「くぅん」ウルウル

梓「う… じゃあ行きます」


梓(ホックを……)ドキドキ


梓「って、なんで犬からブラ取るだけなのに興奮してるの私!
  こんなの私じゃない!自分を取り戻せ、カムバックあたし!」

ぶちぃ!

犬「!きゃいんきゃいん!」


犬「」gkbr


律「おい、梓がやり過ぎるから怯えて隅っこで固まっちゃったよ」

梓「すみません」

犬「」

梓「…本当にすみません」

紬「お菓子をあげればまた心を開いてくれるんじゃないかしら?」

紬「ほら、あーん」

澪「そんなので機嫌直る訳…」

犬「わんわん!」パクパク

澪「直った!」


律「ほら、梓も謝らなくちゃな」

梓「はい…」

梓「さっきは酷い事してごめんね。もうしないから…」

犬「」プイッ

梓「あ……」

律「仕方無いな。犬の機嫌が本当に直るまで私達が面倒見るよ」


律「よしよーし」ナデナデ

紬「まだお菓子は沢山あるからね」

犬「わん」

律「ほら澪も触ってみろよ。気持ち良いぞー」

澪「噛んだりしない?」

律「しないしないって」



梓(どうしよう泣きそう)


犬「」パクパク

律「あははっ、本当によく食べる奴だなー」

澪「お腹空いてたんだな」オソルオソルナデナデ

紬「ふわふわの栗毛が気持ちいいーっ」さわさわ


梓「」ショボーン


犬「」チラッ

梓「あ…」

犬「」ススス

律「犬が梓の方に行ったぞー」


ピト 犬梓


梓「私を許してくれるの……?」

犬「わん」スリスリ

梓「ありがとう…!」ギュ


犬「」プルプル

梓「あれ?」

律「どうしたんだ?急に動きが」

澪「まさか病気とか…」

梓「縁起でも無い事言わないで下さい!」

梓「どうしたの?何処か痛いの?」

犬「」プルプル

紬「もしかして、トイレなんじゃないかしら?飼い犬はおトイレも躾けられてる筈だから」

梓「はっ!そう言えばこのワンちゃん、今日1日中トイレに行ってる様子はありませんでした!」

律「早く病気にならないうちに連れてくぞ!」



トイレ

梓「連れてきたのはいいけど、ワンちゃん1人じゃ流されちゃいそうで怖いかも…」

律「付き添ってあげたら?」

梓「そうですね、そうします」


犬「」プルプル


紬「どうしたのかしら?トイレじゃなかったのかしら」

澪「私達に見られて恥ずかしいとか?」

律「そんなバカな。犬だぜ?そんな人間みたいな…」


犬「くぅん」ウルウル


梓「どうやら本当に恥ずかしがってるみたいですね。あの、皆さん少しの間出ていってもらっても宜しいですか?」

律「あ、ああ」

澪「というかそもそも個室に4人+1匹篭もってるってのも可笑しな話だけどな」


ガチャ


ショーッ
プリプリプリ
ポトポトポトっ

梓「ほら、お尻こっちに向けて。綺麗に拭かないと」

犬「うぅ……///」

拭き拭きポイ

ジャーッ


ガチャ


梓「終わりましたよ」

澪「あ、うん…」

律「なんか言葉にし辛いものがあるな…」

紬「ワンちゃん、すっかり梓ちゃんの腕の中で丸まってるわね」

律「余程恥ずかしかったんだろうな…」



再び部室

梓「よしよし」ナデナデ

犬「わう…」

紬「すっかり仲良しさんね」

澪「なんか微笑ましいな」

律「なぁ、梓」

梓「はい?」

律「その犬、もう名前決めてるの?」

梓「まだです。何処かの飼い犬なのかも知れませんし…」

紬「でも何時までもワンちゃんじゃおかしいと思うの。ここに居る間だけでも呼び名を付けてあげるのはどうかしら」

律「いいな。じゃあ皆で決めようぜ」

澪「まろん☆たると なんてどうかな?」

律「却下」

紬「ゴンザブロウなんてどうかしら」

律「却下。そもそもメスだっただろ。ブラも着けてたし」


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最終更新:2010年10月05日 20:30