澪「まぁとりあえずそれでギターが買えるな、良かった良かった!」

律「一事はどうなることかと思いやしたけど、本当に良かったですね姉御!」

唯「あはは…まあね…」

私はギターが買えて良かったというより
カツアゲや臓器を売らないで済んだことに対して喜びを感じたいけどね

紬「早速そのお金で今日の帰りにでもギターを買ってきなさいな」

唯「…あ、実はそのことなんだけど…」

唯「ギターってどこに売ってるのかな…?」

紬「まったく!どうして貴族の私が貧民のあなたの買い物に付き合わなくちゃいけないのかしら!?」

唯「あはは、ごめんごめん。だって律さんと澪さんは
  今日は別の族とやり合うから無理だっていうしさ、だからムギちゃんしかいなくて」

紬「なら私はあの愚民共の代わりという訳ね、まったく失礼しちゃうわね」

唯「そんなんじゃないよ、後ムギちゃんとゆっくりお話もしたかったしさ」

紬「あらそう、私は別に話すことなんてないんだけど」

唯「まったく素直じゃないなムギちゃんはー♪うりうりー」

紬「! 触らないで!!」

唯「!?」ビクッ

紬「あ…ごめんなさい…それより早くギターをを買いましょう」

唯「う、うん…」

まさか触っただけでこんなに怒るなんて…
少しふざけ過ぎたかな?後でちゃんと謝ろう…


それからムギちゃんの助言もあって、何とか私は自分に合ったギターを買うことが出来た
その間、ムギちゃんは私に目も合わせてくれず、当然必要以上のことは会話することもなかった
その様子は、私から距離を置こうとしている様で、安易にムギちゃんに触れてしまった私は、許されざることをしてしまったんだと認識した

こんな調子じゃ謝ることも出来ない
でも、感謝と謝罪はちゃんとしなくちゃ…
それがムギちゃんに対して、少しでも罪滅ぼしになると信じているから

唯「…あの、ムギちゃん…」

紬「…何かしら、あと気安く呼ばないでくれる?」

唯「ごめん…」

紬「はぁ…それで何?」

唯「あの…今日は私の買い物に付き合ってくれてどうもありがとう
  それと…さっきは本当にごめんなさい」

紬「…いいのよ、私の方こそ悪かったわ。ごめんなさい」

唯「え?それじゃ許してくれるの?」

紬「許すも何も悪いのは私の方なのよ?あなたこそ許してくれるのかしら?」

唯「と、当然だよ!…良かったぁ、ムギちゃんと仲直りできて…」


唯「本当に良かったぁ…ぐすっ」

紬「ちょっと、どうしてそこで泣くの?」

唯「だってぇ…ムギちゃんに嫌われたらどうしようって思ったんだもん…」メソメソ

紬「…ねぇあなた、私のことどう思ってるの?嫌な女だと思わないの?」

唯「最初は確かにそう思ったけど…今は全然そんなこと思わないよ。
  だって私わかったんだもん、ムギちゃんはいい人だって」

紬「私が…いい人?」

唯「うん、ムギちゃんはいい人だよ。なんだかんだ言っても私の買い物に付き合ってくれたし
  みんなの為に、私にお金貸してくれたし」

紬「…でもそれは今日だけかもしれない。明日からはまた嫌な女になっているかも知れないのよ? それでも…それでも私がいい人だと思うの?」

唯「思うよ」

紬「また貧民って馬鹿にするかもしれないのよ?それでも思うの?」

唯「思う」

紬「…口でならいくらでも言えるわ。大体あなたと私は今日知り合ったばかりじゃない
  なのにいい人だなんて…本当の私も知らないくせに…」

唯「それでもいい人だと思う。私はそんなムギちゃんが大好きだよ」

紬「…だい、すき…?……そう…大好きか…」

紬「…ありがとう、唯ちゃん」

ムギちゃんが私の名前を初めて読んでくれた
私はなんだか嬉しくなって、満面の笑みで笑って見せた
するとムギちゃんもぎこちなく、はにかんで笑った

唯「えへへ♪ムギちゃんの笑顔可愛いなぁ♪」

紬「そう、かな?私、人前で笑うのってこれが初めてかもしれない…」

唯「えっ?今まで笑ったことなかったの?」

紬「…うん。恥ずかしい話、今まで、私には友達と呼べる人がいなかったから」

唯「そうなんだ…なら私がムギちゃんの友達1号だね♪」

紬「えっ?私の友達になってくれるの…?」

唯「当たり前だよ!」

紬「友達…友達か…えへへ、嬉しいな♪」

ムギちゃんはさっきとは違う、満面の笑みを私に見せてくれた
だから私もその笑顔に、精一杯の笑顔で答えてみせた

なんだろう、彼女とは親友になれそうな気がする
彼女の笑顔を見ながら、私はそう思った


紬「ねぇ唯ちゃん…」

唯「なに、ムギちゃん」

紬「もう少し、お話してもいいかしら?」

唯「うん、私は最初からそのつもりだったしね」

紬「ありがとう唯ちゃん、あのね…」

ムギちゃんは自分のことを色々と語ってくれた
家のこと、幼かった頃のこと、ずっと友達がほしかったこと、
でも今まで素直になれなかったこと、とにかく色々なことを語ってくれた

それらのことを、とても楽しそうに語るムギちゃんは、まるで子供みたいで
誰かに話してしまいたいことを、今まで誰にも言えずにいたんだろうなと思った

だから友達の私には、それらを全て聞いてあげる義務があるし
同時に彼女のことが分かるので、とても楽しくもあり嬉しかった


どれだけ長い時間語り合ったのだろう
気が付けば時計の針は9時を回っていた

唯「あっ!もうこんな時間だ!」

紬「あら大変、両親に叱られてしまうわ」

唯「私も妹に叱られちゃうよ、残念だけど今日はもう解散だね」

紬「ええそうね…」シュン

唯「そんな残念そうな顔しないでよ、また明日会えるじゃん!」

紬「…うん!」

唯「へへ♪それじゃムギちゃん、また明日ね!」

紬「ええ、また明日……唯ちゃん!」

唯「ん?なーに?」

紬「あの…今日はどうもありがとう、すごく楽しかったわ」

唯「こちらこそありがとう、すごく楽しかったよ!それじゃまた明日!」


紬「……ありがとう、か…いい言葉ね」



―平沢家

唯「ただいまー」

憂「…お帰りお姉ちゃん、随分遅かったね」

うわ…この声はすごく怒ってるよ…
憂は心配性だからなぁ…一言遅くなるって言っておけばよかったかな…

憂「…ねぇお姉ちゃん、こんな時間まで何してたのかな?かな?」

唯「あー…あのね、少し友達とお話しててさ、それで…」

憂「なら一言遅くなるって言ってくれれば良かったじゃない!
  今日はお姉ちゃんの大好物のマシュマロ鍋を作って待ってたんだよ!?」

憂「でも見てよ、ほら!…もうすっかり冷めちゃったよ…
  お姉ちゃんにアツアツの出来たてを食べてもらいたかったのに…」

憂「…誰?ねえお姉ちゃん、そのお友達って誰?
  お姉ちゃんに夜遊びを教える、そのいけないお友達って誰のことかな?」

唯「え?同じ部活の子だけど…」

憂「ふーん…そっか、なら私が教えてあげなくちゃだね…
  お姉ちゃんをたぶらかすことが、どんなにいけないことかをさぁ…」シャキーン

で、でたーッ!憂の愛包丁、唯我独尊ッッ!!
これを出したってことは、相当頭にきてるって証拠だよ…
ていうかなんでいつも持ち歩いてるの?お姉ちゃん怖いよ

憂「それじゃお姉ちゃん、ちょっと出かけてくるね」

唯「で、出かけるって何処にですか…?」

憂「何処にって…それは、ねぇ…くすくす」

それってつまりはムギちゃんを消しに行くってことじゃないですか
あと包丁を持って笑わないで下さい、怖いです

唯「ま、待ってー!お願いだから行かないでぇ!」

憂「ダメだよお姉ちゃん、このままじゃお姉ちゃんの為にならないよ」

唯「その方が私の為にならないよ!
  大体、彼女は私の大切な友達なの!お願いだから考え直して!」

憂「もう遅いよ、そいつを○○なくちゃ私の気は納まらない」

○○って…女の子がそんな○○なんて言葉使っちゃダメだよ!
しょうがない…こうなった憂を落ちつかせるには、いつものあれをやるしかないか…

唯「うーいー」ギュゥ

憂「わわわわっ!?お姉ちゃん!?///」

唯「憂は可愛いね、いい子いい子」ナデナデ

憂「あうぅ…お姉ちゃん恥ずかしいよぉ///」


唯「ねぇ憂、私は憂が大好きだよ。だからいつまでも一緒にいたいなぁ」

憂「…うん、私も同じだよ。いつまでも一緒にいたい」

唯「なら考え直してよ、人殺しなんてしたら私に会えなくなっちゃうよ
  憂はそれでいいの?」

憂「! そんなの嫌だよ…」

唯「なら馬鹿なこと考えないでさ、その包丁を離してよ」

憂「う…でもでも……分かった、私お姉ちゃんの言う通りにする」

唯「そっか、ありがとう憂」ナデナデ

憂「えへへ…うん♪」

唯「それじゃそろそろ晩御飯にしようか、私お腹ぺこぺこだよ」

憂「あ、今準備するから少し待っててね!ふんふふ~ん♪」

唯「……はぁ、何とか納まったみたい…」

まったく面倒くさい妹だ…
私の為を思ってくれるのは嬉しいんだけど、少し限度ってものがあるよね
まぁ納まったんだから、今日はこれで良しとしよう

それにしても、明日からとうとう本格的に部活が始まるのか
みんなに迷惑をかけない為にも、後で少しでもギターの練習をしておいた方がいいかな


―次の日 部室

がちゃっ

唯「こんにちわー」

律「おう平沢、ギターは持ってきたか?」

唯「うん!…ジャーン!これが私のmyギターです!」

澪「ほう、ギブソンのレスポール・スタンダードかお前なかなかいい趣味してるじゃねえか」

唯「これは昨日、ムギちゃんに選んでもらって買ったんだ♪ね、ムギちゃん」

紬「……」

唯「あれ?ムギちゃん?」

紬「…うるさいわねぇ、貧民風情が私に軽々しく話しかけないでくれる?」

唯「…あれ?ムギさん…?」

唯「あのムギちゃん…私達って友達、だよね…?」

紬「はぁ?あなたと私が友達?貧民のあなたと貴族の私が釣り合うとでも思っているの?
  まったく、身分をわきまえなさい」

唯「……」

…あれ?あれー?
なんかいつものムギちゃんに戻ってるよ
昨日のあれは何だったの?夢だったのかしら?

律「何驚いた顔してんだよ、ムギはいつもこうじゃねえか」

唯「…いや違うよ、だって昨日のムギちゃんは…」

紬「! だ、黙りなさいと言っているでしょ!あなたの声すごく耳ざわりなのよ!」

唯「ガーン…」

あぁ…友達だと思っていたのに…
親友になれると思っていたのに…
どうやらそれは私の勝手な思い過ごしだったんですね…

唯「ショック…」

律「? なんだお前、相変らず変な奴だな」

それをあなたに言われたくない


澪「どうでもいいけどよぉ、平沢、お前少しはギターの練習したのか?」

唯「ガーン…ガーン…」

律「おい平沢!姉御がお呼びだろ!シャキッとせんかいッ!」

唯「ひぃっ!?」

澪「まぁ落ちつけ律、そんな小さなことでいちいち腹を立てるな」

律「で、ですがね姉御…」

澪「あたいみたいな『いい女』になりたいんだろ? なら少しは広い心を持て」

律「姉御…有難いお言葉、恐れ入りやす!」

澪「うむ」

紬「はぁ、相変らず愚民共は頭の中まで愚民ね」

唯「……」

友達がいなくなってしまった今
私はこの部に入部してしまったことを心の底から後悔していた

…どうしよう、やっぱりうまくやっていけないかもしれない


そしてなんだかんだで部活が終わり
私が帰り支度をしていた時

澪「おい平沢」

唯「え?何ですか?」

澪「その…ほらよ、くれてやる」

唯「? これは…ギターの本?それも新品の…」

澪「そうだ、それを見ていっぱい練習しろ
  …言っておくがこれはお前の為じゃない、部活の為にだからな」

唯「姉御…」

なんだかんだで、この人も素直じゃないだけなのかもしれない
きっと時間をかければ、いつかは分かりあえる日が来るよね

唯「ありがとうございます!私、精一杯がんばります!」

澪「おう、せいぜい気張れや」

律「姉御!そろそろ例の約束の時間ですぜ!」

澪「おう、今行く。それじゃあな平沢」

唯「あざーっす!」


よーし!澪さんの期待にこたえる為にも
帰ったら早速練習するぞー!

唯「ふんふふ~ん♪」

紬「…あ、あの…唯ちゃん…」

唯「ん?なーに、ムギちゃん……」

…ん?唯ちゃん?
今確かに名前で読んだよね?
っていうことは…

紬「あのね唯ちゃん…その、お話が…」

唯「……」

紬「…唯ちゃん?」

唯「…よかった、夢じゃなかった…」

紬「夢…?」

唯「いやいや、何でもないよ!それで話って何かな?」

紬「あのね、さっきの態度についてなんだけど…本当にごめんなさい!」

紬「私…人前で本当の自分を出すの、すごく恥ずかしいから…それで…」

紬「…だから、本当にごめんなさい!」

ああ、成る程
昨日言っていた、また馬鹿にするかもの理由が分かった

唯「別にそんなに謝らなくていいよ
 それより私はムギちゃんに嫌われたのかと思っちゃったよ」

紬「うぅ…ごめんなさい…」

唯「だから謝らなくてもいいよ」

紬「でも…私はこんなにも唯ちゃんを傷つけたんだよ?
 もう、友達だって言う資格もないよね…」

唯「そんなことないよ、それでも私はムギちゃんは大切な友達だと思ってるよ」

紬「え…?本当に…?こんなに酷いことをしたのに…?」

唯「うん、それに仲直りだってしたじゃん。だから友達」

紬「…またみんなといる時に、馬鹿にするかもしれないのよ?それでも?」

唯「ならまたその時に仲直りすればいいじゃん
 友達っていうのはそういうものだと私は思うな」

紬「唯ちゃん…ありがとう…ありがとう…!
  私、唯ちゃんと友達になれて本当に良かった…!」ポロポロ

唯「私もそう思ってるよ」ギュッ

紬「唯ちゃん…唯ちゃぁん…!うわああん!」ポロポロ

そうか、彼女は知らないんだ
なら私がこれからいっぱい教えてあげよう
友達が何なのかってことを




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        |    |     |  / ̄ ̄| |    |┤  | |
        |    l    l /    | ト、   l`∨   | |
        |   _!   | レ' ___  `∨  \/   V  l 第1部 完
        |   {|  l {ィ==ミ、       _    } / |
        |   ヽ!   ヽ| ,,,,,        ィ=ミ、/ /   l
        |  /l i  ∧      ,   ,,,, /レ′  |
        l/ 八 !  ハ     、 _,     /   .イ  l
     /   ∧   ハ     ¨´     イ    | | |
    /    / ハ   ∧丶. __ < ! |l     | l /
  /    _ ∠ -=∧   ハ     ハ__l⊥|l.   l/ /
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最終更新:2010年01月27日 02:17