律「じゃぁもう寝ようか」

唯澪紬「

        ∧∧
       ヽ(・ω・)/   ズコー
      \(.\ ノ
    、ハ,,、  ̄
                   」

澪「なんでだよ!」

律「だってもう夜中2時ジャン。今夜は寝よう。んで早起きして練習!」

紬「そうね。さすがにもう寝なきゃ」

唯「早起きして練習だねっ」

澪「…………わかったよ。じゃぁおやすみ~!」

―――
――



<翌朝>

律「さてさて、」

律「まぁ私が一番に早起きしたわけですが……」


紬「zzz」

唯「うぃ~。もう食べられないよ~。うへへへ~」

澪「ぅーん」


律「おーい。朝だぞー。澪はパンツ丸出しだと風邪ひくぞー」

澪「むにゃむにゃ……」


律「とりあえず写真撮っておこ」

パシャッ


[後半]


気持ちを新たにした夏合宿も終わり、夏が終わり、2学期となる。



その間も”同じ窓から見てた海を、この手で創り出す”

これを合言葉に、彼女たちはライブに向けて練習をがんばった。


いろいろと細かい所も詰め、ライブではオリジナルの曲をやることに。

ボーカルは唯が、ギターも担当しながらやることになったのだが……




唯「ギター弾きながら一緒に歌、歌えない…orz」

さわ子「仕方ないなぁ…」

さわ子「先生が一週間。つきっきりで特訓してあげるわ!!」

唯「先生っ!!」


さわ子「それじゃまず歯ギターのやり方は…」

唯「それはいいです。」


さわ子「さて、ボケはここまでよ。これからは血のにじむような特訓の開始よ!」

唯「望むところです! さわちゃん師匠!」


さわ子「よろしい! とりあえず、ギターでも歌でも大事なのは、質のいい反復練習よ」

唯「おっすです! 師匠!!」


さわ子「時間はあるわ。最初は本当にゆっくりのペースでいいから。丁寧に歌とギターを弾くの」

さわ子「そして慣れてきたら一段階ペースを上げてみる。難しいところでは決してごまかさず、」

さわ子「できるまで何度も何度も反復練習をする。とにかく頭でなく、指に、喉に、体に覚えこますの」

さわ子「それだけで全然違った世界が見えるようになるわ」

唯「はい! 頑張ります!」


ジャァアァアアアアン!

唯「君を見てると~」


―――
――

……そうして、1日目の特訓が終わった。

さわ子「よし! 今日はこれまで」

唯「はい! ありがとうございました」


さわ子「それにしても平沢さん。気合入ってるわねー。何かあったの?」

唯「みんなと約束したんです。”同じ窓から見てた海”を作り出そうって」

さわ子「う~ん? どういうこと」

唯「ようするに、見に来てくれた人を、興奮の渦に巻き込むようにしたいんです」

さわ子「なるほど。その心意気やよし! のこり6日も頑張りましょう」

唯「はい!」


――そうしてさわ子の教えを忠実に守り、ハイペースで頑張った結果……


<1週間後>

さわ子「みんな! 待たせたわね!!」

さわ子「さぁ唯ちゃんっ!!」

唯「……」コクッ


  ギャイイィンッ


澪「おおーーっ!! ギター上達してる!!」

紬「わーっ」


唯「君゛を゛見゛て゛る゛と゛い゛つ゛も゛ハ゛ート゛ドキ゛ドキ゛~」


律澪紬「

        ∧∧
       ヽ(・ω・)/   ズコー
      \(.\ ノ
    、ハ,,、  ̄
                 」



さわ子「いやー。練習させすぎちゃった☆」

唯「こ゛え゛枯゛れ゛ち゛ゃ゛っ゛た゛☆」

律「だめじゃん!!」


――最終的にボーカルは澪になった。


このアクシデントがあってからも、4人は最後の追い込みを頑張った。

すこしでもいいものができるように。

すこしでも、あの動画の、演奏力に近づけるように。


4人とも、観客の感動の”海”を、

自分たちの手で創りだすっていう気持ちは、ずっと一緒だったから。










――そして本番


律「よーし。みんないくぞーっ!!」

唯&紬「おーっ!!」

澪「……」ブルブル


アナウンス『続きましては、軽音部によるライブです。皆さん盛大な拍手を』



  わああああああああああああああああああああああああおああああああああああっ


澪(だ…だめだっ…!!)

唯「澪ちゃんっ!!」





唯「私、澪ちゃんが頑張って練習してたの知ってるから!」

澪「……」

唯「絶対大丈夫だよ! がんばろう!」

澪(……)


澪(……そうだよな)


澪(”海”を作ろうって、約束したもんな。それでみんな頑張ってきた)


澪(だったら、怖気づいてなんていられないじゃないか!)


澪(……律、行けるよ!)


律(よし! ムギに唯。準備はいいか)


紬(おっけーよ!)

唯(ばっちこいだよ!)


律「……」

律「1・2・3・4!!」カッカツ


  ジャラァァン♪


澪「きみを見てると、いつもハートドキドキっ!」

  わああああああああああっ


唯(おおっ、始まった)


唯(練習通りに、私は指を動かしていく。と同時に色々な音が聞こえだす!)


唯(……澪ちゃんの歌声が、少し震えてるのが分かる!)


唯(そして律ちゃんのドラムが、少し走り出した!)


唯(澪ちゃんはそれに気づいて、リズムキープと声音をしっかり保った!)


唯(ムギちゃんはあくまで全体が自然になるように、キーボードを弾いている!)


唯(わたしはわたしの役目を果たすため、全力でギターを演奏し続ける!)


唯(大舞台なのに不思議と緊張はない。次はすこし難しいBメロ)


唯(逆光で分かりにくいけど、観客の何人かが、手拍子しているのが分かる)


唯(アンプの音が割れて、雑音が入ったのが聞こえた。何故だろう。演奏に集中しないといけないのに、)


唯(むしろ時間の流れがゆっくり感じられて、全部の音が見えているように流れて、耳から入ってくる!)


唯(澪ちゃんの、りっちゃんの、ムギちゃんのリズムが、体の中に入っていって、)


唯(それに合わせて指を、どう動かせばいいか、わかる。というより自然と指が動いてく!!)


唯(何度も何度も何度も何度も、練習してきたせいかな?)


唯(少しアドリブを入れてみると、澪ちゃんが驚いた。ごめんごめん)


唯(見えないけど、後ろのりっちゃんが、スポットライトで熱そうにしている)


唯(左側にいるムギちゃんが、楽しそうに笑い出そうとしている)


唯(……いつの間にか、他人の感情まで、私の耳に、体の中に流れ込んできてる)


唯(なんだか、私の感覚が研ぎ澄まされていくのを感じる)


唯(……1番も終わりだ。声が枯れてるけど、コーラスは歌う)


澪「ふわふわたーぁいむ!!」

コーラス「ふわふわたーぁいむ!」

澪「ふわふわたーぁいむ!!」

コーラス「ふわふわたーぁいむ!」たーいむ」


唯(2回目のコーラスで、5人ほどの観客が歌っていた)

唯(2番のコーラスでは、客席の半分が歌うのが、この時点でなんとなくわかった)


唯(そうして歌は2番に入る。私たちも観客も、だんだんテンションが上がってゆく)


唯(私の指は相変わらず、オートマチックで動いていく。テンションも指も止まれない!)


唯(客席の半分が立ち上がって、私たちに合わせて手拍子をしてくれてる)


唯(私の、澪ちゃんの、りっちゃんの、ムギちゃんのリズムが、体の中に入っていって、)


唯(そこに客席からの手拍子が混じって、体の中で大渦を巻いて、私の体からはみ出たその渦が、)


唯(私のギターの音に乗って、この体育館中を、この空間を駆けていく!)



唯(1人1人の音が、その渦に巻き込まれ、その渦がますます大きくなる!!)


唯(気づけば、この体育館中で奏でられた、私のギターが、澪ちゃんの声とベースが、)


唯(りっちゃんのドラムが、ムギちゃんのキーボードが、観客の手拍子と声と息づかいと心音までもが、)


唯(一つに合わさって、巨大な一体感が生まれてく……そうして、)





唯(合宿のとき、モニター越しでしか見たことのなかった、)


唯(あの時創り出したいと思っていた、まるで本物みたいな、歓声の津波が起きて!)


唯(私たち4人が一緒に手を伸ばしてた、”同じ窓から見てた海”が、目の前に現れた!!!)



観客「うわああああああああああああああああああああああああああああああああああああー」


唯(私たちの演奏は、まだまだ下手だ)


唯(そうだとしても、みんなが、世界が一つになってゆく感覚が、ここにあった)


唯(頑張って練習してよかった。これが、バンド……。音楽!)


唯(まるで魔法みたいだ……この楽しさは、やめられないっ!)



唯(演奏の途中だけど、無性に叫び出したくなってきた)



唯「けいおん大好きーーーーーーーーーーーーーぃ!」


――そうして、軽音部4人の演奏は終わった。


澪「みんな、ありがとーっ!!」

律(これで澪も恥ずかしがり克服できそうだな)


ガッ


びたっ

澪「きゃんっ!!」

澪「あいたたた……」


ざわ……ざわ…………


澪「え……?」



  いやあああああああああああああああああぁぁぁ...




――こうして今年の文化祭は幕を閉じました。

<終わり>






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最終更新:2010年10月06日 03:44