澪「同じ窓から見てた海」


すーっと音を立てて忍び込んでくる夜風が、髪にしっとりと絡み付いた水気を払っていく。

洒落ていて、けれど何処かレトロな香りのするテラス。煤けた木製のローテーブルを挟んで三人掛けのソファーが二つ。
その全てを一人で独占している事に些かの優越感を覚え、ふかふかのソファーが脳に垂らし込んでくる程良い眠気と闘う私。もう夜も遅い。

膝の上にはベース。右手で支えるネックも、左手の親指を置くピックアップも、もうすっかり手に馴染んでしまっている気の知れた相方だ。
触れただけで気分が高翌翌翌揚するあの頃のような刺激はもうないが、ボディーから徐々に無くなってきている光沢を見ると、何故だかどうしても顔がニヤけてしまう。

青白い月明かりがライトで、せせらぎの様な波音がコーラス。もうこれだけで一曲出来てしまいそうなシチュエーションなのだが、生憎今ここには紙一枚ペン一本さえも無い。
下階の広間で寝息を立てている面々を起こす訳にもいかないし、ここは今すぐにでもと逸る気持ちをぐっと制して今後の製作活動の糧にするとしよう。


「それにしても……」

なんという美しさだろうか。水面で揺らめく青い月の煌輝に見入り、自然と絃を弾く指が止まる。
地元の街では決して見る事の出来ないこんな景色に付ける名前を、私はまだ知らない。それどころか脳に浮かぶ限りの色で形容する事も出来ない。
私の語彙が貧困なのか、はたまたこの景色が脳をふやかす程に麗しい物なのか。

……どちらでもいい。

この涼やかな青い遠景を独り占めしている。その事実が今ここに在るだけで、私は本当に満足だ。
今はこの青をしっかりと瞳に焼き付け、日々の喧騒に固まった脳をふやかして、そして……出来る事なら……もう少し大人になったら……。そんな思いを胸に紡ぐ

まだまだ遠い大人までの時間、皆で居るのに一人で見つけた景色。それを糧にすべく、私は再び絃を弾きだす。

夏が終わればもう文化祭……。今は、やれるだけのことをやろう。
そう一人で決意した私の髪を、やはりすーっと音を立てて忍び込んでくる夜風が撫でる。波の音が静かに、そう……静かに歌い出す。

私が胸に紡いだのは……

「……いつか歌にしてみよう」

窓の外の海は、そんな夢をくれたのだった。

<澪、了>



律「同じ窓から見てた海」


今日の夕食、何故か担当が私。何を作るかみんなに聞いたら分かった。

信用ゼロだ。アテにされてない。凹んで涙じんわり浮かぶ。

澪はチャーハン、先生カレー、あとは全員どん兵衛!!

嗚呼……私も一応女の子です。こんな扱い凹みます。

澪は間違いなくハンバーグ作れるの知ってるのに……。

信頼ない……。

結局カレー作ることになりました。「じっくり煮込めば食中毒も起きない!」

それが生徒に贈る言葉か? 肩を掴んで熱弁するな。

周りも拍手、ボリューム大きい。もうゴールしてもいいよね?

じゃあ買い物行きます。メモを取ります。お菓子は一人三百円。

もちろん税込みで計算。ビールは買いません!

もう少ししたらスーパー到着なのにな…… 着信鳴り響き、出りゃあ 『レトルトがいいな!』

お前それは一番恥ずかしいだろ! 私のプライドはどうすんの!?

てか最初からこうするつもりで私に料理任せたな!

「あ゛~もういいぜ! お前らの菓子は買わない!!」『う、嘘だろ!?』



ああ……ホントに一応女の子です。これはガチで凹みます。

もしすんなりボンカレー買ったら 女は終わりだ!

信頼ない……。

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「りっちゃん、一人で何やってるの?」

「ん? ああ唯か。ハイ、これ」

「わ、歌詞!? りっちゃん歌詞書いてるの!?」

「ああ、よく読め」

「おお~! ……って、コレは……」

「タイトルは『信頼ない』だ。昨日のりっちゃんカレーストライキ事件で私の信頼の無さがよ~く分かったからな」

「ああっ! 根に持っていらっしゃる!」

「じゃあ唯、軽音部は任せたぞ。私ちょっとゴールして来るから」

「あ、あかん! ゴールしたらあかん!! 冗談や! アレは冗談やったんやぁ!」

「文化祭楽しみにしてるぜ。じゃあな」

「ああ~っ! りっちゃーん! 待っておくんなまし~! りっちゃあああぁ~ん! カムバァ~~ッック!!」

半泣きで私の足にしがみ付いて来る唯を無視して窓の外に目をやれば、そこに広がる水色の海。そして白い砂の浜。

昨日まではあんなに綺麗に見えた絵のような景色。でも……今の私にはどうしても灰色に見えてしまう。乙女のりっちゃんは痛く傷ついた。

窓の外の海は、悲哀という名の感傷をくれました。


<律、了>
律「同じ窓から見てた海」を『ふわふわ時間』のメロディーで歌ってみると二度お楽しみ頂けます。お得だね! りっちゃん!



紬「同じ窓から見てた海」 さわこ「エロスね!」


「分かる? ここを優しく[自主規制]しながらここを強く[自主規制]と……」

「はあっ! ああんっ!」

「そしてここから[自主規制]を掬って[自主規制]に[自主規制]つけると……」

「あっ…… そ……そこはっ…………! ダメッ……!」

「あら、また[自主規制]の? [自主規制]ねぇ……。毎日自分で[自主規制]ってるでしょ? ココなんかもう……」

「あっ! ああっ……! イ、[自主規制]っ!! イ[自主規制]うよぉ……」

こんばんは、どう考えても琴吹紬です。

合宿も佳境ということで寂しさが募りなかなか寝付けずにいたのですが、同じく飲み過ぎて寝付けずに居たさわ子先生から

「せっかくのサタデーナイトだからフィーバーしましょ!」

という何とも[自主規制]な香り漂う御誘いを受け、私はこの誰も居ない[自主規制]へとティーチャーをお連れしました。

するとどうでしょう。先生は私をたちまち[自主規制]で[自主規制]してしまい、更に[自主規制]と[自主規制]まで装着させて[自主規制]始めたのです。

それは正しく一瞬の出来事で、私は自分が[自主規制]されていることにも気付きませんでした。

そしてそのまま先生の[自主規制]が始まり、私はあっという間に[自主規制]へ……。

それから数十分、私は気が遠くなる程の[自主規制]を受け、正しく[自主規制]と化した私の[自主規制]を、先生はねちっこく[自主規制]してきます。

「みんな寝てるのに……そんな[自主規制]出してたら起きてきちゃうわよ? 見られたいの? うふふ……この[自主規制]さん」

その言葉でハッとなった私は必死で[自主規制]を堪えようとしました。

ですが、やはり熟練したオ・ト・ナ☆ のテクニックには小娘の稚拙な我慢など歯が立たず、逆に[自主規制]を溢れさせてしまうのでした。

「[自主規制]そう……。も、もうイ[自主規制]なのっ!」

でも……四度目まではすぐに[自主規制]カせてくれた先生は、なかなか勃[自主規制]した[自主規制]を[自主規制]くれません。

「ふふ……大声で叫ばないと[自主規制]触[自主規制]ないわよ?」

「そ、そんな! お願いします先生! それだけは!」

「ダ~メ。一分以内に出来なかったら両[自主規制]に洗濯バ[自主規制]を付けて、ディル[自主規制]を[自主規制]けないようにして[自主規制]するわよ?」

その悪魔のような言葉と共に[自主規制]が[自主規制]に入ってきます。どうやら先の言葉は本気の様です。

「ああっ! イ、[自主規制]っ!!!」

「ダ~メ」

ゆっくりと[自主規制]が引き抜かれていくのが分かります。

[自主規制]に[自主規制]ったピンクの[自主規制]がそれを離すまいと[自主規制]て締[自主規制]つけます。

「抜かないで! お願い! もうちょっとで[自主規制]る!! [自主規制]のぉっ!!」

「[自主規制]」

「ああああっ!」

あと一歩……あと一歩なのに……!

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「あれっ? ムギ先輩こんな所で何してるんですか?」

「あら梓ちゃん。夏休みの課題よ。レポート」

「ああ、私も出ました。これ結構面倒くさ……ってわああああああああ!!」

「ん? どうしたの?」

「が、学校に提出するレポートに一体何書いてるんですか!」

「え? だから体験レポー」

「どう見ても官能小説です! 退学させられますよ! てか体験って!?」

「人なら誰もが通る道よ!」

「ねぇよ! すぐ消して下さい今消して下さい! MONOの消しゴムで、さあ! さあ!」

「ま、待って梓ちゃん! ちゃんと説明すればきっと学校も分かってくれるわ!」

「何言ってるんですか! モラルや倫理観がぶっ飛ぶ程[自主規制]されたんですか!?」

「これはね、私が作った穴埋め問題って言えばいいのよ」

「そ、それはどういう……」

「この[自主規制]って書かれた文字の所に何て言葉を挿れればエロ方面にならないかを問う設問だって説明すればなんとかなるわ!」

「もう既にいかがわしい事が前提じゃないですか! 大体『いれる』の字が間違ってます!」

「ニュアンスの問題よ!」

「それ以前の問題です!」

「じゃあ……梓ちゃん、『入れる』と『挿入る』の違いを説明してみて!!」

「ひっ!?」

「何処がいかがわしいの何がいやらしいの? 教えて頂戴!さあ! さあ!! さああああああああああぁ!!!」

「な、な、何を……!」

「ナニを?」

「う、うわあああああああああぁ!! 澪先輩助けてええええええええぇ!! ムギ先輩が!! ムギ先輩があああああああああああぁ!!」

「うふふ……。元気いいわね梓ちゃんったら♪ 何かいい事でもあったのかしら?」

そうそう、いい事と言えば実は今夜もあの場所で……うふふ♪ 胸が高鳴ってもうナニが何だか分かりません♪

窓の外の海がピンクに見えます。本当にありがとうございました。

<紬、了>


最終更新:2010年10月06日 20:41