唯「うん。憂、がんばって!」
澪「憂ちゃんがんばって!」
紬「がんばれ~」
律「負けんな~!」
憂「ありがとうございます皆さん。うんしょ、うんしょ…」
澪「(あぁっ危ないっ)」
紬「(そのまま行くと手がっ!)」
律「(リンゴだけにヘタるな! なんちゃって!)」
憂「出来ました! 召し上がってください!」
リンゴ(ボロ……)
澪「う、うん」
紬「いただくわね…」
律「いっただっきま~す!」
唯「いただきます」
シャクッ
澪「うん、美味しいな」
紬「ええ、とっても」
律「もう一個も~らいっ」
唯「……」
憂「お姉ちゃん…? 美味しくなかった?」
唯「美味しかったよ……憂…。よく頑張ったね 」
憂「…! うんっ!」
澪「(良かったな、来て」ニコニコ
紬「(ええ。本当に」ニコニコ
律「(ああ、良かった…」ニコニコ
唯「よしよし~」
憂「♪」
帰り道 バスの中───
澪「良かったな唯。憂ちゃん喜んでくれて」
唯「みんなのおかげだよ。ありがとう」
紬「どう致しまして」
律「お礼を言いたいのはこっちの方だよ。守りたいものがまた増えた。これでもっと死ねなくなったよ」
唯「りっちゃんらしいや」
そうか、忘れてた。私達は軍人で……いつ命を落とすかもわからないんだった。
バスの窓から外を見つめる。
そこにはいつもと変わらない海が広がっている。
そうだ……
変わって行くのはいつも……私達だけだ。
それからだった。私達の日常が崩れて行ったのは…。
戦況が大きく変わったのだ。あちらが痺れを切らしこちら側の最重要拠点の一つに特攻、これを見事落としそこに兵力を集め更に進軍を開始。
こちら側が圧倒的に不利になってしまったのだ。
ブーーーーーーーーーウウウウウウウウウウ
《敵襲! 敵襲! 》
律「またかよっ! 今日で何回目だぁ?!」
澪「仕方ないよ…重要拠点が落とされたんだ…敵も奪い返される前に辺りを叩こうって必死さ」
紬「近いうちに奪還作戦があるみたいだし…不安だわ」
唯「行こう、今は私達に出来ることをやろう」
律「そうだな…」
澪「うん」
紬「ええ」
戦闘終了後、滑走路───
唯「ふぅ…」
雨衣「お疲れ様でした唯さん」
唯「あ、雨衣ちゃんお疲れ~」
雨衣「最近はスクランブルばっかりで大変ですね…」
唯「整備に比べたらまだマシだよ…。ほとんど寝れないって話でしょ?」
雨衣「えぇ…まあ。でもこの基地とみんなのためですし弱音なんて吐いてられませんよ!」
唯「…そっか! 雨衣ちゃんは私の妹に似てるね」
雨衣「唯さん妹いらっしゃるんですか?」
唯「うん。雨衣ちゃんみたいに一生懸命を当たり前にやる子なんだぁ」
雨衣「唯さんの妹さん…いつか会ってみたいです!」
唯「うんっ! 今度休みが合ったら一緒に行こう!」
雨衣「是非!」
───宿舎
唯「あっ、ムギちゃん。洗濯物?」
紬「そうよ~。次いつ干せるかわからないしね。ふっふふ~ん♪」
唯「ムギちゃんって洗濯好きなの?」
紬「洗濯だけじゃないわ! 掃除も大好きよ!」
唯「へぇ~!」
紬「私家が貧乏で…両親もすぐに亡くしたからずっと一人で家事なんかをしてたの」
唯「そうだったんだ…」
紬「いつか、いつかだけどね…! 凄い大金持ちになって…そしたらそのお金を世界の平和の為に使いたいなって思ってるの」
唯「ムギちゃんは優しいね」
紬「…優しい…か」
唯「?」
紬「こんな汚れた手でも…優しいって言ってくれるのね。唯ちゃんは」
唯「うん。優しいよ、ムギちゃんは。誰がなんと言おうとね!」
紬「ありがとう、唯ちゃん」
私が第三十二航空部隊に入ってから丁度一年が過ぎた。前とは打って変わり激戦区となってしまったこの基地だけど、みんな何とか生き残っている。
これも和ちゃんの指導の賜物だろうとみんな改めて感謝していた。
そんな頃───
梓「中野梓ですっ! 一等兵空尉です! よろしくお願いしますですっ!」
律「いよいよ私達にも後輩が出来たか…長かったな」←上等兵
澪「唯は階級同じだったからな」←上等兵
紬「後輩…いい響きね~」←上等兵
唯「梓……だからあずにゃんだね!」←兵長
和「そこ、私語は謹んで」←中佐
律「おいおかしいだろ! 同じ一階級でもレベルが違うぞ!」
澪「仕方ない…仕方ないんだ律っ! これが現実なんだ。受け止めよう」
和「?」
梓「あ、あずにゃんじゃありません!梓です!」
唯「あずにゃんがいいよ~」
澪「そっちの方がいいな」
紬「可愛いわぁ」
律「あ~ずにゃん」
和「あなた達は本当に…最初の敬意はどこへ消えたのかしら。私じゃなければ銃殺よ銃殺!」
律「でたーッ! 真鍋少佐のレパートリーNo.38「銃殺よ銃殺!」」
和「」ビキッ
澪「律…そろそろ真面目に、な?」ガクブル
律「そ、そだな…」ブルブル
和「中野一等兵は模擬戦で全国トップクラスの実力者よ。あなた達が教えられることもあると思うわ。分からないことがあったらこの人達に聞いてね」
和「以上、解散」
律「模擬戦で全国トップクラスだってよ。どれだけ凄いか楽しみだな~」
梓「むっ! 何なら今からでもやりますか? 模擬戦」
律「この基地のエースとやろうなんて100年早いよあ~ずにゃん」
梓「知ってますよ。禿鷹の律でしょ? あなたが撃墜数が多いのは澪さんの援護のおかげですよ。一人じゃその1/10も落とせてませんね」
律「ぬなっ!? 禿鷹だとぉぉぉ!?」
澪「梓……なんていい子なんだ」ポロポロ
唯「澪ちゃんが泣いてる!?」
紬「そこまでそこまで。どっち道模擬戦は許可なくやれないんだから。またの機会にしましょ。それより宿舎でお茶にしましょう!」
唯澪律「は~い」
梓「お茶…?」
宿舎───
ズズズ……
唯「ムギちゃんの入れてくれたお茶は美味いっ」
律「全くだな!」
澪「心が休まるよ」
紬「まだまだあるからおかわりする人は言ってね」
三人「はーい」
梓「なんですかこれは」ワナワナ
律「なにって…」
澪「お茶だけど…」
梓「お茶だけど…じゃないです! 由緒ある航空部隊の宿舎で呑気にお茶なんて聞いたことありません!」
唯「聞いたことないって言われても…ねぇ?」
紬「梓ちゃんもど~ぞ」
梓「いりませんっ!」
梓「この事は上官に報告させていただきますから!」
唯「上官ってー?」
梓「真鍋中佐ですっ!」
律「あぁ、それなら待ってた方が早いぞ」
梓「は?」
澪「そろそろかな」
梓「何を言って…」
和「ムギ、お茶ある?」
紬「はい、和ちゃん」
和「ありがとう。丁度ここ本部と宿舎の合間にあるのよね~助かるわ」
梓「な、な、な、何和んでるんですかあなたはっ!」
和「あら? 梓ちゃんも飲む?」
梓「あ、はい…いただきま…じゃなくて! 敵が来たらどうするんですか!!」
律「おっ! 梓が上官に意見してるぞ! 銃殺だ銃殺だ!」
和「そんな簡単にならないわよ」
和「中野梓一等兵」
梓「は、はいっ」シャキンッ
和「戦うためには適度な休息も必要よ。いつ敵が来るかわからないと気を張ってばかりいたら勝てるものも勝てないわ」
梓「しかし…」
和「ここはかなりの激戦区だけどずっと持ちこたえて来てるわ。先輩達を信じなさい。いいわね?」
梓「…それは命令ですか?」
和「ふふ、ただのお願いよ」
梓「……」
紬「はい♪ 梓ちゃんの分」
梓「……いただきます」ズズズ……
梓「美味しいです……///」
唯澪律「(飼い慣らした~っ!」
あずにゃんを加えて新たに5人となったメンバーですが、それを嘲笑うかのように戦いは降りかかって来ました。
毎日の様に出撃し、帰れるかも分からない基地を眺め、海を眺め…。
私達は戦いました。
しかし次第にイライラは溜まり…
律「梓っ! 何で撃たなかった!? そのせいでみんなが危険にさらされたんだぞ!」
澪「もうよせ律…実戦経験は少ないんだから…いきなりは無理だよ」
梓「っ!」タタタッ
澪「梓っ!」
律「ほっとけよ! いつも口だけは達者でいざという時使えないんじゃここには置けないよ」
澪「律……」
唯「……」
───
梓「…ここでトリガー!」
梓「……」
梓「ここで撃つです!」
唯「な~にやってるの、あ~ずにゃん」ダキッ
梓「っ! ゆ、唯先輩驚かさないでくださいよ!」
唯「ごめんごめん、で、何してるの?」
梓「トリガーを弾く練習…って言ったら笑いますか?」
唯「笑わないよ…どうして?」
梓「…撃てなかったんです。いくら背後をとっても…人が乗ってると思うと」
唯「…そっか」
梓「模擬戦なら上手く行くのに…」
唯「模擬戦は実弾じゃないからねぇ」
梓「うぐっ…」
澪「唯に先越されちゃったな」
唯「澪ちゃん」
梓「澪先輩…」
澪「梓、人…撃つの怖いか?」
梓「はい…。自分がそうしたことでその人の命が終わってしまうと思うと…堪らなく怖いです」
澪「そっか…」
梓「澪先輩は怖くないんですか?」
澪「すご~~~い怖いよ」
梓「えぇっ!?」
唯「澪ちゃん怖がりだもんね」
梓「あの澪先輩が…?」
澪「だから律の援護が多いって言うのもあるんだ。でも勿論私もいっぱい人を殺してきた。あの撃墜マーク一つ一つが私が地獄へ行くカウントダウンだと思ってる」
唯「澪ちゃん…」
梓「それならっ」
澪「やめたらいいって?」
梓「…はい」
澪「出来るならやめたい、けど…私の知らないところで大事な人達を死なせたくない。律や唯やムギ、和に整備班の人に梓だって。みんなみんな守りたいんだ。だから怖がってなんていられないよ」
梓「みんなを…守るために」
澪「忘れるな、梓。操縦席の窓の向こう側の景色は、みんなが見てるんだ。自分だけじゃない」
梓「同じ窓から見てる…」
澪「そうだ。だから怖がるな。みんながいる」
唯「私もいるよあずにゃん」むちゅちゅ~
梓「みんなが…見てる」
唯「あずにゃん手! 手が私の鼻に食いこんでるよ!」
…
律「……澪達に先越されちまったな…」
紬「昔の澪ちゃんそっくりね、梓ちゃん」
律「ああ。そうだな…。ってMUGIいいい!?」
紬「静かにしないとバレちゃうわよ。りっちゃんは本当素直じゃないわね」
律「うるさいやい!」
紬「…おかしいわよね。梓ちゃんの気持ちが本当は正しいのに…」
律「世界が変われば人も常識も変わって行くさ…何もかも変わらずにはいられない」
紬「本当にそうなのかしら…」
律「さて、宿舎に戻って飯でも準備しますか」
紬「素直に梓ちゃんの為にって言えばいいのに」
律「うるさ~い!」
その日から私達は更に結束を固め戦争と言う名の畏怖に立ち向かった。
だけど…それの前には私達は余りにも無力で、また、弱かった。
そして、20XX年のあの日───
雨衣「唯さ~ん! 新しいパーツ届いたからつけときました! これでもっと動きやすいと思います!」
唯「ありがとう! いつも言わなくても私好みの整備してくれるからほんと助かるよぉ」
雨衣「いえいえ、それがお仕事ですから!」
唯「そうだ! 今度の休暇やっと取れたから私の妹の所に行かない? 憂もきっと喜ぶよぉ」
雨衣「はいっ! 是非! 約束ですっ!」
唯「うんっ」
───
唯「一番機から各機へ。敵、撤退を確認。深追いは禁物。今から基地に戻ります。オーバー」
律『三番機了解。しっかし楽な仕事だったな~。結局偵察の戦闘機も逃げてったし』
澪『二番機了解。確かにな。あっさり逃げたっていうか』
紬『四番機了解。不気味ね…早く戻りましょう』
梓『五番機了…待ってください! 基地より緊急です!』
唯「!?」
梓『基地、襲撃にあいたし、至急戻って防衛せよ…』
澪『基地が…!?』
律『ちっ、これは囮かよ!』
紬『早く戻りましょうっ!』
唯「みんな……憂っ」
戻った時、あったのは死体の山でした。
基地は既に半壊しており、何とか死守するも組員の1/3が死亡、更にその半分が重軽傷と散々な結果だった。
最終更新:2010年10月06日 20:44