文書で書けばこれぐらいで終わってしまうだろう。別にこの基地はそれほど重要な拠点でもなく、いくつもある基地の中でも真ん中よりちょっと下ぐらいの価値なのだ。
そりゃあ増援も来ませんよね。

ただ、私達にとっては…とってもとっても大事な基地なのでした。

ザアアアアアアア…

降りしきる雨の中、私達は夢中で穴を掘った。


ザッ…ザッ…ザクッ…
ザッ…ザッ…ザッ…

みんな泣いているのか雨のせいなのかわからない顔で黙々と埋葬をしている。
言葉に出さなくてもわかる…みんながどれだけみんなを思っていたのか。

そして、私も

唯「守ってあげられなくてごめんね…。一緒に憂の所に行くって約束したのに…」

雨衣「」

唯「ごめんね゛……」


冷たい土の中にゆっくりと沈める。

唯「雨衣ちゃんならきっと天国に行けるから…そしたら内の憂をよろしくね。私は…行けそうにないから」

少しづつ少しづつ土を被せて行く。

唯「さよなら…もう一人のうい…」

掘った土の中に雨が溜まり雨衣の体を沈めて行く…まるで雨の衣を纏っているかの様な…そんな姿だった。

埋葬が終わった後、私達にはもう……笑顔はなかった。



翌日───

和「まさかこんな辺境の基地にあれだけの戦力を出してくるとはね…。上も予想外だったようね」

澪「…」

和「昨日は埋葬ご苦労様。遺族も喜んでいたわ…。不謹慎かもしれないけど、みんな無事でいてくれて良かったわ」

梓「真鍋中佐は大丈夫何ですか?…その傷」

和「大丈夫よ。腕が折れたぐらいで休んでいられないわ。死んで行った彼らの為にもね」

唯「……」

和「上から命令が出たわ。こちらからも打って出ます。作戦時刻は明日明朝、ヒトマルマル時。作戦内容は追って通達する! 以上!解散!」


宿舎───

澪「……」

律「……」

紬「……」

梓「……」

唯「……」

誰も喋らない。もう、きっと、壊れてしまったんだ。私達は。
喋る為の部品がなくなったんじゃないかってぐらい押し黙っていた。

唯「(でもこれで…いいのだろうか? もしかしたら明日誰かが欠けてしまうかもしれないのに…こんなので…)」

唯「(嫌だな…そんなの。そんなことになったら私はきっとまた初めの頃に戻っちゃう。今度は…みんなの命を抱いて。私が死んだら…みんなが私の命を抱いて生きなくちゃいけない。悲しい顔をして…。そんなのやだな)」

唯「ねぇ、みんな。話そうよ」

紬「唯ちゃん…?」

唯「明日が最後になるかもしれないんだよ? このメンバーでいられるのも…もしかしたら」

律「そんなことにはさせないっ! 絶対に!」

梓「律先輩…」

唯「なら尚更話そうよ。もっともっとみんなで楽しい思い出を残そ?」

澪「…唯の言う通りだな。ありきたりだけど…死んでいった人達はこんな私達を見たくないだろうから」

紬「斎藤、あっ、整備班の人なんだけどね。いつも笑ってるあなたが素敵です。なんて言ってくれて…だから…私は笑っていたい。こんな時でも」

梓「いい人だったんですね…」

紬「結局よくわからない人だったわ…けど、大好きよ。彼のこと。もうちょっと早くに言えば良かったかしら…ね」

澪「…私も、特別仲が良かったわけじゃないけど…いつもキッチリ整備してくれて…彼らなしじゃここまで戦えなかったよ」

梓「(私の整備の人…は生きてるから話に入りずらいな…)」

律「私の整備の人もさ、いいやつだった。みんな家族みたいなもんだったんだよな…」

唯「うん…。みんな大切な人を亡くしたって気持ちは同じだよ」

澪「…なぁ、歌、歌わないか?」

唯「歌?」

澪「趣味でたまに弾いたりするんだけどさ」

梓「ベース…ですか?」

澪「そうそう」

律「実はみおちゅわんこう見えて詩人なんだよな~」

澪「う、うるさいっ」

紬「初めて知ったわ! 聴かせて聴かせて」

澪「う、うん…恥ずかしいな」


澪「ふぅ…」

澪「君を見てると~いつもハートドキドキ」

梓「プッ」

律「こら梓~。ワンフレーズ目で笑うやつがあるか。もうちょっと耐えろよ」

梓「すみません澪先輩! ちょっとギャップがあるな~と思って」

澪「悪かったな! だから嫌なのに…」

梓「すみません。もう笑ったりしませんから続けてください!」

澪「でもな~…」

唯「澪ちゃんの歌ききた~い」
紬「私も!」

澪「しょうがないなぁ」

唯&紬「わ~い」

澪「では気を取り直して。おほんっ」

澪「君を見てると~いつもハートドキドキ」

澪「揺れる想いはジェット機みたいにぶ~わっぶわっ」

澪「い~つも頑張る」
唯「い~つも頑張る」

澪「(ふふ)君の横顔」
唯「(えへへ)君の横顔」

澪「ずっと見てても~気づかないよね」

みんなの手拍子も入り出す。

澪「夢の中なら」
唯「夢の中なら~」

澪「二人の距離~縮められるのにな~」

澪「ああカミサマお願い二人だけの、ドリームタイムくだ~さい」

澪「お気に入りのバック~パック抱いて~え~今夜もおやすみ」

澪「ふわふわタイム」
唯「ふわふわタイム」

紬「ふわふわタイム♪」
梓「ふわふわタイム」
律「タタンタタンタァーンっと」

澪「ど、どうかな?」

唯「凄い良かったよ澪ちゃん!」

澪「本当に?!」

梓「はいっ! ジェット機のとこなんて特に!」

澪「だろ? ジェットエンジンの音は病み付きになるよな!」

律「やっぱりそこなんだ…」

律「はは…」
紬「ふふっ」
澪「ふふ」
梓「ははっ」
唯「あははっ。私達らしいね」

律「ほんとそうだよな」
梓「ですね!」
紬「ええ」
澪「そうだな」

唯「みんな、明日は必ず一人も欠かずに帰ってこよう。この海が見える基地は私達が守るんだ」

律「おっしゃあっ! 円陣でも組むか!?」

唯「いいねいいね!」

澪「やろう!」

梓「はいっ!」

紬「円陣なんて初めてね~」

律「よし、できたな。唯、お前が頼む」

唯「私が?」

律「何だかんだ生きて来られたのも唯のおかげたしな。みんなも依存はないだろ?」

一同に首を縦にふる。

唯「え~では…」

唯「みんな、必ず生き残って。みんなの仇を取る前に自分の命がなくなったら意味がないから」

唯「りっちゃん」
律「背中は任せとけ! 誰も死なせやしないよ」
唯「頼りにしてるね」

唯「ムギちゃん」
紬「側面は任せて! きっと守ってみせるわ」
唯「私もムギちゃんを守るから」

唯「澪ちゃん」
澪「もう片翼は任せてくれ。決して折らせはしない…私達の翼を」
唯「うんっ!」

唯「最後はあずにゃん」
梓「私がいる限り後ろはとらせませんから! 安心して戦ってください!」
唯「背中は任せたよ、仔猫ちゃん!」


唯「桜ヶ丘第三十二航空部隊いくぞ~」
澪「お~っ!」
律「おぅっ!」
紬「お~」
梓「お~ですっ!」

律「って語呂合わなすぎ~」

あははははは

私達はまた笑い合えた。
失った人達はもう戻っては来ないけれど、いつまでも窓に映る悲しい景色に嘆いていられない。

前に進むんだ、何があっても。

この時私達は、希望と言う光を見ていたのかもしれない。

勿論、同じ窓から…。

そして、決戦の時───

整備員「どうですか?」

唯「(足回りがダルつく…これじゃいつもより旋回しにくそう…でも時間もないし腕でカバーするしかない)うん、いけそう(もし…雨衣なら…ううん、やめよう。そんなこと考えるのは)」

律「(絶対敵を叩き潰してみんなを連れて帰る…私がみんなを守るんだ)」

澪「(怖がるな…いつも通り、いつも通り…)」

紬「(斎藤…)」

梓「うっ…整備は完璧です…」

整備員「あずにゃんのことならなんでもお見通しにゃん! あずにゃんは体が小さいから全体的に配置を変えておいたにゃん! 丸一日かかったにゃん!あずにゃんにゃん!」

梓「ど、どうも…」

和「作戦はさっき伝えた通りよ! あなた達の任務はあの爆撃機の護衛。敵の重要拠点を爆撃するまで守りきるのよ! いいわね!?」

唯「了解。」
澪「了解した」
律「ラジャー」
紬「了解しました」
梓「了解ですっ」

和「唯。一つだけ約束、いいかしら?」

唯「ん? なぁに和ちゃん?」

和「軍規なんてどうでもいい…危なくなったら帰って来るのよ。約束して」

唯「そんなことしたらいくら和ちゃんが偉くても銃殺だよ~。大丈夫、みんな一緒で帰ってくるから。必ず」

和「そう…。気をつけてね、唯」

唯「うん…。行ってきます」

和「この作戦にこの基地の全てがかかってるわ! 各員奮闘せよ!」

唯「…」一番機

澪「…」二番機

律「…」三番機

紬「…」四番機

梓「…」五番機

和「……発進」

五人「了解!」


プェ────
ズシャアアアアアッ───
ドゥゥゥゥン────
ズオォォォォォゥゥゥゥ────ブゥゥゥゥゥン────


和「行ってらっしゃい…桜ヶ丘航空部隊」

和「私達の誇りに、敬礼っ!」

ビシッ──────

唯「暗いね~」

澪『まあ深夜の一時だからな。暗いさ』

唯「海も真っ暗だよ~何も見えない」

律『そういや憂ちゃんにこのこと言ったのか?』

唯「りっちゃんがそんなこと言うなんて珍しいね」

律『まあな。これまでの任務とは毛色が違うし…。で、どうなんだ?』

唯「憂にはちゃんと電報出したよ! 目が見えなくても読めるやつ」

紬『なんて送ったの?』

唯「それはこれからのお楽しみ~」

律『?』

梓『唯先輩、用意出来ました』

澪『用意? なんのだ?』

唯「よ~しあずにゃんいくよ~!」


桜ヶ丘病院───

憂「お姉ちゃん…窓を開けて待っててって言ってたけど…なんだろう」

ヒュ~~~ン ドッ
ヒュ~~ン ドッ
ヒュ~~~ン ドッ
ヒュ~ン ドッ
ヒュ~~ン ドッ

憂「うゎぁ~…花火かな? ううん…微妙に音をずらしてた。あれは…もしかして」

憂「ドッドッドッドッドッ」

憂「ドッドドドドッ」

憂「行ってきますッ!」

憂「かな? 多分そうだ!」

窓からいくら見ても真っ暗な世界を見つめながら

憂「行ってらっしゃい、お姉ちゃん」

そう、呟いた。

律『閃光弾とは考えたな唯! でも憂ちゃんは目が見えないんだぜ? わかるのか?』

唯「音の方が本命だからね~! 私には良くわからないけどあれで行ってきますッ! らしいよ! ね~あずにゃん」

梓『うぇっ!? は、はいっ! そうです…多分。(言えない…実はあずにゃんにゃん!だったなんて…。なんて整備するのよあの人は!)』

澪『そんなことより閃光弾なんて目立つもの使って後で怒られるぞ? いくら味方陣内とは言え』

唯「和ちゃんから許可はもらってるからだいじょーV」

紬『和ちゃん粋ね~』

唯「さて、ここからは真面目に行くよみんな! 敵陣地まで長い空旅になりそう。気を引き締めて行こうっ」

律『了解!』

澪『了解。索敵範囲を広げる為に少し散開を要求』

唯「OK、認めるよ」

紬『四番機了解。少しでも怪しい影が映ったら報告するわね』

梓『五番機了解です! 念のために護衛機の後ろについてます!』

律『三番機了解。私は今日は前を行くよ。唯、上と下からも注意しろよ。散開』

唯「わかってるよ! 爆撃機のパイロットへ。私達に離れないように」

パイロット『…了解した。』


真夜中を切り裂き、ひたすら飛んだ。
その先には朝日があると信じて…。
でもそれは…。


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最終更新:2010年10月06日 20:45