唯「目標の敵基地まで残り500」

律『そろそろ索敵にかかる頃か、奴ら飛び起きてるだろうな今頃』

澪『不謹慎だぞ律』

律『でも仕方ないさ。撃たなきゃ撃たれるんだ。撃つしかない』

紬『それが戦争だもんね…』

梓『……!!!? 前方200に熱源! これは…10…いや、20機はいますっ!』

澪『なんだと!? 20って…そんな急に来られるわけないだろう! まだ索敵に引っかかってるかどうかってレベルなのに!』

律『待ち伏せか…』

紬『まさか…』

澪『考えたくはないけど…情報が…』

唯「落ち着いてみんな! 落とせない数じゃないよ」

梓『でもっ!』

唯「あずにゃんは爆撃機の護衛! 絶対被弾させないで!」

梓「りょ、了解です!」

唯「りっちゃん! 澪ちゃん! 出来るだけ数を減らして来て。出来る?」

律『誰に行ってんだよ! 三番機了解!』

澪『やってみるよ…。二番機了解!』

唯「ムギちゃんは二人が撃ち逃したやつらを狙って! 奴らはきっと爆撃機を狙ってくる筈だから! 私はこれ以上数を出させない為に滑走路を潰してくる! 私が帰るまでなんとか持ちこたえて!」

紬『四番機了解! 気をつけてね唯ちゃん!』

20機もの戦闘機を縫うように夢中で駆け抜けた。通り越しに1.2機落とせれたのはラッキーだ。
まさか単機で突っ込んで来るとはあっちも思わなかったんだろう。

唯「誰も追って来ない…?」

妙だ、普通なら2.3機は引き付けられるはずなんだけど…。
前の基地にそれほどの数がスタンバイ出来ているのか。
まさか、まさか考えたくはないけど…

唯「やっぱり澪ちゃんが言ってた通り情報が漏れてたんじゃ…」

そうなれば…行った先には多分。ううん。和ちゃんを信じよう。
私達の命を救い続けて来てくれた上官を。

唯「みんな…がんばって!!!」

ビービービー

けたたましく鳴るアラーム音の中に私は浸かっていた。

律「危ないことぐらいわかってんだよ…機械に言われなくてもなァ!」

踊るような旋回でミサイルを次々避けて行く。
ミサイルを避けるのなんて私に言わせればカンだ。それにいくら追尾機能があるといえそのスピード故に縦には強いが横には弱い。

律「いけっ!」

逆に後ろを取ってやった戦闘機にミサイルをぶちこむ。…撃墜!

律「後いくつだよ…」

どこを見渡しても敵ばかり。
澪達無事かな…。

こんな時でも海は綺麗だな…。

澪「くっ…」

目がついていかない…!

今こうして生きてるだけでも奇跡だ。

唯のやつ…田舎の上等兵が20機相手に勝てるわけないだろう。

なのにあんな簡単に出来る?なん聞いてきてさ…

澪「やらないわけにはいかないよなっ!」

ズオッ!
ズシャッ!

澪「今日だけは援護には回らない! 落としていくぞ!」

紬「来たわね…3機」

やれるかしら…私に。いえ、やるしかないわ。ここまで来て死ねない!

みんなと出会えて、これからなんだもの!

紬「1.2番いきますっ」

ズシャッ!ズシャッ!

紬「ここは通さないっ! 命に代えても!」


─────

和「どういうことなんですか!? わざと敵に傍受させるなんて! 彼女達を殺すおつもりですか大佐は!」

大佐「仕方ないのだよ。我々はただ上にあそこの基地の注意をひけとしか言われてないんだ」

和「それでもわざわざ傍受されてるのがわかって送り出すなんて…!」

大佐「確定情報を優先するだろう? あそこの連中が出てこないってだけでかなり有利らしいんだ。君も軍人ならわかれ、真鍋中佐」

和「私は…私は真鍋和よ!!!」

和「聞こえる!? 唯! みんな!」

────

唯「あ、ああ……」

私は何を見ているのだろう。
まるで蟻のようにいる航空部隊、対空砲、オマケに空母まで出てきている。

さっきやそっとで用意出来る数じゃないのは明白だった。

唯「死んじゃうの…私達」

その時だった。

ガガガ、

和『みんな!聞こえる?! 私よ! 今すぐ撤退して! その行動自体がただ相手を引き付ける為のデコイだったのよ! 爆撃は諦めて撤退よ! いいわね!』

唯「撤退…」

そうか、帰っていいんだ。

私達は、あそこへ

大佐『何を言ってる真鍋中佐! 気でも狂ったか!』

和『おかしいのはあなた達の方よ! 貴重な戦力をわざわざ無駄死にさせ』

バンァッ────


唯「えっ……」

大佐『撤退は認められない。繰り返す、撤退は認められない。少しでも敵の気をひくんだ。』

唯「なにいってんの…無理に決まってるじゃん…? 何機いると思ってんだよ!!!」

大佐『君達には二階級特進を約束しよう。では、健闘を祈る』

唯「おいっ!!! 待ってよ!!! 和ちゃんをどうした!!!! 応答しろ!!! おいっ!!!!」

何……これ…本当に現実なの?

唯「戻らなきゃ…」

みんなの所へ

唯「戻らなきゃ…」

無意識に回頭、来た道を戻る。

当然後ろに数十機の戦闘機も携えて。

それでも戻りたかった。
みんなとまた会いたかった。

唯「みんな……」

世界はなんて、真っ暗なんだろうか。

────

律「聞いたか?」

澪『…ああ』

紬『うん』

律「短い人生だったな…」

澪『投降したら見逃してくれないかな…?』

律「爆弾持って投降なんて出来るかよ。間違いなく撃たれるさ」

澪『死にたくないよ…死にたくないよぉっ! 律ぅ!!!』

律「私だって…死にたくないさ。けど…」

紬『諦めるしか…ないのかしら』

律「……」

律「最後にお前達を逃がすことぐらいなら…出来るかもしれない」

澪『えっ』

律「私が命いっぱい閃光弾を焚くから、お前達はその間に味方の基地のまで飛べ」

澪『りつ!?』

紬『りっちゃん!?』

律「今閃光弾を積んでるのは私だけだ。いけよ、二人とも。梓にも伝えといてくれ。ありがとうってな」

澪『律…』

律「先に二階級特進を使わせてもらう!命令だ! 秋山澪一等兵! 琴吹紬一等兵! ただちにこの空域を離脱せよ!」

澪『……わかった』

紬『わかったわ』

澪『けど、』紬『けど』

澪『やるならみんな一緒でだ』

紬『やるならみんな一緒でよ』

律「……お前らまで二階級特進使うってのか? バーカ」

梓「……使い捨てですか…私達は。わかってましたけど…ね。なんとなく」

梓「爆撃機のパイロットさん。その中身、何もないんでしょ?」

パイロット『はい…』

梓「投降…って言っても今更無理ですよね。結構落としてますし。これでもう軍人としての責務は果たしました。後は…死ぬだけです」

梓「ありがとう、先輩達。こんな世界でも…楽しかったです」

ビービービー

梓「さようなら」

ゴオオオオオオオオ…

律『梓ッ!』
澪『梓!』
紬『梓ちゃんっ!』

血でもう赤か青か見えないや…。
落ちてる…のかな? 私。ってことは下は海か…
ふふ、こんな時なのに……凄く綺麗に見えるな。
なんでだろ……わかんないや

律「クッソォ!!!」

澪『律!!!』

紬『私に任せて澪ちゃん!!!』

ミサイルの残弾を全て発射、三番機の周りにいる敵を撃墜しようと試みるも…

澪『ムギ!!! 後ろッ!』

紬「えっ…」

ババババババ

操縦席に雨のように弾丸が降り注ぐ。
後ろから回り込まれ撃たれたのだろう。

紬「(そう…だめだったのね…)」

墜落する間際に見た最後の景色

紬「梓ちゃんも見たのかしら……海」ニコ

ズシャッアアアアア

澪『ムギイイイイッ』

律「唯はまだか!?」

澪『さっきから通信にも出ないし…きっともう』

律「そっか…」

澪『律』

律「ん?」

澪『最後だから言っとくね。大好きだった』

律「過去形かよ。私も。会えて良かった」

澪『次また生まれて来るときは…平和な世界がいいな。自由に音楽とかもやれてさ』

律「同感だな。そしたら澪がベースで私がドラム? はは、柄じゃないな」

澪『ううん。きっと…似合ってると思うよ。律なら』

律「そっか…。そうだといいな。澪」

澪『ん?』

律「またいつか」

澪『うん。またな、律』

───────

──────

唯「……ん」

唯「ここは?」

辺りを見渡しても何もない。無人島か何かだろうか。

唯「そっか…私撃墜されて…」

あれだけの数に追われて落とされないわけもないか…でも、

唯「生きてる…」

みんなはどうしただろう?
私みたいに流れ着いたりしてないのかな?

ここでしばらく待ってみればわかるか…。

どのみち脱出手段もないし、ここで待つしかない。

唯「海か…。前に見たときより嫌な気分になるのは何でだろう」

同じ窓から見て海なのに

唯「周りに誰もいないだけでこんなにも寂しいなんて…」

同じ窓から見ていても、それは同じじゃない。
私はそんなことをふと思った。

唯「同じ窓から見てた海」

みんなも見たのかな……同じ窓から。

─────

唯「あ~ずにゃん! どうしたの? 海なんてぼんやり見てさ」

梓「あっ、唯先輩。なんて言うか…なんだか悲しいなって」

唯「悲しい?」

梓「はい。海を見てるとそんな気になってくるんです」

唯「…そっかぁ。実は私もなんだ」

梓「唯先輩もですか?」

唯「うん。何かを忘れてきたみたいな…そんな感じ」

唯「そんなことよりみんなで写真とろうよ! みんな待ってるよ! あずにゃん!」

梓「ちょ、唯先輩そんな走ったら……」

律「遅いぞあずさ~!」

澪「みんな待ってたんだぞ」

紬「早く撮りましょう」

唯「じゃあ行くよ~?」

一眼レフから覗くみんなと海。

ああ、これだ。
と何故か想いを馳せた。

私はただその思いがどこから来たのかわからずタイマーをセットした写真に写るべく奮走する。

「ハイ、チーズ!」

カシャッ

同じ窓から見てた海

みんなで揃って撮った写真。

きっとこれが答えなんだ。

私は胸の中で、そう誰かに呟いた。

律「なんかカチューシャが流れついてるしっ」

唯「りっちゃんつけてみなよぅ」

律「駄目だな! センスが悪いこれは!」

おしまい



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最終更新:2010年10月06日 20:45