紬「りっちゃん…早く…」

律「分かってるよ」

焦らすようにゆっくりと彼女の指が私の中に入ってくる

紬「んっ…」ピクッ

最初は一本

紬「あっ…はぁっ…!」

律「………」ズププ

確かめるように二本

入れてもすぐには動かしてくれない

焦らすように…焦らすように…中指だけを上にゆっくりと擦り付けてくる

紬「っ…」

その意地悪な手つきにいつも私の方が腰を動かしたくなってしまう

私のそんな衝動はあなたには全てお見通しでくすり、と笑われる

それがなんだか悔しくて私は必死で湧き上がる感情を我慢する

すると彼女はご褒美とでもいいたげに二本の指を動かしてくれるの

愛撫で既にぐしょぐしょになっているそこからはグチュグチュといやらしい水音が流れてきて、その音が私を更に興奮させる

さっきまでの焦らすような指使いが嘘のように荒々しく、だけど私の気持ちいいところを知り尽くしてるような指使いで私を絶頂まで導こうとする

私が達するところを彼女はいつもどこか冷めた目で見ていてその目が私を絶頂へ導く最後のポイントになる

紬「───!」ビクビクッ

体が振るえ、何も考えられなくて、私は少しの眠りに落ちた


紬「………ん」

律「おはよ」

紬「また寝ちゃってた?」

律「うん。でも五分ぐらいだよ」

紬「そっか」

律「気にしなくていいよ。澪なんかそのまま朝まで起きないこともあるから」

紬「そうなんだ」クスッ



澪ちゃんはりっちゃんの恋人

私は、りっちゃんの友達


りっちゃんのあのテクニックは澪ちゃんから…ううん

澪ちゃんと、二人で学んできたもの

澪ちゃんに触れた手で私の髪を撫で、服を脱がし、愛撫する

全部、澪ちゃんからのお下がり

それでもいいの

だってそう望んだのは他ならぬ私だから

紬「りっちゃん…」スッ

まだ、私しかイってない

律「今日はいいよ」

紬「でも…」

律「いいからいいから」

紬「うん…」

こうして私だけで終わらせることが多い。それじゃあこの関係が成り立たないような気がして私はいつも申し訳なくなる

でも彼女が言うには「人にするだけでも気持ちよくなれるんだよ」だそうだ

実際澪ちゃんともそういうことがしばしばらしい

本当に彼女はそれで満足なのだろうか

でも私にはりっちゃんのその言葉を信じるしかない

だって私は澪ちゃんみたいにりっちゃんの全てを分かってあげることができないから

律「そろそろ出ようか」

紬「うん。ねぇ…やっぱりお金私が出すよ」

律「いやワリカンでいいよ」

紬「でも…」

澪ちゃんとのデート代でお金大変でしょ?

そう言いかけて口を紡ぐ

単なる嫌味にしか聞こえないだろうし、澪ちゃんとのデート代を優先するために私ともう会わないと言う選択肢を選ばれたら困るから

律「大丈夫だって。ここそんなに高いホテルじゃないし」

紬「…………」

律「ごめんな?いつもこんな汚いホテルで」

紬「ううん」

場所なんかどこでもいい。あなたといられれば

でもそれじゃダメなんだよね

私の家は常に誰かがいるから落ち着かないし、りっちゃんの家ならみんなが留守にすることもあるんだけど…絶対にダメ

りっちゃんと澪ちゃんは幼馴染。家も近い

だからわざわざ隣町の駅から離れたラブホテルでしか二人で会えない

これは彼女と私の約束の一つ

『りっちゃんの家では会わない』

だから私はこれを守らなくてはいけない


ホテルを出て駅まで二人で歩く

ここからは別々

電車は同じ路線だけど彼女は私より一本遅いのに乗って帰る

本当はホテルの中で別れたいのだろうけど、基本的に帰りは暗くなってることが多いので一人で帰らせるのを心配してくれているのだろう

だから優しい彼女は私をこうして駅まで送ってくれる

ホテルから少し離れたところからなら斎藤に迎えに来させればいいがそれはしない

少しでも彼女の優しさを独占していたいから


紬 自室

紬「ふぅ…」ぽふっ

洋服のままベットに倒れこむ

少し神経質なのか外に出た服でベットに横になるのが嫌で普段は絶対しないのに彼女とあぁいう風なことをした日だけは何故かしてしまう

彼女はもう家に着いただろうか

メールをしてみようか悩む…けどしない

今まで澪ちゃんに嘘をついて私に時間を使ってたのに今日はもうこれ以上私のために時間を使わせるわけにはいかない


ふわっ

紬「……」ドキッ

洋服から彼女の香水の匂いがした

ユニセックスの甘すぎない爽やかな香りの香水

澪ちゃんと、お揃いの香水

紬(いい匂い…)


でも


紬「大嫌い」

私は起き上がりお風呂場へ向かった



翌日 紬 自室

休みの日だというのに部屋でぼうっと時間を浪費している私

なにもする気が起きない

今日彼女は澪ちゃんとデート

『澪ちゃんといるときはメールしない』

この約束のために私はいつも澪ちゃんとのデートの日時を聞かされる

ううん。聞かされるなんて言い方は違う

だって私が言い出したことだもんね

今二人はなにをしているのかな

お買い物かな

それとも映画でも観てるのかな

りっちゃんはホラー映画が好きなんだよね

ううん。ホラー映画で怖がる澪ちゃんが好きなんだよね

あぁそっか

りっちゃん家でDVDでも観てるのかな

私にはない選択肢だから思いつかなかった

りっちゃんの好きなホラーか澪ちゃんの好きなメルヘンチックな映画を二人で観て過ごしてるのかな

きっと澪ちゃんはなんの違和感もなくりっちゃんの部屋に溶け込んでるんだよね

それでDVDが終わったらりっちゃんが優しく澪ちゃんの髪を撫でるの

それが合図かのように口付けて、舌を絡ませて、慣れた手つきでブラのホックを片手で外すんでしょ?

りっちゃんうまいもんね。ブラ外すの

それはりっちゃんが女の子だからじゃない

何度も何度も澪ちゃんのブラを外してきた証拠

焦らすような手つきも荒々しい指使いも全部澪ちゃんのと証

今日もまたその証を刻んでいくんだね

そんなことを考えながら私は一人、りっちゃんの指使いを思い出しながら下半身に手を伸ばしていた


彼女の指使いを真似して焦らすように焦らすようにゆっくりと指を入れて

二本入ったら中指で上を擦る

…気持ちいい

でも、違う

違うの

所詮真似なの

本物じゃないの

一気に指を動かす

りっちゃんとは全然別の手つき

荒々しいだけの手つき

こんなのでイけるわけもなく残ったのは満たされない性と虚しさだけ

引き抜いた二本の指を眺める




紬「……りっちゃんのじゃなきゃイけない」



放課後 軽音部

紬「こんにちはー」ガチャ

澪「ムギ」

紬「まだ澪ちゃんだけ?」

澪「うん。そっちは?」

紬「唯ちゃんが掃除当番でりっちゃんは生徒会に書類を出しに行ってるわ」

澪「そっか」

紬「お茶淹れるね」

澪「うん。お願い」

紬「どうぞ」カチャ

澪「ありがと」コクッ

澪「ん…おいしい」

紬「ふふっありがと」にこ

澪「……」ソワソワ

廊下から足音がする度にチラチラとドアの方を見る

そんなに彼女が待ち遠しい?

昨日も一緒にいたんでしょ?

小学生の時からずっと一緒にいたんでしょ?

紬「……りっちゃん早く来るといいね?」

そう言ってからかうように笑う

澪「うぇ!?べっべつに私そんなこと思ってないよ!」

ははっとわざとらしい笑いをしてバレバレのうそをつく澪ちゃん

紬「バレバレよ?」クスッ

澪「う……」かぁぁぁっ

顔を赤くして恥ずかしそうに俯いてしまった

…可愛い

紬「ふふふー」ツンツン

ほっぺをつんつんしてみる

指先でもわかるほど澪ちゃんの頬は熱かった

澪「うー…ムギ意地悪だ…」

紬「ごめんね。あんまりにも澪ちゃんが可愛いからいじめたくなっちゃった」

にこにこと悪気のなさそうな笑顔を見せる

実際悪気などないし可愛いと言うのも本当

澪ちゃんは本当に可愛い

彼女が好きになるのが分かる


澪「あっそっそういえばさ!」

わざとらしく話を変えようとする

紬「なぁに?」

でもそれに気づかないフリをして話に乗ってあげる

もうこれ以上いじめたくないの




──自分を、ね


澪「昨日DVDで少し前に話題になってた映画観たんだ」

紬「……そうなんだ」ニコッ

変わっていなかった

無意識だろうか

それとも他の話題がないくらい澪ちゃんの日々は彼女で満たされているのだろうか

澪「でね、予告と全然違っててさ途中で観るのやめちゃったんだよね」

やめてなにをしたの?

澪「それほどつまんなかったからさ、ムギももし観る機会あっても観ない方がいいよ!」

紬「うん、ありがとう」

笑顔で返事をする

澪ちゃんも話題変更に成功したのが嬉しいのかほっとした顔を浮かべた

紬「…それで誰と観たの?」キラキラ

答えが解ってる質問。聞きたくもない質問

でも前の私だったらこの流れが自然だったから

だからなるべく以前のままで居ようと自分一人で決めた約束を守るために必要な質問

澪「えっ……ひっ一人だよ…」

そう言って私から目を逸らす

紬「ふーん…」ジー

澪「……」ビクビク

純粋なのね

嘘がつけないのね

それでいいと思う

笑顔で嘘をつく人間なんて最低だもの

笑顔で嘘をつくなんてつらいもの

嘘なんて苦手でいい


澪「……り、律と…」

私の視線に耐えかねて白状した

嘘ついてくれればよかったのに

そうすれば少しは楽になれるのに

紬「やっぱりね」にこっ

澪「はは…ムギはなんでもお見通しだな」

それは違うわ

本当に知りたいことは全然解らないの

知りたくないことだけ解ってしまうの

紬「そうね。澪ちゃんがりっちゃん大好きって言うのもお見通しよ?」にこっ

澪「う……」カァァァッ

紬「好きでしょ?りっちゃん」

澪「…うん。好き」

恥ずかしがりながらもはっきりとした声で答えた

羨ましい

澪ちゃんだけなのよ?

そうやって声を大にしてりっちゃんが好きだと言えるのは

紬「りっちゃん優しいもんね」

澪「………うん」

まるで自分が褒められてるかのように、嬉しそうに、誇らしげに、目の前の人は笑った



その笑顔が、とても眩しかった


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最終更新:2010年10月07日 23:52