律「おーっす」ガチャ

澪ちゃんと私を見て一瞬顔を強張らせる彼女

そんな顔しなくても澪ちゃんに言ったりなんかしないわ

澪「遅いぞ」

律「ん…あぁごめん」

紬「お茶淹れるね」にこっ

律「うん」

澪「ちゃんと和に渡したのか?」

律「大丈夫だよー小学生じゃあるまいし心配すんなって」

澪「おい小学生に失礼だろ」

律「どういう意味だコラー!」

澪「ふふっ」


楽しそうな声が聞こえる

いつもは平気なのに今日はなんだか耳にまとわりつく

分かってる。昨日と一昨日のことが原因

彼女としたこと。澪ちゃんとのデート。

この二つが私をおかしくさせてる

連続は…きつい

お願い

誰か早く来て


梓「こんにちはー」ガチャ

私の願いが届いたのか可愛い後輩がやってきた

律「遅いぞー!」

梓「ごめんなさい今日日直で…」

澪「あぁいいよ気にしなくて」

律「えー!?ずるい!私には遅いって言ったのにー!」

澪「うるさい」

甘えるようにしてふざけるりっちゃん

ずるいわ本当に

でもりっちゃんはそんなこと思ってない

嬉しいのよね

梓「あっムギ先輩こんにちは。…手伝いましょうか?」

ちょこちょこと梓ちゃんがこっちにやってきてそう言った

紬「………」

梓「?あの…」

紬「いいこいいこ」ナデナデ

私の願いを叶えてくれた可愛い後輩の頭を撫でる

梓「にゃっ!?」

びっくりしてる。可愛い

紬「あずにゃーん」ぎゅむっ

唯ちゃんのマネをしてみる

…少し体格がりっちゃんと似てるかも

でも違うわ

りっちゃんのが頼りがいがあるというか…梓ちゃんのがやわらかい感じがする

梓「あああああのっ!」カァァァッ

目を回し、耳まで赤くしてる梓ちゃん

唯「ふへー…」

疲れた様子で入ってくる唯ちゃん

掃除当番お疲れ様

唯「あー!ムギちゃんがあずにゃんに抱きついてるー!」

紬「ごめんね唯ちゃんこういうことだから」ぎゅっ

梓「はわわわわ…」

唯「えー!ずるい!私もあずにゃんに抱きつく!」

紬「だーめ」ぎゅっ

唯「むー…あずにゃんの浮気者!」

梓「なに言ってんですか」

紬「梓ちゃんは私のがいいよね?」

梓「ムギ先輩までなに言ってんですか!」カァッ

唯「うぅ…私のときのが冷たい…」シュン…

梓「あっ…」

紬「唯ちゃんケーキ食べる?」

唯「食べるっ!」キラッ

澪「立ち直りはやっ」

紬「じゃあお茶淹れるからね」

唯「うんっ!」

紬「梓ちゃんも待っててくれていいわよ?ありがとね」

そう言って解放してあげる

梓「はい」

……ありがとね


紬「はいどーぞ」カチャ

唯・律「わーい!」

澪「ありがとう」

梓「いただきます」

唯「おいしい!おいしいよムギちゃん!」

紬「ふふっありがとう」ニコッ

今日は家からホールケーキを持ってきた

ホールケーキや羊羹など切らなくてはならないものはいつも少しだけ彼女のを大きくしてしまっていたのだけど…

あぁいう関係になってからは絶対にしなかった

澪ちゃんに少しの違和感も与えたらいけないから

だって私は澪ちゃんから奪いたいわけじゃないの

片想いでいいの

紬「…………」

さっきの澪ちゃんの笑顔が頭にこびりついていた



翌日 夕方 ホテル

紬「昨日部室に入ってきたときのりっちゃんの顔…」クスクス

律「うっうるさいな!」カァッ

紬「ふふっ」

律「…ふんっ」

拗ねたような顔をする

大丈夫。大丈夫よ

紬「……言ったでしょ?遊びだって」


律「…………」

紬「だからあんな顔しなくてもいいのよ。二人の仲が拗れるのを望んだりなんかしてないわ」

これは、本当

律「…そうだったな」

紬「えぇ」にこっ

紬「……ねぇ」

そっと太ももに手を置く

律「あぁ」

何が言いたいのか解ってくれた

そっと私の服を脱がし始める

乱暴な手つきは一切しない

それは

彼女が優しいからなのか

私にはぶつけるような性欲も激情もないからなのか

どっち、なんだろう

脱がしながら眺めるように私の体を見る

ひとつひとつあの人との違いを比べられているのだろうか

胸、肌、スタイル

どれか一つでも勝ってるものはあるかな

実は少し痩せたのよ

気づいてくれてる?

肌もボディクリーム塗って気を使っているのよ

下着だって毎回かぶらないように気をつけてる

この小さな努力は、あなたに届いてるかな

指が入ってくる

りっちゃんの指

この間自分のじゃイけなかったの

だからお願い

早くイかせて

お願い

紬「んんっ…はぁっ…!」

律「……………」

ぐちゅぐちゅと耳につく卑猥な音

荒々しく、だけど私のポイントをついてくる手つき

これ

これがほしかったの

りっちゃん…

りっちゃん…!

紬「あっ…!あっ…あぁっ…!!」ビクンビクンッ


目が覚めると、彼女の顔があった

律「おはよ」

紬「うん…」

頭がぼうっ…とする

律「大丈夫?」

紬「え…?」

律「いやなんかいつもと様子が違ったから…」

紬「うん…」ぎゅっ

律「……」なでなで

紬「……」ぎゅうう…



ふいに、昨日の澪ちゃんの顔が脳裏によぎった


紬「……!」ドキッ

律「……」なでなで

紬「……………」

紬「…ねぇ」

律「うん?」

紬「殺して…?」

律「え…?」

紬「…………」

律「ム……ギ…?」

紬「……ふふっ冗談」

律「な…なんだよびっくりしたなー!」

そう言って安心したかのように笑う

本当は冗談じゃないの

このままこうしてあなたに愛されてる錯覚をしながら死ねるならそれは私にとって、とても幸せなこと

でも許されないのよね

きっと私のそんな些細な願いすら澪ちゃんの許可がいる

ううん。許可なんてしないでしょうね

好きな人を犯罪者にしたくない…というのもあるけど…


嫉妬


他の女を殺すなんて許さないわ

それが女の本音


こうして二人きりでいる時ですら澪ちゃんは彼女の中にいる

私と彼女の間にいる

いくら彼女に抱きしめられても間に澪ちゃんがいるから私と彼女の距離は縮まらない

紬「…………」

律「ムギ…?」

心配そうに私を見つめる彼女

紬「ごめんなさい…今日はもう…」

律「あぁ…うん。帰ろう」

紬「うん…ごめんね?」

律「いいよ。気にしなくて」



紬 自室

紬「………」

ばふっとベットに倒れこむ

なにやってるんだろう

せっかく彼女と二人きりだったのに

殺して、なんて…びっくりしたかな

したよね

でも本音だよ?

澪ちゃんから奪って独り占めするよりも

錯覚しながら彼女に殺されるほうが私にとって幸せなの


ブーッブーッ

紬「………」

のそのそと鈍い動きでカバンの中で震えている携帯電話を取り出す

【田井中律】

紬「!」

ガバッと起き上がり急いで通話ボタンを押す


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最終更新:2010年10月07日 23:53