唯「その銃で私や澪ちゃんも殺しに来たの……?」フォン...
りっちゃん「違うんだ唯! 話を聞いてくれ! 」
話をしながらも声のした方から位置を確認するりっちゃん、だがしかし、
りっちゃん「(速い……走って出るスピードじゃない……ほんとに唯か……?)」
唯「聞くよ~話ならいくらでも。私達のりっちゃんになってくれたら……だけどね!」フォン.....
りっちゃん「(つまり聞く耳持たないってわけか……! 唯には悪いけど憂ちゃんの為にも無理矢理でも連れて帰る……!)」
フォン......
りっちゃん「そこかッ!」
シュンッ──────
フッ ガッ
麻酔弾が木に刺さり込む音を受けてりっちゃんは驚愕する。
りっちゃん「(間違いなく当てた筈なのに……)」
唯「私に向かって撃って来るなんて……りっちゃんも変わったんだね。澪ちゃんの言った通り…」
とうとう姿を見せた唯、その姿は昔の唯とはかけ離れていた。
緑色の長いコートに身を包み、目は眠そうに半分塞がっている。
足には何やら特別な靴の様な物を履いていて、地上から数センチ浮いている。
前腰辺りにダラりと唯の愛楽器、ギー太をぶら下げている。
りっちゃん「唯……お前」
唯「りっちゃん……。どうして? どうして私達を裏切ったの?? 同じけいおん部の仲間だと思ってたのに……ッ!」
りっちゃん「唯……。だからってお前達は楽器の代わりに武器を持つのか? それがお前らの答えなのか!!!」
唯「武器なんて……」
りっちゃん「とぼけるなよ……いつからギー太はそんな厳つくなったんだ?」
唯「……んふふ、カッコいいでしょ? ギー太もきっと喜んでるよぉ」
りっちゃん「あれだけ大切にしてたギー太だろ!? 世間に対する考えは変わっても……音楽に対する思いは変わってないと思ったのにぃッ!!唯っ!」
銃口を唯に向けるりっちゃん
唯「違うよぉりっちゃん~……銃声ってね……スゴぉい良い音がするんだよ!!!」
ジャラアアアアアアン
ギー太を掻き鳴らす唯
するとギー太のトップ(表板)がいくつか開き、そこから銃弾が飛び出した。
りっちゃん「なっ」
それをギリギリ木の影に入ってやり過ごす。
唯「ほらね……凄い綺麗……。 歌ってるみたい」
チュインッ
ヒュンッ
ビュンッ
色々な弾、威力の伝わりなのか出る銃声出る銃声がバラバラだ。
それがまるで演奏に唯は聞こえるのだろう。
りっちゃん「パトリオットギー太……とでも言っておこうか」
唯「それカッコいいっ!ギー太は今からパトリオットギー太だよっ!」
チュインチュインッ
ビュンッ
唯「あはは、喜んでる喜んでる」
りっちゃん「(お前がかき鳴らしてるだけだろっ!)」
りっちゃん「(一体どんな改造したのか知らないけどすっかりおかしくなっちゃってるな……唯のやつ。元々一つのことだけやり込めば天才クラスだからな……)」
楽しそうにかき鳴らす唯を影から観察するりっちゃん。
りっちゃん「(あの靴も油断出来ない……さっきの麻酔弾をかわした程の速度が出るんだ……全くむぎの会社の発明か何か知らないけど唯をこんな戦闘狂に変えて何がしたいんだよ……! それとも唯が言うように綺麗な音が出ればなんだって良いってかぁ!)」
合間を塗って麻酔弾を唯の腕に向けて撃つ、
唯はそれを軽々しくかわし森の中を滑る様に滑走していく。
りっちゃん「くそっ!」
トゥルルトゥルル……
りっちゃん『あれなんだよ! 反則! それにあれ誰だよ!』
さわ子『落ち着いて、りっちゃん』
りっちゃん『こんな状態で落ち着けるわけ……』
憂『りっちゃんさん……落ち着いてください……』
りっちゃん『憂ちゃん……』
さわ子『あれは恐らくホバークラフトの様なものね。』
りっちゃん『ホバークラフト?』
さわ子『吸い込んだ空気を吹き続けることによって浮力を得ている乗り物のよ。日本ではあまり見られないわね。恐らくあれはそのホバークラフトを靴状にして小型化したものだと思うわ』
りっちゃん『むぎの奴何でもありだなもうっ!』
さわ子『でも安心して、弱点はあるわ』
りっちゃん『弱点なになに!?』
さわ子『燃費がとてつもなく悪いのよ。それは小型化しても同じだと思うわ。』
りっちゃん『つまり隠れながら電池が切れるのを待てってこと!?』
さわ子『簡単に言えばそうなるかしら』
りっちゃん『結局逃げ廻るのか……まあ上手くやってみる』
さわ子『気を付けてね』
憂『りっちゃんさん!』
りっちゃん『ん?』
憂『お姉ちゃんを……』
りっちゃん『憂ちゃん……、それ以上は言わなくてもわかってるよん』
憂『ありがとうございます……ッ!』
ピュン……
りっちゃん「さ~て逃げまくるとしましょうか!」
唯「りっちゃ~ん~どこ~?」
りっちゃん「(動き回らせて燃費を悪くさせてやるッ……)」
りっちゃん「こっちこっち~」
唯「りっちゃん待って~!」
ズバババババ
りっちゃん「(まるで昔に戻ったみたいだな……飛んで来るのが銃弾じゃなければだけど)」
森をジグザグに走り狙いを絞らせず、確実にホバーシューズのエネルギーを消費させて行く。
りっちゃん「(しかしあれ燃料何使ってんだろ……ガソリンか?)」
唯「むぅ……そうだっ!」
痺れを切らした唯が何やら思い付いた様にホバーの速度を上げる。
りっちゃん「(追い付いてから確実に仕留めるつもりか? 考え方は唯のままだな)」
りっちゃんは踏ん張り、隣にあった太めの樹回り込む様に方向転換。
勢いが強い分小回りは効きにくいと判断したのだ。
唯「甘いよっ!りっちゃん!」
後ろへ体重をかけて上手くブレーキをし、りっちゃんの方へ方向転換。
りっちゃん「思ったより小回りが効くんだなー! けどその距離からじゃ下手っぴな唯じゃ当たりもしないよー!」
唯「えぇいっ」
パァンッ
案の定唯が撃った銃弾はりっちゃんから大きく外れ……頭上の太めの木の枝に当たる。
上手く折れた木はりっちゃんに降って、
りっちゃん「(唯の割には味な真似をッ! けどっ!)」
素早く前転をしかわす。前転は体術の基本中の基本、りっちゃんも初めの何日はこの前転に明け暮れたものだ。
りっちゃん「甘いあま……」
唯「ごめんね、りっちゃん……」
りっちゃん「しまっ……」
枝木に注意を反らし過ぎて急接近していた唯に気づかずにいた。
唯がギー太掻き鳴らす、瞬間、それは訪れた─────
ザンッ
唯「えっ」
りっちゃん「なっ」
ギー太の弦が一斉に弾け飛ぶ─────
「…………」
りっちゃん「ニン……ジャ?」
唯「ああっ!ギー太がああっ!ニンジャさん酷い!」
ニンジャ「」シュゥ……シュゥ……
唯に刃を向けたまま静止するニンジャ。
唯「ギー太があああ」
ピリリッピリリッ……
唯「あっ澪ちゃん? うんうん……ギー太がねぇ……うん……それに変なニンジャさんが……」
りっちゃん「(ナノマシン通信の筈なのに声出てるぞ唯……)」
唯「わかったぁ……弦も張り替えなきゃだしね。と言うわけでまたね、りっちゃんっ! 次会った時は……殺すから」
眠たそうな目からは確かに殺気込められていた……。
りっちゃん「全く……昔と変わらないのか変わったのか……」
りっちゃん「で、……あんたは?」
ニンジャ「……」
りっちゃん「(シャドーモセスの時にも現れたと言われるニンジャ……中の人は一体……そして敵かな?味方かな?)」
ニンジャ「キヲツケロ、コノサキニスナイパーガアンブッシュシテイル。」
りっちゃん「えっ…」
ニンジャ「……」
りっちゃん「えっと……ありがとう」
ニンジャ「……アナタハカワラナイノネ」
りっちゃん「えっ…」
そう言うとニンジャは木に登り素早く去って行った……。
りっちゃん「一体どうなってんだよ……」
ガサガサ……
「女の……兵士か? 珍しいな……。性欲を持て余す」
─────────
トゥルルトゥルル……
りっちゃん「ん、さわちゃんからか」
ピュン
さわ子『りっちゃんさっきのニンジャまさか!』
りっちゃん『外装や装備何か資料とそっくりだったよ。でもグレイ・フォックスはシャドーモセスで死んだんじゃ……』
さわ子『武器はなんだった!? マチェットだった!? りっちゃんにデジカメ渡しとくんだったわ!』
りっちゃん『さわちゃんほんとミーハーだな。急に現れて唯のギターの弦だけを一閃するなんて並みの腕じゃないのは認めるけどさ~……正直あのセンスはどうかと思うんだよね』
さわ子『あの曲線美がわからないなんて……りっちゃんまだまだ子供ね。コスプレハンターとしては堪らない一品よあれは!』
りっちゃん『ああそっちの意味だったのね……。』
さわ子『でもまあ敵じゃないみたいだし大丈夫なんじゃない? それにしてもいよいよシャドーモセス化して来たわね……くぅ~指揮官冥利に尽きるわ』
りっちゃん『はいはい……』
りっちゃん『?』
さわ子『ニンジャさんの忠告じゃこの先にスナイパーがいるそうね。辺りを警戒しながら進んで。こっちはスナイパーライフルみたいな長距離射撃武器はないから戦闘になれば不利よ』
りっちゃん『りょ~かい』
さわ子『あ、後ね!』
りっちゃん『?』
さわ子『またさっきのニンジャに会ったらサイン(ry』
ピュン……
ピリリッピリリッ……
りっちゃん『憂ちゃん、悪い……唯のやつ逃がしちゃった』
憂『仕方ないです……気にしないでください』
りっちゃん『……憂ちゃん……唯は』
憂『はい……まるで別人でした…。お姉ちゃんはあんな簡単に人を……殺そうとする人じゃ……』
りっちゃん『何が唯をあそこまで変えたのかはわからない……けどまだ説得出来ないと決まった訳じゃないしさ! 元気出しなよ』
憂『りっちゃんさん……』
りっちゃん『そう言えばそのりっちゃんさんって……なに?』
憂『あ、えと……コードネーム領域なのでコードネームで呼ばないとダメじゃないですか?』
りっちゃん『そだね』
憂『それでその……「りっちゃん」って云うコードネームに……さんを……』
りっちゃん『なるほどそれでりっちゃんさん……ややこしい』
りっちゃん『別にりっちゃんでいいよ! それかお姉ちゃんでもいいよ? なーんて』
憂『お姉ちゃん……ですか。なんだかくすぐったいですね。』エヘヘ
りっちゃん『私もほんとは弟なんかより妹が欲しくってさー! 憂ちゃんみたいな妹なら大歓迎なのに』
憂『そんな……私なんて』
りっちゃん『まあ好きに呼んでよ。さん付け意外でねッ』
憂『はい、わかりました……その……律お姉ちゃん』
りっちゃん『くっは……』
憂『?』
りっちゃん『いや思ったより破壊力あるな~と……』
憂『律お姉ちゃん、お姉ちゃんをよろしくお願いします…』
りっちゃん『律お姉ちゃんに任せとけって』
ピュン……
りっちゃん「さてと……妹にお願いされたことだし頑張りますか」
りっちゃん「唯……憂ちゃんみたいなをいい子置いてぼりにすんなよな……」
りっちゃん「あの渓谷を抜けたらいよいよラボか……急ごう」
さっき戦った兵士達はまだ眠っておりすんなりと抜けることが出来た。
兵士のAK-47の少し迷ってから拾う。
律が持つ武器で唯一殺傷能力がある武器になった。
りっちゃん「一人も殺さずに済めばいいんだけどな……っとドラムスティックドラムスティック」
───無人島 渓谷────
高さはそんなにない山々との間に川があり、そこに一本のつり橋が掛かっている。
山と山を結ぶその橋の長さは300mほど、橋としては大型な部類だろう。
りっちゃん「……アンブッシュ(待ち伏せ)してるならここか……」
見晴らしが良すぎるぐらいに開けている。
橋を渡る時に狙撃されてはひとたまりもないだろう。
りっちゃん「さて……どうしよっかな~…」
ラボへ向かう為に通常ルートを進めばまずこのつり橋を渡るしかない。川を渡ると云う選択肢もあるにはあるが、川の流れは緩やかとは言っても足場も悪く水位もそこそこにありそうだからだ。
りっちゃん「渡るしかないか……」
りっちゃん「(こんな見晴らしがいいところに兵士いない……まるで来てみろって感じか)」
「……来たか……
田井中律、FOXDIED所属のソルジャー……そして紬お嬢様の元ご友学……」
「お嬢様……」
最終更新:2010年10月09日 21:38