兵に麻酔が回ったのを見て森付近の兵へ近づく。ラボから森の入り口の距離は30mほどあり、更にその間にも数本の木がある為に視界は開けていない。

木に隠れながら近づく律。

兵の見張りも完璧ではない。気になることがあれば当然そこを確認する為に近づいたりすることもあるだろう。
兵と兵が離れて行く。遠合わせに背中と背中が向き合っている時、

りっちゃん「(今だッ……)」

ゴッゴッ

SONG兵A「ん?」

律が木を少し叩き音を出す。兵からは死角で律の姿は見えないが音は聴こえたはずだ。

りっちゃん「(さぁこいよ……)」

ツゥ……と汗が流れるのがわかる。それを拭うことも忘れて律は背中で兵の気配を感じることに集中する。

SONG兵A「音がした……?」

りっちゃん「……」

兵がゆっくりと確認しに来る。
りっちゃんは木をゆっくりと兵士とは逆側に回る様に移動する。



↓〇↑

SONG兵A「なんだなんもな(ry」

りっちゃん「動くな」

SONG兵A「ひっ…」

手をしゅばっと上げる兵士。

りっちゃん「振り向けば撃つ、動いても撃つ、いいな?」

SONG兵A「あ…? その声女か? チッ、なめられたもんだな俺も」

りっちゃん「なに?」

SONG兵A「女が撃てるのか人をよォ? 今なら許してやるよ。だから銃を(ry」

その瞬間律は思い切り兵士の膝を後ろから蹴り込み膝をつかせる。
更にそのまま頭を掴み倒し地に伏せさせると兵の後頭部に直接銃を突き付けた。


SONG兵B「あれ? あいついない。しょんべんか? ったく……」




りっちゃん「女だと思って撃たない? ハハッ、面白いこと言うなぁ~……」

ギリギリ……

SONG兵A「ひっ」

引き金を絞る時の嫌な束調音が後頭部越しに伝わる。

りっちゃん「動いちゃったし、殺しちゃおうかな」

ここでようやく本気だと受け取ったのか

SONG兵A「お助けーッ!」

命乞いを開始した。

りっちゃん「(チョロいチョロい♪)」

バックパックから縄を取り出し腕を拘束する

りっちゃん「声をあげても殺すから。おとなしく従ってくれたら殺さない。それどころかお礼してあげるよん♪」

SONG兵A「お、お礼……」ゴクリ

SONG兵A「あのっ、俺囮やりますよ! あっちにいる兵も邪魔でしょ!?」

りっちゃん「えっ……ああ、うん、まあ……」

SONG兵A「俺が捕まってるとこ見たら速攻飛んで来ますよ無防備で!!!」

りっちゃん「でもー……」

SONG兵A「任せといてくださいよ!!! 絶対裏切ったりしませんから!!!」

りっちゃん「う~ん……(腕は拘束してるし途中で叫ばれてもなんとかなるか……)わかった。」

SONG兵A「ありがたき幸せ!(ご褒美ご褒美うへへへ。悪く思うなよB!!!)」

SONG兵B「いくらなんでも遅いな……見に行くか」

兵士Aが受け持っている見張りルートを行くと……

SONG兵A「お助けーッ!」

SONG兵B「A!!! どうした!?? 敵か!!!」

縛られている兵士Aを見て慌てて駆け寄る兵士B。

SONG兵A「気をつけろ……敵は……」

SONG兵B「敵は?!」

SONG兵A「可愛い」

SONG兵B「はっ? あう……」バタンッ

りっちゃん「大丈夫、眠ってもらっただけだから。それにしてもいい演技だったよ。」

SONG兵A「そりゃどーも。元々ミュージカルなんてしてたからそのせいかもな」

りっちゃん「……ふ~ん…そっか……」

兵士Aを立たせラボの入り口へ向かう。


りっちゃん「あのさ、変なこと聞くんだけどなんであんたはこんなとこでこんなことやってんの?」

SONG兵A「あ? ん~……他にやることがなくなったから……かな。俺には音楽しかなかったわけだし。その音楽がなくなったなんて言われたんだ、やることなくなるさ」

りっちゃん「それでこんな場所で取り返す活動を?」

SONG兵A「まあな」

りっちゃん「やっぱり取り返したい……から?」

SONG兵A「いや……それもあるけどさ。あんな女の子が世界を敵にしてまで取り返そうとしてんの見てさ、俺も手伝いたくなったんだ」

りっちゃん「……」

SONG兵A「自分の全てだった音楽がなくなっても俺はあんな大それたことは絶対出来ない。けど彼女はやろうとした、無理だと承知でもな。その為に自分の命が使えるならいいかなってさ」

りっちゃん「例えそれが間違ったことだとしても?」

SONG兵A「間違った間違ってないは自分で決めりゃあいい。俺達は世界で生きてるわけじゃない、俺達が生きているから世界があるんだって俺は思ってる」

りっちゃん「……傲慢なやつ」

りっちゃん「(ここにいる一人一人が色々な理由を持って立ってるんだな……澪、お前はそれを知っててやってるのか?)」

今は別々の道を選んだ澪に問いかける。

いつも側にいた澪に

今はいない澪に……。
気が付くと入り口の前に立っていた。

りっちゃん「さて、開けてもらおっか」

SONG兵A「ああ。手、ほどいてくれないか? 大丈夫裏切ったりしないさ。所詮雇われなんだ命は惜しい」

りっちゃん「……わかった」

シュル……

SONG兵A「あ~痛かった」

手をブラブラと何回か振るとポケットからIDカードを出す。
それを差し込み次に指紋、そして声紋、「あーあー」と簡単な声を出すとゆっくり扉が開く。

SONG兵C「」ピクッ

りっちゃん「敵にこんなこと言うのもなんだけど、ありがと」

SONG兵A「あんたも色々大変何だろうけど頑張れよ。さて、ご褒美ご褒美!」

りっちゃん「そうだったそうだった! ご褒美はこれだっ!」

カチャッ

SONG兵A「鉛玉ktkrwww」

りっちゃん「いい夢を」

そう言って引き金を引く────

りっちゃん「きゃっああああ」

SONG兵A「!?」

律が急に叫び声をあげ震えながら崩れ落ちる。

SONG兵C「ちっ……気付かないわけ……ねぇだろう……が」

眠そうな目を無理矢理開き律を見下ろす。

あの時確かに麻酔弾を撃ち込まれた。しかしそれを見て兵士Cは囮にしようと考えたのだ。
眠くなって倒れるフリをして素早く麻酔針を抜き出し寝たフリを開始。
律達が来るのを息を潜めて待っていた。

しかし抜く前に身体に入った分があるのか面ごちは重い。

SONG兵C「なにやってんだ……? 早く殺せよ」

SONG兵A「えっ、あ……あぁ」

SONG兵C「俺は身体がもう持ちそうにない……しばらく眠らせて……」ドサッ

SONG兵C「....zZZ」

りっちゃん「……」

律は気を失ってるのか動かない。

SONG兵A「やれやれ……」

SONG兵Aは律を担ぐとラボの中に入っていく。

SONG兵A「こちら巡回兵。HQ、侵入者を捕らえた。今から牢にブチ込みに行く、オーバー」

『良くやった!!! 澪様にも報告しておく。貴様名前は?』

SONG兵A「ジョニー、ジョニー佐々木だ」

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─────────

───無人島 研究所入り口前───

その一部始終を見ていたものがいた。
森の中にアンデザインな段ボールを被り取っ手である隙間から覗いている。

トゥルルトゥルル

『さっき見た女兵が連れ去られた』

『助けないのかい?』

『ここに来た時点で覚悟は出来ているだろう。おかげで扉は開いた』

『スネーク……君は』

『オタコン、俺達はメタルギアを破壊しに来たんだ。他のことは二の次だ』

『わかってるよスネーク。ステルス迷彩の具合はどうだい?』

『上々だ。ただ慣れすぎて普段のミッションに支障が出たら困る。便利過ぎるのも考えものだな』

『バッテリーがあるから使いすぎないように気をつけてくれよ。じゃあよろしく頼む』

『了解』

ピピュン

段ボールを脱ぎ捨て日光を浴びる。
全身グレーの強化スーツ、スニーキングスーツに身を包み、額には灰色のバンダナ
煙草をくわえながら立ち上がる。

スネーク「こちらスネーク、これよりメタルギア破壊活動に移る」

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小学校4年の時だった。澪の作文が入賞し、全校生徒の前で読むことになった。

澪「やりたくないよぉ……やだよぉ……」

律「みおちゃんなんでやりたくないのぉ? 入賞なんてすごいことなんだよぉ?」

澪「だったらりっちゃんが賞もらったらよかったのにっ」

律「~?」

澪「ぁ、ごめん……でも読みたくないよぅ……恥ずかしいよぅ……」

そう本気で泣き出す澪を見て、私は思った。
ああ、この子は本当に嫌がってるんだなと。自分なら喜んで大声を出しながら読むだろう。でもこの子は……

律「わかったぁ! じゃあ今からウチいこっ」ニヘッ

澪「えっ……でもぉ……」

律「いいからぁ~」ニコニコ

澪の手を引き走る。
人はこんなにも違っている。幼いながらに感じ取っていた。
でも、だからこそ私は澪を大好きになったのだ。

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りっちゃん「ん……」

身体が冷たい、ひんやりする....。
身体の感覚が薄い、それに頭が靄がかかったようにボヤけている。

りっちゃん「ここ……どこ?」

目の前にあるの銀色の鉄の柵。
部屋を見回しても簡単なベッドやトイレがつけられているだけ。

りっちゃん「独房……か」

体を触るとバックパックや装備がなくなっている。
しかし衣服に乱れはないことに、ふぅと心を撫で下ろす。
兵士になっても気にしてしまうのは弱さだろうか。

りっちゃん「私……そうか、後ろからスタンロッドで……」

それで気絶してる内にここに入れられたんだ。

りっちゃん「~ん」

辺りをキョロキョロする律。

りっちゃん「澪がいた気がしたんだけど……気のせいか」


ピリリッピリリッ!!!

ピリリッピリリッ!!!

りっちゃん「CALLか」

ピピィン

りっちゃん『こちらりっちゃ(ry』

憂『心配したんですよ!!!!! なんで……出てくれないんですか……』

りっちゃん『あ~……えっと捕まっちゃって……ごめんね』

憂『つかまっ……何か変なことされてませんよねッ!!?』

りっちゃん『うん、大丈夫。ありがと憂ちゃん』

憂『良かった……』

さわ子『全く……あまり心配かけないでよ? 老けが進んじゃうじゃない』

りっちゃん『ごめんって。ちょっと油断してたよ』

さわ子『油断ってあなたねぇ……』

りっちゃん『それより脱出方法を考えようぜっ! 装備なんかは全部押収されたみたい。どうしよっか?』

さわ子『脱出方法は色々あるわ。誰かに開けてもらったり死んだ振りをしたり身体に仕込んでる鉄切りノコで切るとか……』

りっちゃん『身体にそんなの仕込んでないし無理だよー』

さわ子『誰か開けてくれそうな人は? さっきの忍者とか! シャドーモセスじゃスネークの味方だったらしいわ! つまりあなたはスネークなの! りっちゃん!!』

りっちゃん『好きだよな~その話さわちゃん』

さわ子『とりあえず死んだ真似からしてみたらどう?』

りっちゃん『なにその軽いノリ!!!』

さわ子『他に方法がないんだから仕方ないじゃない』ブー

りっちゃん『ったくもうっ』

憂『気をつけてねお姉ちゃん』

りっちゃん『まあ頑張ってみるよなんとか』

りっちゃん「」ぐったり

りっちゃん「」グターリ

「おい、起きろ」

りっちゃん「」クッタリーノ

「微妙に体が上下してんだよ」

りっちゃん「ちっ。なんだよせっかく人が気持ち良く寝てるってーのにさぁ……」

頭をかきながら律が顔を上げるとそこにはさっき自分がホールドアップした兵士がいた。

りっちゃん「あっ! あんた!」

「しっ、声がデカい」

りっちゃん「なんだよ……?」

「もうしばらく経ったらここの見張りが俺一人になる。そしたら俺はトイレに立つ、長い、長~いやつだ」

りっちゃん「あんた何言って」

「今から腹が痛いといいながらポケットから下剤を取り出す。その時一緒にここの鍵も落としちまう、いいな?」

りっちゃん「あんた……」

ジョニー「ジョニーだ。俺の家系は腹が弱くてな。最も俺は賢いから下剤を飲ん……」グルルル……

ジョニー「がっ……腹がっ……」

りっちゃん「(おおっ! 凄い演技だっ!)」

ジョニー「さっき飲んだのに……なんで……」

ジョニーがポケットから薬を取り出すとクルクル回しながら何かを見ている。

ジョニー「腐ってやがる……」

ジョニーはそのままトイレに直行し、長い、長い旅路へと旅立った。

りっちゃん「演技……だよな?」

ジョニーが落としていった鍵をありがたく拾い、開ける。
周りを確認しながら外に出る。

りっちゃん「(監視カメラか……)」

監視カメラに映らないようにタイミングを見計らいながら出て、先程ジョニーが入っていったトイレを

コンコンッ

と軽くノックする。

ジョニー「永遠に入ってます」

りっちゃん「なんで……」

ジョニー「あの先は俺のカードじゃ開かないところばっかりだしな。ここからなら大体どこでも繋がってるからこっちの方があんたに都合がいいかなと」

りっちゃん「なんでっ……」

ジョニー「俺はただの一兵士だけどよォ、それでもただの人間だから。自分がしたいようにやったまでさ。さっきまではこんなリスク犯すことはないって思ってたんだがな……」

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最終更新:2010年10月09日 21:44