無人島 研究所 地下格納庫 昇降口上部──────
ニンジャ「はあっ!」
昇降口から一気に飛び降りる。一々研究所から回っている暇はないだろう。
台が上昇してくる────
ニンジャ「やはりメタルギア……!」
落下しながら目視するも瞬間、
ニンジャ「消えた…?!」
目の前からいきなり消えるなんてことがあり得るのか。
可能性としてはステルス迷彩…、だがあんな大型なものを消せるものか……。
一般的に言われてるステルスとステルス迷彩は大きく違う。
ステルス機は実際に見えないわけじゃない。レーダーや索敵にかからないからステルスなのだがステルス迷彩は本当のステルスと言っても過言ではない。
姿形さえ消えてしまう魔法の技術。
だが欠点も多い。
ニンジャ「これでっ!!!」
落下しながらマチェットを抜き、さっきまでメタルギアがいた場所に向かって降下しながら振りかぶる。
ニンジャ「はあああああああああっ!」
ガキイイイイイイッ
ニンジャ「(手応えはあった……けど音がしない…?)」
無論音はした、金属と金属がぶつかったカン高い音が。
だがニンジャにはそれが¨聴こえていないのだ¨。認識出来ていない。
ただ見えないだけで存在はするもの、すり抜けるわけじゃない。
リキッド「忍者か! だがその程度の攻撃ではな!!!」
ニンジャ「……!」
一瞬だけ見えた、けどまた消えた。
ステルス迷彩じゃないのだろうか。ステルス迷彩なら光学迷彩に触れればしばらく消えられないはずなのだが…。
ニンジャ「これを破壊すればまたあの子達は戻れる。律がきっと取り戻してくれる。だから私は……!」
台が上がりきり地上へと出る。
依然メタルギアは視認出来ない、が、間違いなくいる。
姿は消えたとしてもあの質量がいる気配を感じ取れないわけがない。
叩いた瞬間は見えた…なら何とかなる…か。その時に動力部を穿つ。
マチェットを構えて目を閉じる。
ニンジャ「(唯、待っててね。私が全部終わらせるから。だからあなたはもう戦いなんて辛い思いはしなくていいの……)」
───無人島 研究所付近───
唯「具合良くなった? あずにゃん?」
梓「はい。何とか歩けるぐらいには」
雷電「……」
梓「殺さないんですか? 私達を」
雷電「……。確かにお前達は世界を核の恐怖で脅かし、元は悪じゃないとは言え今は悪の音楽を取り戻そうとした。それは許されることじゃない」
梓「……じゃあ」
雷電「だが死んだら償うことも出来ない。俺がここでお前達を殺したところで世界は変わらない。だが生かし、償わせることで何かが変わるかもしれない。俺はそれに賭けようと思う」
梓「じゃあっ!」
雷電「勘違いするな。もしまた同じことを繰り返すなら……次は必ず[ピーーー]」
梓「……はい」
唯「私達はちゃんと……話し合わないといけないんだよね。みんなでどうするか」
梓「唯先輩…」
ドスッ ドスッ ドスッ
「……ッ!!」
雷電「なんだ……?」
梓「あれは……!」
唯「メタル……ギア……!」
───太平洋上空 無人島近海───
パイロット「こちらB-2、無人島が射程に入った。オーバー」
司令官『よし、勧告後、返答が得られない場合爆撃を開始しろ!』
パイロット「了解」
パイロット『こちらアメリカ空軍所属、B-2戦闘爆撃機だ。こちらには無人島をすぐにでも爆撃する用意がある。ただちに武装を解除し、投降せよ。繰り返す……』
──────
───無人島 研究所 内部───
『繰り返す。こちらには無人島を爆撃する用意がある。ただちに武装を解除し、投降せよ』
研究所のスピーカーから流れ出す勧告を二人は並走しながら聞く。
りっちゃん「くっ、来たか!」
スネーク「核がないとやりたい放題だな、国防総省(ペンタゴン)は!(それとも愛国者達か……)」
りっちゃん「どうしようスネーク…。このままじゃこの島は…」
スネーク「(奴が生き延びろと言っていたのはこの事か…)」
スネーク「状況を説明して止めさせるしかない。テロリストを引き渡せば…或いは」
りっちゃん「澪達を突き出せってことかっ……!」
スネーク「……」
りっちゃん「あんたは結局そうなのかよっ! メタルギアさえ倒せればそれでいいのかよ!?」
スネーク「ならお前は大罪を起こしたテロリストを逃していいと言うのか?」
りっちゃん「それは…」
スネーク「自分がいいから世界など関係ないとでも言うのか?」
りっちゃん「でもっ……なら私は……どうしたらいい?」
スネーク「……これだけは言っておく。物事に正しいことなどない。人それぞれ価値観があり人によって答えは違う。だから戦争や宗教が生まれる」
りっちゃん「……なら何が正しくて何が良くて何をすればいいんだよ! 私にはわかんないよ……」
泣きそうになりながらも必死に考える律、
スネーク「りっちゃん」
そんな律にスネークが優しく手を律の頭の上に置く。
りっちゃん「ふぇ…?」
スネーク「目の前に困った人がいて、それをお前さんが助けたとする。果たしてそれで救われるのは何人だと思う?」
りっちゃん「何人って…困った人だけじゃないのか? 救われるのは…」
スネーク「いいや違う。それを見た周りの奴等だって救われる」
りっちゃん「えっ…」
スネーク「あの女の子の様に自分も誰かを助けられる人になろう。世の中捨てたもんじゃないってな。伝染するんだ、ここは」
ハートを二回トントンと叩くとニヤリと笑うスネーク。
スネーク「みんなが幸せに笑える世界に向かえ」
りっちゃん「みんなが幸せに笑える世界……」
スネーク「そうだ。今の段階ではお前達はテロリストだ。だから俺はお前達と敵対する。いくら音楽を取り戻す為と言っても何も知らない民間人はただの恐怖でしかない」
りっちゃん「うん…」
スネーク「どうしてもあいつらと共に行きたいなら俺を倒してでも行け。それが世界を幸せに、笑って歩める正しい道と信じるならな」
りっちゃん「……わかったよ、スネーク。ほんとにありがと」
道は決まった、覚悟も出来た。後はやるだけ。
スネーク「こんな教鞭染みたことは苦手何だがな。何でこんなことを言ったのか自分でもわからん」
りっちゃん「へへっ」
ニコニコしながら走る律に、もう迷いはなかった。
律はこれで同じ名を持つ男二度助けられた。
しかし彼らもまた導かれていたのかもしれない。
原点とも言える彼女の面影に。
それはまだ生まれたばかりだけれど、彼女とて最初からそう呼ばれてたわけではない。
きっとその種は世界に実をつけると二人の遺伝子は告げていたのかもしれない。
───────
パイロット「…反応なし」
司令官『やはりな。FOXDIEDの小娘が上手くやったらしい。もはやない組織のメンバーの生死などどうでもいいが残存兵がいるかもしれん。やれ』
パイロット「ですがそれが本当なら彼女は核の恐怖から世界を救った英雄ですよ!? 共に戦う同士を撃てと言うのですか!」
司令官『奴は裏切り者だ。奴がテロリストを生かそうなどと言うふざけた通信は既に上に報告されいる。奴は英雄などではない! 反応がない今がチャンスなのだ! 早くやれ!!!』
パイロット「くっ……! 願わくば脱出していることを祈る……!」
カチッ
B-2爆撃機から16発の爆弾が発射される。
小さな島を焼き払うには十二分な数だった。
パイロット「あれは……! なんだっ!?」
島陸上部を目視出来る程の距離に来た爆撃機は、島上で恐ろしいものを見た。
パイロット「まさかあれが…メタルギア……!?」
───無人島 研究所付近───
ニンジャ「これ(マチェット)じゃ歯が立たない……っ。何なのこの金属……! どこを狙ってもすぐに修復する…!」
リキッド「三代目忍者もなかなかやるな!!! 見えない敵にここまでやるとは正直驚いたぞ!! だがそろそろ終わりにしよう!!!」
ニンジャ「何をっ」
ウ゛ンタンウ゛ンタン
ウ゛ンタンウ゛ンタン
ニンジャ「見えっ…体が!」
せっかく姿を現したメタルギアだったがその前にニンジャの動きが止まる。
リキッド「グレイフォックス、オルガ・ゴルルコビッチ、そして貴様……シャドーモセスから始まった忍者役も今日で見納めだ」
ニンジャに狙いを定めたガトリングガンが回転し出す。
リキッド「死ね」
「ギー太、フルバースト」
ズゴオオオオオオオオオッ
ドフンッ
リキッド「なにいいいっ」
物凄い量の弾幕がメタルギアの左手を弾き飛ばす。
が、僅かにガトリングガンの発射の方が早く5.6発はニンジャに向かってしまった。
しかし、そのニンジャを守るようにして立つ男が一人。
雷電「ふんっ!!」
キンッキンッギィンッカンッ────
日本刀を振り払い銃弾を弾き飛ばす。
チュインッ────
ニンジャ「くっ……」
雷電「ちっ、一発逃したか。無事か?」
ニンジャ「ええ、ありがとう。その傷でそこまで出来るのはあなただけよ。それにしてもどんな心変わり?」
雷電「俺の一番の目標はメタルギアの破壊だ。仲間に必要なら協力しろと言われてる。だからそうしたまでだ。後のことは後に考える」
ニンジャ「そ、」
顎辺りに銃弾がカスったせいでさすがの強化外装も欠けてしまい中からその人物の口が露出してしまっている。
ニンジャ「もうこれも必要ないわね」
フェイス外装を取るニンジャ。それと同時にメタルギアと対峙していた唯が叫ぶ。
唯「和ちゃんに手を出すなっ!」
和「唯……」
唯「なんで…黙ってたの?」
和「黙っておくつもりはなかったんだけどね…。もし私ってわかったら唯、心配するでしょ? だから……」
唯「するよっ! 当たり前じゃない……幼なじみだよ? たった一人の……」
和「唯、正気に戻れたのね」
唯「りっちゃんのおかげだよ。でも一番最初にこれに参加した事実は変わらないから……私達は償って行かなきゃならないんだ」
和「そうね……」
唯「そう言えば和ちゃんはどうしてここに?」
和「言わせないでよ。ただあなた達を止めたかった、それだけよ。でも私じゃ無理だった。だから律を援護する形を取ったのよ」
唯「そっか…ごめんね…」
和「過ぎたことよ、もう。今回間違えたのなら次間違えないようにすればいい。次はちゃんと5人で話し合うのよ」
唯「6人、ううん、憂も入れて7人だよ。和ちゃん!」
和「私も憂も音楽奪還メンバーに入れる気? まあいいけど、(唯と一緒ならそれで)」
唯「ん? 何か言った?」
和「何でもないわ」
リキッド「世間話などしてる余裕があるのか?!!!」
再びガトリングガンを構えたが、その銃口一つ一つにナイフが刺さり込む。
梓「静かにしててください、今は感動の再会の場面何ですから」
リキッド「劣化デッドセル風情が調子に乗るなよ!!!?」
梓「みなさん! 来ますっ!」
雷電「話はこいつを片付けた後だ」
唯「うんっ!」
和「気をつけて! 何かの音を聴いた瞬間身動きが取れなくなるわ!」
リキッド「遅いっ!!! こいつを喰らえ!!!」
ウ゛ンタンウ゛ンタン
ウ゛ンタンウ゛ンタン
梓「なっ」
雷電「動けん…っ」
唯「ほえ?」
和「くっ……対処法はないの!?」
「簡単簡単、歌いながら戦えばいいんだよん♪」
和「!?」
何かが隣をすり抜けて行く、その背中は誰もが待ち望んでいて、みんなを救ってくれた……私達の英雄。
唯「りっちゃん!」
梓「律先輩!」
和「律!!」
律「待たせたな!!!」
スネーク「リキッドオオオオオ」
RPGをメタルギアに乱射しながら走り寄るスネーク。
リキッド「ちっ!!! 範囲外から叫びながらとは考えたなスネーク!!! しかしそうでなくてはな兄弟!!!!」
リキッド「だが第二形態は破れないだろう? 時間もない!!! さっさと殺してやる!!!」
ウイイイイイイイイイ
梓「消えましたよ!?」
雷電「ステルス迷彩か…?」
和「違うわ。さっき攻撃を何度当てても解除されなかったもの。もっと別の何か…よ」
りっちゃん「みんな! あいつは人間には聴こえない程の高音波を出してる! それを聴くとメタルギアVOICEを認識出来なくなるんだ! だから認識しようとしたら駄目だ! 別のことに意識を向けながら戦うんだ!」
梓「別のことに意識を…」
唯「向けながら?」
和「さっき歌いながらって言ったのは…」
りっちゃん「ご名答! って和あああああ?」
和「知ってるかと思うけど私はのどかよ律」
りっちゃん「知ってるよ! じゃなくて何でここに!?」
和「話は後よ、それより本当に歌いながら戦えば奴が見えるの?」
紬「本当よ! だけどその考えじゃ永遠に見えないわ、和ちゃん」
唯「ムギちゃんっ!」
梓「ムギ先輩っ!」
紬「(やっぱり二人とも無事だったのね。りっちゃんを信じて良かった……。)うふふ」
和「どう云う意味?」
紬「見ようとして見えるものじゃないの。和ちゃんの場合は歌うより気配を辿った方が戦い易いかもしれないわね」
和「さっきもそれで戦ってたのだけれどあの金属に全く歯が立たなかったわ」
紬「あれはナノマシン装甲なの。普通の攻撃じゃ傷一つつかないわ。脚部の駆動部分を狙って。あそこはナノマシン装甲じゃないから」
和「わかった」
紬「唯ちゃんはギー太をメタルギアモードにして。こんな時の為の隠しコードなの。右に2回左に3回よ」
唯「えと、右ににか~い左にさんか~い」クルクル
ジャキンッゴオッズオッシャキーン
唯「何かバズーカみたいになったよ!!!」
紬「それならあの装甲にもダメージを与えられるわ。梓ちゃんはこれを使って。ある武器を見立てて作ったものよ」
梓「これはっ! あずにゃんげりおん2号……ボソ」
紬「?」
梓「な、なんでもないですっ」
りっちゃん「ムギ、早かったな」
紬「ええ。居ても立ってもいられなくて直通エレベーターに乗って来たの!」
りっちゃん「あ、そんなのあるんだ! 教えてくれたら良かったのにいっ」
紬「言う前にりっちゃん達行っちゃったから。ごめんね」
りっちゃん「いいけどさ。じゃあ危ないから隠れてて。ムギはナノマシン投与も何もしてないんだから」
紬「……私は弱いままね」
りっちゃん「違うよ、ムギ。ムギの強さは私が良く知ってる。メタルギアに臆することなく私達に情報をくれたし、こうして危険を省みず来てくれた」
紬「りっちゃん…」
りっちゃん「強さは目に見える力だけじゃない。確かに表面上の力は劣るかもしれない、けどムギは誰よりも心が強いんだ! だからそんなこと言うなよ。な?」
紬「うん…うんっ」
最終更新:2010年10月09日 22:02