雷電「スネーク、またあんたと会えるとはな」

スネーク「雷電……。戦場に居続ければ死んでいない限りいつか会えるさ」

雷電「そうだな。話したいことは山程あるが今はメタルギアを止めるのが先だ」

スネーク「ああ。話が早くて助かる。若いとどうしてああ話が長くなるのか」

雷電「彼女達のことか。ふふ、あんたがそんなことを気にするなんてな」

スネーク「らしくないか?」

雷電「かなりな。きっと積もる話があるのだろう、彼女達も。もしかしたら俺達以上にな。戦場に出るような歳でもない。ああやって話し合ってるのが本来の姿なのだろう」

スネーク「後生に責任を押しつけるわけにはいかないな」

雷電「ああ、全くだ」


りっちゃん「唯、梓」

唯「りっちゃん…無事で良かったよぉ」

梓「澪先輩は…」

りっちゃん「澪は…必ず連れてくる。だから心配するな、梓」

梓「…はい」

りっちゃん「今はメタルギアを破壊することに集中しよう。さっきも言ったがあのメタルギアは見ようと思っても見えない」

梓「だからって歌いながらで本当に見えるんですか?」

紬「大丈夫よ梓ちゃん! 作った私が言うんだから間違いないわ!」

唯「歌いながら~なんて軽音部らしいよね!」

りっちゃん「頼りにしてるぜHTT(放課後ティータイム)のボーカル」

唯「えへへ///」


スネーク「お前ら! 話はそれぐらいにしておけ! 逃げられても厄介だ!」

雷電「この島は小さいからな。RAYの様に水中潜航出来るなら不味い」

りっちゃん「わかってる! いいな? 歌いながらだぞ!」

梓「わかりました!」

唯「わかったよ! りっちゃん!」

りっちゃん「よし、行くぜっ!」


リキッド「逃げるだと? 確かにさっきの攻撃で駆動部は負傷したが……このリキッド・スネークに敗北の文字はない!!!」

リキッド「軍のミサイルなどで引導を渡すのは惜しくなったわ!!! やはりこの手で殺してやる!!!」

りっちゃん「(実際には見えてないだけでスティンガーにはロックオンされてる筈……と思ったけどうんともすんとも言わない…)」

りっちゃん「(いないと刷り込まれいるんだから何もない所をスティンガーで狙ってもロックするわけがない……と脳が意識してるのか?)」

りっちゃん「(それとも実際にはロックしているが見えてないだけか……)」

カチッ

りっちゃん「出ないか…。声がした方にロックしたんだけど…(見えてないだけで実際にはいる、けれどロックは出来ない…? 一体どんなシステムだよ、あのメタルギアの第二形態は!)」

和「はああああっ!」

ギィンッ!

リキッド「ちぃっ! 小娘が!」

一瞬メタルギアVOICEが姿を現す。

りっちゃん「あそこか!(あんなに移動してるなんて…! 木々を摩る音さえ聴こえないのかよ!)」

律はすぐにスティンガーを向け、ロックオン、そして発射。

ビュオッ─────

リキッド「ふんっ!」

ミサイルが着弾する瞬間、メタルギアがまた消える。

りっちゃん「でも遅いっ!(捉えたっ…!)」

シュンッ────

りっちゃん「すり抜けた…?」

ミサイルは明後日の方向へ飛んでいき、爆散した。


唯「な~んでな~んだろぉ~気になる夜~君への~」

梓「ふでペーンふっふ~」

りっちゃん「二人とも見えたか?!」

唯「ううん、見えなーい」

梓「私もです…」

りっちゃん「駄目か…」

紬「駄目よ二人とも。まだ見ようとしてるわ。別に歌うから見えるわけじゃないの。歌うことで意識をこちらに集中することで¨見える¨のよ」

唯「う~ん…」

梓「難しいですね…」

紬「わかりやすく言うと物を見る、と、風景を見る、の違いね」

りっちゃん「物を見る、と、風景を見る……か」

りっちゃん「……そうか」

唯「??」
梓「??」

紬「りっちゃんは気付いたみたいね」

りっちゃん「例えば今この景色、唯達はこの景色を¨見よう¨としてるか?」

唯「ん~? 見ようとするって言うか¨目に入ってる¨って感じかなぁ」

梓「……なるほど! ¨見ようとする¨のと¨見える¨のは違うってことですね!」

紬「うふふ、正解よ」

唯「みんなだけ納得しないで私にも教えてよぉ!」プンスカ

りっちゃん「悪い悪い。じゃあ唯、これ見てみ」

律が人差し指を軽く立てる。

唯「数字の1?」

りっちゃん「正解。じゃあこれは?」

次に律は何もしないままただ立つ。

唯「う~ん? ……りっちゃん!」

りっちゃん「まあ私だな! それが答えだ」

唯「んむぅ?」

梓「唯先輩はさっき律先輩を見て1、と答えました。何でですか?」

唯「だってりっちゃんがこうやって手で……」

りっちゃん「そこだ!」

唯「えっ?」

りっちゃん「唯はその手を見て、1と答えた。でも次に私が何もしないと私を私と答えた。この違いがわかるか?」

唯「わかんない!」

りっちゃん「がくっ!」

梓「1と指した律先輩も何もしない律先輩も同じ律先輩なんです。でも唯先輩は律先輩の1と指した律先輩を見て数字の1と言いました。それが答えな

唯「だからそれはりっちゃんがそうやってるのを見て……はっ!」

梓「そうです」

りっちゃん「つまりだ。見ようとするのと見えるのは違うんだ。唯が見てるのは同じ私でもある一点を見ようとすることで同じ¨見る¨じゃなくなるってこと」

紬「メタルギアはその¨見ようとする¨って云う認識を操っているの。だからメタルギアを¨見ようとする¨と一生見えないってことなの」

梓「だから歌うってことですね」

紬「そう。それがわかっていても人間は動く物を捉えようとする習性があるからそれを¨見る¨のは中々出来ないわ」

りっちゃん「それを歌うことに集中することで消す。それを風景を見てると同じにするんだ」

唯「うんっ」

梓「やってみましょう!」

紬「カメラがないのが残念……」

りっちゃん「ム~ギィ~?」

紬「じゃあ私は研究所の中から覗いてるわね~♪」

りっちゃん「全く……こんな時でも変わらないな、ムギは」

唯「だね」

梓「です」

りっちゃん「じゃあいくぞ……123ッ!」


りっちゃん「君にトキメキ恋かもね~アワアワ~」
唯「そうだホッチキスで~綴じちゃおう~」
梓「ふでペン~FUFU~ふるえるFUFU~」

りっちゃん「……」
唯「……」
梓「……一緒の曲にしましょうか」

りっちゃん「そ、そうだな。(唯が気になって全く見えなかったし)」

梓「(唯先輩がなんでいきなりサビからなのか気になって見えませんし)」

唯「じゃあ私の恋はホッチキス! からね!」

りっちゃん「カレーからだろ!」

梓「ふでぺんがいいですっ!」

りっちゃん「……」
唯「……」
梓「……」

りっちゃん「ふわふわでいいか」
唯「ふわふわたいむにしよっか」
梓「ふわふわ時間にしましょうか」

りっちゃん「やっぱりふわふわだよな」

唯「うん…」

梓「はい…」

りっちゃん「(澪、みんな待ってるんだぞ…)」


スネーク「歌か……俺達も歌うか? 雷電」

雷電「冗談が上手くなったな、スネーク」

スネーク「冗談じゃないさ。見えないと戦えん」

雷電「俺達はあっちの真似をすればいい」

スネーク「あっち?」


和「はあああああっ!」

ギイイイイイッン

リキッド「何故居場所がわかる!!? まさか体中サイボーグかこいつ!!」

和「見えないと言っても実際に消えてるわけじゃないでしょ? そんな巨体がこの森の中を駆け回って何も痕跡が残らないわけがない!」

リキッド「ふんっ! この第二形態のメタルギアVOICEに接近戦を挑むと言うことがどれだけ愚かなことか知れ!!!」

和「私はどうなっても構わない…! ただあの子達の道を作るのみっ!!!」

リキッド「サムライだったか!!! なら潔く散れい!!!」

リキッド「ステルスガンを喰らえ!!!」

和「(メタルギアVOICEを認識出来ない…それはつまりそれについてる武装も認識出来ないってことよね。撃ち出された弾にまで補正が及ぶのかはわからないけど…どこから来るかわからない時点で脅威には変わらない…か。ステルスガンとは良く言ったものね…ッ!!)」

和「ッ!」

何かがカスッた…!

和「(発射の音までしないなんてステルスもびっくりね…!)」


雷電「───だが着弾まで余裕があるだろう?」

キンキンッ────

和「雷電…さん」

雷電「まずは急所を庇え。見てから防御しようとしても遅い。完璧に防がなくていい、ズラすだけで軌道は大幅に変わる」

和「…さっきは偉そうなこと言って…それに…」

雷電「それがお前の選んだ道なんだろう。ならそれでいい。俺は俺の道を行く。今はそれが交わっているだけだ。明日からはまた敵かもしれない。だから謝る必要などない」

和「…ふふ、そうね」

私達はただ、自分達が信じる道を歩むだけ。


リキッド「くっ!!! ならばっ!!!」

見えないメタルギアが、16連装のロケットランチャーを撃つ為に踏んじ張る。

──────ッ

和「ガトリングガンの次はロケットランチャー…忙しいわね全く」

雷電「さすがにあれは斬り落とせん。かわすぞ」

和「言われなくても!!」

発射されてから見える様になるロケット弾、しかし一度滞空してからロックされたものを狙う為避けるのはガトリングガンに比べて遥かに容易だった。

それにこの瞬間をあの男が逃す筈がない───

ズオッ────

リキッド「ぬうっ」

スネーク「せっかくのステルスが台無しだぞ、リキッド」

リキッド「ピンポイントに駆動部を!? 貴様ァ!」

スネーク「ロケット弾が発射された場所から駆動部の位置を予想するぐらいなんてことはない。IQまで劣化したか?」

リキッド「殺す…貴様だけは!!!!!」



───君を見てると、いつもハートDOKI☆DOKI

───揺れる想いはマシュマロみたいにふ~わ☆ふわっ

───いつも頑張る 君の横顔 ずっと見てても 気づかないよね

深く閉じた瞳の中蘇る。

りっちゃん「(あの頃に戻った気分だ……何も考えずに、ただがむしゃらに音楽だけを追い掛けてたあの頃に)」


───夢の中から 二人の距離 縮められるのにな

そしてゆっくり瞳を開ける────

りっちゃん「(¨見える¨!!!)」

あぁカミサマお願い───

律はメタルギアに目を向ける事なくスティンガーを構える。
数秒ほどするとすぐにロックオンの表示。

りっちゃん「(なんだ、さっきのはただメタルギアが動き回っててロックオン出来てなかっただけか。)」

二人だけのDream Timeください───

りっちゃん「(もう外さない、逃がさない……この一撃で決める)」

ズォッ────

お気に入りのうさちゃん抱いて 今夜もおやすみ☆

ズゴゴオオオオオオオッ!!!!!!

りっちゃん「ふわふわタイム」

リキッド「ちいいいっ! 駆動部が!!」

唯「あっ! 見えた!」

梓「唯先輩も撃ってくださいっ!」

唯「う、うん!」

唯「こ、こうかな!?」

ズバシュッ

梓「なんか凄いスピードで飛んでいきましたよ!? 大丈夫ですか!?」

唯「さあ…?」

梓「さあじゃないですよ!」


リキッド「バカな……何故俺が……」

スネーク「明日を担ってるのは何も俺達だけじゃない。それをお前はわかってなかった。いや、わかりたくなかったんだろう」

ドオオオオオオオオオン

スネーク「時代は変わる。変わらなきゃならない……リキッド。俺もお前もこの世界にはもう必要ない」

そうしてゆっくりと煙草に火を付ける。

スネーク「ふぅ……こいつの味だけは変わって欲しくないもんだがな」


梓「はあっ! ていっ!!!」

ズシャッ

梓の振動ナイフで確実に駆動部を切り離し、メタルギアVOICEは片足を失った。

りっちゃん「終わった……のか?」

和「みたいね」スチャッ

雷電「ああ」スチャッ

唯「中の人大丈夫かな?」

スネーク「そう簡単にくたばる奴じゃないさ。そうだろうリキッドォ!! 出てこいっ!!!」


リキッド「ククク……いや参ったよ。まさか第二形態まで破られるとはな」

降参だといった感じでコクピットから両手を上げて現れたリキッド。

紬「孤独なあなたにはわからないでしょうね。見えないものだから存在しないわけじゃない。普段から私達は見えないもので繋がっている。いえ、見えないものなんてどこにもないの。それをあなたは気づけなかった」

唯「ムギちゃんいつの間にっ」

リキッド「お嬢様の詭弁は私にはわかりません」

りっちゃん「私にはわかるよ。友情や愛情、それは見えないものだけど、感じ取って見ることは出来る。それが見えないからあんたは…見えないメタルギアVOICEが最強だなんだ言ってたんだ」

リキッド「友情? 愛情? そんなものは必要ない!!! そんなものは弱者が寄り添って作り上げたものに過ぎんっ!!!」

りっちゃん「まだそんなことを…!!」

紬「認めたくないだけでしょうあなたは!!! それに負けたってことを!!!」

リキッド「」ニヤッ

紬「あ……」


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最終更新:2010年10月09日 22:04