りっちゃん「とりゃあああっ!」
届かない。
スネーク「どうした! 体のバランスが悪いからすぐに倒されるんだ!」
届かない……。
りっちゃん「(勝てないよ……こんな奴に。あっちは伝説の傭兵だぞ? 元々私なんかじゃ無理なんだ…)」
地面に大の字で横になったまま、何度も何度も諦めようと思案する。
スネーク「どうした! もうくたばったのか?! そんなもので誰かを守れると思ってるか!」
りっちゃん「この……!」
崩れかけの体を何とか立ち上がらせ、スネークと向き合う。
スネーク「そうだ。来い、りっちゃん」
りっちゃん「みんなを守るのは……私だあああっ!!!」
一撃、まず一撃入れる。
こっちだってかじったとはいえCQCをVRで嫌って程学んだんだ!
再度律から仕掛ける。早い左ジャブ、
りっちゃん「(スネークは恐らくまた手をとってその勢いを利用した投げ技を使う筈! なら逆にそれを利用してやる!)」
スネークは律の予想通り左ジャブを掴んだ。
りっちゃん「(よし……足をかけられる前に!)」
りっちゃん「でやっ」
スネーク「なに!?」
逆にスネークが掴んだ手を支点にして飛び上がる。
りっちゃん「もらっ……たぁ!」
空中で体を横に傾けながらの蹴り。
スネーク「甘い」
スネークはそれを左手で防御。ゴツッと鈍い音が響く。
りっちゃん「なろっ!!」
スネークは律の左手を引き投げ飛ばす。
頭が地面を向いたまま投げ飛ばされた律、だがそれを予想していたかのように中空で瞬時にサイドホルダーを漁り抜く。
既にリロードされているMKを構え───
りっちゃん「Good night」
パシュン───
スネーク「MKか、だが……」
スネークは銃弾を腕で受け止めると針をすぐ抜き捨てる。
スネーク「腕や脚では、ましてやすぐに抜かれた場合効果はほとんどない」
律は地面に逆立ちするように着地し、その勢いのまま前転、足を地に下ろした。
りっちゃん「ハンディとしてちょっとぐらい眠たい中でやって欲しかったんだけどな~やっぱり駄目か」
スネーク「こい」
両手を突き出して構える。CQCの基本の構えだ。
りっちゃん「……行くぞ」
律も同じように両手を突き出した。
りっちゃん「(今はまだ勝てなくても…きっといつか)」
『メタルギア、第三モード起動。これより核操作モードに移行します』
りっちゃん「なんだっ!?」
リキッド「ククク……」
雷電「!? お前……何をした?」
リキッド「いくら手足を縛った所で口の中までは縛れまい。まだ使うつもりじゃなかったがな」
口の中、奥歯に光る何かを雷電を見た。
雷電「貴様…」
リキッド「このまま俺がいなくなればまた出来もしない平和を謳うだろう。この操られた世界の中で!!! 脱却しなければならないのだ!!! 愛国者から!!!」
雷電「愛国者……!」
リキッド「ふふふはははははっ!!! 今日、この日から始まるぞ!!!!! 核戦争が!!!!」
『簡単な話だ。音の意思だよ』
オタコン『!?』
スネーク『誰だ!?』
『誰でもいいだろう。それより今は核を止めることが最優先だ。ヒューイ』
ヒューイ『割り込み通信失礼するよ。オタコン……だったね。君にもちょっと手伝って欲しいんだ』
オタコン『ヒューイ……?』
ヒューイ『……。今からデータを転送する』
オタコン『無茶だ! メタルギアVOICEが核操作を行なってる場所を全部特定するなんて……』
ヒューイ『その点なら大丈夫。彼女が突き止めたから』
ストレンジラブ『早くしろ。撃たれてからじゃ遅いぞ』
オタコン『わ、わかった! スネーク! ここは僕達に任せてくれ! 君は脱出の準備を! 僕のヘリで向かってるから!』
スネーク『了解した』
オタコン『それにしてもあなた達は一体……?』
ヒューイ『ちょっと過去の知り合いに頼まれたものでね』
ストレンジラブ『部下の尻拭いを私達にさせるとは。相変わらずだなあいつは。死んだと聞いていたのに…全く』
オタコン『?』
ヒューイ『それよりデータはきたかい?』
オタコン『あ、はい! 凄い…これなら!』
ストレンジラブ『場所がわかれば後は上から最終ロックをかけてやればいいだけだ。簡単だろう、お前達なら』
ヒューイ『核発射シークエンスの上書きを簡単だろう?って、君らしいな。』
オタコン『……もしかして、いや……でも…』
ヒューイ『……。さ、今は手を動かそう。じゃあ、また』
ストレンジラブ『……元気でな』
オタコン『!? 待って』
ピピュン……
────
リキッド「これでいい……これでこの世界は……」
「道を間違えるな。オセロット」
リキッド「!? まさか!!! あなたは!!!!」
その男は緑の迷彩服に身を包み、右目は眼帯、額には灰色のバンダナ、口元には葉巻。
リキッド「ビッグボス!!!!! 生きてらっしゃったのですか!!!!!」
ビッグボス「待たせたな、リボルバー・オセロット。色々あってな」
オセロット「ああ……ボス。まさかこの日が来るなんて……」
ビッグボス「話は後だ。今はここを脱出する。いいな?」
オセロット「わかりました、ボス」
無人島海上上空───
パイロット「あれがメタルギア!?」
『マルチロックオン、目標、ミサイル群』
『発射』
ズシャアアアアッ
メタルギアから発射された17発のロケット弾。
それは爆撃機が放った爆弾を一つ一つ全て撃ち落として行く。
その内の一発が爆弾を抜け爆撃機に向かってくる。
パイロット「くっ、来るぞ! 回避!!!」
パイロットB「間に合いませんっ!」
鈍い音爆発音をあげながら爆撃機はゆっくりと海面に落ちていく。
『ターゲットの破壊を確認。死傷者なし、パイロットは脱出した模様。任務完了、任務完了』
『これよりポイントBへ向かう』
ガシャンガシャン────
スネーク「お前ら! 脱出するぞ!! 軍のミサイルがいつくるかわからん!」
唯「へ? ミサイル?」
和と戯れていた唯が不思議そうに首を傾ける。
りっちゃん「そうだった! さっき軍から通達があって……」
スネーク「迎えはあるのか?!」
りっちゃん「え~と……」
和「来てるわよ、迎え」
りっちゃん「えっ?」
和が上空を指差すと一機のヘリがこちらに向かって飛んできていた。
憂『おねえ~~~ちゃ~~~~~ん!!!!』
スピーカーを最大にした声で呼びかける
唯「憂~~~~~!!!! こっちこっち~~~~!!!!」
大きく手を振りながらヘリに駆け寄る唯。
梓「待ってくださいよ! 唯せんぱぁい!!!」
その後を追う梓。
りっちゃん「スネーク……あのな、」
スネーク「……俺は」
バ バ バ バ バ バ バ バ バ バ バ バ バ バ バ バ
島全体に何かが破裂したような音が響き渡る。
りっちゃん「なんだっ!?」
スネーク「軍のミサイルか!?」
「第一波は防いだ。早く脱出しろ。すぐに次が来る」
雷電「まさか……」
スネーク「バカな……」
りっちゃん「あっ……!」
雷電「ビッグボス…」
スネーク「ビッグボス!!!」
りっちゃん「ジョン!!!」
ビッグボス「おお、りっちゃん。生きてたか。仲間は助けられたか?」
りっちゃん「うんっ! 色々ありがとな! で、ビッグボス? ビッグボス……なんか聞き覚えあるなぁ」
オセロット「……」
りっちゃん「ってお前っ! いつの間に!? まさか……!」
ビッグボス「俺が解いた。悪いな、こんな奴でも大事な部下なんだ」
りっちゃん「ジョン? 何言って……」
ビッグボス「りっちゃん、お前はお前の信じる道を行け、いいな」
りっちゃん「うん……じゃなくて!」
雷電「ビッグボス、何の冗談だ。彼女を裏切るつもりか?」
ビッグボス「雷電、すまないな。俺はどうしてもやらなくてはならないことがある。EVAにはそう言っておいてくれ」
スネーク「あんたはあの時死んだはず……!」
ビッグボス「ソリッド・スネーク…。こんな形でまた出会うとはな」
雷電「ビッグママ、俺の組織のトップがビッグボスを再生したんだ。ソリダス・スネーク、リキッド・スネークの死体を回収し、ベースにしてな」
スネーク「バカな!!? リキッドならここに……」
オセロット「久しぶりだな……スネーク」
両手を銃に見立てて突き立てる。
オセロット「演技はもう必要ない。俺はリボルバー・オセロット!!! ビッグボスの部下だ」
スネーク「なんだと……?」
ビッグボス「さて……再会はここまでだ。迎えが来た」
ガシャンガシャンガシャンガシャン
りっちゃん「これは……メタルギア!?」
雷電「ZEKEか……また古くさいものを」
ウィィィン……
メタルギアの操縦席が開く、それを律達は固唾を飲んで見守る。
ミラー「久しぶりだなスネーク。FOXHOUNDの訓練以来か」
スネーク「マスター!? あんた何故!? リキッドに殺されたはずじゃ……」
ミラー「それ自体が偽装だったんだよスネーク。その時からビッグボス計画は始まっていた」
スネーク「ビッグボス……計画」
ビッグボス「そうだ。俺達はもう一度愛国者からの脱却を試みる!!! 本当の自由をこの手に掴むためにな!! 俺から始まった因縁だ。俺がケリをつける!」
ビッグボス「行くぞ、オセロット」
オセロット「はっ! ボス!!」
スネーク「待て!!!」
バシュン───
スネーク「ぐっ」
オセロット「ボスに近づくな。一度死んだとはいえ貴様の中のFOXDIEが感染する可能性もある」
ビッグボス「止めたければ来い。アウターヘイブンで待っている」
スネーク「アウター……ヘイブン」
りっちゃん「なんだよ……なんだよなんだよ!! どういうことなんだよジョン!!! あんたは……あんたは敵だったのか!?」
ビッグボス「……りっちゃん。お前の本当の名前はなんだ」
りっちゃん「……律だけど」
ビッグボス「律か、規律の律、旋律の律、いい名前だ」
りっちゃん「……ありがとう」
ビッグボス「律。お前さんが仲間達と共にありたいように俺は俺の信じるものがある」
りっちゃん「信じるもの…?」
ビッグボス「そうだ。その為にお前達と敵対しようとも、だ」
りっちゃん「ジョン…」
ビッグボス「お前はお前の信じるものと行け。じゃあな」
りっちゃん「ジョン……!!!」
ビッグボス「ピースだ」
ミラー「ZEKEに三人乗りはちょっと厳しいぞボス。いくら増設したとはいえ」
ビッグボス「カズ、いいから黙って行け。資料も手に入った、ここにはもう用はない」
ミラー「了解ボス」
オセロット「スネーク!!! また会おう!!!」シュバッ
スネーク「行かせるかっ!!!」
ソーコムを構えビッグボスに狙いをつける
ザンッ───
スネーク「なっ……」
ソーコムは横に真っ二つに斬れ落ちる。
スネーク「雷電! どういうつもりだ!!!」
雷電「さっき通信が入った。ビッグママはビッグボスを全面的に支援すると。だから撃たせるわけにはいかない。これが俺の道だ、スネーク」
スネーク「くっ! バカな!!」
ガシャンガシャンガシャンガシャン───
律とスネークは遠ざかって行くメタルギアZEKEをただ見ることしか出来なかった。
雷電「悪いな、スネーク……。こちらも迎えがきた」
スネーク「……」
雷電「次に会うときは敵かもしれないな」
スネーク「雷電……お前は」
雷電「俺はただローズを守る。それだけだ。またな、スネーク」
スネーク「……」
雷電「サムライ」
和「……なに?」
一抹の展開をただ傍観していた和に雷電が背中越しに話しかける。
雷電「次に戦場であった時は覚悟しておくことだな」
和「……心得たわ」
雷電「あいつらにも言っておいてくれ」
和「……ええ」
そうして雷電は自分を迎えに来たヘリに乗り、無人島を後にした。
この色々な思惑が交差した無人島を。
ババババ……
トゥルル……トゥルル……
オタコン『スネーク! 迎えにきたよ! 今梯子を下ろすから』
スネーク『……オタコン、俺は』
オタコン『スネーク。今はとにかくこの島を脱出するのが先決だ。話はまたそれからしよう』
スネーク『わかった……』
ピピュン……
スネーク「りっちゃん」
りっちゃん「スネーク……」
スネーク「俺はまだ戦場を降りるわけにはいかないらしい。だから決着はまた今度だ」
りっちゃん「……」
スネーク「やつも言ったがな、何を信じるかなんていうのはそいつにしか決められない。お前はあいつらと笑って過ごせる世界を作りたいんだろう?」
りっちゃん「うん……」
強く、強く頷いた。
スネーク「それでいい。頑張れよ、ルーキー。またいつかもし会うようなことがあったら…その時決着をつけよう」
りっちゃん「ありがとう、スネーク」
敬礼、
スネーク「…」
それに対しスネークも返した。
りっちゃん「(またきっと…どこかで会うような気がする、その時は…負けないよ。スネーク)」
最終更新:2010年10月09日 22:11