今日はお部屋の大掃除
そんな時机から封筒に入った原稿が

かきふらい「んー?・・・けいおん・・・?あぁ」

かきふらい「そういえば昔こんな漫画を集英社に出そうか迷ってたっけな・・・ハハ」

かきふらい「バンド漫画だったけか・・・懐かしいなぁ」

かきふらい「あーそうそう女の子が主人公なんだよなー」

昔かきふらいは漫画家を目指していた

太っている自分とは正反対の子が主人公の漫画を描こう と

かきふらい「この頃は 萌え だとかが流行ってたんだけか・・・」

かきふらい「うわー懐かしいなーこの主人公! 唯 かー」

(昔自分のクラスの好きだった子をイメージしたんだよな・・・フフ)

かきふらい「そうそう軽音部・・・バンド部だとなんだかガチっぽいって理由で軽音部にしたんだよなー」

かきふらい「あー澪や律ちゃんだー 俺を昔いじめてたヤツをイメージしたんだっけな・・・」

律ちゃんはすっごい気が強い子で澪は何かと頭を物で叩いてくる子だったなー

かきふらい「紬ちゃんの最初のイメージはクラスのマドンナだったっけ・・・そのまんまのイメージにしようと思ってたんだよね」

かきふらい「でもそれだと唯ちゃんが目立たないから お金持ちのお嬢様 ってイメージにしたんだ」

かきふらい「この頃は描きたい漫画を自由に描いてたっけ・・・」

今の僕はどうだろう したいことも怖くてできなくて周りの人の反応ばかり気にして

あげくの果てには漫画家という夢も諦めてフリーター

かきふらい「あの時叩かれてもよかったから集英社に持っていけばよかったな・・・」

でも・・・今からでも遅くないかも知れない・・・!この漫画を今集英社に持って行ってみよう・・!

叩かれてもいい・・!それでもいいからこの漫画を多くの人に見てもらいたい・・!

こうしてできたのが   けいおん!  なのでした

                                           終







かきふらい「……やっぱりダメだったか、集英社」

かきふらい「……ははっ、俺なんか漫画家になれる訳がなかったんだよ」

かきふらい「夢を見るのは終わり。俺はこのまま一生、独身のフリーターとして過ごしていくんだろうな」

かきふらい「……いや、嫁ならいるか。放課後ティータイムの4人が俺の嫁、ってね」

かきふらい「……それで十分だ。あの頃の思い出が詰まった『けいおん!』さえあれば、俺は生きていける」

かきふらい「……はぁ」

ピンポ-ン

かきふらい「うわっ!」

かきふらい「……誰だよ、もう。新聞の勧誘ならお断りですよ!」

ガチャ

唯「やっほー、ふらちゃん!」

かきふらい「……えっ?」

唯「お邪魔しまーす」

かきふらい「……いや、えっ、どちら様?」

唯「もう、忘れたの? 桜ヶ丘高校1年生の、平沢唯だよ!」フンス

かきふらい「……唯、って、本当に?」

唯「ふらちゃんに呼ばれたから来たのに、その言い方は酷いよぉ」

かきふらい「呼んだ、って、俺が?」

唯「そう。ふらちゃん、今日から魔法が使えるようになったでしょ?」

かきふらい「……魔法、あっ、まさか、そうか」

唯「えーと、私の言ってる意味、わかるよね?」

かきふらい「いつの間にか、30歳になってたんだな。自分の誕生日も忘れてたなんて」

唯「その魔法の力で、ふらちゃんが寂しくないように、私がここに来る事ができたんだよ」

かきふらい「そんな事が、本当に」

かきふらい「……いや、目の前にいる君が何よりの証拠か。君は確かに、俺の描いた平沢唯そのものだ」

唯「わかってくれたようで何より!」フンス

かきふらい「……そう言えば、他のみんなは?」

唯「みんなって?」

かきふらい「ほら、澪とか、律とか、紬とか……」

唯「今はまだ、私しかいないよ」

かきふらい「……どうして?」

唯「だって、まだ『けいおん!』は始まっていないから」

かきふらい「……どういう意味だ?」

唯「そのままの意味だよ。まだストーリーは始まっていない。だから私は、軽音部のみんなと出会っていない」

かきふらい「……えーと、それは、つまり」

唯「澪ちゃんや、りっちゃんや、ムギちゃんに会いたいの?」

かきふらい「……そりゃ、会いたいさ。みんな可愛い俺のよm」

唯「俺の、何?」

かきふらい「……娘たちだからな!」

唯「それなら、ストーリーを始めてくれなきゃダメだよぉ」

かきふらい「始める、って?」

唯「もう一回、ちゃんと『けいおん!』を始めるんだよ。ネームやラフ画じゃなく、ちゃんとした作品として」

かきふらい「そうすれば、他のみんなにも会えるのか?」

唯「うん。そうしないと、このまま何も始まらないでしょ?」

かきふらい「……このまま、何も、始まらない」

唯「ねぇ、描いてくれる?」

かきふらい「……わかった。ちょうど明日はバイトも休みだ、久しぶりに徹夜でもするか」

唯「ありがとう! じゃあ今日は帰るねー?」

かきふらい「あぁ、次に来る時は4人一緒でな!」


2日後

かきふらい「……疲れた」

かきふらい「2徹で原稿を仕上げてからバイトなんて、コミケ前の日常茶飯事だったのに」

かきふらい「……もう若くないんだな、体力が衰えてやがる」

かきふらい「……いつまでも、こんなバイト生活を続ける訳にはいかないのかもな」

かきふらい「夢に見切りを付けて、大企業の正社員になったアイツは、もう家を買ったんだっけ?」

かきふらい「……はぁ、俺の人生って」

ピンポ-ン

唯「ふらちゃん、元気?」

かきふらい「……いや、案外悪くないのかな?」

澪「こら、勝手に人の部屋のドアを開けるな!」

律「いいじゃんか~、ふらちゃん別に嫌がってないみたいだし~」

紬「ここが、かきふらい先生のお家なのね!」

唯「という訳で、さっそく軽音部のみんなを連れて来ました!」フンス

かきふらい「……すごい、本物だ」

かきふらい「秋山澪、田井中律、琴吹紬。みんな俺が描いた通りだ」

唯「私も忘れないでよ!」

かきふらい「ははっ、もちろん。さぁみんな、狭い部屋で申し訳ないけど、ようこそ我が家へ」

紬「お茶をいれるので、台所をお借りしますね」

かきふらい「ありがとう、自由に使って構わないよ」

律「さてさて、どこにエッチな本を隠してあるのかな?」ゴソゴソ

澪「こら、失礼だろ!」

かきふらい「おいおい、俺の部屋を漁らないでくれよ」

かきふらい(昔描いたエロ同人誌なんか見つかったら大変だ)

唯「りっちゃん隊長、ベッドの下の箱が怪しいと思います!」

かきふらい「だから駄目だって!」

かきふらい(まさかピンポイントで保管場所を当ててくるなんて!)

かきふらい「……それにしても」ボソッ

唯「んっ?」

かきふらい「魔法の力って、凄いんだな」

唯「そうだねー」

かきふらい「夢に見た景色が、目の前で広がってる」

唯「でも、ふらちゃん。気をつけてね?」

かきふらい「……何を?」

唯「ふらちゃんが『けいおん!』を描くのをやめたら、私たちは消えちゃうんだよ」

かきふらい「えっ、そうなのか?」

唯「だって、ふらちゃんが描いたのは、今日の私たちだもん」

唯「明日の私たちは、まだ始まっていない」

唯「だから、ふらちゃんが明日の私たちを描いてくれない限り、私たちは今日で終わりなんだよ」

かきふらい「……それは嫌だな」

唯「私たちも、終わりたくないよ。せっかく始まったんだから」

かきふらい「でも、簡単な話じゃないか」

唯「えっ?」

かきふらい「俺が描き続ける限り、この日常が終わる事はないんだろう?」

唯「じゃあ、ずっと『けいおん!』を描いてくれるの?」

かきふらい「あぁ、ずっとずっと描いてやるさ。『けいおん!』は、永遠に終わらせない」

唯「へへっ、ありがとう、ふらちゃん!」



翌週

唯「じゃーん、ギー太だよっ!」

澪「こんなにいいギターを、あんな値段で買えたなんて……」

律「まぁまぁ。神様ムギ様感謝します、でいいんだよ」

紬「そうよ、気にしなくていいって何度も言ってるじゃない」

かきふらい「楽器も揃ったし、まず唯はコードを弾けるようにならないとな」

唯「任せてよ、バッチリ練習するから!」


さらに翌週

澪「唯の追試が終わって、やっと練習ができるようになった……」

唯「うぅ、ごめんなせぇ……」

紬「それにしても、唯の妹の憂ちゃんはしっかり者だったわね」

律「だらしない姉を持って、自分がしっかりしなきゃ、と思ったんだろうなぁ」

かきふらい「たぶん、それで間違いないね」

唯「むぅ~」

かきふらい「……魔法を使えるようになってから、毎日が楽しくて仕方ない」

かきふらい「必死にストーリーを考えて、睡眠時間を削って絵を描いて」

かきふらい「そうやって創り出した軽音部の日常が、現実になって」

かきふらい「その後日談を聞かせに、唯たちが家まで遊びに来て」

かきふらい「最高じゃないか。本当に、夢みたいだ」

かきふらい「……とはいえ、俺が三十路の独身フリーターである事実に変わりはないけど」

プルルル...

かきふらい「……はい、もしもし」

友人「ようっ、久しぶり!」

かきふらい「おぉ、お前か。どうしたんだ、突然?」

友人「特に用がある訳じゃないが、たまには昔の仲間と飲みにでも行こうかと思ってな」

かきふらい「俺は構わないが、お前の嫁さんは大丈夫なのか?」

友人「いつも早く帰ってサービスしてるんだ、一晩くらい問題ないさ」

かきふらい「……そうか、わかった」


居酒屋

かきふらい「……それじゃ、乾杯」

友人「カンパーイ!」

かきふらい「それにしても珍しいな、お前から誘ってくるなんて」

友人「いや~。毎日同じ事の繰り返しで、飽き飽きしてきてな」

かきふらい「家と職場を往復するだけ、ってか?」

友人「その通り。顔を合わせる人間がいつも変わらなくて、面白くない訳だ」

かきふらい「それがお前の選んだ道だろう。堅実に生きてきたからこそ、気立てのいい嫁さんとマイホームを手に入れたんじゃないか」

友人「……マイホームって言っても、30年ローンだけどな」

かきふらい「それだって十分に凄いさ。出版社ってのは、いい給料が出るんだねぇ」

友人「……まぁ、人並み以上の生活ができるのは間違いないからな。否定しないよ」

かきふらい「漫画家になりたいなんて、馬鹿な夢を捨てて正解だったと思うぞ?」

友人「……」

かきふらい「下手な夢にしがみついてた俺は結局、漫画家になれずにフリーター生活だからな」

友人「……その、漫画家を諦めた俺が、漫画雑誌の編集者をやってるんだから皮肉なもんだ」

かきふらい「あれ、旅行雑誌じゃなかったのか?」

友人「それは前の部署。今年から異動になったんだよ」

かきふらい「じゃあ今は、なんていう雑誌の担当だ?」

友人「……まんがタイムきらら。いわゆる『萌え系』4コマの専門誌だよ」

かきふらい「萌え系4コマ、っていうと、えーと」

友人「最近ブームの『らき☆すた』みたいなやつだよ。よその雑誌だけどな」

かきふらい「あぁ。女の子たちの日常を、ゆる~いテイストで描く感じの」

友人「そうそう。でも、ゆる~いテイスト、ってのが意外と難しい」

かきふらい「そうなのか?」

友人「あんまりダラダラさせると、起承転結も何もなくなって、まったく面白味のない作品になるだろう」

かきふらい「あぁ、確かに」

友人「その辺りのさじ加減を間違えなければ、今の時代、ああいう4コマ漫画は凄いヒットになると思うんだ」

かきふらい「実際、『らき☆すた』の勢いなんか凄いからな」

友人「正直言って、今うちの雑誌には、そこのさじ加減の上手い漫画家がいない」

かきふらい「……そうなのか」

友人「有能な新人を探してるんだが、なかなか見つからないんだよなぁ」

かきふらい「……なるほどね」

友人「……そう言えば、お前はもう漫画は描いてないのか?」

かきふらい「……」

友人「どうなんだ?」

かきふらい「……描いてない、事もない、かな?」



唯「……ふらちゃん、どうしたの?」

かきふらい「……はっ、えっ?」

律「さっきからボーッとして、返事もしないで」

かきふらい「あぁ、ごめん。ちょっと考え事をしてたんだ」

澪「私たち、何か気に障るような事でも……?」

紬「もしかして、私が勝手にティーセットを持ち込んだから……?」

かきふらい「いや、全然そんな訳じゃないんだ。まぁ確かに、いきなり段ボール一箱分も食器が運ばれて来た時は驚いたけどさ」

唯「ふらちゃん、何か悩み事があるなら相談してよ!」

律「相談相手が唯じゃ、何も解決しなさそうだけどな~」

かきふらい「ははっ、いや本当に何でもないんだ。心配かけちゃって悪かったね」

唯「じゃあ、そろそろ私たちは帰るよ。次のストーリー、早く描いてね!」

かきふらい「あぁ、任せてくれ。それじゃ!」

バタン

かきふらい「……ふう、帰ったか」

かきふらい「自分で描いておいて言うのもアレだけど、やっぱり最高だよな」

かきふらい「唯も、澪も、律も、紬も、それぞれ魅力的で」

かきふらい「『けいおん!』は……、こんな素晴らしい女子高生の日常は、きっと他の誰にも創れない」

かきふらい「集英社に持ち込んだ原稿と比べても、クオリティは段違いだと思う」

かきふらい「……これも魔法のおかげか。クソみたいな俺の現実を、変えてくれる魔法」

かきふらい「4人を独り占めできる現状には満足してるし、こんな素敵な世界を他人に見せたくない気持ちもあるけど」

かきふらい「……もう少しだけ、欲張ってみてもいいかな?」


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最終更新:2010年10月10日 22:45