「えへへ…憂の事はわかってるから…大丈夫だよ…」

「お姉ちゃん………」

「じゃあ、帰ろうか、私達の家へ!」

「…うん!」

そう言って私達は歩き出した
同じ歩幅、同じ速さで

………
……


数日後、引越し前夜。


「ふー、よし、大体終わったなー」

そう言って思い切り伸びをするのは律さん

「みんなありがとね、引越し手伝ってもらって」

「いいってことよー」

「そうだぞ、遠慮なんかするな」

「うふふ」

軽音部の皆さんがお姉ちゃんの引越しを手伝ってくれました

「さて、そろそろ帰るか律」

「えー、もう帰っちゃうのかー?」

「バカ…」

「……あっ」

律さんがお姉ちゃんを見てきづいたようです




「そっか…へへへ、よし、んじゃ帰るかー!」

「そうね、唯ちゃん、憂ちゃんも、またね」

「憂ちゃん、元気でな」

「はい!、みなさん、ありがとうございました!」

お辞儀おしてお礼を言う
そして皆さんはそれぞれの帰路に着きました

「じゃ、行こうか憂」

「うん…」

私達は家の中に戻りました


「あー、疲れたねー」

「そうだね…あっ、もうこんな時間だよ」

時計を見ると、針は11時を回っていました

「ほんとだー、じゃあ今日はもう寝ようか!」

「うん………えと…」

「憂…一緒に寝ようか」

「…!……うん!」

私が言う前にお姉ちゃんがそう言いました

「じゃ、行こう!」

「うん」

私達は階段を一緒にをあがっていきます…


………
……


パサッ
「うふふ…お邪魔しまーす」

「いらっしゃい、お姉ちゃん」

そう言ってお姉ちゃんがベットに入ってきます

「…」
「…」

しばらくの沈黙
わかってるから、
…これが二人で過ごす最後の夜

「お姉ちゃん、明日、何時ごろでるの?」

「んー、向こうでの整理もあるし朝かなー」

「そう……」

「……えへへ、少し寂しくなるね…」

「っ…そうだね……」

息が苦しくなります
明日には…そう思うだけで…


「憂………本当に、今まで、ありがとね…」

「……っ……」

胸が苦しいです
潰れてしまいそうな位…

「…憂?……泣いてるの……?」

「……え………?」

私は自分の顔を触りました
…濡れてる。
私の目からは涙が出ていた、自分でも気づかない
それ程自然な涙。



「なん…で……私…っ!」

「憂……泣かないで?…憂…」

そう言ってお姉ちゃんは頭を優しく撫でてくれました
お姉ちゃんの温もりを直に感じて安心したのでしょうか
私の目からはとめどなく涙が流れました

「…ッ…おねぇ…ちゃ……グスッ……」

「憂……いい子…いい子…」ポロリ

見ればお姉ちゃんの目からも涙が溢れていました
ごめんね……笑顔で送り出すってきめたのに
…決めたのに……

「おねぇ…ッ…ちゃ…うっ……うわぁぁぁぁっ」

「憂…」ギュ

お姉ちゃんは私の名前を呟くとしっかりと
だけど優しく、私を抱きしめてくれました

「うわぁぁぁぁぁん、おねえちゃぁ゙ぁぁぁぁん」

「ふふ…うぃは…グスッ……泣き虫さんだね?……」

泣きじゃくるわたしを
お姉ちゃんはずっと慰めてくれて…


………
……

「憂…落ち着いた?」

「うん……ごめんね、お姉ちゃん」

「いいんだよ、私は、憂のお姉ちゃんだから!」

そう言って笑うお姉ちゃん
その笑顔はまるで、
天使みたいに眩しくて…

「憂…寂しいけど……私は憂の事、ずっと想ってるから」

「…うん……」

「どんな時も、学校でも、お風呂でも、寝るときも、トイレだって…」

「………ぷっ、あははは、トイレは流石におかしいよお姉ちゃん」

「えーそうかなぁ?、…どこだって、離れてたって私の気持ちは変わらないから」

「………うん」


「憂も…忘れないでね?」

「ふふっ、お姉ちゃんの事、私が忘れるわけないじゃん…」

「そう?…えへへ、嬉しいよ、………」

「私も…最後まで…ありがとう、お姉ちゃん」

「うん………もう。大丈夫みたいだね」

「…うん、私頑張れるよ…もう泣かないよ!」

「本当に?…約束だよ?」

「うん…約束約束…えへへ」

「ふふっ、やっぱり憂は笑ってなくちゃ…これで私は安心だよ憂」

そう言って、姉ちゃんは私を抱きしめました
最後まで、最後まで私を心配してくれる
私の、優しいお姉ちゃん

「おやすみ、憂」

「うん、おやすみ」

………
……


「じゃあ、行って来るよ、憂!」

「うん!、行ってらっしゃい、がんばってね!」

「まかせて!、夏にはまた帰って来るから」

「…うん」

「寂しくなったらいつでも遊びに来てもいいんだよ?」

「ふふっ…わかった」

「じゃあいってきます!」

「行ってらっしゃい、お姉ちゃん!」

………バタン

最後にお姉ちゃんは満面の笑みを浮かべて出て行きました

「………行ってらっしゃい」ボソッ

「よし、部屋をかた付けちゃおう!」

私はお姉ちゃんの、まだ少し散らかっている部屋を片付けにいきました
掃除をしている時です。


「………あれ?」

お姉ちゃんの部屋に手紙が置いてありました

カサッ

(~憂へ~)

「お姉ちゃん……」クスッ

思わず笑みがこぼれます
全く、お姉ちゃんは心配性です

私は手紙を広げました


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

憂へ、これを見てるっていう事はもう私は行ったんだね。
また泣いてる?…えへへ、大丈夫だよね!

憂はね、みんなに何でもできるって
よくできる子、そう言われるけど
本当は寂しがりなの、お姉ちゃんは知ってるよ。

それにすぐ自分で全部背負い込んじゃう。
それだけはお姉ちゃんも関心できないよ。
憂にはね、あずにゃんや純ちゃんっていう。
とっても頼もしい親友がいるんだから。
私もそこは心配してないよ、二人ともとってもいい子だから。

 憂、恥ずかしいから、手紙に書くね

  私は、平沢唯は、憂のことが、一番大切。
    世界中の誰よりも、憂が大好きだよ!

えへへ、やっぱり恥ずかしいや

憂…無理しないでね?、いつでも頼ってね?

私は、憂のお姉ちゃんなんだから!

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「…お姉ちゃん」

私は思わず外に飛び出した
…もちろん、お姉ちゃんはもう居ない

「………ふふ」

なぜだかわからないけど
自然に笑みがこぼれた
そして私は、晴れ渡る空を見上げた


季節は春、それは別れと新しい出会いの季節


いつかお姉ちゃんと見上げた
あの日と同じ空を


でもわかっている
ずっと変わらないものなんて無いんだって
それが良くても、悪くても


だから私は空に呟いた
今までの全て思い出に、おもいを馳せながら…



「ありがとう」





おわり



最終更新:2010年10月10日 23:57