「おきてー、お姉ちゃん」

「んぅ…後少しー」

「ほーら、今日は出かけるんでしょ?」

「はっ!……おはようございます…」

私はまだ眠い目をこすりながら憂に反応します

時は早く、既に3月、春もすぐそこです

「ふふっ、ご飯できてるからね?」

「はぁーい、着替えたらいくよぉー」

トントントン

憂が階段を降りる音が響きます
最近は自分で起きるように努力してるんですが…えへへ
また憂に起こされちゃいました、失敗失敗
…さて、着替えるとしますか



昨日、憂をお出掛けに誘いました
最近は大学の準備や引越しで忙しかったから。
それに、憂の事。
ううん、本当は私自身の事かもしれません


ガチャ
「ふぁー」

思わず欠伸が出てしまいます

「はい、朝ご飯だよ」

そう言って朝ご飯を並べる妹の憂、大切な家族
憂のご飯はとってもおいしくて
憂の顔をみるだけで元気が出ます

「おぉ、ありがと憂~、いただきます!」

「私も、いただきます」

でも、それも今週で最後。
来週には私はこの家を出て行きます。
それは悲しいことではありません
…わかっていても、憂を見ると胸が苦しくなります
私は憂が大好きです、憂の笑顔が大好きです
憂の悲しい顔は見たくありません


「よし、じゃあそろそろ行こうか!」

朝ご飯を食べ終わった私はそう言って立ち上がります

「そうだね、じゃあ少し支度してくるね」

「りょーかいです!」

憂は笑いかけると自室に向かいました
私は気づいています、憂の些細な変化。
憂の笑顔がいつもと違うことに。


「おまたせ、お姉ちゃん」

「よし、じゃ行こうか!」

私は勢い良く外へ飛び出しました。
まだ肌寒さが残る3月。
でもその空はとても晴れていて …
その日差しの中、私と憂は歩き出しました

「そういえばお姉ちゃん、どこに行くの?」

歩きながら憂が私にそうたずねます

「んー……それが、実は決めてないんだよね…でへへ」

私は申し訳ない、と呟いて苦笑いしました
実は全く決めていません、
でも、憂には全部わかっているようでし

「ふふふ…やっぱり」

憂はまったく、と言う風に笑います。
いつもと同じ笑顔、それを見るだけで私の胸が温かくなるのを感じました

「えへへ、じゃあまずは買い物でも行こうか!シッピングショッピング!」

私は元気よくそう言いました

「憂は何かほしい物あるー?」

「んー、やっぱり服とかかな?」

「おっ、いいねいいね、じゃあまずは服屋に直行だぁ!」

私は意気揚々と前を歩きます
憂は少し後ろを歩いています
おっと、忘れていました

「あっ………憂!」

私は振り返り憂いに向き直ります
これがなきゃ始まりせん

「ん?なぁに、お姉ちゃん」

「ふふっ…はい!」

私は憂に向かって手を差し出します

「手、繋ごうよ!」

「………うん!」

憂は私の手をしっかりと握りました

「ふふっ……温かいね、お姉ちゃん」

そう笑いながら言います
その笑顔が嬉しくて、
わたしもつい上機嫌になります

「そうだね、あったかあったか!」

ふふ、私たちは笑いながら目的地に向かいました。



洋服屋

「お姉ちゃん、なんかいいのある?」

「んーそうだなぁー」

私はあっちを見たりこっちを見たり、中々決まりません
そこで憂にも聞いてみました

「憂はー?なんかあるー?」

「えっと………どうだろ」

そう言って困った表情になりました
まだ決まってないようです…ふふふ。
それなら、と私は声をあげました

「じゃあ、私が選んであげるよ!!」

「え?お姉ちゃんが…?」

憂が少しびっくりしながら言います

「うん!私にまっかせなさい!」

「…うん、わかった、お姉ちゃんに任せるよ」

「ふふふ、憂にピッタリ似合う服、探してあげるからね!」

そう言って私は服選びに戻ります
憂に似合う服、どれにしようか迷います
一つ取っては憂を思い浮かべる。
その動作が何か楽しくて。夢中になって店内を回ります


私は立ち止まると、一枚のTシャツを手に取りました
可愛い楽器のキャラクターがプリントされたTシャツ。

「…ふふ、ギー太そっくり」

そう笑っていると横のシャツにも目がとまりました

「あっ…色違い」

色違いの同じTシャツ。
まるで…それ私と憂のような

「…うん、これにしよう!」

これは中々良い選択です、憂の笑顔が浮かんで頬が自然と緩みます
私はTシャツを手に取ると、憂の元に向かいました

「ふふ………じゃーん!」

しばらくして戻った私は憂にTシャツを見せました
憂はシャツをじーっと見た後、顔を上げて微笑みました

「…ふふふ、可愛いね、ギー太かな?」

「ちっちっち、わかってないな憂、これはギー汰だよ!似てるけど違うよ!」

そう言っておどけて笑う私、それを見て憂もクスクスと笑います

「それにね、これ見て」

「…?」


そう言って私が取り出した、色違いのTシャツ
おそろいのTシャツ…。

「私と憂、二人でおそろいだよ~」

「…お姉ちゃん」

私が出したおそろいのTシャツ
私と、憂
同じように、どこか違っても、一番近い存在… なんてね!

「…素敵だね、お姉ちゃん」

「えへへ~、気に入ってもらえてよかったよ!」

憂に気に入ってもらえてとっても嬉しいです。選んだ甲斐があります!
憂ははしゃぐ私を見てニコニコしてる……
私にはわかります、そのどこか悲しげな笑みに。



「よし、じゃあそろそろいい時間だし、ご飯食べに行こうか!」

「おっ、いいねいいね、何食べようか~」

服の勘定を済まし、私たちはまた歩き出します


「さて、どこで食べようか」

「ん~そうだなぁ~、あっ、見てみて憂!!、春のスイーツ追加だって!」

そう言って私が指さした先には「春のスイーツメニュー追加」
と垂れ幕が下がったファミレスだった
甘いものに目の無い私は、正直ワクワクが止まりません

「ふふ、じゃあそこに行こうか」

「うん!レッツゴー!」

そう言ってはしゃぎながら憂の手を引いて歩きます

「んー」

「どうしたの?お姉ちゃん」

憂がメニューを凝視している私に問いかけます

「んー?、いやこのスパゲッティ食べたいけど、こっちのハンバーグも捨てがたい…」

そう、私は今迷っています
このシーフードスパゲッティ
それともこの特製デミグラスハンバーグ……おっと涎が

「じゃあさ、わたしが一つ頼むから、半分こしようか」

それを見かねたのか、憂いが笑いながらそう言います
流石私の妹です、感激です

「えっ!いいの?、ありがと憂~」ガバッ

「わっ、もう…お姉ちゃんったら」クスッ

抱きつかれた憂は周りの視線が恥ずかしいのか頬をすこし紅色させながら微笑みます
そんな憂の反応を見るのは楽しいです。
あ、わざとやってるわけじゃないよ?


「ふー、満腹じゃ」

うー、思ったよりボリュームがあったな…
ちょっと苦しいや

「もう…だらしないよ?」

「えへへ、面目ない…」テレテレ

憂に叱られました、
えへへ、きをつけましょう

「あっ、お姉ちゃん、デザート来たみたいだよ」

その直後、頼んでおいたデザートが運ばれてくる

「むほぉ、待ってました!!」

子供のようにとびつきます
これが無くては来た意味がないというものです!

「いただきます!」

「ふふっ…いただきます」

私は早速パフェを食べ始めます
一方憂はケーキを………ケーキを……ゴクリ

「…」ジー

「クスッ、一口食べる?お姉ちゃん」

いつの間にか憂のケーキに意識がいっていたようです
……お恥ずかしい

「えっ!?いいのぉ?」パァッ

ですが私の思いが通じるとは流石憂!
それではケーキをいただきましょうか…でへへ

「じゃあいただきます!、憂!、あーん」

「…え……」

憂が戸惑っています
憂が恥ずかしがるのはわかっていました
これでも憂のお姉ちゃんです、憂の事はわかります

「ほら、はやくはやく~」

「もうっ、しょうがないなぁ…はい、あ~ん」

「パクッ………うん、んまい!!」

それでも私の言うことは聞いてくれるのが憂です

「良かったね、お姉ちゃん」

そう言って憂ははにかみます

「じゃあ、はい、憂、あーん」

「えぇ、いいよ私はぁ」

今度は私の番です、私はスプーンを憂に向けました
えへへ、照れてる照れてる


「いいからいいから!、あ~ん」

「え…えと…あっ、あーん」パク

「えへへ…おいしい?」

「…うん!、冷たくて、すごくおいしいよ、お姉ちゃん」

「よかったよかった、えへへ」

「ふふふ…」

本当に楽しいな
いつもと変わらない日常
でもやっぱり…どこかで不安になります
幸せなら、幸せなだけ。


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最終更新:2010年10月11日 00:18