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憂「ん……」

憂「そっか、私は」

憂「うん……よしっ」


 ある日の平沢家

唯「ただいまー」ガチャ

憂「おかえり、お姉ちゃん」トットッ

唯「あれー? きみ、どなた?」

憂「今日からお姉ちゃんの妹になる憂だよ。とりあえずお姉ちゃん、お部屋まで行こう?」

唯「おお、いもうと! うん、行こう行こう!」トテテ

 唯の部屋

唯「えっと、ういちゃん。いや妹だから……うい!」

唯「ういはどうして私の妹になったの?」

憂「落ち着いて聞いてね、お姉ちゃん。私は未来から来たの」

唯「未来?」

憂「うん。私はずっと未来からやってきた、お姉ちゃんの子供なんだ」

唯「え……」

唯「いもうとじゃ、ないの……?」グスン

憂「あ、えと……妹だよ、妹なんだけど……」

憂「……ううん、何でもないっ!」

憂(ほんとはお姉ちゃん、このままじゃ……)

憂(でも今はまだ、ほんとのことを伝えられそうにないね)

憂「私はお姉ちゃんの妹だよ。お姉ちゃんの手助けをするために未来から来たんだ!」

唯「そうなんだ。大変だったね……」

憂「ううん、大丈夫! これからお姉ちゃんがしっかりできるように頑張るからね!」

憂(そしてその為に……妹として、この家に潜りこませてもらいます)

唯「ういー? よだれよだれ」

唯「もー、しょうがないなー」フキフキ


――――

 10年後

唯「ただいまー」

憂「おかえり、お姉ちゃん。あれ?」

唯「軽音部のお友達だよ。りっちゃんに、澪ちゃん、ムギちゃん」

律澪紬「おじゃましまーす」

憂「初めまして。姉がお世話になってます」

唯「紹介するね。未来から来た妹の憂」

憂(あっ)

律「いやナチュラルに言われると反応しづらいんだけど」

紬「未来からなんて……唯ちゃん、面白いのね」

唯「ほんとだよー! ね、憂?」

憂(ヤバイヤバイ完全に忘れてた私の使命……お姉ちゃんを自立させなきゃいけないのに!)ダラダラ

唯「あれ、どしたの憂?」

律「唯のボケに乗りきれなかったみたいだな」

憂「い、いえ! お姉ちゃんの言うとおり、私は未来から来たんですよ!」

澪「なんか、まさしく唯の妹って感じだな」

唯「そうかなぁ? じゃ憂、私たち部屋で勉強会してるからね」

憂「うん、頑張ってね!」

 ガヤガヤ…

憂「……えーっと」

憂(ど、どうしよう……お姉ちゃんのお世話をしてたらいつの間にか10年も経ってたよ)

憂(お姉ちゃんは未だにオムライスも作れないし……)

憂(うん、もうお姉ちゃんも高校生なんだし、そろそろ本当のこと話してもいいよね)

憂(……あれ? 私の目的って、こんなことじゃなかったような……うーん?)

澪『静かにしろっ!』

律『あてぇ!』

憂(でも今は大変そうだし、後にしておいたほうがいいよね)

憂「よし、今晩……今晩話そう」

憂(そうと決まれば、早速今晩お姉ちゃんに教える料理を考えよう……ん?)

 トン トン

律「あーあ、せっかく唯の部屋来たのによぉ……恨むぞ、澪よ」

憂「律さん?」

憂(この頃はカチューシャしてたんだ。……知ってるけど)

律「あ……う、憂ちゃん。ねぇ、暇だから構ってよ」

憂(……)

憂「はいっ♪」

憂(このゲーム……)ピコピコ

憂(昔はお母さんにぜんぜん勝てなかったけど)チラ

律「ふんっ! 3連鎖!」

憂(今なら……)

律「って、おいおい!」

憂「10連鎖組んでみました」

律「ギャアアアアアアア!!」

憂「あれ、失敗したな……8で止まっちゃった」

律「ばたんきゅ~……ぐす」

憂「あ……ご、ごめんなさい」

憂(でも、勝てたなぁ)

律「憂ちゃん……バカに強いな」

憂「小さいころから鍛えられてますので」

律「そうなのか? 唯がこういうゲーム得意ってのは意外だなぁ」

憂「お姉ちゃんも確かに強いですけど、やっぱりお母さんがいちばんの強敵でしたよ」

律「でした、ね……今はもう打ち砕いてしまった訳か」

憂「そうですね」

憂(……ついさっき、だよ)

律「うん、ゲームはよそう。お話しようか憂ちゃん」

憂「ええ、いいですよ?」

律「あ、そうだ。憂ちゃん未来人なんでしょ?」ニヤニヤ

憂「はい。10年前、お姉ちゃんの力になるために遠い未来からやって来ました」

憂「それ以来、妹という続柄をかたって一緒に暮らしているんです」

律「というと、ほんとは妹じゃないの?」

憂「そうなります。……私は、お姉ちゃんの娘なんです」

律「ほえぇ」

憂(信じてないなぁ、お母さん)

憂「未来のこと、お話しましょうか?」

律「お、それじゃあ……そうだな、私の結婚する相手とかわかる?」

憂「下手に未来を変えないって、約束できるならいいですよ」

憂(変わらないって、信じてるけどね)

憂(だってお母さんたちは、もともと……)

律「変えない変えない。いいから言ってごらんなさい?」

憂「……律さんが結婚するのは……お姉ちゃんです。平沢唯です」

律「」

憂(ぽかーんとしてる)

律「え、ちょ、待っ」

憂「結婚記念日は7月20日。大学3年生の時に結婚します。式はささやかにこの家で開かれます」

憂「大学は今いる軽音部のお仲間と、あともう一人と同じ大学ですね。律さんとお姉ちゃんは生物学専攻です」

憂「律さんは大学を卒業した後、お姉ちゃんと共に研究者になります」

憂「そして、共にある偉大な発明をするんですよ」

律「え……と」

律「7月、20日か……へえぇ」

憂(お母さんはずっと言っていた。昔から、大好きな夏の始まりの日に結婚したかった、って)

律「あながち、信じられない話じゃないな? うん」

律「そ、それにしても私が唯と結婚か……へえ、へえぇ」

憂「……律さん、お姉ちゃんのこと好きなんですか?」

律「ま、まあな。ていうか訊かなくても分かってたりとかする?」

憂「えへへ、もちろんです。……信じてくれたみたいですね」

憂「でも律さん、気を抜かないでくださいね。律さんのアプローチによって二人は付き合うことになるんですから」

憂(ほんとはお姉ちゃんも既に律さんを好きなはずだけど、一応ちょっと念を押しといたほうがいいよね)

律「くっ、そうか……頑張らなきゃな」

律「……ありがとう、憂ちゃん」

憂「事実を言ったまでですから」

律「そっか……頼りにしてるよ、未来人」

憂「あんまり人には話さないでくださいね? ヘンだと思われますから」

律「確かにそうだな。私自身、冗談だと思ってたし」

律「内緒にするよ」

律「でもほんと、憂ちゃんがいてくれてよかったわ」

憂「!?」ドクンッ

憂(なに、いまの……)

律「……どうかした?」

憂「あ、いえ……」

 『憂がいてくれて、よかった……』

憂「なんでもないですよ?」

律「そう? 慣れないこと話しすぎて、ちょっと疲れたかな……」

憂「そうですね。少し休みましょうか」

律「ふー……」ゴロン

憂「よいしょっと」ゴロン

律「……」

憂「ごろごろ~」ピトッ

律「わっ。どうした憂ちゃん?」

憂「人とくっつくのって、なんだか落ち着きませんか?」

律「まぁ、分からないでもないな」

憂「……律さん、抱きしめてください」

律「へっ? いや、急にそんな事……」

憂「駄目ですか……?」

律「だめじゃないけど……」ギュッ

憂「……あったかいですね」

律「そりゃ良かった」

律「……憂ちゃん。未来の世界ってどうなの?」

憂「今とそんなに変わり映えはしませんよ。女性同士でも妊娠、出産ができるようになったくらいでしょうか」

律「すごい技術じゃないか、それ」

憂「はい。本当にすごいことです……」

律「弊害とか、ないの?」

憂「……あっ」

 『病気と戦う力が、すごく弱いってことなんだ』

憂(まただ……この声、お母さん……?)

律「まぁ、無いってわけはないか……」

憂「律さんっ」ギュウゥ

律「ん? よしよし……」ナデナデ

憂「……」


――――

憂「すいませんでした、律さん」

律「いいってことよ。正直、悪い気しないし」

 トン トン

澪「ここにいたのか、律。帰るぞ」

律「あれ、もう勉強終わったのか?」

澪「もうって……夜の6時だぞ。試験範囲全部やるにしたって、かかりすぎだ」

律「そうか? 勉強しないからわかんね」

紬「でも、唯ちゃん頑張ってたわよ」

澪「頑張りすぎて、範囲が終わったと同時に寝始めたけどな」

律「またずいぶん器用だなオイ」

憂(それじゃあ……起こさないほうがいいかな)

憂(話はまた明日でもいいはず)

紬「それじゃあ憂ちゃん、私たちは失礼するわね」

憂「はい、またいつでもいらして下さい」

澪「ありがとう。それじゃ、お邪魔しました」

律「またな、憂ちゃん」

 ガチャ バタン

憂「またね……お母さん」

憂(……私も寝ようかな)

憂(なんだかお腹いっぱいだし、お風呂入ってすぐ寝ちゃおう)

憂「ふぁ~……」スタスタ


 『おかあさん……』

 『憂……なにか、したいことはない?』

 『……おかあさんたちと、もっといっしょにいたい』

 『っ……』

 ギュッ

 『ごめん……ごめんね、憂!』

 『私がもっと、しっかりしてたら!』

 『……』

 『憂っ! ういーっ!!』


唯「うーいー!」ユサユサ

憂「……どうしたの、お姉ちゃん」

唯「えへへ……お腹すいちゃった。憂のご飯が食べたいな」

憂「自分で作りなよ……少しはできるでしょ?」

唯「憂のがいいんだよ」

憂「もう……わかった。ちょっと待ってて」ムクッ

唯「ありがとうい~」

憂「……」スタスタ

憂(ありがとうって、言えなかったな……)

憂(さっきの夢……わたしなの?)


――――

唯「憂に悪いことしちゃったなぁ」

唯「あとでお礼しないと……ん?」ツン

唯「なんだろ、これ。うにゃにゃ~……に関する成果……? 難しそうだなぁ」

唯「……これって。そっか、だからこうなって」ペラ

唯「なるほど、ふんふん……」

唯「あーもうややこしい……つまり、ここに書いてある方法なら、女の子同士でも子供を作れるってことなんだよね」

唯「でも肝心のやり方がよく分かんないな……」

唯「……あ、この言葉は知ってる。学校で習ったんだ」


唯「とりあえずこれは頂いておこう……」ゴソッ

 ガチャ

憂「お姉ちゃん、できたよ」

唯「う、うん」

憂「どうかした?」

唯「な、なんでもないよぉ~」ニコニコ

憂「そう? じゃあ私は寝るね」

唯「うん、おやすみ。……」

憂「ふー……」ギシッ

唯「……憂、ありがとう」

憂「うん」

 パタン

憂「すぅ……すぅ」


 『名前は決めてあるんだ。ずっと前から……』

 『へぇー。なんて名前?』

 『うれいって書いて、憂だ』

 『……』

 『すごく、良い名前だよ』

 『立派に育ってほしいな』


憂「……」パチ

憂(何かを忘れてる。一体何を……)

憂(思い、出せない)

憂(……なんだろう)ズキッ

憂(頭が痛い、胸が苦しい……もう寝なきゃ)

憂「……すぅ」

――――

 翌朝 憂の部屋

 ジリリリリリリ

憂「う……」モゾッ

憂「はぁ」カチ

憂「だめ、寒くて……」

憂「でも……」フラッ

 バタッ

憂「……あいたた」

憂「あれ……立てな……」


2
最終更新:2010年10月12日 23:58