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 更に夜遅く 唯の部屋

律「……起きてるか、唯?」

唯「うん……」

律「寝れないのか?」

唯「ううん。ちょっと考え事してた」

唯「私はたぶん、将来女の子と結婚して子供を産むんだろうけど」

唯「それって一体、誰なのかなって……」

律「さあな。未来って、どうなるか分からないもんだろ」

唯「でも、分かることもあるよ?」

唯「ういが……どうなるかとか」

律「……」

唯「お父さんの書斎の専門書とかいっぱい引いて、頑張って論文に書いてあることを理解したんだ」

唯「追試くらい、へのかっぱだったよ」

唯「で……そしたら、あの方法じゃ駄目なんじゃないかって……思った」

唯「憂があの方法で生まれたんだとしたら、きっと……」

律「……唯、そっち行っていいか」ムクッ


律「まぁいいや。入るぞ」ギシッ

 ゴソゴソ

律「ぷはっ」

唯「……りっちゃん」

律「ん?」

唯「ありがとう」

律「……急になんだよ?」

唯「だってりっちゃん、憂のために頑張ってくれてるし」

律「私はただ……」

唯「理由なんかなんでもいいよ」

唯「こんなに頑張ってくれるのはりっちゃんだけだもん」

律「何言ってんだよ。みんな心配してるぞ」

唯「そうだね。でも、りっちゃんからは別の気持ちを感じるよ」

唯「澪ちゃんにも、ムギちゃんにさえもない、あったかい優しさがみえる」

律「……」

唯「私ね」ダキッ

唯「りっちゃんの顔、好きだよ」

律「はは……すごく誤解されそうな一言だな、おい」

唯「そうかも……」

唯「でも……うん、そう言うのが一番正しい気がする」

唯「りっちゃんのその優しい顔が好きだな」

律「へぇ……」

唯「……なんか、今なら寝れそう」

律「明日からも大変だし、さっさと寝た方がいいな」

唯「……」スー

律「って、もう寝てるのな」ツン

唯「んやぁ……」ピクッ

律「唯、抱き着いたまんまだし……これはまずい」

唯「ん……うい~」ガシッ

律「……」

律「鎮まれ私の中のビースト」


――――

 翌朝 唯の部屋

唯「ん……」ゴシゴシ

律「くかー」

唯「……なんでりっちゃんが?」

唯「あ、そっか。昨日泊めたんだっけ」

唯「……りっちゃん」サワッ

律「んあ……朝か」モゾッ

唯「あ、起こしちゃったね」

律「いいよ。もう7時じゃんか」

律「ちょっと待ってろ、朝飯作ってやるから」ギシッ

唯「待って。……私が作る」

律「唯の朝飯か? 食べてみたいような食べてみたくないような……」

唯「もうっ、いいからりっちゃんは休んでてよ」

律「へへ……わかったよ。もうちょっと寝てる」

唯「うん、おやすみ」ガチャ

 パタン

律「ふーっ」

律「なんとか手を出さずに眠れたみたいだな……」

律「それにしても……唯はあの小難しい論文を理解してたのか?」

律「もしかして、唯ってすごく頭いいのかもしれん……」

律「だとしたら、私なんか……」

律「……いや」フルフル

律「憂と約束しただろ。未来は変えない……」

律「けど……」

律「未来を変えてでも、憂のことは救わなきゃ……」

憂『律さんは大学を卒業した後、お姉ちゃんと共に研究者になります』

憂『そして、共にある偉大な発明をするんですよ』

律「……偉大な発明と言ってくれた。私たちの、できそこないの発明を」

律「また会いに来てくれて……なのに」

律「やっぱ、死んじまうのかな」

 サアアアァ……

律「外は……鬱陶しい霧雨だな」

律「……」

 ガチャ

唯「りっちゃん、出来たよ。目玉焼きしか作れなかったけど……」

律「お、ありがとう」ギシッ

唯「あ……やっぱり寝れなかった?」

律「いや、なんだろうな……よく考えてたら私、十分すぎるほど寝てたわ」

唯「あはは。りっちゃん変なの」ニコッ

律「うるせっ」

――――

律「……唯、今日は学校どうする?」

唯「休むよ。担任の先生も、休んだ方がいいって言ってくれたし」

唯「何より私は……まだ憂とちゃんと話をできてないから」

律「だな。なら、私も付き添うよ」

唯「いいの? りっちゃんだって学校あるのに」

律「憂が優先だろ。学校の勉強くらい、憂が治るまでほっといていい」

唯「りっちゃん、だけど……」

律「あ……」

律「そうだな、悪かった。私は学校行かなきゃな……」

律「折角だ。いっぱい憂ちゃんと話してこい。今まで言えなかったこと、聞けなかったこと、ぜんぶ」

律「目を覚ましてたらだけどさ。でもきっと……」

唯「ねぇ、りっちゃん」

律「ん?」

唯「本当にありがとね。私……」

唯「りっちゃんのこと好きだよ」

律「と、いうと?」

唯「……って」

律「おい、唯……?」

唯「……憂のとこ、行ってくる」ガタッ

律「唯、待て!」

唯「ああわああぁっ!!」

 ドタッ ドダダダン

律「……気をつけろって言おうと思った」

唯「遅いよ!」

律「言っても無駄だっただろうなと思ってる」

唯「はっはっは……」ズーン

律「スーツケース落としたのか? あぁ、憂の着替えね」

唯「……りっちゃぁん」ウルウル

律「はいはい、分かってるよ。送ってってやる」

唯「ご迷惑をおかけします……」


 1時間後 病院へ向かうバス

律「……そういえばさ、唯の作った目玉焼き、意外と美味かった」

唯「意外と、は余計だよりっちゃん」

律「その台詞を言っていいのはちゃんと毎日料理をしてる女の子だけだ」

唯「これからはやるもん」ブー

律「あ、そうか。じゃあ今回限りは見逃してやろうぞ」

唯「ああ……ありがとうごぜえます、領主さま」

唯「これでオラ達、今年もなんどか凌げただぁ」

律「ほう、そうか。ならば今年はいっそう米作りに精出すんじゃぞぉ」

唯「ははぁっ、ありがとうございましたぁっ」ペコペコ

 パンポーン♪

律「あ、次だ」カチッ

唯「降りますボタンは私が押したかったのに……領主めぇ!」

律「そんな日常的に復讐を決意しないでくれ」


――――

唯「あの……平沢憂の病室は」

 「平沢さん……ええと、あなたはお姉さんの」

唯「唯です。後ろは友達の田井中律で……」

律「憂ちゃんのお見舞いに来たんですけど……ど、どうされたんですか?」

 「実は……お姉さんだけに大切な話があると、平沢憂さんから頼まれていまして」

唯「……」

律「……唯」

唯「それで……?」

 「一人で病室に来ていただきたいと。いま、病室まで案内いたします」スタスタ

律「……憂、目が覚めたみたいだな」

唯「うん……」

 「では、平沢さん。私の後について来て下さい」

律「……なぁ、看護婦さん」

 「はい?」

唯「りっちゃん……?」

律「……いや。やっぱり何でもない。行ってくれ」

 「では……失礼します」

唯「……」スタスタ

律「……」 

 フラッ

律「ははっ……よっぽど特別な病室らしいな」

律「ちくしょう……」ギュッ

律「今日まで……この時代で生きてきた憂には、私はなんもしてあげられねえのか?」

律「私がしっかりしなかったから、二度も憂を傷つけてるんじゃないか……!」ギリッ

律「……憂」フラッ


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 無菌室

唯「……」

 「検査の結果、妹さんには数多のウイルスと戦うための免疫力がほとんどないということでした」

 「いずれ斎藤先生に説明を受けるかと思いますが……」

唯「……そうですか」

唯「ドラマで見たことありますよ、ここ。中には入れないんですよね」

 「一応、きちんと手順を踏めば入れないこともないですけど」

唯「……」

唯「憂と話はできますか」

 「大丈夫ですけど、今は寝ているので……」

憂「……きこえてるよ、お姉ちゃん」

唯「! ういっ!」

憂「鈴木さん、すいません……お姉ちゃんと二人きりにさせてもらえませんか?」

 「……ええ、構わないわ。平沢さん。扉の横にいますから、少しでも何かあったらすぐに呼んで下さい」

唯「はい。ありがとうございます」

 「じゃ」ニコッ

 ガチャ バタン

憂「……お姉ちゃん、来てくれたね」

唯「憂……お、おはよう」

憂「えへへ。おはよう、お姉ちゃん」クス

憂「う……コホッ」

唯「だ、大丈夫!?」

憂「うん、平気……お姉ちゃん、よく聞いて。伝えたいことがあるの」

唯「……わかった。何でも言って」

憂「お姉ちゃん、私ね……ずっとお姉ちゃんの妹として生きてきたけど……ほんとは未来から来た、お姉ちゃんが生んだ子供なんだ」

唯「うん……知ってたよ。初めて会った日に言ってくれたよね」

唯「私がだだこねて、受け入れなかったんだよね。ごめんねうい」

憂「ううん。お姉ちゃんの妹になるのも楽しかったよ?」

唯「……ありがとう」

憂「でも、私が未来から来た本当の理由は、そうじゃないんだ。……妹になって、お姉ちゃんと一緒にいるだけじゃない」

唯「……私にしっかりしてほしいって言ってたっけ」

憂「そう……だけど、ちょっと違う……」

憂「一番の目的は、お母さんたちが今度は技術を完成させられるように導くこと……」

唯「……女の子同士で子供を作る方法だね」

憂「それも知ってたんだ……その通りだよ。私をこの世に生んだ技術……お母さんたちに出会わせてくれた技術だよ」

唯「……」

唯「でも、あれには問題が残ってるよね」

唯「その問題は今でも憂自身に降りかかってる……」

憂「……お姉ちゃん、そこまで分かったの?」

唯「お父さんの書斎にある本を読みながら、なんとか読み解いたよ」

唯「難しかったけど……憂のことだと思ったから頑張ったんだ」

憂「すごいね……私が聞いてきた昔のお母さんとは全然違う」

唯「そうなの?」


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最終更新:2010年10月13日 00:00