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唯「まずはそっと目を閉じる」

唯「そして、時を跳びたいと強く願って」

唯「目を開けたら、そこは憂の行きたい時間だよ」

憂「うーん……」

唯「……だめっぽいね」

憂「うん。できないや……」パチッ

憂「別の時間には用事がないから……時間を跳びたいって気持ちが足らないのかも」

唯「でも面白いよ? 憂も一緒にいろいろイタズラしようよー」

憂「イタズラって……もっと良いことに使おうよ」

唯「良いこと?」

憂「そうだよ。たとえば、困ってる人を助けるとか」

憂「お姉ちゃんにしかできないことだよ!」

唯「おぉ。私にしかできない、私だけが出来ること」フム

唯「でも、具体的に何をしたらいいんだろう……」

憂「それは……困ってる人に会ったら考えればいいよ」

唯「そっか。確かにそうだね」

憂「だからあんまりイタズラに使っちゃだめだよ?」

唯「楽しいのに……」

唯「ケーキだって倍も食べられるんだよ!」

憂「お姉ちゃん?」

唯「う……分かったよう。ある程度自粛って事で、ね?」

憂「まあ、お姉ちゃんがもらった力だから自由にしていいんだけど」

憂「とにかく、人を困らせる使い方はだめだからね!」

唯「むー、憂が言うならしょうがないな。変な使い方はやめるよ」

唯「けど、ムギちゃんのケーキだけは絶対領域だから!」

憂「うん、いい子いい子」ナデナデ

唯「むふん」


 翌朝 唯の部屋

唯「とはいえ……イタズラってのはやめられないんだよ憂」

唯「まずは10日後にリープして……」フワッ

 ギシッ

唯「おろ?」ガチッ

唯「手足が動かない? 何かに固定されて……」

唯「うい、ういー!?」

 ガチャ

唯「あ、ういー! 助けてー!」

憂「どうしたの、お姉ちゃん?」

唯「ほら、これ何とかしてよー」ガチャガチャ

唯「これじゃ動けないよー……」

憂「……ふふっ」

唯「ういー?」

憂「お姉ちゃん、まだそんなこと言うんだ?」

唯「へっ?」

憂「イケない子だね、お姉ちゃん。お仕置きしてあげなきゃ」

唯「え……え?」

憂「いいかげん、立場をわかってもらわないとね……」ズルッ

唯「なんでズボン脱がすの? 鎖を外してよう、憂」

憂「えへへ……お姉ちゃん」サワッ

唯「ちょ、憂……なに?」

憂「……私のオモチャなんだって分かってもらわないと」グニッ

唯「痛あっ! やめて、憂……」

憂「まだ生意気……」グリグリグリ

唯「かっ、は!」ギリッ

唯(に、逃げなきゃ……)ガチガチ

唯「跳ん、で……」ギュッ

憂「むりむり。お姉ちゃんはもう跳べなくなったんだから」

唯「跳べない? そんなはずないよ……」ググッ

憂「あれ……お姉ちゃん?」

唯(大丈夫……跳んでる。跳べてる)フワッ

――――

 本来の時間 唯の部屋

唯「はあ、はあ……」

唯「戻って来れたぁ……」クテッ

唯(憂はどうしてあんなこと……それに、私が跳べなくなったって?)

唯「はぁ……すごい痛かったよ」

唯「跳んだら痛いのはすぐおさまってくれたけど……あれはもう嫌だよ」

唯「……未来に跳ぶのはやめよう」


 コンコン

憂「お姉ちゃん、そろそろ起きなよー!」

唯「お、起きてるってば!」

唯(忘れよ……)

唯「はぁ……」

唯(でも、10日後……ううん、憂の話を踏まえればもっと早く。あんなことになるんだとしたら)

唯(なんとしても回避しなきゃ)

 チク

唯「ん?」

唯(何だろ、今の。……右腕?)チラッ

唯(なんか変な……アザかな。こんな目立つ所に付いちゃってやだなぁ)

唯「数字に見える……02?」


――――

 1ヵ月前 職員室

唯「タイムリープ?」

さわ子「そう。日本語で言ったら時間跳躍ね」

唯「それが私の時間が飛び飛びになってる理由なの?」

さわ子「恐らくそうね。時間が飛ぶだけならともかく、戻るとなると流石にね……」

唯「さわちゃん先生、私どうしたらいいんだろう……」

さわ子「タイムリープは一般的に有名な現象ではあるけど……実際に直面するのは私も初めてなのよ」

さわ子「どうするべきか、なんてのは分からないわ」

さわ子「ただ、タイムリープは自分でコントロールできるものらしいわ。今後のためにその方法を習得する必要があると思うわよ」

唯「ふむ。コントロール……」

唯「確かにそうだね。けっこう色んな人に迷惑もかけちゃたし」

唯「ありがとう、さわちゃん先生」ニコ

さわ子「いいのよ。……あ、それと」

唯「はい?」

さわ子「コントロールできるようになっても、あんまり過去には戻らないほうがいいわよ。……老けるから」

唯「やだなぁ、大丈夫だよさわちゃん先生」

さわ子「どういう意味の大丈夫なのかしら?」

唯「と、特に意味はありませんとも……失礼しましたっ!」ダダッ

――――

 現在 唯の部屋

唯(そっか。さわちゃんに相談したらいいんだ)

唯(色々詳しかったもんね。このアザのことも何か知ってるかもしれない。そもそもこれが跳ぶのに関係してるのかどうかもわかんないけど)

憂「お姉ちゃん? そろそろ起きないと……」ガチャ

唯「起きる、起きるからっ!」バタバタ

 トテテテ…

憂「なんで急いでるんだろ」


 朝 職員室

唯「さわちゃん先生……どうかな?」

さわ子「……これに気付いたのは、つい今朝なのよね?」

唯「うん。朝見てたらついてて……何か分かる?」

さわ子「02、って書いてあるわね」

唯「あの……タイムリープに関係ある事だと思ったんだけど」

さわ子「あら、どうして?」

唯「分かんないけど……跳んだ後に、このアザのある辺りがチクッて痛んだんだ」

唯「たったそれだけなんだけどね」

さわ子「んー……流石に判断しかねるわね」

さわ子「私の想像に過ぎないものになるけど、言ってみてもいいかしら」

唯「解るの!? 教えて、さわちゃん先生!」

さわ子「……」

さわ子「これはね、唯ちゃんが跳べる残り回数よ」

唯「跳べるって……!」

さわ子「つまり、タイムリープね……その数字がゼロになれば、唯ちゃんはタイムリープができなくなる」

さわ子「……跳べなくなるのよ」

憂『むりむり。お姉ちゃんはもう跳べなくなったんだから』


唯「さわちゃん先生。……きっと、それで間違いないよ」

さわ子「……」

唯「未来で聞かされたんだ。私の跳ぶ力はなくなるって」

さわ子「唯ちゃん……」

唯「……あはは」

さわ子「……それで、どうするのかしら?」

唯「どうするって……?」

さわ子「跳ぶ力よ。残りの2回、大事に取っておくのか……使い果たして普通の人間に戻るのか」

さわ子「……それは唯ちゃんが考えて決めるべきことじゃないかしら」

唯「私は……」

唯(跳ぶ力が無くなったら、憂に痛いことされた時に逃げられなくなる)

唯(だめだ……まだ失くしちゃいけない)

唯「残り2回……持っておくよ」

さわ子「そう。……それなら、大切に使いなさいね」

唯「はいっ」

唯(でも……)


 放課後 音楽準備室

律「で、しょうがないからって和がメガネを外したんだけどさ……」

律「目が……3にならなかったんだ」

唯「そりゃならないでしょ」

紬「も、もうりっちゃんたら! そんな冗談は笑えないわよ……」

紬「って、あら?」

澪「どうした、唯? なんか今日元気ないけど……」

唯「へっ? そんなこと無いよ……」

律「んー?」ジー

唯「なんでもないってば……」

澪「じー」

紬「じーっ!」

唯「……」

唯「ごめん……ちょっと体調悪いかも」

澪「だと思ったよ……唯、今日は帰っておけ」

唯「けど」

紬「唯ちゃん、体は大事にしないと。……ほんとにひどい顔色よ?」

律「しっかり治してまた明日来い。ムギのおやつは食ってやるから」

唯「ん……わかったよ」

律「スルーか?」

唯「よいしょっと……じゃあまた明日ね」

澪「ああ。お大事に。一人で大丈夫か?」

唯「だいじょうぶだよ。ありがと澪ちゃん」ガチャ

律「アイウォントユアツッコーミ。唯?」

唯「じゃあね」バタン


 桜ケ丘高校 1階廊下

唯「……」フラフラ

梓「あ、唯先輩」

唯「……」

梓「……唯先輩? 大丈夫ですか?」ポン

唯「む、あずにゃん28号……」

梓「そんなにいません。ていうか2号すらいませんから」

梓「それより……今日の練習は休まれるんですか?」

唯「うん、体調悪くてね。明日までには治すから」

梓「そうですか……お大事にです」

唯「じゃね、あずにゃん……」フラフラ

梓「あ……あの、唯先輩」

唯「なぁに? あずにゃん」

梓「やっぱり送っていきますよ。唯先輩、そんなふらふらじゃ事故に遭いそうです」

唯「心配し過ぎだよーあずにゃん」

梓「唯先輩がそれぐらい危なっかしいのは事実ですけど」

唯「うぐっ! ま、まぁそこまで言うなら一緒に帰ってもいいかなぁ?」

梓「ふふ……それじゃあ私も掃除終わった所なんで、帰りましょうか」

 カチャ パタン

唯(あずにゃん優しいなぁ……)フラフラ

梓「ほら唯先輩、危ないので手を繋ぎますよ」スッ

唯「ほいほーい」ニギッ

 テクテク テクテク

梓「歩きながら寝ないでくださいね」

唯「いくら私でもそれはありえないよ」

 テクテク テクテク


梓「はい?」

唯「あずにゃんはさ、2回だけ時間を移動できるとしたら……どうする?」

梓「タイムスリップですか?」

唯「違うよ。自分の意図した時間に移動できるから、タイムリープ」

梓「あ、そうですね。そしたら私は……」

梓「きょ、恐竜時代とか行ってみたいです」

唯「……くすっ」

梓「笑わないでくださいっ!」

唯「あずにゃん可愛いのう……でへへ」ナデナデ

梓「やめてくださいよ、こんな道の真ん中で……」

唯「よーしよーし……」ワシャワシャ

梓「もう……聞いてるんですか、唯先輩?」

唯「これがもうほんと、ひとつも聞いてないんだな」

梓「はぁ……ダメな先輩」

唯「あずにゃんが完全に見下した目をしてる……」

梓「いいから行きますよ、唯せんぱ……」ハッ

梓「先輩っ!」ドンッ

唯「うわっ! 何、あずにゃ……」

唯「あ……」

唯「え……あず、にゃん? どこ行ったの?」

唯(地面が赤い。何、怖いよ……)

唯「あずにゃーん? 返事してよ……」

唯(このべしゃべしゃの車……邪魔だよぅ)ググッ

唯(……動かせないか)

唯「……」

 ガヤガヤ…

唯(あ。人が集まってきた)

唯(みんなで車をどかしてくれてる。私もやらなきゃ……)

唯「う……ン」ググッ

 ニチャ

唯(動いた……けど)

唯(あずにゃんはどこなの?)

 ズルッ

唯(……これ?)

唯(……まさか)


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最終更新:2010年10月13日 00:19