梓「ですね」

律「なー」

梓「っていうか大きな窓しかないじゃないですか」

律「うん。部屋自体は狭いしな」

梓「っていうかよく見ると窓もあまり大きくないですね」

律「な」

梓「(比較的)大きな窓がある(すごく狭い)お部屋♪」

律「()の中身に悪意を感じるんだけど」

梓「なんでこんなところ借りたんですか」

律「つい」

梓「律先輩って勢いだけで行動して取り返しのつかない過ちを犯すタイプの人間ですよね」

律「うっせ」

梓「ここに引っ越しません?」ピラッ

律「なんだ?ここ」

梓「律先輩がどうしょうもないから私が探してきてあげたんですよ」

律「そうか、心にぐさっと刺さる言い方どうもありがとう」

梓「で、どうです?」

律「いや、ここ借りたばっかだし。家賃前払いしたし」

梓「いいから」

律「いくないから」

梓「先輩はよくても私は嫌です」

律「我慢しろよ。っていうか嫌なら出てけバカ」

梓「それはもっと嫌」

律「我が侭太郎」

梓「駄菓子でありそうな名前ですね」

律「違う」

梓「?」

律「とりあえず、2年はここに住まないと」

梓「えー?」

律「契約の更新の時期になったらまた部屋探そうぜ?」

梓「・・・」

律「あーもー、わかったよ。梓が持ってきてくれたその書類見せてくれ」

梓「・・・!」パァァァ!

律「可愛いなちきしょう」ピラッ

梓「緑の多い街のお部屋♪」

律「大学まで3時間かかる件について」

梓「え?あぁ、そう」

律「いや、クールになってる場合じゃないから」

梓「だってこの部屋嫌なんだもん」

律「ばーか。ん?こっちは・・・?」

梓「収納たっぷりあるお部屋♪」

律「家賃15万とか馬鹿じゃねぇの」

梓「・・・」シュン

律「え!?なんで落ち込んでんの!?ここ本命だったとか言うなよ!?」

梓「律のばか、もういいよ」

律「敬語、敬語」


梓「あ、そうだった。えっと、じゃあそっちの部屋はどうですか?」

律「これか?」ピラッ

梓「海まで歩いていけるお部屋♪」

律「緑の多い街のお部屋の方がまだ大学に近かったな」

梓「もう!」

律「なんだよー」

梓「先輩は選り好みし過ぎです!」

律「選り好みし過ぎなのはこの部屋に不満を抱いてるお前だと思うんだ?」

梓「ほらっ、次の書類見て!」

律「自分に都合が悪くなったらそうやって話を逸らすんだな?・・・って、え?次の書類?」

梓「うん、いっぱい持ってきたから」

律「うげぇ・・・」

梓「なに」

律「いや、その、いいんじゃない?この部屋で。住めば都って言うだろ?」

梓「私の辞書にそんな言葉は存在しない」

律「今すぐ登録しろ」

梓「断る」

律「このやろ。・・・それより、レポートやったのか?」

梓「いいえ、面倒なのでやってないです」

律「面倒とか!?お前なー・・・一年の頃からそんなこと言ってるなんて先が思いやられるな」

梓「別に。私、放課後ティータイム続けたくてこの大学選んだだけなんで」

律「ほう?んじゃ唯じゃなくて私を選んだのはなんで?」

梓「いきなり恥ずかしい質問してんじゃないよ、この子はホントにねー」

律「なんで急におばさんみたいなキャラになってんだよ」

梓「いいから。せっかく不動産屋さんから貰ってきたんだから目を通してよ」

律「へいへい。えーと・・・?」

梓「駅から5分!築2年!オートロック付きの物件!」

律「分譲じゃねぇかぁぁぁぁ!!!」

梓「えー?」

律「お前、賃貸と分譲の違いを知ってるか?」

梓「うん」

律「じゃ、じゃあ」

梓「買えばいいじゃん」

律「何その4、500円のもの買おうかみたいな軽いノリ」

梓「そうしたら簡単に別れられなくなるし、ね」

律「わお腹黒い」

梓「文句あるんですか?」

律「ううん、ない。そういうとこも割と好きだぞ」

梓「ふん///」

律「でもな、そもそもこんな物件簡単に買えないっての。というわけで、次」ペラッ

梓「家賃4万!駅から15分!築8年!2LDK!」

律「で、ここでは何人が死んでるんだ?」

梓「え?」

律「どうせ人が死んでるから馬鹿みたいに安いんだろ」

梓「ううん」

律「え?本当か・・・?じゃ、じゃあここ行ってみるk」

梓「周り墓地だけどね」

律「はい却下」

梓「なんで」

律「なんで」

梓「別にいいでしょ」

律「 い や だ 」

梓「律先輩は本当に我が侭ですね」ハァ・・・

律「我が侭なのは私かな?」

梓「それじゃ、次の見てみてください」

律「おう」ペラッ

梓「・・・」ドキドキ

律「なんじゃこりゃぁ!!」

梓「どう?」

律「築10年、家賃無料、一軒家、だと・・・!?!?」

梓「ぶっちゃけそれが本命なんだよね」

律「ちょ、ちょっと待て。家賃無料ってどういうことだ、おかしいだろ・・・」

梓「よく読んで」

律「なになに?『仕事の都合で家をしばらく空けることになりました。
無人状態にしたくないので、誰かに住んでいただきたいです。
家賃はいりませんが、その代わり部屋を綺麗に使える方限定でお願いします』」

梓「どう?」


律「いや、そりゃ綺麗に使うくらいできるけど・・・こういうのって普通、親族や
知り合いに頼んだりしないか?」

梓「まぁ、私がそうなんだけどね」

律「マジ!?すげぇ知り合いがいるんだな・・・」

梓「それほどでも。ただ、一応面接をすることになってるんですよ。受けます?」

律「受ける受ける!」

梓「本当?じゃあ明日そのお家に行ってみましょうか」





次の日


律「って、お前の家じゃねぇかぁぁぁ!!!」

梓「え?うん」

律「言えよ!」

梓「別に隠してたつもりはないですよ?」

律「だーから、重要なことは言えって!」

梓「うん、わかったわかった」

律「流すなよっ!」

梓「家の前で話すのもなんだし、入りましょう?」ガチャ

律「お、おう」バタンッ

梓「ただいまー」

律「お、お邪魔しまーす」

梓「あ、そうそう」

律「どうした?」

梓「私と律先輩は付き合ってるって言ってあるんで、そのつもりで」

律「どのつもり!?」

梓「え?だから」

律「待て待て待て」

梓「もー・・・なに?」

律「私はそんな話聞いてないぞ?どんだけだよ、ねぇちょっと」

梓「へたれ」

律「へたれ!?誰だってビックリするだろ!?親にカミングアウトとか、いつ済ませたんだよ!?」

梓「え?付き合うことになった日だけど?」

律「私の高校生活の何かが音を立てて崩れたんだけど」

梓「まだ私の親に会ったことないでしょ?」

律「無視か。・・・確かに、地方公演とかで一度も会ったことないな」

梓「よかったじゃん」

律「え、これなんてドッキリ?」

梓「まぁ、ドッキリっていうか・・・冗談だy」

梓ママ「はーい」パタパタ

梓「あ、お母さん。連れてきたよー」

梓ママ「久しぶりね、おかえり。・・・えっと」チラッ

律「あ、えっと、初めまして。その、田井中と申します・・・」オズオズ

梓ママ「もしかして『律先輩』?」

律「あ、はい。そうです。えっと、梓さんとお付き合いさせていただいてます・・・///」カァァァ

梓ママ「」

梓「」

律「・・・え?」

梓ママ「今、なんて」

律「え、えっと・・・え?」チラッ

梓「ごめん、律。さっきの冗談のつもりだったんだけど・・・」

律「はぁ!!?!?」

梓「まさかそんな挨拶の仕方すると思ってなかったから・・・ごめん」

律「おまっ、えっ、うっそ・・・」ガーン

梓ママ「ちょっと待っててね、お父さんに」クルッ

律「あぁ!待ってください!今のは冗談!冗談だったんです!ごめんなさい!」

梓ママ「そうなの・・・?」チラッ

梓「え、なんで私に聞くの?」

梓ママ「いいから答えなさい」

梓「・・・」サッ

梓ママ「どうして目を逸らすの!?」

梓「・・・」

律「お、おい。梓・・・?」

梓「う・・・うるっさいなぁ!もう!」

律&梓ママ「!!?!?!?」

梓「別にいいでしょ!?私は律が好きなの!律は私が好きなの!だから付き合ってるの!」

梓「文句ある!?」

律「」

梓ママ「え?ないわよ?」

律「ないんかい!!」


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最終更新:2010年10月13日 21:28