――――
唯「りっちゃん……ごめん、ね」グスン
律(……泣いちゃった)
律「ほら、せっかく落としたアイスもう一本サービスしてもらったんだしさ」
律「食べないともったいないぞ?」
唯「いらない……」
律(さすがにアイスじゃ泣きやまないよなぁ)
律「じゃあ私がもらっちゃうぞー?」
律(参ったな……)ペロッ
律「唯、別に気にしてないからさ……」
律「むしろ悪かったって思ってる。唯のファーストキスもらっちゃってさ」
律「……」ハム
唯「……」
律「あ、そっか。初めてとは言ってなかったか」
唯「ううん、ファーストキスだった」
律「そ、そう……」
律「つーか、カウントすんのな」
唯「そりゃそうだよ……」
律「……悪かった」
律「下手にちょっかい出したせいで、お節介焼いたせいで……」
唯「ううん、りっちゃんのこと責めてるんじゃないの」
唯「ただ……!」ズビッ
律(……)
唯「……りっちゃんが好きでっ」
律(……はっ?)
唯「でも、りっちゃんには拒否されちゃったんだね、私……」ポロポロ
律「お、おい?」
唯「ぐっ、ひぃ……ふ、ふられ……」グシグシ
律(こんなところで大泣きされたらさすがに……)
律「あー、落ち着け落ち着け!」ギュッ
唯「うぅ……」プルプル
律(……震えるなよっ)
律(震えないで!)
律(弱さを見せつけられるのは嫌なんだっつーの……)
律「……だーれが唯をふるって言ったよ」ナデナデ
唯「え……?」
律「私は、唯なら良いよ」
唯「りっちゃん……?」
律(……)
律「いや……私も唯が好きなんだ。だからそんな顔をすんなよ」
律(どうしてだろう、唯の泣き顔は澪と一緒で……見ていると心苦しい)
唯「……」ゴクン
唯「り、りつ……」
律「……なんだ?」
唯「それなら、律って呼んでも……いいかな?」
律「……ああ、もちろん良いよ」
唯「つ、付き合ってくれる?」
律「当たり前だ。好きなんだから」
律(……)
律「わりぃ、今日はちょっと帰るわ」ガタッ
律「アイスやるよ。……食べかけだけどな?」
唯「ほんと!?」パアッ
律(私が好きだって言ってやった時より嬉しそうじゃねーか)
律「ほんとほんと。じゃあまた明日な、唯」
唯「うん、またね! もぐ……」ハムハム
律「ま、その方が唯らしくていいけど」
律(私も自覚させられなくて気が楽だ)
唯「ん?」
律「鼻の頭にアイスがついてるって言ったの」
唯「お? あ……」ゴシゴシ
律「じゃあな。澪もまた明日」
澪「へっ? あぁ、帰るんだ……」
律「ん」
スタスタ
「またお越しくださいませー」
ウィーン
律「さみっ」ブルッ
律「はぁ~」
律「……」
律「おぉ、バイバーイ」パタパタ
律「……」
律「……ははっ」
スタスタ…
――――
アイス屋
唯「……」サクッ…
澪「……唯、やっぱり気付いちゃってるか?」
唯「澪ちゃんには分かるんだ」
澪「まあな。幼馴染だしさ……嘘を吐くときのクセとか、やっぱりあるもんだよな」
澪「人に言ったりしないけどさ」
唯「……はぁ」
唯「私……悲しいな」
唯「夢の中じゃ、上手くいったのに……現実は非情だね」
澪「唯……」
唯「夢でしたキスは、柑橘系の甘酸っぱい味だったな」
唯「本当のファーストキスは、どんな味だったのかなぁ……」
澪「……バカ律には、よく言っておくよ」
澪「二度とこんな嘘はつくんじゃないって」
唯「うん、ありがとう澪ちゃん……」
澪「……」
唯「……へへ。でもこれで、かんぺきに終わっちゃったな」
唯「優しくしてくれて、ちょっと嬉しかったけど」
唯「りっちゃん……」
澪「唯、泣いてもいいんだぞ?」
唯「ううん。泣けないよ」
唯「りっちゃんが止めてくれた涙だもん。こぼしたらもったいないよ」
澪「……」
澪「男冥利に尽きるって奴だな……女だけど」
翌日
ガチャ
唯「……」
律(唯が寝てる……)パタン
律(付き合うことになった、んだよな)
律(……要するに)スッ
律(これがお約束ってことか?)
唯「……」
律「ん」チュ
唯「……」
律(やっぱ唯の唇、やわらかいな)
律(舌も……ちょっとしか触ってないけど、なんかゾクゾクするんだよなぁ)
律(……入れちゃうか?)
唯「ん、ふぅ」モゾッ
律(あ、起きた)
唯「んうー……」パチ
律「……」チュッ
唯「……りっちゃん?」
唯「やもぉっ」モガッ
律「ん、はっ……」チュパ
唯「んふぅ!? あ、やえらよ、りっはん……」
律(きもちいっ……)チュ クチュル
唯「んぅ、あ、んはぁん」トロォ
律「唯、もっと舌動かせっ」
唯「くふっ、ん、んうっ」ニュル
律(これだ、これならっ!)チュウッ
唯「はー、あー……」
律(唯の舌……ぷにぷにしてるし、おいしいな)チュチュゥ…
律(いつもうまいもんばっか食ってるからか?)チュポン
唯「り……っちゃん」
律「へへっ」ニコ
唯「だめだよ、こんなこと……」
律「何がいけないんだよ。恋人同士なんだからさ」
律「早いかもしれないけど、そもそも昨日すませてるだろ?」
唯「……そっか、そうだったね」
律「? 暗い顔すんなよ。唯」グッ
律(かわいい唇……)チュム
唯「……ん」
律「な?」
唯「りっちゃん……」
律「だから、律って呼べって」
唯「……うぅ」
律「まーた暗い顔する」
唯「だって!」
律(ったく、何だよ)
律「私は唯とキスしたいんだよ。ほら」
唯「んぁう……」ムグッ
律(すげぇ、やべっ……最高すぎる)ヌチャ チュ
唯「んはあぁ、はぁふっ!」チュ…プチュ
律(唯がノってきた……うあっ、これ……)
律(あ……? なんか、頭が働かない……)
唯「りつ、りふぅ」ヌチュッ チュルル…
律(意識が、飛ぶ……)
チュポッ チチュポッ
――――
紬「りっちゃん!」ユサユサ
律「あ……?」パチ
梓「律先輩、大丈夫ですか!?」
律「あ、ああ……なんだ?」ヌチャ
律(……ぬちゃ?)
紬「りっちゃん、意識はしっかりしてる? 私が見える?」
律「へ? うん、まぁ……」
律「なんか、右半身ぜんぶくらい……よだれか? べっちゃべちゃになってるけど」
梓「良かったです……ムギ先輩と一緒に来たら、律先輩が机に倒れてて」
紬「たくさん涎が出てたから、ひどい病気なんじゃないかと思ったんだけど、ただ寝てただけみたいね」
律「あぁ……そっか、寝てたのか」ゴシゴシ
律「……え? 寝てたのか?」
梓「律先輩、本当に大丈夫ですか?」
律「いや……今までのぜんぶ、夢だったのか?」
紬「ええと……? りっちゃん、夢みてたの?」
律「……どうもそうっぽいな。あー、気分悪い」
梓「律先輩……辛い夢でも見たんですか?」
律「……悪い、それは訊くな。心の中にしまっておきたい」
律(私の心の中だけ、って訳じゃないがな)
梓「そうですか……すいません」
紬「りっちゃん、今日は……」
律「あぁ……わり、今日は部活休むわ」
紬「そうしたいなら、そのほうがいいわね」
律「ん……じゃあ」ガチャ
パタン
律「……」モヤモヤ
律(……夢だったのか)
律(舌とか、くちびるの感触……すげぇリアルだった)プニプニ
律(……既にやべぇ)
タタッ
律(唯、どこだ?)
律(夢と同じように……唯に最低なことしようとしてるって自覚はあんのにな)
律(やべぇよ、私。狂ってる……)
カチカチカチ
律(電話しよ)プルルルル
律(……)
律(……?)
律(……)
律(出ないか?)
唯『もしもし……』
律(お、出た)
律「唯? いまどこにいるんだ?」
唯『……トイレ。あ、ごめん、今日は部活休ませてね』
律「そんなら丁度いいや。一緒に帰ろうぜ」
唯『……えっ』
律「じゃ、校門で待ってるから。……そいじゃ」カチ
校門前
律(ずっと夢を見ていた。私が私を見ていた……んだな)
律(唯には下手な情けをかけてひどいことしたけど……夢でよかった)
律(夢じゃなかったら、あれから唯をどんどん傷つけていっちゃったんだろうな)
律(いや、もう傷つけたかも……)
律(ただ……ただキスは気が狂うくらい気持ちよかった)
律(唯、まだかな……)キョロ
唯「りっちゃん」
律「のわぁっ! いたのか! ……びっくりした」
唯「今ちょうど来たとこだよ」
律「そっか……まぁ帰ろうぜ」
唯「ん、そうだね」ギュ
律(お、手握ってきた……)
律(こんな自然に指からめてきやがって……恋人繋ぎってやつ?)
律(あー、なんか唯の指とか握力とかすら気持ちいい)
律(水着で抱き合ったりとかしてるのにな。その時は何とも思わなかったけど)
律(思い返せば、あれも気持ちよかったかも……?)
唯「りぅ……りっちゃん、なんか話そうよ」
律「え? あ、そうか」
律(やべ、トリップしてた)
律「そういえば、今日はなんで部活休むんだ?」
唯「あ、えーっと。なんだか眠くって」
律(なんつー理由だよっ!?)
律(でも私も似たようなもんか)
律「お前なぁ……」
テクテク
唯「ぶー……りっちゃんこそ、今日はなんで休むの?」
律(あー、どうしよっかな)
律(唯に注意した手前、私も眠いだけとは言いにくいな)
律(いっそ、ここは)
律「唯と一緒にいたかったから、かな」
唯「りっちゃん……」
律(おぉ、手に力が入ったな。軽く汗もかいてる)
律(歯の浮くセリフを言ってやれば、こんな感じになるのか)
律「唯、かわいいな」
唯「えへへ……照れるよりっちゃん」キュッ
律(……やばい、萌える)
律(……)
律「なぁ、私の家の方が近いしさ。ちょっと休んでかないか?」
律「眠いだろ、唯……?」
唯「あ……」
律(すごいな。唯がドキドキしてんのが見てるだけで分かる)
律(……かわいすぎるな)
律「どうする?」
唯「……」
律「じゃいいや。嫌って言っても連れてく」グイッ
唯「ああっ……」トテテ
律(もう、我慢できねぇよ……)
唯「い、行くから……行くから、そんなに強く引っ張らないで!」
律「……」ニヤ
最終更新:2010年10月15日 01:41