律「ふぅ…ふぅ…」
唯「はぁ…はぁ……。…あー~~~っ!…ふぅ」
律「だー~~っっ!…ふぅ」
唯「前より人、増えてたね!りっちゃん!!」
唯が破顔しながらこちらに振り向いた。そりゃそうだろう私だって嬉し。前の倍くらいは居たんじゃないだろうか
律「あぁ!口コミで広がったんだろうな。とりあえず、すげぇ嬉しい!としか言いようがないぜ」
唯「見て見てりっちゃん!おひねりの中に野口さんがいっぱい!」
マジか!と飛びつこうとしたが、一応周りの目もある
律「ごほん。…唯、そういうのは後にしなさい」
唯「は~い」
律「とりあえず急いで片付けるぞ」
唯「え?なにかあるの?」
律「次にここ使う奴が来るんだよ。そろそろ」
唯「あ、そうなんだ~。じゃあ急がないとね!」
律「だからそう言ってるジャナイカ・・・」
「先輩!」
律「ん」
唯「お」
梓「こんにちは、唯先輩、律先輩」
声がするほうに振り向くと梓が立っていた。さらにその後ろには誰か2人。なんだ?どこかで見た事あるような…
律「おお。よう、あず……
ムギ「…」
澪「…」
律「さ……」
ムギと澪だった
ツカツカツカツカと幼なじみが迫ってくる
律「あ、あの…みおしゃはぶっっ!!」
額に広がる痛み。懐かしの澪チョップ
澪「これで許してやる」
ぷいっと明後日の方向に顔を背けながら言った。顔が赤かったのは気のせいか…
唯「澪ちゃん…ムギちゃん…」
ムギ「2人とも…久し…ぶり…ね…うっ」
律「む、むぎぃっ?」
唐突に涙を浮かべるムギ。よせやい。つられて泣きそうなになるだろーが
澪「…全く、朝から梓の機嫌が異常に良かったらのはこれか」
梓「えへへ」
それから色々話した…私たちの事。澪やムギ、梓は同じ大学で、共に軽音楽を続けていた事…。
そしてお互いにあったわだかまり
律「そういえば、三人しかいないのか?他の大学仲間とかは?」
澪「バカ。…ずっと空けてあるんだよ」
唯「空けてあるって…」
ムギ「大学でね。私たち三人と一緒にバンドしたいって人達は沢山いたわ」
ムギ「でもね」
ムギ「放課後ティータイムのメンバーは…もう決まっているから…」
律・唯「あ…」
その時、まだ始まらないのか!とか、早くしろ!などのヤジが飛んだ
澪「久しぶりの5人だけど……いけるよな?」
不適に澪が笑う。お前、そんなキャラだったっけ
律「……」
唯「りっちゃん…」
不安そうに唯が私の名を呼ぶ。それに応えるようにして唯の手を強く握った
唯「あ…」澪「む」梓「ぬ」ムギ「あら…」
律「大丈夫。…へへ、よし!始めよう!!放課後ティータイム、再結成最初のバンドだ!!」
…
律「だはぁ~っ!イイ汗かいたぜ!やっぱり5人揃うと何か違うな!」
路上ライブを終えた私たちは全員揃ってファミレスへ来ていた
唯「だねー。なんというかテンションの上がり具合がもう、こう、イイ感じなんだよね!」
澪「お前たちがそれを言うのか!今まで私たちを避けていたお前たちがっ!」
律・唯「あぅ」
澪「まったく…」
ムギ「まぁまぁ。澪ちゃん落ち着いて。そんなに照れ隠ししなくても」
澪「照れっ!?照れ隠しなんてしていないぞ!」
梓「でも嬉しいんですよね?大学で、いつも言ってますもんね。律先輩どうの唯先輩どうのって」
澪「あずさぁああああっ!少し黙っててくれ!」
律「みおしゃん…」
唯「えへへ。そんなに私たちの事思ってくれてたなんて」
澪「や、やめっ!もうこの話題終わりっ!」
律・唯・ムギ・梓「え~」
澪「お!わ!り!なの!」
梓「ところで」
律「ん」
梓「これからは5人でしていくんですよね?路上ライブ」
律「まぁ、こうなった以上はな」
唯「えへへ。楽しみだね~」
澪「全く最初からこうしていればよかったんだ」
ムギ「まぁまぁ」
律「…だな。本当にその通りだ」
唯「…りっちゃん?」
律「みんな、ごめん」
ムギ「そ、そんなっ、頭をあげて、りっちゃん」
唯「…。…私もごめん」
澪「…唯……。いや私
ガタッ
梓「私たちの方こそごめんなさい。です。先輩」
澪(梓それ私の台詞)
その日から5人で路上ライブを行う日々が始まった。
そして、たまにみんなが家に遊びにきたり…
とにかく、お互いにあったわだかまりが消えたのが大きかった
私と唯は今まで以上に笑う事が多くなった。その事をムギに話すと
「私たちもよ」
何て言うので、ちょっと照れ臭かった
そして…
律「ふぅ」
澪「今日もイイ調子だったな」
唯「ん~っ。ふぅ」
ムギ「唯ちゃん、肩、揉んであげようか?」
唯「わ、ホント?お願いお願いっ」
梓「また人が増えてましたね」
律「だな」
さわ子「そんなあなた達に朗報よ」
律「え?朗報?…って、うわっ!!!さわちゃん!??」
さわ子「なによ。化け物でも見たみたいに驚いて」
律「いや、化け物よりこe
唯「りっちゃん…大丈夫?」
律「み、みぞおち…」
澪「それにしても久しぶりですね。先生」
さわ子「ほんとに、ね~。みんな会いに来ないから死んだのかと思ってたわ」
一同「・・・」
さわ子「冗談よ☆」
梓「…そ、それよりも先生、朗報って?」
律「ああ、そういえばそんな事言ってたな」
さわ子「ああ、それはね」
さわ子「うちの生徒がね。あなた達を目撃したって言うから来てみれば」
さわ子「とんでもなく上手くなってるじゃない。って驚いたのよ」
さわ子「そ!こ!で!よ」
さわ子「ここからが朗報なんだけど」
さわ子「私の知人に…まぁ、小さなコンサートを開いている人がいてね」
さわ子「そこにあなた達を出そうかなあと」
律「そんな権限あるの?」
さわ子「まぁ、私の昔馴染みだし…」
律「ああ、あの黒歴s
唯「…りっちゃん、大丈夫?」
律「…ウン。タブン」
さわ子「お偉いさんも来るから」
さわ子「もしかしたら…があるかもしれないわよ」
梓「それって…デビューって事ですか!?」
ムギ「わぁ、凄い凄い」
澪「デビュー…かぁ…」
さわ子「ちなみに一週間後だからね」
律「ぶふっ!すぐじゃん!」
唯「れ、練習する間もないね」
さわ子「まぁ、今のあなた達なら大丈夫なんじゃない?詳しい時間や場所は後で連絡するわ。りっちゃんでいいかしら」
律「うん」
律「いやぁ~、それにしても腕がなるなぁオイ」
澪「何だか、夢みたいだよ」
梓「澪先輩、まだ早いですよその感想は」
澪「そ、そうだった」
ムギ「うふふ」
唯「………私…」
律「…唯?」
唯「軽音部に入って良かったよ!」
律「……へへ。そっか」
ムギ「唯ちゃん……うん。そうだね。…私も、軽音部に…みんなに会えて良かったわ…」
梓「私もですよ」
澪「ふふ。だな。みんなに会えて良かったよ」
そう、澪がそう言い終えた時だった。唯が陽気に、鼻歌を歌いながら一歩ステップを踏んで信号を渡る
まさにその時だった。気づけば私は身を乗り出していた
一瞬何が起こったのかわからなかった
気づけば私の視界には……私の…私の一番大切な人が……
ぐったりと横たわっていた――――――――
澪「…」
ムギ「…」
梓「…」
唯「…」
律「お、おいおい、皆元気出せよ。何で事故にあった私よりへこんでんだよ!あはは」
唯「…りっちゃん……ごめん…ごめんなさい…ごめんなさい!!!私がぁっ…わ、わたっわたしわ、ああ、あ…あぁあっ!」
律「唯、落ち着けって!誰もお前を責めてねーんだ!居眠り運転。向こうが悪い。なっ!」
唯「りっ、りつ…りっちゃ…ううっひっく、うぐっ、あっあっあうっあ…ひっ」
律「お~よしよし。…あでで。腕動かすといてぇなこれ」
澪「りつ…」
律「おーまえらまでンな顔すんなって!私は生きてる!死んでないんだ。ならイイじゃんか」
澪「ばっ!縁起でも無いこと…っ」
医者「すみません。少し、重要な話しがあるので、席を外してもらえませんか?」
ムギ「あ……はい。いこ?唯ちゃん」
唯「…ぅん…」
後日
律「えーと。だな。皆に集まって貰ったのは他でもない、コンサートの事なんだけど…」
さわ子「…間に合いそうに無いのね?」
律「……うん」
唯「…りっちゃ
律「ストーーップ!唯は喋らなくてイイ!お前絶対泣くだろ?」
唯「う、うぅ…」
澪「仕方ないさ。また次の機会を狙おう」
律「いや、そこで…提案なんだが」
ムギ「?」
梓「何かあるんですか?」
律「え~っとな、さわちゃんと話し合った結果…な」
梓「先生がドラム!?」
さわ子「頼まれちゃったし…一応人並みには出来るから…ね」
唯「…」
澪「……律は……律は、それでいいのか?」
律「………ぁあ」
ムギ「…りっちゃん…」
「…めだよ…」
律「?」
唯「ダメだよ!!」
律「唯?」
唯「放課後ティータイムのドラムは…りっちゃんじゃなきゃ…
田井中律じゃなきゃダメだよっっ!!」
律「唯…」
梓「唯先輩…」
澪「………同感だ。先生を入れるくらいなら…先生には悪いけど、ドラム無しで演奏した方がイイ」
律「澪…」
さわ子「…あ~もうハイハイ」
唯「っ?…さわちゃん?」
さわ子「お熱いのはそれくらいにさない。イイじゃない、それで。ドラム無しで」
さわ子「一応向こうにはそれで話しをつけておくわ」
澪「先生…。…ありがとうございます」
さわ子「うん。それと、一応私もドラムの練習しておくから。必要だと思ったら、声をかけなさい。ま、必要ないと思うけどね」
律「さわちゃん…ありがと」
さわ子「いいのいいの。まったく…あんた達見てたら私の若い頃を思い出すわホント…」
さわ子「じゃあ、とりあえずまた今度ね」
一同「はいっ」
その日から…ドラム無しの練習が始まった。
さわちゃんは、「練習くらい入れてくれてもイイじゃない…」
とか言っていたような気がする。ごめんねさわちゃん。譲れないんだ。そのドラムの席だけは…
そして…
澪「レベル、高いな…」
唯「うん…」
自分達の番が来るまでまだ時間があったので、客席からコンサートを眺めていた。
でもそれは間違いだったのかも知れない。みんな、自信を失っていく…
こんな時、ムードメーカーが居れば、全然違ったのだろうか
唯「りっちゃん…」
誰にも聞こえないように呟く。大好きな人の名前を声に出すと不思議と勇気を得られる。
このおまじないを、私は毎回、ライブ前に行っていた
でも
唯「…」
今回ばかりはダメだった。呟いて得られるのは悲しみだけ。勇気の欠片もない
梓「だ、大丈夫ですよ皆さん!私たちの方が上です!そうに決まってます!」
ムギ「梓ちゃん…」
さわ子「みんな、そろそろよ。支度するからこっち来て」
澪「あ、はい」
梓「やってやるです!」
唯「…」
唯「…」
澪「う、う…何だか気分が…」
ムギ「澪ちゃん大丈夫??」
梓「ふぅー。ふぅー。深呼吸深呼吸」
さわ子「みんな、着替えたわね?」
澪「は、はいっ!!」
さわ子「……ふふ」
梓「?…どうかしたんですか?」
さわ子「ここで、スペシャルゲストの登場です」
唯「え」
澪「な」
梓「ま、まさか…」
ムギ「うそ…」
さわ子「嘘よ」
ムギ「なっ」
唯「っ!」
澪「せ、先生!こんな時にそんな嘘つかないで下さい!」
さわ子「…」
梓「せ、先生?」
さわ子「今のみんなの表情で、今抱えてる不安や気持ちがわかったわ」
さわ子「みんな、りっちゃんの事が大好きなのね。……でもね、みんな」
さわ子「りっちゃん抜きでライブをする。そう言いだしたのは、あなた達よ」
澪「っ…!」
さわ子「このライブが失敗して一番悲しむのは誰…?」
さわ子「……これ以上は…野暮ね。…みんな、頑張ってね」
唯「……先生!」
さわ子「…なぁに?」
唯「ありがとう…ございます」
さわ子「…私は何もしていないわ。…客席から、見てるからね。じゃあ」
唯「行こう。みんな」
澪「ああ」
ムギ「ええ」
梓「はい!!」
ありがとう、さわちゃん。本調子とはいかないけれど、何とか頑張れそうだよ。
りっちゃん……見守っていてね
最終更新:2010年10月15日 03:40