観察というべきか…偵察というべきか…

ガサッ
文化祭も終わり、ホット缶コーヒーが美味しく感じる時期のこと。
2つの影をじりじりと追う、1人の少女の姿があった。

澪「う~… なんで私がここまでしないといけないんだ…」

それは…つい先日のこと…

♪~音楽室~♪
ガチャッ
ショートポニーテールの少女は恐る恐るドアを開けた。

憂「お姉ちゃん…いますか~?」

紬「あら?憂ちゃんじゃない、どうしたの?」

憂「今日、お姉ちゃんと一緒に帰る約束してたんですけど…
  いつまでたっても来ないから、ここかなと思って。」

少し不安げな表情を浮かべ、辺りを見回すと…のほほんと机に屈した
いつもの姿が目に入る。

憂「お姉ちゃんっ!」

唯「お~、ういー…ムギちゃんのお茶飲んでから帰ろうよ~。」

こうなっている唯はテコでも動かない。

憂「それじゃ、ギー太と一緒に帰ろうっと♪ じゃ、お姉ちゃんまたね~」

ひょいっ

軽々しくギターを担ぎ、これみよがしにギターに軽くキスをする。
そして、憂はポニーテールをふりふりしながら音楽室から出て行った。

バタン トトトト…

突然の出来事に対応できないのか、唯はくりくりとした目で締まりきった音楽室のドアを
眺めている。
…1分ほど経過しただろうか、彼女は突然立ち上がり声を上げた。

ガタンッ!!

唯「ギギギギギ…ギー太が誘拐されちゃった!! こらーっ!待てーーっ!」

普段の唯からは想像も出来ない勢いで音楽室を後にした。


紬「クスクスクス…唯ちゃんに憂ちゃん…いつも仲がいいわね♪」

律「だよなぁ~、あの二人…これからきっと家で何かあるぞ!」

ニヤリといたずらな笑みを浮かべ、澪に話題を投げかける。

澪「なっ!何かって何だよ…」

澪は煙が出んばかりに顔を赤らめ、額から汗をにじみ出し、
ぱっつりと切りそろえた前髪がぺっとりとおでこに貼り付いている。

梓「…でも、少し気になりませんか?」

梓の一言で静まり返る部室…

律「うちには弟がいるから、そんな気にならないけどなぁ…
  気になるのはせいぜいエロ本の隠し場所か、
  夜中に部屋から聞こえる荒い呼吸くらいだな。
  次の日の朝、やたらと部屋が生臭いんだが…あれはなんだろうなぁ…澪?」

このメンツで唯一兄弟がいる律は、さらりと弟の秘密を暴露する。
澪が真っ赤になるのを再度楽しもうとニヤニヤする律だったが、
彼女の反応は握りこぶしが奏でるゴスンッ!という鈍い音だった。


澪「確かに、私、梓、ムギは一人っ子だから、プライベートなところが気になっても仕方ないな。」

梓「しかし、憂の唯先輩への溺愛ぶりはスゴいですよねー…
  律先輩が言うように、何があってもおかしくないと思います。」

う~ん…と人差し指をぷるっとした唇に当てて考える。

パンッ!
ふと弾けた音が音楽室に響き、3人は1人の少女に視線を向けた。

紬「それじゃぁ、一時的に追跡してみるのはどうかしら?」
常人離れしているというか世間知らずというか、お嬢様の発言は大胆なものであった。


律「その考えいいじゃん!
  それじゃ、担当を決めようぜ…やっぱり気配を消すのは、
  やっぱり空気に近いムギュッ!」ゴスンッ!

再度響く鈍い音。

澪「それじゃ、公平にクジにするか…恨みっこ無しだからな。」

ルーズリーフを1枚取り出し、線を描き、あみだクジを作った。
そこに梓、律、紬がそれぞれ線を2本ずつ付け加え、線の開始ポイントに名前を書く。

そして…各自うねうねと線を辿り結果を確認する。

紬「…」(しょんぼり)
梓「ほっ…」
律「…マジ?」
澪「…」


心底ガックリする紬、ぺたんこの胸を撫で下ろす梓、意外な結果に驚く律。
…そして無言の澪、彼女が当たりを引いた。

澪「なぁ…やり直さないか?」
カチカチと歯を鳴らし、青ざめた表情で問いかけるものの、
3人から送られるのは×のサイン…。

紬「それじゃ決定ね♪」

状況を変えられず、ぽけ~っとたたずむ澪。
紬は彼女の横を通り過ぎる時、さりげなく胸元に1枚の紙を忍ばせた。

律「み~お~…?」

目の前でサッサッと手を振るが、硬直し全く反応しない。
律は梓にウィンクでサインを送ると、ビクッ!と顔を赤らめ反応をした。

梓はゴソゴソとスクールバッグをあさり、猫耳がついたカチューシャを頭に付けた。

梓「… …にゃぁ」

梓の鳴き声を聞き、澪は我に返った…と思われた。

澪「それじゃぁ、練習始めるか!」

いつも通りに音頭を取り、ネックを掴み演奏の準備をする。

律「…澪…それはホウキだ…」

ペチッ
右手で額を押さえ、これから行き先に不安を感じた。
…しばらく澪が平静を取り戻すのは無理そうだ。

その後…てろんてろんなベースが響く中、練習は終わった。
まだ彼女は放心状態から立ち直れていない。

西日を受け、ぽつんと床へ影を落とす澪。

カー… カー…
練習後に外から聞こえるカラスの鳴き声が、その光景の虚しさを引き立てた…。



梓「あれ?澪先輩の胸…」

梓の"胸"という単語に反応し、澪は自分の豊満な胸をぼ~っと見つめる。
澪(あずにゃんのおっぱいより、私の方が大きいなぁ…)

たゆっ… たぷたぷ…
澪は何気なくブレザーの中へ手を入れ、
ブラウス越しに自分の胸を両手でゴム鞠のように弾ませてみる。

その光景を目にし、顔から火が出んばかりに紅潮させる梓。
あまりの衝撃に、ツインテールを猫の尻尾のように逆立てている。

梓「澪先輩!何やっているんですか、胸、胸ですってば!」

梓は上の空で自分の胸を弾ませている澪に近づき、ブレザーからちらりと見せる紙を取ろうとした。 ふわっ…と甘い梓の香りが澪の鼻腔を満たすことで、彼女は正気を取り戻した。


澪「あ、ああ…これか?」
ポケットから四つ折りの紙を取り出し、内容を確認する。

―――――――――――――――――――――
☆みおちゃんへ☆

 あみだクジの当選おめでとうございます♪

お願いしたいことがありますので、

帰宅途中うちに寄ってもらっても良いかしら?

                  by袖
―――――――――――――――――――――

それはプルプルと縮れた文字で書かれており、
文末に向かうに連れ字崩れはヒドくなっている。
さらに、自分の名前まで間違っている始末…彼女に一体何があったのだろうか。

手紙を読み終え、ふと横にいる梓に目を向けると、彼女は澪の持つ手紙を見ようと、
ぴょこぴょこと頑張って跳ねている。

…ポタッ…

梓「あれ?澪先輩…鼻血が出てますよ?」


♪~琴吹邸~♪
澪「呼ばれて来てはみたものの…ムギ、これは一体…」

40平米はあるだろうか、広い部屋の床に敷き詰められた様々な道具。
長距離の物体を撮影するものなのだろうか、ライフルの様な形をしたカメラや、
普通のボールペンに見える盗聴器等、様々な盗撮・盗聴道具で埋め尽くされていた。

澪「これはなんだ?」

"京レ"と端に書かれた布切れのようなものを手に取ると、それは瞬く間に消えた。
一瞬の出来事に驚き、ぺたりと尻を床につける。

紬「よくわからないけど、"光学迷彩"って機能を持った布みたい。」
一体どこから持ってきたのだろう、琴吹家は謎が多い。

澪「ところで、お願いしたいことって何だ?」
 (大体この品揃えで解るケド…)

紬「唯ちゃんと憂ちゃんのプライベートを録音してきて欲しいの!」

いつものような"おしとやかさ"など無く、声を張り欲望を露にするお嬢様。

澪「まさか…売るつもりじゃないだろうな?」

友達を売り物にしようとする紬に怒りが湧きあがってきたのか、
澪はプルプルと肩を振るわせた。
右手を力一杯握ったこぶしは、いつでも紬を殴ることができる。

ピリピリとした空間…紬から浮かび上がる笑み…。

紬「私用なの♪」

ぽわぽわと意外な返事をする紬に、澪は拍子抜けし再度腰を抜かした。


ふと紬はゴソゴソと机をあさり出し、2枚の紙切れを取り出す。
そして、スススッと手際良く封筒に入れた。

紬「もちろんタダとは言わないわ…」

スッと封筒を机上に置き、澪に差し出す。

澪「なっ…こんなもの受け取れない…!」

澪は拒否し戻そうとするが、紬は人差し指を封筒に当てウィンクをする。
封筒から取り出すとそこには2枚の写真。

澪「こ…これは…」
1枚は桜が丘高校の制服を着用し、
ふわりとツインテールを宙に浮かべてこちらを振り向く少女の姿。

時期は春だろうか?
表情はとても初々しく、桜があたりに舞っている。
桃色と黒のコントラストが美しい。

澪「!!」
 (あずにゃんの写真、私でも撮ったことのないベストショットをなぜ…!?
  あぁぁ…もう桜の香りと一緒にあずにゃんの香りを吸い込みたいよぉぉぉっ!!)


澪「こんなものを使って…ムギ、見損なったぞ…」
 (あの姉妹を撮影すれば、この写真をくんくんできるのにもったいないもったいない!
  あずにゃんあずにゃんあずにゃんあずにゃんあずぅぅぅぅ!)

そう言いつつも、彼女はもう一枚の紙切れへ目をやると、あっけなく陥落した。

それは…ライムグリーンのストライプを纏ったインナーセットを着用し、
ベージュの抱き枕をギュッと抱いてスヤスヤと眠る梓の姿が写っていた。

紬は続いてチラリと3枚の紙切れを見せる。

澪「残りは成功報酬ってことか…」
 (合宿の時とは違うあずにゃんの下着姿!!
  ぷくぷくしているおっぱい!それに、ぱんちゅがお尻に食い込んでるぅ!
  小さい唇…おもいきり吸い取りたいよぅぅぅ!!
  あずにゃんあずにゃんあずにゃんあずにゃんあずにゃんあずにゃんあずにゃん!)

ふぅ…と溜息をつき、スッと立ち上がる澪。
紬の隣へ歩み寄ると、ギュッと強く紬の手を握った。

澪「ずっと友達だからなっ!」

クールな風貌から一転、澪は鼻息を荒くし紬の要望を受け入れた。
紬を見る目に迷いは感じられない。



澪「…と、そんなわけで欲望に負けた私はこんなことをしている…
  …ん?私は誰に向かって話しているんだろう?
  とりあえず、遊びの範囲ということでボールペンの形をした盗聴器を借りたけど、
  仕掛けるタイミングが難しいな…」

眉間にしわを寄せ、じっくり作戦を考える澪。
そんなことをしている間に、2つの影は遠のき家の中へと姿を消した。

澪「ああっ!!…何をやっているんだ私は…もう、この手段で行くか」ブツブツブツ

ピンポーン…
結局正面突破することになり、平沢家のインターホンを押した。

「は~い♪」

トテトテ… ガチャッ
唯「あっ、澪ちゃん…どうしたの?」


澪「あの、あのあの…家…ダレモイナイ、ゴファ…晩御飯を…食べさせてくだひゃい!」

セリフを何度も何度も繰り返し練習したのだが、その努力も虚しく噛み噛みで話し出した。

唯「うん、今日はお母さんもお父さんもいないから大丈夫だよ。
  あはは、澪ちゃんの話し方なんかおもしろい~」

澪「あでぃがと!やや…やっぱりそう思うか!? ははは…そうだよな~!」

緊張して頭が回らず混乱しており、汗を噴出し必死に話を合わせようとする。
その証拠に、彼女の目はぐるぐる回っており焦点がどこにも合っていない…。

玄関が少し騒がしくなったのが気がかりになったのだろうか、
奥からエプロン姿の少女がやってくる。

トテトテ

憂「澪さんいらっしゃい~。
  ありあわせの材料で作ったものばかりですが、召し上がって行ってください♪」

唯「それじゃ、上がって上がって!」

澪「お…おじゃまる!!」

憂「おじゃる●?」

平沢家に無事侵入できたものの、緊張はなかなか解けず…未だ噛みながら話している。
リビングに案内され、ソファーに腰掛け晩御飯の出来上がりを待った。

部屋の中を見回すと、視界に1枚の写真が入る。
その中でもこんがりと日焼けし、フリル付きの水着を着用した少女の姿が
澪のニューロンをピンッと弾き刺激する。

ビクンッ!

静電気が体に走ったかのような衝撃を受け、澪の体が軽く跳ねあがった。

澪「…ハッ!」
 (あずにゃんのピンクのみじゅぎ!ぺたんこおっぱいぃ!
  なめなめちゅちゅちゅっしたいよぉ!!!日焼けの跡をペロペロしたい!
  あの時お風呂に入った残り汁、とって置けばよかったなぁぁぁっ!)

いつもの澪に戻った。



澪「唯、この前借りたボールペンここに置いて置くからなー!」
 (よし、まずは第一ステップ完了…というところか。)

コトン…とボールペンをテーブルに仕掛ける。
姉妹仲良く料理をしているらしく、笑い声が響く台所の奥から唯の返事が聞こえた。

ソワソワと落ち着かない澪、彼女の指はわきわきと別の生き物の様に動き、
今にも自分を慰めんばかりだ。

澪(どうしよう…あずにゃんの写真でなんか興奮してきた…)

本来の目的を忘れ、彼女はグレーのプリーツスカートをつまむ…。
その中へ手を入れようとした、そのときだった。

唯「澪ちゃん、暖房弱めようか?」

料理を終えたのだろうか、唯は汗ばんでいる澪を気遣い声をかけた。
ハッと気が付くと、既にテーブルの上は姉妹が作った料理で埋め尽くされている。



唯「澪ちゃん、見て見て! このオムライス私が作ったんだよっ!」

"じゃ~ん"という掛け声と同時に出てきたのはオムライスだった。
いびつな形をしており、ケチャップで文字とハートマークが書いてある。

澪「ぷふっ…なぁ…唯、"ギー犬"ってなんだ?」

憂「あはは、お姉ちゃんったらおっちょこちょいなんだからw」

唯「えへへ、間違えちゃった♪」

リビングで談笑する3人、とても暖かく暖房もいらないくらいだ。

憂(でも…犬じゃなくて入ったのはネズミだったのかもね…)

3人の笑い声の中、憂の笑い声だけは影を帯びており、
澪に気づかれぬよう、そっとエプロンのポケットにボールペンを忍び込ませた。



澪「それじゃ、晩御飯ありがとな」

唯「うん、また来てもいいよ~♪」

玄関の外へ出てニコニコと嬉しそうに見送る唯。
彼女の口からはほかほかと白い吐息が上がっている。

澪「ああ、また機会があったら来るよ…」
 (回収しないといけないんだからな…)

唯「それじゃ、まったね~♪」
両手を振る唯に対し、片手でそっと挨拶をし玄関を後にした。

バタン

ドアが閉まると同時に、部屋の様子を聞き取るべくガレージへ駆け出した。
そして手際良くバッグからポケットラジオを取り出し、イヤホンを耳へねじこむ。
どうやら、録音できたりFMトランスミッなんとかがついている、高機能な盗聴器らしい。


…ザザッ…おね…ちゃん…ザッ… …お姉ちゃん…
何度かノイズが入った後、音声がはっきりと聞こえるようになった。
揉めているのか?唯を叱るような声が聞こえる。
澪は全神経を聴覚に集め聞き入った。


憂「お姉ちゃん、今日は一緒にするって言ったでしょ?
  いつもわたし一人でやっているんだもん!」

唯「えー、疲れているから…今日はやめとこうよぉ…」

憂のワガママ(?)に対し、唯は露骨に嫌そうな声で返答している。

…トントントン…
結局、唯は根負けしたのだろう、憂と共にどこかへ向かう足音が聞こえる。

憂「それじゃ…わたしの方から…っと
  んっ…つめたっ…」

ぬちゅ… むちゅっ…
水気を帯びた音と同時に、憂が悩ましげな声を上げる。
その音は少しずつ粘り気を帯びはじめ、卑猥な音へと豹変していく。
そして、仕舞いには"ぐっちゅぐっちゅ"と下劣な音へ変化し響かせ続けた。

憂「んっふぁ…冷たかったぁ…
  でも、これで温まったかな? はぁ、はぁ…」

澪(えぇぇぇっ!姉妹で…こんなことするの!?)

憂が憂自身のものを仕上げたようなセリフと吐息で、澪の左手が少しずつ疼き始める。


憂「それじゃ、お姉ちゃんのもしてあげるね? ふぅ…」

徐々に呼吸を整え、唯の部分に触れようとする憂。

唯「え、いいよぉ… 自分のは自分でやるよぉ…」

憂「でも、お姉ちゃんのそこ…びっちょり水溜りできているよ? 大丈夫?」

つぷっ…にちゃっ… 再度水っぽい音。
唯はアドバイスに耳を傾けることはせず、少しずつ指を先端から挿入し驚いたような声を出す。

唯「…ひゃっ!やっぱりちべたいぃ…」

憂「ほら、手を貸して… わたしの中で少し温まっていいよ。」


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最終更新:2010年01月27日 02:51