…その頃…

唯(さわちゃん! 早く早く!!) ピュイーン

さわ子「ちょ、ちょっと… あなたは浮いてるからいいけど…っ!

     私は歩いて階段上ってるんだから…!疲れ…っ!」 ハァ… ハァ…


唯(到着っ!!!)

さわ子「ぜぇ…… ぜぇ……」

さわ子(こんな所でも 年を感じるハメになるなんて……)


さわ子「怪人はこの中なの?」

唯(ううん、このドアさんが怪人さんだよっ!)

さわ子「えっ」

ドア『アセアセ』

さわ子「…確かに喋ってるし…何か焦ってるわね」

唯(どうしたんだろ…?)


……

ドア『アセアセ』

ドア『ニコッ』

カバン「ふわっ」


律「!! ムギ危ない!!」

澪「カバンが飛んでくる!!」


カバン「ぶんっ」

紬「ふんっ!」

ガシッ

梓「!! とんでくるカバンを掴みました!」

律「よっしゃあ!!」

ドア『!!?』

ドア『ニコッ! ニコッ! ニコッ!』

カバン「ふわっ」 カバン「ふわっ」 カバン「ふわっ」

澪「3つ同時!?」

カバン「ぶんっ」 カバン「ぶんっ」 カバン「ぶんっ」

紬「…」 グッ

バシッ ガスッ スコッ


律「!! ムギッ!」

梓「全部当って…」


ドア『ニコ』


紬「…」

ドア『!!!』

紬「それで終わりかしら?」

律澪梓「! ムギ(先輩)!!」


ドア『アセアセ』


紬「今度はこっちの番ね!!」

紬「はぁぁ!」 ググッ


澪「キャッチしたカバンを振りかぶった!!」

梓「あ、あの構えは!!」

律「枕投げの時の!!!」


紬「せいっ!!!」 ブンッ


ドア『!!!!』

律「よしっ!!当る!!!」


ドア『ガチャ』

律澪梓「!!!?! 開いたっ!?!」


ドア『ガチャ』

さわ子「えっ」

スコーンッ!!!!!

さわ子「ぐふっ!」 ボフッ


ドア『バタンッ!』

ドア『ほっ…』


紬「えっ?」

律「まさかアイツ…ムギの投げたカバンを…自ら開いて避けたのか…」

梓「て言うか今ドアの向こう側に…」

澪「さわ子先生が…」


さわ子「てめぇらああああああああっ!!!!!!!!!!!!!!!!」


紬律梓澪「あわわわ…」 ガクガクブルブル


さわ子「ふんっ!!!!」

ドア『!!!』

ゴスッ

ドア『げふっ!!!!!!』 ズザァァ


澪「あ、ドアが…」

律「開いたな…」

梓「て言うか殴り飛ばされましたね」


さわ子「…」 ゆらり…

紬澪律梓「ひっ!」

唯(さ、さわちゃん!落ち着いて!!)


さわ子「てめぇら…カバンなんか投げて怪我でもしたらどうする気だ? あん?」

紬「ごごごごごごごごごごごめんなさいっ!!!」 ズザッ ビタンッ

唯(ど、土下座!?)

紬「…」 フカブカ

さわ子「ちっ… まあいいわ… で、あんた達は?」 キッ

梓律澪「ひぃっ!!」


梓「りりり、律先輩 私怖くてちびりそうなんですけどっ…!」

律「ききき 奇遇だな 私もだっ!!!」

澪「わわわ 私ももう…」


さわ子「!!?」

さわ子「は、早くトイレに行きなさいっ!」

梓律澪「はいっ!!ごめんなさいっ!!!!」 ピューン


さわ子「まったくもう…」

唯(皆行っちゃったね)

紬「そうね…」


ドア『ゴホっ… ゴホゴホッ』


唯(ドアが咳き込んでる…)

さわ子「シュールな光景ね…」

唯(さわちゃん、強く殴りすぎだよ~)

さわ子「つ、つい頭に血が昇っちゃって…」


ドア『…』


唯(怪人さんはどうしてこんな事したのかなぁ…

  私達のお菓子を何処かに消したり…皆を閉じ込めたり…)

紬「もしかして…」

ドア『…』


紬「あなたもティータイムに混じりたかったの?」

ドア『…』

ドア『コクリ』


……

澪「はぁ…そんな理由で……」

律「お菓子が消えたのはお菓子を食べてみたかったからで…

  私達を閉じ込めたのは私達に構って欲しかったから…って事か?」

ドア『ニコ』

律「『ニコ』じゃないだろっ!!

  ティータイムに混じりたいだけでどれだけ遠まわしな事してくれてるんだっ!!」

紬「まあまあまあまあ」



梓「ほらっ!唯先輩早く体の中に戻ってください!」 グイグイッ

唯(痛い痛い!あずにゃん!もう少し優しく押し込んで!)唯「…」

さわ子「幽霊って触れるの?」

梓「はい!気合で!」

……

唯「元に戻っちゃった… せっかく幽霊も楽しかったのに…」 ブーブー

梓「幽霊のままだとお菓子が食べれませんよ」

唯「はっ!それは困るね! ありがとう、あずにゃん!」


律「それで、こいつの処分だけど…」

ドア『アセアセ』

律「…ムギも許したみたいだし…不問って事でいいか?」

ドア『!』

澪「まあ…悪戯みたいなものだったし」

梓「最終的には実害はほとんどありませんでしたしね」

ドア『パァアアア』

唯「ドアちゃん良かったね!」

ドア『コクコク』

紬「でもこれからはこんな事しちゃ駄目よ?」

ドア『ニコ』


さわ子「はぁ… 毎度の事だけど…あなた達本当に甘いんだから…」


唯「そうだ!せっかくだからドアちゃんも一緒にティータイムしようよ!!」

紬「でも…お菓子が…」

唯「あっ そうかぁ…」 シュン…


スタスタ…

和「あら? どうして部室のドアが無くなって…

  って! えっ!? なんで部室のドアが席についてるの!?」

唯「あ、和ちゃん!!」

ドア『ニコ』

和「!? ドアが喋った!?!」


律「まあ…普通の反応だな」

澪「実は和、かくかくしかじか でさ」

和「かくかくしかじか じゃあわからないわよ」

澪「!? かくかくしかじかが通じなかった!?」

和「冗談よ、そんな事があったのね…」

梓「いや、ちょっと待ってくださいよ そこは通じるほうがおかしいと思うんですけど」

和「細かいことはいいじゃないの」


唯「それで、和ちゃんどうしたの?」

和「どうしたもこうしたも、さっきアンタが幽霊になって彷徨ってたでしょ?」

唯「おお、そうだったね!」

律「…結構道草食ってたみたいだな」

澪「唯が校内を彷徨ってたせいで…その間私達がどれだけ大変な目にあったことか…」

梓「ちゃんと反省してください!」

唯「ごめんね、みんな…」


和「それで、それを見かけた皆から『お供えに』って

  沢山のお菓子渡されたから持ってきたんだけど…」

唯「えっ!お菓子!?本当に!?」


律「道草最高!!!!!!!!!!」

澪「よく校内を彷徨ってくれた!!!!!!!!!!」

梓「流石唯先輩です!!!!!!!!!!」

唯「あれ? これは褒められてるの?」

梓「すごく褒めてます!」

唯「そっかー えへへー!」 ニコニコ

ドンッ!

唯「おお!お菓子がこんなにも沢山!!」

紬「お菓子もあるし… それじゃあ改めて 皆お茶にしましょうか!」

唯律澪梓さわ子「賛成!!!!」

ドア『ニコ』


こうして今日も私達のティータイムは守られたのです!


唯「幸せ~」 モグモグ

梓「あ、唯先輩 ほっぺに食べかすが付いてますよ!」

唯「えっ本当? とってー」

梓「もー、仕方ないですね」 フキフキ


紬「はい、ドアちゃんの分のお茶よ」 ニコッ

ドア『ニコ』


和「私も戴いて良かったのかしら…?」

澪「ああ、やっぱり皆でお茶した方が楽しいしな」

律「ところでさわちゃん」

さわ子「ん?」 モグモグ

律「前から思ってたんだけどさ 怪人って結局何なんだ?

  不思議な力を持ってて… 事件を起こして周囲を騒がせたりするけど…

  それがどんな存在なのかって言うのは私達全然知らないんだよな…」

さわ子「…」

律「今回だって、気付かない間に部室のドアが怪人になってたりしただろ?

  怪人がどう言う存在かわかってたら、今回みたいな場合でも対応できると思うんだよ」

さわ子「…」

さわ子「りっちゃんも色々考えてるのね」

律「ま、リーダーですから!」

さわ子「ふふっ」

さわ子「そうね、諸説あるけれど……」

さわ子「異世界からやって来たって説が一番有力ね」

律「異世界?」

さわ子「そう… この世界には異世界に通じる扉が幾つかあって

     そこを通じてこの世界に迷い込んできた異世界の存在」

さわ子「それを異世界から迷い込んできた存在だから、異世界人と呼んでいたのを

     省略して界人 つまり怪人と呼ばれるようになったって説」

律「はぁ… 異世界人…」

紬「なんだかスケールの大きな話ですね…」

さわ子「常人とは思えない特異な力も、異世界の力だって考えればなんとなく納得できるでしょ?」

澪「…確かにこの世界ではあり得ない事も、異世界では常識なのかも」

律「つまり異世界の何処かにはドアが日常的に喋る世界があるのか」

梓「それは… 珍妙な世界ですね」

ドア『ニコ』

さわ子「そして、異世界から迷い込んできた怪人達は

    多くの場合、この世界で何らかの問題を起こしてしまうわ」

和「異世界とこの世界ではルールが違いますから当然かもしれませんね」

さわ子「そう言うことね」

さわ子「そこで、そんな特異な力を持つ怪人達に対応するために組織されたのが…

唯「ケイオンジャーだねっ!!!」

さわ子「ええ!そしてケイオンジャーの役目は、

     怪人達を説得して、この世界のルールに順応して貰うことよ!」

律「なるほど…」

梓「倒すことが目的じゃあ無かったんですね」

さわ子「まあ怪人達は強力な力を使って暴れてる事が多いから、

     自然と戦って倒す事が多くなってしまうのだけどね」


さわ子「なんて、私の学生時代の顧問の受け売りなのだけど」

梓「! そう言えばさわ子先生もケイオンジャーをやってたんですよね?」

さわ子「昔はね……」

さわ子「あの頃は……ブイブイ言わせてたわ…」

唯「…? さわちゃん?」


キーンコーン

律「! もうこんな時間か」

律「それじゃあ、私達は帰るとするか!」

紬「あ、戸締りは…どうしよっか」

梓「そう言えば今はドアが無いんでしたね」

ドア『ニコ』

唯「和ちゃん、何とかならないかな…」

和「そうねぇ…生徒会の方で申請しておけば…明日からなら、代わりのドアを用意出来ると思うわ」

澪「そうか! ありがとう、和」


さわ子「今日のところは私が何とかしておくから、あなた達は暗くならないうちに帰りなさい」

律紬梓唯和澪「はーい!」

律「先生、さようならー」

梓澪和紬「さようなら~」

さわ子「はい、さようなら」 ニッコリ

律「唯、早くしないと置いてくぞー」

ゾロゾロ

唯「あーん待ってー!」


唯「それじゃあ、さわちゃん!さようなら!」


唯(?)



はじまりは些細な事でした


さわ子「ええ、さようなら」 ニッコリ


この時のさわ子先生の笑顔が


さわ子「…」


なんとなく寂しそうに見えた…それだけの事だったのだけど


でも、それが…


この後に私達を待ち受ける戦いの始まりの合図だったのだと今では思います


                        第六話『暗黒の微笑み!?軽音部室の大騒動!!の巻き』 完



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最終更新:2010年10月15日 20:00