和「それじゃあ、そろそろ本題… 現状について説明するわ

  食事を取りながらでいいから聞いてくれるかしら」

唯「もぐもぐ」 コクコク

律「いいぜー」 モグモグ

紬「はむっはふっ」

和「…さっきも言ったとおり、昨日の時点までは…

  正確には今日の朝までは何も無かったわ…

  せいぜい、さっき話した人が食事を運びに昨日の夜と今日の朝、2回訪ねてきただけ」

唯「たまごたまご…あ、でもこっちの蒟蒻もおいしそー」

梓「もう!唯先輩 迷い箸はよくないですよ!」

律「チクワいただきっ!」 ヒョイッ

澪「あ、律!横から取るな!」

紬「澪ちゃん、それならこっち側にもあるから大丈夫よ」

和「状況が一変したのは今朝、皆が登校してきた段階…

  その時、私は保健室に養護教諭が来たら、事情を説明しなきゃ

  …なんて悠長な事考えてたんだけど…」

梓「それにしても…お出汁美味しいですね」 ズズー

唯「温まるよねぇ」 ニヘラー

律「こうクーラーの効いた涼しい部屋でおでんって言うのもなかなか…」 モグモグ

紬「ほっとするわよねぇ」 ホッ

澪「だよなぁ」 ホッ


和「あんた達、人の話聞いてる?」

律「あ…ごめんごめん、お腹空いてたし…なんか何時ものティータイムのノリでさ」

澪「こ、これでも ちゃんと聞いてるから 多めに見てくれないか?」

和「まったく…」

唯「私は全く聞いてなかったけど」

和律澪「おい」

和「しばらく待っても養護教諭は来なかったし…

  そうそう、授業が始まる段階になっても始業チャイムもならなかったのよ

  でも不思議な事に話し声とかは聞こえないの

  普通、休憩時間とか授業が無い時には皆騒いだりするものでしょ?」

律「あーわかるわかる 先生が遅れて授業時間に遅れた時とか結構騒いじゃうよな」

唯「うん、休み時間のノリでずっとお喋りしてるもんねぇ」

澪「2人とも率先して騒ぐタイプだからな…」

和「それで、これはおかしいって 思ってね

  昨日の人の「さわ子先生がまた何かやらかす」って言葉も気になってたから

  外の様子…廊下の様子を伺ってみたんだけど…」

紬「先生達が見回っていた?」

和「そう、もちろん この時間…授業を受け持ってない先生が 手持ち無沙汰で校内を見回っているだけなら…

  普通の事だからおかしいとは思わないのだけど… 

  それにしては見回っている先生の数も多いし……様子もおかしくて…」

梓「様子がおかしい?」


和「こればかりは実際に見てもらったほうが早いかもね…

  ゆっくりドアを開いて…気付かれないように外の様子を伺ってみて」


カチャ


ろうか!


先生1「ブツブツブツブツ…」 スタスタ

先生2「ブツブツブツブツ…」 スタスタ

先生3「ブツブツブツブツ…」 スタスタ


唯(うわぁっ! 先生達がいっぱい…) ヒソヒソ

律(しかも何かブツブツ言ってるし…) ヒソヒソ

梓(なんだか…気味が悪いですね…) ヒソヒソ

澪(なんて言ってるんだ…?) ヒソヒソ

紬(えーっと…)


先生1「さわ子様 万歳… さわ子様 万歳…」 ブツブツ

先生2「さわ子様の命令どおりに… さわ子様の命令どおりに…」 ブツブツ

先生3「さわ子様に逆らうものはいねぇか…」 ブツブツ


唯律梓澪紬(う、 うわぁっ… )


キーッ パタン


律「うん…どう見たっておかしいな…」

紬「せ、先生達一体どうしちゃったのかしら…」

唯「さわ子様、さわ子様ってずっと言ってたね…」

梓「きっと…さわ子先生に何かされたんだと思います…」

律「あの様子だと確かに見つかったらまずそうだな…」

澪「…」

和「あの先生達は特定のルートを行ったり来たりしてるみたい」

梓「まるで操り人形みたいですね…」

唯「操り人形?」

梓「どの先生も同じような行動をしてます…

  自分の意思で動いてるような気がしません」

律「つまり…先生達はさわちゃんに操られてるのか?」


澪(似たような光景… どこかで…)

――

『SATUGAIしてくれるわぁあああっ!!!!』

       「ゴートゥ D●C!!!」
       「ゴートゥ D●C!!!」
       「ゴートゥ D●C!!!」

――

和「この状況… さわ子先生の仕業じゃないかとは思ってたけど…


  でもまさか…怪人の力を手にしてただなんて…」


律「それで…現状についてはわかったけどさ…

  でも…さわちゃんは 先生達に校内を見回らせて何がしたいんだ…?」

澪「目的がわからないな…」


和「……実を言うとね

  私達のクラスメイトから…私宛に何件かメールが来てるのよ…」

唯「皆から…?」

和「 ”学校に来ちゃダメ”

   ”先生達に教室に閉じ込められてる”

   ”様子がおかしい 助けを呼んで” 」

律澪唯梓紬「!!!!!!!!!!」

和「私が教室にいなかったから、まだ私が学校に来てないと思って連絡をくれたみたい

  そして何度かやり取りしてわかったんだけど…

  閉じ込められてるのは私達のクラスだけじゃない…

  この学校の全部のクラスがそう… 先生達によって生徒達が閉じ込められてる…

  そしてその先生達はさわ子先生に操られてるから…


  つまりね、 さわ子先生の手によって…

  この学校の… 全校生徒が  校内に閉じ込められてるのよ!」

澪「ぜ、全校生徒が 閉じ込められるだって!!」

律「さわちゃん本当に何考えてるんだっ?!!」

紬「た、助けを呼んでって!?」

和「…一応、警察には連絡しているわ……

  でも…ダメでしょうね……怪人の力が関係しているんじゃあ…」

唯「た、たたた大変だよっ!!!皆を助けに行かなきゃ!!!」

梓「助けに行くって……誰がですか……」

唯「決まってるよ!!怪人絡みならケイオンジャーの出番だよっ!!

  だから私達がっ!!私達ケイオンジャーが……


  あっ……そっか…」

澪「私達…… 今変身できないだろ……」

梓「変身できないと… ケイオンジャーだなんて言えませんよ……

  何の力も無い… ただの女子高生です…」

紬「それに変身できたとしても…

  さわ子先生が関わってるなら… 昨日の二の舞に…」

律「…ああ…今回ばかりは 何もできないだろ…私達にもさ……」

梓「…」


澪「…」

唯(私達に力があれば…)


和「……呆れた

  そうね、確かに今のあなた達じゃあきっと皆を助けることなんてできないんじゃないかしら

  たとえケイオンジャーに変身できたとしてもね」

唯律澪紬梓「!!!」


律「どう言う意味だよ、和」

和「だって…心が折れてるじゃない」

律「はぁ?」

和「あなた達はさわ子先生に敵わなくて心が折れてるのよ

  心が折れて逃げ腰になってる」

澪「逃げ腰って……」

梓「そ、そんなの言われなくてもわかってます!」

和「…」

梓「でも…でもそれを…あの力に対峙した事ない人に言われたくありませんっ!!!!」

和「…」

紬「…和ちゃんの言うとおりかもしれない…

  私は……さわ子先生と戦いたくない……あの力も怖いけど…

  でもそれより……さわ子先生が怖い……」

唯「ムギ…ちゃん」

紬「先生……信じてたのに…ぐすっ」

唯「…」

紬「…」

律「…」

澪「…」

梓「…」

和「…言い過ぎたわ

  その場にいなかったのに偉そうな事言ってごめんなさい

  ……でも……本当に…

  本当に何も出来ないと思ってるの?」

唯「…え?」

和「まだ…信じてるんでしょ?先生のこと…」

澪「…」

梓「…」

和「…あなた達にできる事はまだあるはずよ…もう一度考えてみて」

律「…」

紬「…」

和「あなた達にとってさわ子先生は何?」

律「私達にとって…

  さわ子先生は…

  担任で…顧問で…そんでケイオンジャーの司令官でさ…」

澪「皆の前では…綺麗で優しい先生で通ってるけど…

  本当はそれだけじゃなくて ちょっといい加減な人なんだよな…」

梓「無理やりネコミミだとかメイド服を着せようとしてきたりして…

  最初はちょっと苦手でした」

紬「でも… いい加減に見えて…

  いつも私達の事をちゃんと考えてくれてた…」

律「ああ、私達のやる事にいつだって協力してくれてたし…

  軽音部の顧問だってさ、本人は無理やり~なんて言ってたけど

  断ろうと思えば断れたはずなんだよ」

澪「でもそうはしなかった… 私達のために引き受けてくれた…」

唯「…顧問になってくれてからもずっと私達のために色々…してくれたもんね

  服作ってくれたり…寝袋作ってくれたり…夏フェスだってさわちゃんがいないと行けなかったよ!

  それにケイオンジャーのスーツも……」


唯「そうだ!私達が『ケイオンジャーになりたい!』って言った時もそうだったよ!」

澪「ああ、あの時もさわ子先生すっごく心配してくれてたっけ」

紬「うん…『ヒーローって簡単な事じゃないのよ』とか

  『皆を守るって言う事がどれだけ大変な事かわかってる?』とか…」

梓「私… ヒーローになれるかもってちょっとワクワクしてて

  その時の言葉の意味は…正直あまりちゃんと考えた事なかったです」

律「そんなの私もだよ……面白そうってだけで軽く引き受けちゃったしな…」


唯「…」

澪「あまり考えた事なかったけどさ……さわ子先生…こんなにも私達の事考えてくれてたんだよな」

律「…それにさわちゃんってさ… 私達と目線が同じなんだよ

  嬉しい事も悲しい事も… 同じ目線で喜んでくれる…悲しんでくれる…」

梓「…いい加減な態度も… 裏返せば 

  私達の前では気を使わず接してくれてる…って事でもありますよね…」

紬「ええ、私達の傍で… 私達の目線で… いつも私達の事を考えてくれてた…」


唯「そうだよ!さわちゃんは……私達の…掛け替えの無い司令官だよ!」

律「ああ!」

澪「うん!」

紬「ええ!」

梓「はい!」


唯「私… さわちゃんと ちゃんと話がしたい…」

澪「唯…」

唯「だってそうだよ! こんな事するのは いつものさわちゃんのキャラじゃないよ!

  きっと 絶対に 何か理由があるはずだよ!!」

紬「…うん、私もそう思う」

唯「…もちろん さわちゃんが 憂にした事は簡単には許せないよ」

梓「…」

唯「でも… 何も戦う必要はないよ!!

  話し合って 分かり合えるなら! それが一番いいよ!!」

律「…そうだな」


唯「だから 私… さわちゃんと ちゃんと話がしたい!」

律「確かに…考えてみればさ 私達、さわちゃんを問い詰めには行ったけど…

  話し合おうとはしてなかったもんな」

澪「ああ…まだ聞けてない事だってたくさんある… あの力を欲しがった理由だってそうだ

  有効利用だとか素晴らしい事だとか聞いてても その力を 具体的にどう使いたかったのか

  どうして怪人の力が欲しかったのか… 肝心な事は聞いてない…

  それがわかれば… さわ子先生の考えも… 知る事ができるかも…」

紬「…さわ子先生の考え…先生の気持ち ……それがわかれば…

  もしかしたら まだ止められるかもしれないよね!」

梓「はい、きっと…まだまだ私達にできる事はあるはずです!」



和「決まった?」

唯「和ちゃん…うん!」

澪「話し合って説得する…それがまだ私達にできること…だよな?」

和「ええ そう、先生の説得…

  それはきっと今まで一緒に過ごしてきたあなた達にしかできないことだもの…

  ……本当にごめんなさい またあなた達に危険な役目を押し付ける形になってしまって…」

律「和…」


和「でも!お願い!!先生を説得して…こんな事止めさせて!!

  皆を… 私達の学校の皆を助けて!!」 ペコリ

唯「…」

唯「大丈夫だよ、和ちゃん」

和「唯…」

紬「私達が絶対にさわ子先生を説得する!」

梓「そして絶対に学校の皆を助けます!」

澪「ああ、たとえ変身できなくても…私達は」

律「ケイオンジャーだからなっ!!!」

唯「だから、安心して 和ちゃん!」


和「唯、皆… ケイオンジャー… 本当にありがとう」


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最終更新:2010年10月15日 21:01