【第六話:心中】
梓「団子だぁ!団子だぁっ!」
紬「喉に詰まらせないように食べるのよ?」
梓「三日振りの飯だぁ!」
団子を手当たり次第に食べる食べる。
梓「美味しい……美味しいです!」
純「そりゃあ私が作った団子だもんマズイ分けがない」
美味しい……本当に美味しい……。
梓「美味しいです……美味……ぐむっ!」
梓「ぐむむむっ!」
純「梓?梓!?」
い、息が出来ない……。
団子が喉に喉に……。
純「ほ、ほら水!」
純から水を受け取り一気に飲み干す。
梓「ぷ、ぷっはぁーっ死ぬかと思いました……」
紬「だから最初に忠告しておいたのに……」
梓「だって三日振りの飯なんですもん……」
純「団子屋の私が言うのも何だけど団子は飯じゃない。菓子よ!」
梓「腹に入れば何でも飯ですよ」
紬「食いしん坊ねー」
違うただ死にそうなぐらい腹が減っているだけだ。
純「あ、そう言えば二人共知ってる?心中があったんだよ」
紬「へぇ~心中があったのね~」
梓「し、心中……」
純「ほら、ここからすぐ近くに蕎麦屋があるでしょう?その近くで男女が心中してみたい」
紬「何だ男女なのね」
心中したのが男女と言う事に何か不満があるのかこの人は……。
純「男の指が切り落とされ……ハメたまま死んだらしいよ」
梓「ハ、ハメたまま…………」
紬「ふぅん」
梓「でも、良くその男女は心中しようと思いましたね」
純「本当……私ならいくら愛する人でもそれだけは無理」
本来、心中の意味は『真心』と同じで男女の『二心たき処を表す印』を指す。
その行為は誓紙・爪はぎ・入れ墨に指切・貫肉そして行き着く先が心中死。
真心の死である。
それに心中は大罪だ。
心中死は大罪……心中死をした者を弔ってはいけない。
一方が残った場合主犯とし斬首。
双方が残った場合、三日間日本橋に全裸で晒され公民権を剥奪。
若い娘が全裸で晒され手荒な仕打ちを受ける事もある。
梓「怖いなぁ……」
純「怖いね……」
心中があった事を話しておいて何が怖いね……だせっかくの団子がまずくなったじゃないか。
紬「心中なんてやるもんじゃないわね~」
梓「そうですよね……」
紬「日本橋に晒され男達に無理矢理犯されるだなんて嫌だわ~」
この人は恐ろしい事を随分と涼しい顔で言う。
梓「そう言えば紬さん今日仕事は?」
紬「休みよ~梓ちゃんは絵を書かなくていいの?」
梓「書いたって売れないですもん……」
純「元気だしなよ。団子一つやるから」
梓「本当ですかぁっ!いただきます!」
梓「はぁ~……久しぶりに水以外でお腹いっぱいになりました!紬さんと純さん奢ってくれてありがとうございます」
紬「いいのよ~じゃあお金かえして?」
梓「……へ?」
紬「冗談よ~びっくりした?」
梓「あ、当たり前ですよ!」
紬「それじゃわ私達はもう行くわね。純ちゃんさようなら」
梓「さようならー」
純「また来るんだよ~」
梓「お金があったらね……」
梓「ふわぁ~……お腹いっぱいになったら眠たくなって来ましたよ」
紬「太るわよ~」
梓「ううっ……あれ?この蕎麦屋……」
紬「純ちゃんがあった心中があった場所ね~」
遺体は回収されたらしい。
地面には血が太陽の光りに照らされ渇いていた。
梓「何か……怖いですね。早く行きましょう」
紬「そうね~あら?あそこにいる人って……」
紬さんが指を指した方向を見てみると澪さんが立っていた。
紬「澪ちゃん?」
澪「紬さん……ですか?」
紬「そうよ~」
彼女は目が見えない。
だから、声で人を判断しなくちゃならない。
私はあまりこの人とは話した事はないから喋べらない方がいいだろう。
紬「そこの蕎麦屋で心中があったらしいわね~」
澪「えぇ知ってます。誰が話してるのを聞きました」
紬「物騒よね~」
澪「はい……」
何だか澪さんは悲しそうな顔をしている。
澪「心中……あの、私帰りますね」
紬「えぇ、今日は三味線は弾かないの?」
澪「すみません……そう言う気分じゃないので」
紬「そう、なら仕方ないわね」
澪「じゃあ私はこれで……さようなら」
紬「さようなら澪ちゃん」
梓「何であんな悲しそうな顔をしていたんですかね?」
紬「分からないわ。気になるけど触れないようにしなきゃ」
梓「え?どうしてですか?何があったか聞けばいいじゃないですか」
紬「知る事を欲くばってたら人間関係がおかしくなっちゃうわ」
梓「そうなんですか?」
紬「そうよ。それに澪ちゃんは何か困ってる事があれば私に相談するわ。それまでは無理に聞きたくはないの!」
どうやら澪さんと紬さんは仲が良いらしい。
仲が良さそうには見えないけど。
紬「それじゃあ私そろそろ帰るわね~」
梓「あ、はい!気をつけて下さいね」
紬「わかってるわよ~それじゃあまたね」
梓「はい、また……」
私も帰るか……。
久しぶりにお腹もパンパンだし今日はいい夢を見れそうだ。
第六話
おわり
最終更新:2010年10月17日 22:04