ダーダダラダタターン♪

唯「ムギちゃんにマスターボールをもらったから、とりあえず憂を捕まえたよ!」

唯「最初こそ抵抗してたけど、そこはなんせマスターボール!」

唯「一週間もすれば、憂はすっかり私をトレーナーと認めて、なんでも私の言うことを聞くようになったね!」

唯「毎日家事をやることで、ちょっとずつレベルを上げさせていってるよ」

唯「ムギちゃんによると、次のレベルアップで何か技を覚えられるらしいね!」

唯「そしたら戦いができるようになって、こんな地道なレベルアップとはおさらばだよ!」

唯「どんな技を覚えるんだろう。楽しみだなぁ」

 ギュウゥー タッ ターン!



 翌日

憂「おねーちゃーん」

唯「おー、おはよー憂ー」ナデナデ

憂「おねーちゃん♪」

唯「ごはんできてるー?」

憂「おねーちゃん!」コクン

唯「ありがとー、じゃ起きよっか」

 ギシッ

 トン トン トン

唯「おー、すごい朝食」

憂「おねえちゃん」

唯「うん、おいしいよ憂!」パクパク

憂「おねーちゃん♪」

唯「よし、それじゃ学校に行こう!」



 2年教室

紬「唯ちゃんおはよう!」

唯「ムギちゃんおはよー。あっ、その機械!」

紬「今日くらいに技を覚えるだろうから……頻繁に確認したくって、つい買っちゃった」

唯「すごいなー。ポケモンの状態とか能力とか、みんな分かるんだよね? 高かったんじゃ……」

紬「そんなこと無いわよ。……それより、早く憂ちゃんを見せてくれない?」

唯「あ、うん。……どう、ムギちゃん?」

憂『おねーちゃーん♪』

紬「……うん、うん」

紬「やっぱりレベルが上がってるわ。新しい技も覚えてる」

唯「ほんとに! やったぁ!」

紬「はい、これが今の憂ちゃんの情報よ。よく覚えておいてね」

 うい Lv6

 てんしのキッス PP10


唯「ガーン!」

唯「だめだ……これじゃあ戦えないよ」ガクッ

憂『おねえちゃーん……』

唯「またレベル上げしなくちゃいけないのか……」

紬「ううん!」

紬「諦めちゃだめよ、唯ちゃん!」

唯「ムギちゃん、けど……」

紬「考えてもみて。この技の効果は何?」

唯「キスをして相手を混乱させる……そうだよね」

紬「そのとおり……それなら、なにか策は浮かばないかしら?」

唯「……まさか」

紬「そのまさかよ」

紬「混乱の効果は相手の動きを封じ、ダメージを与えることが可能」

紬「戦いに勝利することだって、十分可能よ」

唯「……」フーム

憂『おねいちゃーん』

唯「やってみる価値はあるね」

 ガチャ

律「おっはよー!」

唯「りっちゃん勝負!」

律「へっ?」

唯「いけっ、うい!」ボンッ

憂「おねえちゃーん!」

律「いやいや、なんだよ急に!」

唯「何って……ポケモンバトルだよ」

律「私はポケモン持ってねーっつーの!」

律「私だけじゃないぞ、この世の誰だって、ソフトはともかくポケモンは持ってない! 唯もだよ!」

唯「……フンッ! もう語るべき時は過ぎたようだね!」

律「なんだよ」

唯「うい、やっちゃえ! 覚えたての技をりっちゃんにかましてやるんだ!」

憂「おねえちゃん!」ムンッ

 バッ

律「おいぃーっ!?」

憂「……」ダキッ

律「えっ……?」キュン

憂「おねえちゃーん」
ギュウ

憂「おねーちゃーん……」

唯「うい、どうしたの?」

律「……な、なんだよぉコレ」

憂「おねえちゃん……」ギュー

唯「そうじゃないでしょ、キッスだよキッス!」

紬「待って、唯ちゃん! 伝え忘れていたことがあったわ」

紬「とにかく憂ちゃんを一度ボールに戻して!」

唯「わ、わかった!」シュッ

 ポムッ

律「はふぅ……」コテッ

唯「この勝負はお預けだよ、りっちゃん」

唯「……それで、ムギちゃん? 伝え忘れてた事って?」

紬「唯ちゃんは、ポケモンの技の熟練度というものを知っているかしら?」

唯「熟練度? ううん、知らない……」

紬「じゃあ説明するわ。熟練度はポケモンの最新作から導入されたシステムでね」

紬「ポケモンは技を覚えたばかりの状態では、その技をうまく使うことができないのよ」

唯「へぇー、そんなことが……」 ※ねーよ

唯「じゃあ技を使えるようにするにはどうしたらいいの?」

紬「このあたりは唯ちゃんのトレーナーとしての腕前が光るわね」

紬「技を覚えた状態は、あくまでポケモンの体格やパワーがその技を放てる水準になったというだけで」

紬「ポケモン自体はまだその技を扱うことができないの」

紬「だから、トレーナーが技の使い方をポケモンに教え込まなきゃいけないのよ」

唯「なるほどね。技を使えるようになるにも訓練が必要なんだ?」

紬「そうなるわ。だから今はまだ……」

唯「わかった。勝負はまだできないんだね」


憂『おねえちゃーん……』

唯「ううん、憂のせいじゃないよ」

唯「でも、トレーナーとして訓練はビシバシいくからね!」

憂『おねえちゃん!』

紬「それじゃあ唯ちゃん、そろそろ……」

唯「あ、うん。そだね」

 ボンッ

唯「授業がんばってね、ういー」

憂「おねーちゃーん」タッタッタッ

唯「……よしっ、私も頑張ろっと」フンス

律「……」

紬「あら……」

律「……」


――――

 1年教室

憂「はぁー……」

純「おつかれ……」スッ

憂「ありがと、純ちゃん」ズズー

 ベココッ

純「全部飲んだ!?」

憂「あ、ごめん。ボーッとしてた」

純「いや、いいんだけどさ……」

純「大丈夫? 最近の憂、目に見えて疲れてるよ?」

憂「えぇ? そんなことないよ」

純「お姉さんにつきあってポケモンごっこしてるらしいけどさ……」

憂「しっ! だめだよ純ちゃん!」

純「……ごめん」

純「でも体は大事にしてよ?」

純「それで倒れちゃったら、それこそお姉さん悲しむよ?」

憂「うん、分かってる……」

 ガチャ

梓「おはよー、純」

純「おはよ、梓」

梓「……憂、オ・ハ・ヨ・ウ」

憂「おねーちゃーん」

梓「だめか……」

純「……」

梓「憂がポケモンになっちゃって一週間……」

梓「一体いつになったら元に戻ってくれるのかなぁ」

純「……」



 とんで放課後

唯「ういー、迎えに来たよー」

憂「おねーちゃーん!」トテテ

 ポシュンッ

純「いまだに原理がわかんない……」

梓「え?」

梓「モンスターボールなんだからそりゃあ憂は入るでしょ」

梓「仮にもポケモンなんだし」

純「そうなんだ。じゃあ私、ジャズ研にいってくるね」

梓「あ、うん。じゃあ……」

梓「……もう、唯先輩! 待ってくださいよーっ!」トトッ

――――

純「……」ボォーン…

純「……あれの中、一回入ってみたい」ボソ



 音楽準備室

憂『おねーちゃん』コロ…

唯「ん?」

憂『おねーちゃん、おねーちゃん』

梓「出してほしいって言ってるみたいです」

澪「……そうなのか?」

梓「だてにトンちゃん係やってませんよ」

澪「ぜ、ゼニィ!」

梓「……」

澪「似てなかったか……?」

梓「いえ……できればカメックスに挑戦してほしかったです」

澪「……」

律「……それはそれとしてさ、憂ちゃんを出してやろうぜ!」

唯「だめだよりっちゃん!」

律「何でさ。こんな狭い所に閉じ込めてたらかわいそうだろ?」

唯「だって憂はポケモンなんだよ。ポケモンはボールに入ってるものだよ!」

憂『おねえちゃぁん……』

律「……唯。同じ言葉を言われたと想像してみろよ」シュッ

唯「へ……?」

 ボンッ

憂「おねーちゃん!」ヒシッ

憂「おねーちゃん、おねえちゃぁん!」

律「唯にとってポケモンが何なのか知らないけどさ」

律「アニメやゲームと違うんだ。想像力を働かせろ……今は」

唯「想像……」

紬「唯ちゃん」

唯「……なあに?」

紬「ボールはもう必要ないんじゃないかしら?」

紬「ポケモンがよく懐いてるなら、いちいちボールで拘束する必要もないのよ」

紬「実際、ポケモンマスターを目指すトレーナーの多くはボールを使わずにポケモンを連れ歩いてる」

紬「ボールから脱却するのは、優秀なトレーナーとして不可欠なのよ?」

唯「そうなの?」

紬「ええ」コクリ

唯「そっか……じゃあもうボールはいらないね」

憂「おねえちゃーん♪」スリスリ

梓「嬉しいって言ってますね」

澪「そのくらい分かるさ」



 夜 平沢家

唯「ふぅー……今日の部活は大変だったなー」

憂「おねえちゃん、おねえちゃん♪」トテトテ

唯「お、うい。どうしたの?」

憂「おねえちゃぁん」スリン

唯「んー……?」

憂「おねえちゃ、おねえちゃぁん……」

唯「甘えたいの? んーよしよし♪」ナデナデ

憂「おねえちゃんっ」プルプル

唯「あら、ちがうの」

憂「おねえちゃん……」

唯「なんだろう……どうしたの、うい?」

憂「むーっ」

憂「……ちゅ、ちゅう!」

唯「へっ、ちゅう?」

憂「おねえちゃん、ちゅう!」

唯「……あぁ! そうだ、特訓!」

唯「すっかり忘れてたよー。そうだったそうだった」

唯「サボろうとしないで憂はえらいなー。よしよし」ナデナデ

憂「おねぇちゃん……」カアッ

唯「よし、それじゃ始めよっか」

唯「覚えた技はてんしのキッスだったね」

唯「よし、トレーナーの腕の見せ所だよ!」

憂「……」ドキドキ

唯「うーん」

唯「やっぱり理論なんかより実践から入るのが平沢流だよね」

唯「見よう見まねでもまずやってみることが大事だね!」

唯「……て、てんしのキッスかぁ」

唯「ってことは……う、ういと……」

憂「おねえちゃーん」

唯「わ、わかってるって」

唯「いい? 今から憂にてんしのキッスを教えるよ」

唯「憂にしてみせるから、その感覚をきっちり覚えるんだよ」

憂「おねえちゃんっ」コクコク

唯「……ふぅーっ」

唯「い、いくからね?」ドキドキ

憂「ん」

唯「あ、こら。憂は目閉じたらだめだよ。覚えるんだから」

憂「お、おねえちゃん……」
キュンッ

唯「よぅし……」

憂「……」ドキドキ

唯「……んっ」チュッ

唯「んー」チュウゥ

憂「おれえひゃむ……」

唯「はっ……」チュッ…

唯「い、今のがてんしのキッスだよ……」

唯「次は憂がやってみて……」

憂「……ふっ」チュムッ

憂「んんうっ」チュウウゥゥ

唯「ふむううう!?」

憂「んはぁっ」チュパッ

唯「う、ういー……」

唯「な、なんだろうね?」

唯「私だけかな……」

憂「おねえちゃん?」

唯「いやぁいやぁ、何でも!」

唯「ところで今のてんしのキッス、完璧だったよ! あれなら十分戦いで通用するよ!」

憂「おねえちゃぁん」ムー

唯「な、なんですかな……?」

憂「んっ」チュッ

唯「やあうっ……わ、わかったよ、練習続けようんんっ!」

憂「ふっ、んむっ、おね、ちゃんっ」チュッチュッチュチュ

唯「ま、待って待って! ひゅむうんっ!」モガッ

憂「ん、んんふっ、はぁちゅっ……」ニチュル

唯「はらぁ、まいめに、ひゃるからぁ……こんらのぉ」


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最終更新:2010年10月22日 21:18