シーン…‥シーン…‥
梓「唯先輩も、私の事を探していてくれた…」
梓「あの時の温もりを忘れずに、覚えていてくれた…」
梓「ずっと探していて、やっと会えて……」
梓「ようやく、想いを伝えられたのにッ……」
梓「どうしてっ……!」
梓「唯先輩……っ」ぽろぽろ
ブロロオォ……キキキーッ!!!
梓「えっ……?」
――ガシャンッ!……
………
―『………ぃ』
―『………憂…』
―(なに……?)
―『全てに恵まれし子供よ…』
―『お前は、誰よりも優れ…何よりも強く…』
―『思うもの全てを為し、何よりも美しく……』
―(……違う。私は、何かがしたいわけではない……)
―(……何かがやりたいわけではないよ……)
―『平沢 憂………』
―『祝福を……才気溢れる子供に祝福を……』
―『望むものを与えよう…輝しき子供に、祝福をっ……』
―(だったらっ!私に――……)
…………
憂「あの時以来か…」
憂「お姉ちゃん………」
憂「…………」
――RRRRR…
憂「はい、もしもし?」
憂「え…?梓ちゃんが…?」
…………
―ヒュュォォォ……
紬「風が冷たいわね……」
唯「うん……」
紬「まるで肌に突き刺さるような寒さだわ……」
唯「私は……いつ、帰って来れるんだろう……?」
――バタバタッ…
憂「お姉ちゃんっ!…」
唯「憂、どうしたの? そんなに慌てて…」
憂「梓ちゃんが………」
唯「えっ……?」
憂「車に跳ねられて…」
憂「今、病院に運ばれたんだけど…なんだか様子がおかしいの!」
憂「薬が効かなくて…痛みも止まらないみたいで…」
憂「どうしたらいいのかわからず、お医者さんも頭を抱えているって……」
唯「………っ!」
バッ…!
紬「唯ちゃん、待って!」
唯「ムギちゃん、私…行かなくちゃっ!」
紬「唯ちゃん……」
唯「お願い、行かせてっ! ムギちゃん…!」
紬「………」
紬「私は…いつでも唯ちゃんの味方よ…?」
紬「誰よりも…何よりも…神様よりも…… 唯ちゃんの事を大切にしているわ……」
紬「……いってらっしゃい………あとの事は任せてっ!!」
唯「……ムギちゃんっ……ありがとっ!……」
――バサッ……
紬「ふふっ…」
紬「仕方無いわねぇ…」
…………
バサッ…バサッ…
唯「あずにゃんっ… あずにゃんっ…」
スルスル…しゅたっ!!
唯「…あずにゃんッ!!」
梓「………ぅぅ」
唯「………、あずにゃん……」
梓「……唯…先輩…?」
唯「……あずにゃんっ!!」
梓「唯先輩っ……私……」
唯「もう、大丈夫だから………!」ぽろぽろ
――ぎゅうぅ……
唯「あずにゃん……」
梓(あたたかい……)
梓(なんだろう……傷が癒えていくような……)
――ポワッ…
梓(痛みが消えていく……)
梓(唯先輩……)
梓「……っ!?」
梓「唯先輩、羽がっ…!?」
唯「あっ……えへへー…」
梓「………」
梓「………」
梓「………、私――…」
梓「唯先輩が、何者なのか………わかった気がします……‥‥」
…………
梓「――ええ、もう大丈夫です」
梓「――はい、ありがとうございました…」
バタンッ…
唯「どうだった?」
梓「お医者さん、ビックリしてました…」
唯「あははっ…♪」
梓「何より、私自身がビックリなんですけどね…」
梓「唯先輩………」
梓「先輩に、命を救われるのは、これで2度目ですね……」
唯「あずにゃん……」
梓「本当に、感謝しています……言葉では言い表せないぐらいに――」
フラッ…
梓「……っと、」
唯「あずにゃん、まだ無理しちゃダメだよ?」
唯「しばらく…元の姿に戻っていた方がいいね……」
梓「え……?」
――ポワッ……
唯「今日一日だけは、その姿でいてね…?」
猫梓「にゃあ………」
唯「ふふ、猫のあずにゃんも可愛い…」
梓猫「にゃあ……」
唯「おいで…!」
梓猫「にゃあっ…♪」
……♪
唯「るんるんっ♪…」
梓猫「にゃあっ……」
唯「猫さんとお散歩~♪ 猫さんとお散歩~♪」
梓猫「にゃあ………」
唯「あずにゃん、可愛い~っ♪」
…
唯「あっ、りっちゃんだ!」
唯「おーい、りっちゃーん!」
律「よお、唯! …って何だその猫!?」
澪「唯!…って、肩に猫が乗っかってるし……」
唯「やっほーい!りっちゃん、澪ちゃんっ!」
唯「ふたりとも、どうしたのー?」
律「いや、なんか梓が事故ったみたいで…」
澪「それでお見舞いに行こうかと思ったんだが…」
唯「あずにゃんなら大丈夫だよ~っ!!」
梓猫「にゃあっ!」
律「…みたいだな。なんだかもう、病院にもいないみたいだし」
澪「まったく、人騒がせな…って本当になんだその猫っ!?」
梓猫「にゃあっ♪」
律「唯にベッタリ懐いているぞ……」
澪「スゴイ……まるで唯に心を拠せているかのようだ…」
唯「えへへー…、この猫さんは私の大事な想い人なの!」
梓猫「にゃあっ!?…///」
律(えっ……猫が、照れている…??!)
澪(いや、猫が想い人って……)
唯「ふふふっ♪」
梓猫「にゃあっ♪…」
……テクテクッ…
唯「ふふっ、あーずにゃんっ♪」
梓猫「にゃあっ……」
唯「二人とも、あずにゃんには気付かなかったね」
梓猫「にゃあにゃあっ…!」
唯「まあ猫さんだもんね、今は……」
梓猫「にゃあ………」
唯「…………」
唯「りっちゃんと澪ちゃんは仲が良いよねー…」
梓猫「にゃあ………」
唯「……あずにゃん、知ってる?」
梓「にゃ?……」
唯「あの二人、実は付き合っているんだよっ!」
梓「にゃ、にゃあぁっ!?……」
唯「2人とも、子供の頃からの幼なじみでさー…」
唯「お互いに気持ちが通じ合ってるんだって」
唯「いいよねー、なんだかうらやましい…」
梓猫「にゃあ………」
唯「……でも、」
唯「私とあずにゃんの間にも負けないくらいの絆があるよねっ!」
梓猫「にゃあっ!……」
唯「あずにゃーんっ…♪」
梓猫「にゃあ、にゃあっ……!!」
……テクテクッ…
唯「あっ、さわちゃんだ!」
さわ子「あら、唯ちゃん。こんばんわ!」
梓猫「にゃあっ!…」
さわ子「可愛い猫ちゃんね! 毛並みがとってもキレイ…!」
梓猫「にゃあ~…」
さわ子「……あんまり遅くならない内に帰るのよ?」
唯「は~いっ!……」
唯「…………」
トテトテッ………
唯「さわちゃんも、昔はとっても美人さんだったみたいだね…」
梓猫「にゃあ……」
唯「いっぱいモテてたみたいだけど、結局今は独り身なんだって…」
梓猫「にゃあ~……」
唯「どこかで後悔とかしてるのかな……」
梓猫「にゃあ……」
唯「早く、良い人が見付かるといいね?…」
梓猫「にゃあっ!………」
……テクテクッ…
唯「和ちゃん、やっほーい!」
和「唯っ!あんたこんな時間にまで……って、なにこの猫?」
梓猫「にゃあ!…」
和「わわっ、すごく懐いてるっ!…」
唯「ふふ、可愛いでしょ~?」
梓猫「にゃあっ♪…」
和「はぁ~、まったくもぅ……。発表会が近いんでしょ? 早く家に帰りなさいっ!」
唯「ほいほ~いっ♪」
……トテトテッ…
唯「和ちゃんは厳しいけれど、本当は私達の事ちゃんと心配してくれてるんだよ…?」
梓猫「にゃあ………」
唯「もうちょっと素直に、応援してくれてもいいのにな~」
梓猫「にゃあ~……」
唯「和ちゃんとも、結構長い付き合いだったなぁ…」
梓猫「にゃあ………」
唯「お別れするのは、辛いなぁ…」
梓猫「……。にゃあ~…」
― 桜の木 ―
唯「えいっ。」ドゴォッ!!
バサバサッ!…
ヒラヒラ…‥ヒラヒラ…‥
梓猫(……っ!!)
梓猫(すごい…桜の花々が一瞬で………)
梓猫(…って、こんな事したらかなりマズイんじゃ??!)
梓猫「にゃあっ!!……」
唯「いいんだよ‥」
唯「私はもう、あずにゃんを助けた時点でルールを破ってるからね……」
梓猫「…………」
唯「そんな顔しないで?」
唯「大丈夫だよ…、私にはとっても力強い味方がいるんだからっ♪」
梓猫「にゃ、にゃあ…?」
唯「神様なんて怖くないよっ」
梓猫「にゃあ~…」
最終更新:2010年01月07日 18:43