唯「ねぇねぇ、みんなで自分の生い立ちについて語り合おうよ!」
律「急にどうした?」
唯「だって・・・みんな全然自分の過去について語ろうとしないじゃん! もしかして重大な何かが過去に・・・」
澪「あのなぁ・・・」
梓「最悪の場合を考えて、そういうのは探らない方がいいと思いますよ」
紬「じゃあ、今日は誰にする?」キラキラ
律「おい」
紬「じゃあ、今日は唯ちゃんね」
唯「・・・」
梓「言い出しっぺなんだからしっかりして下さい」
唯「わ、分かったよ」
唯「私と和ちゃんが幼稚園で出会ったのはみんな知ってるよね?」
唯「その前後から・・・」
紬「じゃあ、今日は唯ちゃんね」
唯「・・・」
梓「言い出しっぺなんだからしっかりして下さい」
唯「わ、分かったよ」
唯「私と和ちゃんが幼稚園で出会ったのはみんな知ってるよね?」
唯「その前後から・・・」
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私はずっと孤独だった。
両親が毎日のように出張に行くので、隣のおばあちゃんに世話をしてもらっていた。
おばあちゃんはとてもいい人だけれど、私は常に寂しさを抱えていた。
同年代の友達がいなかったからだ。
幼稚園に入った時、一人の女の子に声をかけてみた。
それが和ちゃんとの出会いだった。
何故だか知らないけど、いつの間にか仲良くなって気付いたら親友になっていた。
でも、和ちゃん以外の友達はできなかった。
何故だか他の人に嫌われているような気がした。
その時は、心当たりもなかったのであまり気にしなかった。
そして、小学校に入学する。
小学校に入ってみて、小さな疑問が大きな確信に変わった。
私は明らかに嫌われている。
何か悪い事をした心当たりはないし、理由は全く分からない。
でも、和ちゃんだけは私の味方だった。
それも不思議だった。
何故和ちゃんだけは私の味方になってくれるのか。
3年生になって、初めて和ちゃんと別のクラスになった。
その時から、本格的なイジメが始まった。
最初は些細な悪戯だったのが、段々エスカレートしていった。
担任の先生に相談したが、全く意味が無かった。
それどころか、担任の先生はイジメる側に加担し始めた。
一緒にイジメを行い、教師という立場を利用してその事実を揉み消したのだ。
耐えられなくなった私は、とうとう不登校になってしまった。
そんな時、和ちゃんが私の事を心配して私の家を訪れた。
私は自分の部屋に引きこもっていたので、憂が代わりに対応した。
でも、和ちゃんは憂を押し切って私の部屋の前まで来た。
ドアには鍵がかかっていて開かないので、和ちゃんはその場で私に呼び掛けた。
和「クラスでイジメられて不登校になったんでしょ?」
唯「な、何で知ってるの?」
私は、イジメられている事を和ちゃんに話していなかった。
余計な心配をかけたくなかったからだ。
和「そのぐらい知ってるよ! 唯の友達だもん!」
唯「でも、担任の先生もイジメる側の味方なんだよ・・・、絶対敵わないよ・・・」
和「そんな担任は教育委員会に訴えてクビにしちゃえばいいんだよ! 唯は悪くないもん!」
唯「和ちゃん・・・」
和「お母さんに頼んでおくから、明日からは学校に行こうね!」
唯「うん!」
和ちゃんの大胆な発想にビックリしていた私だけど・・・
その後、あの担任は本当にクビになった。
その時、改めて教育委員会の凄さを思い知った。
その後はイジメに加担するような悪い教師に出会う事もなく、一応平和に小学校を卒業した。
でも、それはつかの間の平和だった。
あの時、何故私が嫌われているのかを調べていれば・・・
この先の更なる地獄を味わう事も無かっただろう。
結局、小学校にいた間も友達は和ちゃんだけだった。
私と和ちゃんは、もちろん同じ中学校に入学した。
でも、和ちゃんとは別のクラスになってしまった。
その瞬間、あの頃の記憶が蘇る。
そして、視線を教卓に向けると・・・
忘れもしない、あの教師の顔があった。
ありえない、絶対にありえない。
あの男はクビになったはずだ。
そして1時間目の学活が終わり、私は和ちゃんのいる教室へ行こうとして廊下に出ると・・・
あの男が不吉な笑みを浮かべて立っていた。
そして一言、
「忘れたとは言わせねぇぞ平沢ァ・・・覚悟しておけ・・・」
次の日の朝、私が遅刻寸前で教室に入ると・・・
クラスのみんなが一斉に私を睨んできた。
あの時と全く同じだった。
それどころか、他の教室に入った時も、廊下を歩いている時も同じような事をされた。
そして私は気付いた。
学校全体が私の敵となっている事に。
あの頃の再来、いや・・・
更なる地獄の始まりだった。
今回は以前とは違い、教育委員会を頼る事もできない。
校内の生徒・教師のほぼ全員が敵であり、イジメられているという事実を立証する事が不可能なのだ。
そして、私はまた不登校になった。
だが、家も安全地帯ではなくなっていく・・・
とうとう家にまでイジメる側の人達が押しかけ、ゴミや爆竹を投げ込んだり、外壁に落書きをしたりするようになってきたからだ。
流石に不法侵入まではしてこないので自分に直接危害が加えられる事は無い。
しかし、憂に迷惑をかけてしまっていると思うと申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
唯「憂・・・ごめんね・・・、私のせいで・・・」グスッ
憂「お姉ちゃんは何も悪くないよ! 私の事は気にしないで!」
唯「うわ~~~ん!」ポロポロ
また、前のように和ちゃんが家を訪れた。
そういえば、最近家への攻撃がなくなったような気がする・・・
和「もう家を攻撃される事はないから、安心していいわよ」
唯「なんで?」
和「教師に従わず、一般生徒との交流もなく、喧嘩が強い人達と言ったら・・・?」
唯「ふ、不良!?」
和「そう、不良達を味方につけて唯の家の周辺を巡回させてるの」
唯「で、でも・・・」
和「不良って言っても見かけだけで中身はいい人なのよ、今度見かけたら仲良くしてあげてね」
和「(不良の中でも唯の事が好きな人達を集めたんだけどね・・・、唯は可愛いらしいから人数稼ぎは楽だったけど)」
その後、久しぶりに家の外に出た。
もちろん、不良の人達とも会った。
何故かみんな顔が赤かったような気がする。
話してみると、意外とみんないい人達だった。
憂には和ちゃんの方から説明してもらい、とりあえず一安心。
でも、このままだと出席日数不足で高校へ進学できなくなってしまう。
そこで調べてみようと思った。
何故自分が嫌われているのか、何故あの男が復帰していたのか・・・
後者の方はすぐに分かった。
彼が当時の二大企業の一つ、紫合(シアワセ)グループの御曹司だからだった。
不良の人達から聞いた話だと、あの男のモットーは
「正義なんて金と権力でブッ潰せ」らしい。
しかし、前者の方は調べようがなかった。
その数日後、公園付近を散歩していると・・・
その先に、あの男と男子生徒数人がいた。
いたと言うより待ち構えていたと言った方が正しいかもしれない。
周りを囲まれてしまい、逃げ場を失った。
今は不良の人達もいない、どうすれば・・・
男「お前らァ・・・平沢をブッ潰せェ!」
屈強な男子生徒達とあの男が私に襲い掛かってくる。
私は運動が得意ではないし、喧嘩の経験もない。
一方的に殴る蹴るの暴行を受け、心身ともにボロボロにされていくだけだった。
唯「うぇぐ・・・痛いよぉ・・・痛いよぉ・・・」ポロポロ
男「ハハハh・・・ん?」
男が振り向いた先には・・・木に縛り付けられた男子生徒達と・・・
憂「お姉ちゃんを・・・イジメないで・・・!」ハァハァ
憂がいた。
男「平沢の妹か・・・、だが下っ端を片付けるので精一杯だったんじゃないのか?」
憂「そんな事・・・ないっ・・・」ハァハァ
男「ならいいぜ、思う存分痛ぶってやるよ・・・」
私の目の前で、憂が痛め付けられていく。
いくら憂でも所詮は華奢な女の子。
屈強な男子生徒数人を倒すだけで精一杯だ。
唯「やめて・・・やめてよぉ・・・」ポロポロ
憂「大丈夫・・・だよ・・・、お姉・・・ちゃん・・・」フラフラ
唯「憂・・・」
私はお姉ちゃんなのに、何でこんなに弱いんだろう。
私はお姉ちゃんなのに、何でこんなに頼りないんだろう。
私はお姉ちゃんなのに、祈る事しかできない。
だったら、無駄だと分かっていても祈るしかない。
憂の無事を、あの男に天罰が下る事を・・・
憂「ううッ・・・」フラッ・・・
男「オラァ!」
ドガッ!
憂「うあッ!・・・ああ・・・」ドサッ
男の猛攻に耐えかねた憂がついに倒れる。
男「どうだ?土の味は?」
憂「うぅ・・・」
憂が必死に立とうと、戦いを続行しようとする。
もう勝てる訳がないのに、私のために。
自分の体を犠牲にして・・・
もういいよ、憂。
もうやめて・・・
男「ほらよッ!」
ドスッ!
憂「くッ!?・・・うっ・・・」ゴホゴホ
神様、どうかあの男に天罰を・・・
そして憂を助けて・・・
その時、突如銃声が鳴り響く。
最終更新:2010年10月18日 22:20