次の日
唯紬「「じゃあ最後は澪ちゃんね!」」
澪「えっ!?」
梓「逃がしませんよ・・・澪先輩」
澪「梓まで!?」
律「早く白状しちゃえよ」
澪「わ、分かったよぉ・・・」
澪「じゃあ、話すからな・・・」
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私は、とても恥ずかしがり屋で、運動が苦手だった。
そのせいか、小さい頃は誰も友達がいなかった。
幼稚園の頃はイジメられていた程だ。
男子達「やーい!弱虫ー!」
彼らはそう言うと、私に砂をかけたり、泥をぶつけたりしてきた。
澪「やめて・・・やめてよぉ・・・」ポロポロ
男子達「やーい!泣き虫ー!」
バシッ!バシッ!
澪「ううっ・・・痛いよぉ・・・」ポロポロ
澪「・・・」グスッ
女子達「ねえ、汚れた服を洗ってあげる!」グイグイ
澪「えっ・・・」
女子達「せーの!」
ドンッ!
澪「うわああっ!」
バッシャーン!
男子達に攻撃され、女子達によって池に突き飛ばされる。
いつものパターンだ。
そのせいで、毎日帰る頃には服がボロボロになっている。
澪「ただいま・・・」
澪ママ「おかえり、澪ちゃん♪」
澪「うぇぐ・・・うぅっ・・・」ポロポロ
澪「またぁ・・・イジメられたよぉ・・・」ポロポロ
澪ママ「澪ちゃんは何も悪くないのに・・・大変だったわね・・・」ナデナデ
澪ママ「澪ちゃんも、もうすぐ小学生ね」
澪「うん・・・」
澪「どうせ、またイジメられるんでしょ・・・?」
澪ママ「・・・」
澪「友達なんて、一生できないよ・・・」
そして、小学校の入学式の日。
入学式が終わると、自分のクラスに向かった。
担任「では自己紹介をして下さい、まずは秋山さんから・・・」
えっ・・・」
自己紹介・・・?
ふと気が付くと席に戻っていた。
緊張し過ぎて、何を言ってたかは覚えてない。
律「みんな、よろしくッ!」ビシッ!
澪「・・・!」クスクス
面白い子だな・・・
結局、友達ができないまま放課後になった。
イジメられないだけ前よりマシか。
しばらくの間、誰とも関わらずにひとりぼっちだった。
でも、最近・・・
律「すごーい、100点だー!!」
澪「・・・!」ビクッ
あの子がちょっかいを出してくるようになった。
そして、私が4年生になった頃・・・
先生「秋山さん、あなたの作文が県から賞を貰ったわよ!」
澪「えへへ・・・」
先生「それでね、賞を貰った人は・・・全校集会でそれを読まなきゃいけないの」
澪「えっ・・・!?」
澪「・・・」グスッ・・・
放課後、私が公園で泣いていると・・・
律「どうしたの?」
律「へ?作文読みたくない?」
律「なんで?」
澪「だって恥ずかしいもん・・・」
律「恥ずかしくないよ、すごいよー!」
澪「ぜ、全然すごくなんかないよ!!」
律「だって、賞もらったのクラスで澪ちゃんだけだよ?」
律「私だったらみんなに自慢するな~・・・」
勝手な事ばっか・・・言わないで・・・!
澪「だったらりっちゃんが賞もらえばよかったのに!」
澪「みんなの前で読むのヤだよぉ!!」
あっ・・・!
澪「あ・・・ご、ごめんなさい・・・」シュン・・・
律「ねえっ!!」
澪「?」
律「今からうちにおいでよ!! 特訓しよう!!」
澪「え・・・ええっ!?」
澪「で・・・でも・・・」
律「いいからいいから!!」
そのあと、彼女の家に連れていかれて特訓(?)をした。
おかげでリラックスでき、全校集会ではちゃんと発表できた。
澪「りっちゃん、昨日はありがと・・・」
律「いいよいいよ、友達でしょ?」
えっ・・・?
友達・・・?
澪「私なんかが友達でいいの・・・?」
律「もちろん!」
その時、私はとても嬉しかった。
生まれて初めて、友達ができたのだから。
その後、りっちゃんには聡君という弟がいる事を知った。
だからあんなに男っぽいのかなぁ・・・?
今度は、私の家に来てもらおうかな・・・
澪「ねぇりっちゃん」
律「何?」
澪「今度、私のおうちに遊びにこない?」
律「いいよー!」
澪「ここが私のおうちだよ・・・」
澪「ママ、ただいま~」
澪ママ「澪ちゃん、おかえり♪ あれ?横の子は?」
澪「私の友達のりっちゃんだよ」
その日は、ママが張り切っちゃって大変だった。
おやつが特大ケーキになったり・・・
澪「ごめんね、ママが迷惑かけて・・・」
律「大丈夫だよ、気にしないで!」
澪「うん・・・」
澪「あのね、りっちゃん・・・」
澪「ずっと、一緒にいてね・・・」
律「もちろん! 私達、もう親友だよ!」
りっちゃんが親友って言ってくれた。
嬉しい・・・
次の日から、私はりっちゃんに宿題を見せてあげたり、勉強を教えてあげるようになった。
そして6年生になった頃、りっちゃんが変な本を見つけてきた。
まずは話し方から変えようとしたけど、なかなか慣れない。
時間をかけてやるしかない・・・
澪ママ「澪ちゃんももうすぐ中学生か・・・」
澪「中学生ってどんなの?」
澪ママ「いろいろ変わるわよ~! 制服があったり、部活があったり・・・」
澪ママ「中3になったら受験もあるしね!」
澪「受験?」
澪ママ「高校受験の事よ」
澪ママ「澪ちゃんみたいに頭のいい子は、レベルの高い高校に行けるの」
澪ママ「でも・・・」
澪ママ「りっちゃんと同じ高校に行くのは、ちょっと無理ね・・・」
澪「なんで?」
澪ママ「ほら、りっちゃんって勉強苦手でしょ?」
澪ママ「だから・・・」
この時、私は初めて気が付いた。
いつか、りっちゃんと別れる時が来る事に。
だったら今のうちに、一人で生きていけるように特訓しよう。
中学校に入る前に・・・
まず、私は本屋に行った。
『ナマケモノでもできる!基礎トレーニング』
『スポーツの天才になれる!応用編』
『料理読本決定版!』
『決定版!家事の仕方』
『サルでもできる!護身術』
勉強はできるので、それ以外の分野を補強しようといろいろな本を買った。
りっちゃんにはバレないようにしよう。
律「み~お~、遊ぼうよ~!」
澪「ごめん、今日は・・・」
律「澪~!遊ぼうぜ~!」
澪「ちょっと用事が・・・」
律が遊ぼうと言っているのを断るのは正直辛い。
でも、頑張るしかない・・・
だんだんあの話し方にも慣れてきたな・・・
スポーツ教室に通ったりもした。
コーチ「秋山、だいぶ上手になってきたな!」
澪「は、はい!」
今日はこのあと、公園を10週して、家に帰ってからは料理の練習を・・・
澪「ただ・・・いま・・・」ハァッ・・・ハァッ・・・
澪ママ「澪ちゃん大丈夫? ちょっと無理し過ぎなんじゃ・・・?」
澪「大丈夫・・・だよ・・・」フラッ・・・
澪「・・・」バタッ!
目が覚めると、私は自分のベッドで横になっていた。
もう夕方か・・・夕方の予定は公園10周だったはず・・・
早く、練習を再開しないと・・・!
澪ママ「ダメよ澪ちゃん! まだ横になってないと・・・」
澪「もう大丈夫・・・だから・・・」
澪ママ「でも・・・!」
澪「行って・・・くる・・・」
まだ半周もしていないのに、目眩がする。
足元がおぼつかない、呼吸が苦しい。
数分後、私はとうとう倒れてしまった。
立ち上がろうとしても、手足に力が入らない・・・
やっぱり、私ってダメなままなのかなぁ・・・
澪パパ「澪~!」
澪「パパ・・・?」
澪パパ「心配したじゃないか・・・何でこんなに無茶するんだ?」
澪「それは・・・」
澪パパ「大丈夫、他の人にバラしたりはしないから・・・」
澪「律やママやパパとも、いつかは離れ離れになっちゃうでしょ・・・? その前に・・・」
澪「一人で生きられるようになりたかったから・・・」
澪「何にもできない自分を、変えたかったから・・・!」
澪「でも、結局はママやパパに迷惑をかけてるだけなんだよね・・・」
澪「私なんて、生きてる意味ないんだよ・・・!」ウルウル
ダキッ・・・
澪パパ「そんな事ないさ・・・」
澪パパ「澪は、僕達にとって一番大事な・・・」
澪パパ「たった一人の可愛い娘なんだから・・・」
澪「パパ・・・」
澪パパ「さあ、今日はもう家に帰ってゆっくり休もうな」
澪「うん・・・!」
そして、春休み最終日。
両親が明日の昼まで出かけるそうなので、私が家事をする事になった。
澪ママ&パパ「「じゃあ行ってきま~す!」」
澪「行ってらっしゃ~い!」
澪パパ「明日の入学式には、ちゃんと出席するからな~!」
澪ママ「くれぐれも、無理はしないでね?」
澪「うん!」
最終更新:2010年10月18日 22:27