唯「ということで、みんな打ち込みで曲を作ろう!」

律「どうしたんだ急に」

唯「もう楽器を演奏する時代は終わったのです!」

梓「なんですかそれ……」

澪「ギターの弾きかた忘れただけなんじゃないのか?」

唯「ぎくっ…… ち、違うよ!」

紬「でもそれ面白そうね! 色々な音を一度に出せるものね」

律「ムギはいいかも知んないけどさ~」

梓「私一人で作曲なんてできるんでしょうか……」

唯「大丈夫大丈夫! じゃあみんなにノルマを課します!」

澪「ちょ、ちょっと待てよ」

唯「どうしたの?」

澪「いきなりやれって言われても…… 色々買う物とかあるだろ?」

唯「え? 澪ちゃんなんも持ってないの?」

澪「持ってるわけないだろ! ベース一筋だったんだし……」

 「なあ、律?」

律「いや、私は……」

澪「持ってるのか!?」

律「なんか前衝動買いしちゃったんだよね~」

 「よくわかんないけど、SONAR? とかいうやつ」

唯「SONARは便利だよね。 一本あれば色々できるもんね」

澪「そ、そうなのか……」

澪「梓やムギは!?」

梓「私もいくつか持ってますよ。 親のやつですけど……」

紬「私の家にも確かあったと思うわ~」

澪「そんな~……」

唯「じゃあ決定だね! 期日は一週間だよ!」

 「テーマは…… "秋"だよ!」

律「秋か―、難しそうだなー」

梓「生楽器メインでいくか、意表をついてバリバリのシンセ系でいくか……」

紬「悩みどころねー」

澪「ちょ、ちょっと」

唯「そうときまれば早速製作開始だね! じゃあ、解散!」


……

澪「はぁ…… どうしよう」

 「DTMなんてやったことないよ~」

 「とりあえずインターネットで調べてみよう」

カチカチ

澪「なになに…… フリーで楽しむDTM!? こんなのがあるのか」

 「えーと…… ふむふむ」

 「どうやらフリーで使えるMIDIシーケンサが色々あるみたいだ」

 「今一番人気なのは…… "Domino"?」

 「MIDIの可能性を追求する。 か…… 中々よさそうだな」

 「よし、ひとまずダウンロードしてみよう」

ウイーン

澪「よし、できたぞ」

 「これを解凍してっと……」

カチッ

澪「おお! なんかピアノみたいな画面が出てきた!」

 「これをクリックすると……」

チャーン

澪「音が鳴った!」

 「すごいな、最近はこんなものがあるのか」

 「よし、これで恥をかかないで済むゾ!」



一方その頃─

唯「憂~ ただいま~」

憂「おかえりお姉ちゃん! 今日もかわいいね」

唯「憂、ちょっとお願いがあるんだけど……」

憂「なーに?」

唯「実は……」



憂「え? 曲を作ってほしい?」

唯「そうなの。 みんなに見栄張ってあんなこと言ったけど……」

 「実は私作曲なんてしたことないんだ……」



憂「全然いいよ! お姉ちゃんの頼みなら何曲でも作れるよ!」

唯「ありがと~うい~ でも今回は1曲だけでいいからね」

憂「うん! 頑張って作るね!」



──律の家──

ガサゴソ

律「お、あったあった、SONAR8」

 「買ったはいいけど結局インストールすらしてないんだよな~」

 「めんどくせーけどインストールしないとな」

ガチャッ ウィーン

律「はいはい、仕様規約に同意っと……」

カチカチ

 「後は終わるまで待つのみ!」


──梓の家──

梓「何があるのかなー」

ガサゴソ

梓「色々あってわかんないや」

 「これは…… キューベース?」

 「なんか便利そう、これでいいや」


──紬の家──

紬「みんなの前ではしらを切ったけど、実は私いつも曲のスケッチはDTMなのよね~」

 「楽譜はFinaleで作ってるし」

 「今回は何を使おうかしら~♪」



──翌日の学校──

唯「おはよーみんな! 作曲は順調?」

律「いやー、昨日インストールに時間かかっちゃって……」

 「結局まだ何もやってないわ」

梓「私もです」

唯「みんなそんなんでだいじょーぶ? 私は着々と進んでるよ~」

紬「さすが唯ちゃん、言いだしっぺなだけあるわね~」

澪「(ふふふ…… みんな、私がちゃんとパソコンで曲作れるの知ったらびっくりするだろうな)」

唯「澪ちゃんは? なんか買った?」

澪「わ、私!? う、うん、まぁね」

梓「澪先輩ってマカーでしたっけ? ってことはLogicとか……」

澪「うん、まあそんなとこ」

 「(Logicってなんだろ……)」



──放課後、澪の家──

澪「ただいまー」

 「ふふ、今日学校で曲のアイデアいっぱい思いついちゃった」

 「どんどん打ち込んでいくぞ!」

ポチポチ

澪「うーん、なかなか思い通りにいかないなー」

 「マウスで一音一音打ち込むのも大変だし……」

 「律にメールしてみよ、あいつもチマチマした作業苦手だからな」

ピポパポ

ヴィ~ン

律「ん? 澪からメールか」

 「なになに…… 『律ちゃんとやってるか? マウスで打ち込むの挫折してないか?』」

 「え…… あいつマウスで打ち込んでんのかよ……」

律「MIDIキーボードとか持ってないのかねー」

 「でもこのまんまにしとくのも面白そうだな」

 「えっと…… 『確かにめんどくさいよなー! でもなんとかやってるぜ』」

 「『マウスで地道に打ち込むのもDTMの醍醐味だしな!』っと……」

 「送信!」

ヴィ~ン

澪「あ、律から返信だ」

 「なになに……」

 「ははは、あいつも苦心してるみたいだ」

 「でもこれがDTMの醍醐味か…… なんかその感じわかるぞ!」

 「よーし、まずは一曲完成させてみよう!」


──2時間後──

澪「なんとか一曲できた……」

 「通して聴いてみよう」

ジャンジャン、ジャカジャーン

ボンボンボン…

澪「おお、ここのベースラインいい感じだ」

ドンシャンドンダカダカダカ

澪「ドラムのフィルインもかっこいいぞ!」

デッデッデデー

澪「ふぅ…… なかなかうまくできた!」

 「ふふ、これ聞いたらみんなびっくりするだろうなー」

 「でもまだ改善点があるな、ここをこうして……」


──梓の家──

梓「昨日Cubaseって言ってたけどやっぱりこのFL Studio にしよっと」

 「せっかくだから、皆の意表をついてテクノっぽい感じにしたいもんね」

 「へー、ループ素材を切り貼りするだけで曲が作れるんだ」

 「これは楽しい…… かも」

 「とりあえず何か作ってみよっと」



──紬の家──

紬「なににするか迷うわ~」

 「オーケストラで壮大な感じにしましょうかしら」

 「オーケストラの音源って色々あるのね~」


──1週間後──

唯「じゃじゃーん! 今日は発表会の日なのです!」

律「ついにこの時が来た……」

梓「なんだかドキドキしますね」

紬「早くみんなの曲が聴きたいわ~」

唯「ではここで審査方法を説明します」

 「審査委員長のあずにゃん、どうぞ!」

梓「わ、私ですか!? え、えーと……」

 「じゃあ、曲が終わるたびに採点するようにしましょう」

 「持ち点は一人10点で、40点満点です」

律「お、それいいな」

唯「じゃあ発表の順番を決めます!」

澪「お、おいちょっと」

唯「どうしたの?」

澪「審査なんて聞いてないぞ!」

唯「そうだっけ」

律「まあでも、ノルマ1週間で一人1曲っていったら普通コンテスト開くよな」

紬「そうね」

澪「なっ…… 私はてっきり次のライブで使う曲かと……」

唯「ライブで打ち込みの曲やるわけないじゃん……」

梓「それならもう私たち要りませんもんね」

澪「た、たしかに」

唯「ということで発表の順番を決めます!」

 「方法はあみだくじだよ!」

唯「はい! 順番が決まりました!」

 「発表します!」

ダラララララ……

唯「1番りっちゃん、2番あずにゃん、3番わたし、4番ムギちゃん、5番澪ちゃん!」

律「うわー、トップバッタかー」

紬「がんばってりっちゃん!」

律「まあ、頑張るもなにも曲流すだけだけどな」

澪「さ、最後はやだー!」

梓「くじ引きで決まったものは仕方ないですよ……」

唯「そうだよ澪ちゃん、長いものには巻かれろだよ!」

律「ちょっと違うだろそれは……」

唯「じゃあ早速りっちゃんどうぞ!」

律「はいはい…… えーと、まずタイトルは」

 「"秋には飽き飽き"だ!」

梓「ま、またダジャレですか……」

澪「一足早く冬が来たみたいだな……」

律「うるさーい!! タイトルはどうでもいいんだよ!」

唯「りっちゃん、仕様機材とか教えて」

律「おう」

 「使ったのはSONAR8だけだぜ」

 「あ、あとちょっとしたMIDIキーボード」

澪「はっ!? な、なんだよそれ」

律「あ、澪ごめんごめん! マウスで打ち込んでるって言うのウソだ!」

澪「ば、バカ律! 私の苦労はなんだったんだ……」

梓「え? 澪先輩マウスで打ち込んでたんですか……?」

澪「な、いいだろ別に! 曲がすべてなんだよ」

唯「そうだよあずにゃん、方法なんて関係ないよ!」

 「じゃありっちゃんの曲をきいてみよう!」

ジャーンジャカジャカジャーン

パラリロンポロリロン

ファーーーン……

一同「パチパチパチ」

唯「りっちゃんに似合わず繊細な曲だね!」

紬「ほんと……ハープの音色が印象的だったわ」

梓「和声の進行もすごく滑らかでした」

澪「これほんとに律が作ったのか?」

律「だーー! なんだよその感想!」

唯「でもすごくいい曲だったよ!」

 「それでは採点タイムです!」

ダラダラダラ

ジャン!

唯7点 澪5点 紬8点 梓7点

梓「合計27点ですね」

律「おー、まぁまぁってとこだな」

 「って、澪は低すぎだろ! 恨みでもあんのか!」

澪「い、いや、基準だからこれくらいかなって……」

唯「じゃあ次はあずにゃん! 早速どうぞ!」

梓「はい」

 「まずタイトルは"AKI48"です!」

律「な、なんだそりゃ……」

梓「全部で48小節なんです」

紬「結構短いのね」

梓「はい、でもその代わり細部までこだわってます!」

 「仕様機材はFL Studioですね」

 「じゃあ、流します」

ヴィーヴィーヴィーヴィー

シャカシャカ

ビリビリビリ

デケデーン

唯「お~、なんかかっこいー!」

紬「普通の秋のイメージとは違って、テクノサウンドで攻めたのね」

唯「それでは採点タイムでーす!」

唯8点 澪7点 紬7点 律6点

梓「合計27点…… ありがとうございます!」

唯「この時点でりっちゃんの優勝はなしだね」

律「が~ん…… 頑張って作ったのになー」

澪「やっぱり律に作曲は向いてなかったか?」

律「なにおー! そう言う澪はどんな曲作ってきたんだよ!」

澪「まぁまぁ…… それは聴いてからのお楽しみだな」


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最終更新:2010年10月23日 01:43