紬「でも梓ちゃん、書道部とか料理部の申請書も和ちゃんがくれた資料なの?
  普通は音楽クラブとは関係ないからくれないと思うんだけど」

梓「いえ、これは私がネットで調べました。
  先輩方が演劇部に行ってて紬先輩はぐっすり眠ってた時です」


澪「そんなものがネットに載ってるのか?」

梓「生徒会のサイトに掲載されてます。今は情報公開の時代ですから。」

律「全然知らなかった・・・。」

梓「ネットだけでも意外といろいろな情報が手に入ります。
  たとえば日本の防衛省のサイトでも、パンフレットを発行するのにいくら使ってどうやっ
  て印刷業者を決めたかっていうところまで細かく公開されたりしてますよ。
  一般の人はまず見ないでしょうけどね。」

律「そんなもん見るやついるのか?」

梓「少なくとも主要国の情報機関は一文字足りとも見逃さずにチェックしてるでしょうね。
  こうやって細かい情報を集めていくことで質の高いインテリジェンスが生まれるんです。
  ただの申請書数枚から華道部茶道部の合唱部への感情を予想できるように」

律「・・・なんかもうあっけにとられて言葉でないけど、とりあえず明日は茶道部と華道部を
  攻めるってことでいいな」

澪「いいけどさ、吹奏楽部の存在忘れてないか?」

律「あ・・・」

澪「吹奏楽部が全クラブに接触してたとしたら、合唱部に反感持ってる茶道部華道部は
  吹奏楽部に肩入れしちゃうんじゃないか?」

紬「こちらもいい条件を示さないといけないわね。
  合唱部の敵というだけじゃ吹奏楽部と変わらないし」

律「そうだな、また対価を考えないと・・・唯、何かないか?」

唯「あ、うん?(話が難しくて寝ちゃいそうだった・・・)」


唯「もういいよ・・・寝ちゃおう寝ちゃおう寝ちゃおう!」

律「うわ!唯どうした?」

唯「もうこんな時間だよ?
  明日に備えてちゃんと寝ないと今日のムギちゃんみたいに動けなくなっちゃうよ?」

紬「」グサッ

唯「あ、違うよムギちゃん!そういう意味で言ったんじゃなくて・・・!」

澪「唯の言う通りかもな・・・」

律「そうだな。明日話を聞いてから考えればいいんじゃない?」

梓「行き当たりばったりはだめですけど・・・寝るのは賛成です」

唯「じゃあみんなお休み~」



投票まで あと12日




翌日 木曜 放課後 部室

ガチャン

律「ただいま~」

梓「お帰りなさい。
  あ、澪先輩が貸してくれたノートパソコンいい調子です。ありがとうございます」

澪「いいって。はかどってる?」

梓「はい、おかげさまで。ここで作業ができるおかげでだいぶ進みました。
  茶道部と華道部はどうでした?」

唯「ムギちゃんすごいんだよ~」

律「ムギが茶道も華道も詳しくてさ、すごく盛り上がったんだよ」

紬「小さい頃はいろいろ習ってましたから」

律「どっちもムギを気に入ってくれてさ、投票してくれるって」

梓「ムギ先輩、すごいです」

紬「ありがとう♪」

律「なんかいい調子になってきたなー!」

澪「油断大敵だぞ」

唯「みんな、今日もうちに泊まる?私は全然かまわないよ~」

紬「ごめんなさい、私は今日中に読み切りたい本があるの」

唯「そうなんだ~残念だね」

梓「とりあえず今日まとめた情報を言っておきますね」

律「お、待ってました」

梓「映画研究部、アニメ研究部、美術部、漫画研究部、コンピューター研究部、文芸部。
  この6つのクラブは前に合同で作品を作ろうとしていたみたいです」

律「へえ、どんな作品を?」

梓「そこなんですが、現在そのような作品が発表された形跡はありません。」

澪「まだ作ってる途中なのか?」

梓「どうやら・・・いろいろな意見対立があって今は製作が停滞してるらしいんです。」


梓「得た情報をもとに分けると、映画部とアニメ研が作品制作の主導権をめぐって対立中、
  美術部、文芸部は映画部側、漫研、コンピ研はアニメ研側についてるみたいです。」

律「どこのクラブでも嫌な対立ってあるもんなんだな」

澪「(文芸部か・・・)」

梓「もしかしたら今の音楽クラブのように、
  全クラブに意見を聞く機会が出てくるかもしれません。その時に味方に付くと明言すれ
  ば、どちらかの派閥の投票を一気に得れる可能性があります」

律「でもどっちにつけばいいんだ?」


澪「でも、そういうやり方したら3票得る代わりに3票失うわけだよね?」

梓「確かにそうですね。それに成功するとも限りません。リスクはあります」

律「今日は遅いし、これは家で考えてみるわ」

梓「わかりました」

澪「(文芸部に知り合いがいるって・・・今更言ったらどうなるのかな)」

律「おっと。帰る前にリストに記入しとこっと」



アニメ研究部      合同作品で映画研派閥と対立中
映画研究部       合同作品でアニメ研派閥と対立中
英語研究部       保留中
園芸部         保留中
演劇部         ○
オカルト研究部
科学部
合唱部         投票権なし
華道部         ○
軽音楽部        投票権なし
コンピューター研究部  合同作品で映画研派閥と対立中
茶道部         ○
写真部
将棋部
珠算部         保留中
書道部         保留中
新聞部
吹奏楽部        投票権なし 全クラブと接触済み?
ジャズ研究部      投票権なし 梓:接触中
天文部
美術部         合同作品でアニメ研派閥と対立中
文芸部         合同作品でアニメ研派閥と対立中
放送部
漫画研究部       合同作品で映画研派閥と対立中
料理部

軽音部への投票確定クラブ 3/21



律「ごめんジャズ研二つ書いてたわ。あと将棋部書くの忘れてた・・・」

澪「まったく・・・」

梓「そんなんじゃ情報戦はできませんよ」

紬「でもみんな何回か見てたのに気付かなかったわね」

梓「う・・・」

澪「まあそうだけど・・・」

律「じゃあ今回はお互いさまってことで!ははは!」

澪「調子に乗るな」

律「解散!」


投票まで あと11日


唯宅

唯「ただいま~うい~」

憂「お姉ちゃん、お帰りー!」

唯「今日も疲れたなー」

憂「今日はどうだったの?」

唯「ムギちゃんのお陰で茶道部と華道部が投票してくれるんだって
  でも私は今日もなにもできなかったや」

憂「そうなんだ・・・ご飯出来たら呼ぶから部屋で休んでて?」

唯「ほーい」タッタッッタ

憂「・・・ごめんね。お姉ちゃん」

ピポパポ

憂「もしもし、純ちゃん?」



翌日 金曜 放課後

律「さーて今日も放課後がやってまいりました」

唯「やってまいりましたー!」

澪「あれ?ムギはいないのか?」

唯「ムギちゃんは調べたいことがあるから図書館行くって!」

梓「そうなんですか。ムギ先輩最近本読みまくってますね」

律「きっとムギなりの考えがあるんだよ」

ガチャン!

唯「あ、和ちゃん」

和「はあ、はあ、大変なことになったわ・・・!」


唯「どうしたの和ちゃん?」

和「みんな、落ち着いて聞いて・・・?」

一同「・・・ゴクリ」

和「悪いニュースと微妙なニュースとどうでもいいニュースがあるんだけど」

和「何から聞きたい?」


律「いいニュースはないのかよ・・・」

梓「どうでもいいニュースって・・・」

唯「どうする?」

澪「悪いニュースは聞きたくないし・・・」

律「どうでもいいニュースはどうでもいいし・・・」

梓「じゃあ微妙なニュース・・・で?」

和「わかったわ。微妙なニュースというのは」

和「吹奏楽部が今回の投票から辞退したわ」

一同「!!!!!」

律「え、マジで?なんで?!」

和「あなた達も知ってるかもしれないけど、吹奏楽部は後輩たちをろくに指導もしないで
  各クラブに送り込んで、全然成果が出てなかったみたいなの。
  それを部長が後輩のせいにして怒って、
  それに切れた後輩たちが一斉にストライキを始めたわ。」

澪「うわあ・・・」

梓「悲惨ですね」

和「この状況じゃ生徒会としても投票になんて参加させるわけにはいかないわ。
  吹奏楽部の人たちもそれを察したのか辞退を申し出てきたの。」

律「でもそれっていいニュースなんじゃないか?うちにとっては」

唯「きっと後輩の人がかわいそうだから微妙なニュースなんだよ」

和「唯はやさしいわね。でもそういうことじゃないわ」


梓「投票数の問題ですよね?」

和「そうよ。今までは投票権21クラブに対して投票先4クラブ。
  最低でも6票あれば勝つ可能性があったわ」

和「でも投票先が減ったことにより最低でも8票取らないと勝つ可能性が得られない
  7票でも引き分けの可能性はあるけどね」

澪「2票の差は大きい・・・か」

和「ただ、もともと吹奏楽部はほとんど根回しを失敗してたし、
  あまり状況は変わらないかもね」

律「だから微妙なニュースねえ・・・」

唯「じゃあ悪いニュースは?」


澪「ゆ、唯、心の準備が」

唯「どっちにしろ聞くんだから早い方がいよ」

律「うん。じゃあ悪いニュースを頼む」

和「悪いニュースね・・・」

一同「ゴクリ…」


和「投票日が早まったわ」

!!!!

和「再来週の月曜から、来週の水曜になったの」

律「うおおお・・・まじか」

梓「あと5日ですか・・・」

澪「まだ一週間以上あると思ってたのに」

和「生徒会役員会議で決まったの。私も必死に抵抗したわ・・・
  でもどうやら今回の吹奏楽部の件で教員側から圧力がかかったみたいね。
  さっさと終わらせてこれ以上部のいざこざを増やしたくないんだと思うわ」

梓「土日が一つ減ったのは痛いですね・・・これは明日が重要になってきます」

律「ジャズ研の子と会うんだよね」

梓「毎日会ってますけどね。でも教室内じゃお互い迂闊に部のことをしゃべれませんから」

和「そしてどうでもいいニュースというのは」

澪「私たちに手伝えることはないかな?」

梓「こっちは私に任せてください。先輩方は映画部やアニメ研の問題と、
  その他の部への根回しを引き続きお願いします」

唯「あずにゃんがんばってね!」

梓「はい。では明日に備えて帰らせていただきます」

律「おう。お疲れ!」

律「じゃあ私たちも行こうか!」

澪「どうするか決まったのか?」

律「映画部側かなー?」

澪「な、なんで?」

律「だって澪が前に文芸部に入ろうとしてたろ?澪が選んだんだから悪い部じゃないよ」

唯「そうだね!いこういこう!」

澪「ちょっと!あ、和!情報ありがと!」

バタン

和「・・・・・」

和「戻ろう」

澪「(ムギは茶道部や華道部と交渉してくれた、梓は情報をまとめてくれるし、
  律はみんなを引っ張ってくれて、唯は空気を和ませてくれる・・・
  和も協力してくれた)

澪「(私は何をした?文句言ってばかりで・・・)」

律「最初は映画部かなー。どこだっけ?」

澪「待って!文芸部いこう!」

唯「どうしたの?」

澪「黙ってたんだけど・・・私文芸部に知り合いがいるんだ・・・。
  でも結局入らなかったから気まずくて言えなかったんだ・・・ごめん」

律「・・・」

澪「だから今回は私にやらせてくれ!頼む!」


律「あららら、まじめな顔しちゃって・・・澪ちゃんったら」

澪「う、うるさいな!頼んでるんだぞ!」

律「どうぞどうぞ!せっかく澪がやる気になってんだからね」

澪「・・・ありがとう」

律「だいたい入らなくて気まずくなったのって私のせいじゃん・・・」

澪「ん?」

律「なんでもないなんでもない!そうときまったらほら行くぞ!」



文芸部

澪・唯・律「失礼しまーす。部長さんいますか?」

部長「はい・・・あら、秋山さんじゃない」

澪「あ、お久しぶりです。部長になられたんですね」

部長「ええ。あなたも軽音部で活躍してるみたいね。
   今年の文化祭のライブ、すごく良かったわ。去年は行けなかったんだけどね」

澪「ありがとうございます(良かった・・・)
  あ、あの文芸部に入らなくてすいませんでした。興味があるように話しておいて」

部長「なんだそんなこと?全然気にしなくていいのに」

澪「すいません・・・」

部長「そんなことより、別の用があってここに来たんでしょ?わかってるわ」

澪「は、はい・・・」

部長「ふふ、私は秋山さんののファンだから軽音部に投票してあげる」

澪「え、いいんですか?」

部長「ええ。ただし、派閥やら何やらは関係なくね。あんなめんどくさいもの・・・」

澪「文芸部さんは映画部の側についてると聞いたんですが・・・」

部長「一応そうんなんだけどね・・・
   映画部とアニメ研がもめたとき、企画を発案したのは映画部なんだから映画部に従お
   うって言っただけ・・・まさかこんな停滞するとは思わなかった」

澪「そうなんですか・・・」

部長「一応毎週企画会議は開いてるのよ。いつもぐだぐだになって終わるけどね・・・
   正直、映画部とアニメ研以外はもう企画自体面倒になってきてるわ
   最初は引き受けた手前誰からも言えないんだけどね・・・」

澪「すいません、私事情も知らずに・・・」

部長「いいのよ。これから他のクラブ回るの?」

澪「そうしようと思ったんですが・・・(なんか重くなってきたな・・・)」

唯「あの、部長さん」

部長「なに?」

唯「それで楽しいんですか?」


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最終更新:2010年01月25日 22:34