唯「おふぅ…、あのあずにゃんカップがこんなジャスコに売っていたなんてね。まさに灯台下暗しだよ!」

紬「ふふ、良かったわね唯ちゃん。えっと梓ちゃんのカップと同じタイプはっと…」スタスタ

唯「沢山あって迷うよね、どこにあるのかなー?」スタスタ

澪「お、いたいた。おーい唯こっちだこっち」フリフリ

紬「あら、澪ちゃん達が呼んでるわね?どうしたのかしら」

唯「きっとあずにゃんカップが見つかったんだよ!やったね」ダッ

紬「あ、唯ちゃんちょっと待って」

唯「どうかな!澪ちゃん、あずにゃんカップは見つかった!?」

澪「あぁ、実はその事なんだが…」

紬「あら、どうしたの澪ちゃん。そんな浮かない顔をして」

唯「そうだよー、これで私は夜道でも背後に気を使わなくていいんだからさ」

律「はい、ここで唯に良いニュースと悪いニュースがあります。どっちから聞きたい?」

唯「え?なんなのそのアメリカン映画みたいなセリフは。うーん…どっちがいいかなムギちゃん」

紬「うーん、そうねぇ。私なら悪いニュースからかしら」

唯「悪いニュースから?なんでかな」

紬「だって、良いニュースを残していた方が最初の悪いニュースを軽減できるじゃない?」

唯「なるほどね。それじゃ律っちゃん、その順番でお願いー」

澪「うん?良いニュース…?」


唯「えぇっ!?もうあずにゃんカップが置いて無いの!」

紬「そうなんだ…人気があるのかしら、あのカップ」

唯「次は!?次回の入荷はいつなのあずあずカップ!」

澪「それが、店員さんに聞いてみたんだけど製造先がもう倒産しちゃったみたいなんだよ」

唯「と、倒産!?待ってよ、それじゃもうあずにゃんカップは手に入らないの!」

紬「私が買った時から大分時間が経ってるし。もう全部売れちゃったのね。残念ね唯ちゃん…」

唯「いや、落ち込むのはまだ早いよムギちゃん!」

紬「え…?どういう事唯ちゃん」

唯「忘れたのかな…、良いニュースがまだ残ってるじゃない!」

紬「あ、そういえばそうね!」

唯「きっと、まだあずにゃんカップが手に入る方法が残されてるんだよ!そうだよね、律っちゃん、私には分かってたよ!」ビッ


律「いんや。聡がサッカー部のレギュラーになったんだよ、凄いだろ?」

紬「聡くんって…、律っちゃんの弟さんだったかしら」

唯「いやいやいや。何それ、あずにゃんカップと関係ないじゃん!」

律「悪いニュースだけだと、唯が落胆するだろうからな。良いニュースも作ってやったんだよ」

唯「そんな田井中家の個人的なニュースなんか要らないよっ!むしろ、期待した分落胆が増加しちゃったじゃない!!」

律「何をー。私が折角、気ぃ遣ってやったのにさ!酷いよな澪!?」

澪「はぁ…。律の事だからどうせこんな事だとは思ったけど」

紬「澪ちゃんは何にするか決めたかしら?」

澪「うん、パスタも良いんだけどやっぱりグラタンにしておくよ」ペラペラ

唯「はふぅ…、あずにゃん止めて…。むすたんぐは人を叩くものじゃないよぅ……」ピクピク

紬「ゆ、唯ちゃんは何をしてるのかしら。注文は決まった?」

唯「脳内であずにゃんシミュレーションしてるんだよ…。はぁ…、憂鬱で食欲が沸かないよぅ」

律「あーもぅ!いい加減元気だせよ。ほら好きなんおごってやっから」サッ

唯「う、うーん…。それじゃカツカレー大盛り…、後デザートにチョコパフェデラックスを…」ペラペラ

律「死にそうな声でガッツリ注文してんじゃねぇよ!?有り余ってんじゃねぇか食欲!」

唯「私の食欲はサイフと連動してるんだよぅ…、後季節のタルトも」


唯「ウップ…、律っちゃぁん…、もう死にそうだよ。……食べ過ぎで」

律「知らねぇよ、そこまで面倒みれるか!」

紬「それじゃ、このタルト一切れもらうわね。唯ちゃん」サッ

唯「有り難うムギちゃん!ほら澪ちゃんも食べて食べて」サッ

澪「あぁ、私はいいよ。まだグラタンが残ってるし…」モグモグ

律「さてと、唯も回復した所でこれからどうするかね」

唯「うん、私もさっきからそれをシュミレーションしてたんだけど。……、どうしても三十六手目のムスタング袈裟斬りが避け切れないんだよ」

澪「いや、真面目な顔して何シュミレートしてんだよ。お前の中の梓はどれだけ豪傑なんだ…」

唯「甘いね澪ちゃん。あずにゃんカップの恨みは怖いんだよ!」

律「そこまで分かってるなら結果は出てるだろ。いい加減諦めろって」

紬「この辺りにはもうジャスコ系列のお店は無いしね…」

唯「まだだよ、まだ終わらないよ。確かに諦めるのは簡単だよ、でも本当にそれでいいのかな…」

澪「でも、仕方ないじゃないか。ここには置いて無いんだからさ」

唯「なら、他のお店を回るだけだよ!諦めたら0%…、でも諦めなかったら、それは0.01%の確率が残っているって事なの」

紬「0.01%の確率…。でもそんな低い確率じゃ」

唯「うん。確かに絶望的かもしれないよ…。でも、私はそれに掛けたいの。例え何百回失敗しても!」ビッ

澪「ゆ、唯……」

唯「……どうかな律っちゃん。私カッコいいかな?何だったらケータイで録音してもいいんだよぉ」クルッ

律「あぁ、それが99.99%保身から来てる発言ってのを注釈にいれて良いんだったら何百回でも」ピッ

唯「あぁん…。律っちゃんのイジワル…」


律「さーて食った、食った!どうしよっか、ボーリングでも行くか?」

唯「えー、待ってよ!ボーリングもいいけどあずにゃんカップは!?」

律「だから無いんじゃ、しょうがないじゃん?」

紬「私も出来る限りは手伝ってあげたいけど…。手分けをして頑張ってみない?」

律「けどよー…。移動手段があればなんとかなるんだけど」

澪「そうだな…。バスや電車もあるけど、駅から離れてるしな」

唯「なんだ、そんな事なら簡単だよ!ちょっと待ってね」サッ

ピッポッパッ

律「うん?どこに電話してるんだお前」

紬「唯ちゃんのご両親じゃないかしら?きっと車を持っているのよ」

澪「なるほどな、それなら大丈夫かな」

律「しかし唯の両親を見るのは初めてだな。どっちに似てるんだ?」

唯「え?何の話。さわちゃんだよ」

律「いやいや、さわちゃんはお前の担任だろ……、ん?何の話だ」

さわ子「え…?それじゃ、粉々になったのは梓ちゃんじゃなくて、そのカップなの?」

唯「うん、ゴメンねぇ。でもさわちゃん、最後まで言う前に慌てて電話切っちゃうんだもん」

さわ子「当たり前です。そんな話を聞いて落ち着いていられる教師がどこに居るというのよ!」

律「いや、そんな聞き間違いを信じてここまで車を走らしてくる教師がどこに居るんだよ!?って言うかお前らの中の梓はどういう生き物なんだ!」

さわ子「冗談よ律っちゃん。だって学校に居たってこの時間は見回りとかで暇なのよ」

紬「…という事はさわ子先生は、分かっていてここまで来たんですか?」

さわ子「そこまでボケて無いわよ。ただ、見回りなんかよりも、ドライブの方が楽しそうかなぁってね」

唯「さすがさわちゃんだよ!尊敬しちゃうね」

律「要はサボりの口実が欲しかっただけじゃねーか。さわちゃんの不良教師!」

さわ子「あら、そんな事言うなら律っちゃんは乗せてあげないわよ」

紬「そうね、少し言い過ぎよ律っちゃん。さわ子先生は不良なんかじゃないわよ…、色々と不猟なだけなのよ」

律「あ……。そうか、ゴメンさわちゃん。その内良い出会いがあるからさ…」

さわ子「何よその哀れんだ目は!何よ色々って!?独身の何が悪いのよ!」

唯「……ほえ?」

さわ子「それで、どこまでご希望かしら?あんまり遠くには行けないけど」

唯「うんとね、私達はジャスコに行きたいの」

さわ子「ジャスコ?何よ子供みたいな事言って。それに目の前にあるじゃないの」

唯「違うよ、ここのジャスコはもうあずにゃんカップ置いて無いんだもん」

さわ子「あずにゃんカップ…?何よそれ」

澪「唯は話がややこしくなるからちょっと静かにしてろ。…一番近い他のジャスコ系列をお願いします」

さわ子「オッケー。律っちゃん、ナビで検索してくれるかしら?」

律「ほいほい。了解だぜ、周辺検索っと…」ピッピッ

唯「ちょっ、ちょっとぉー。足元でゴソゴソされるとコソバユイよ」

律「仕方無いだろ、この車四人乗りなんだから」

紬「ここが隣街のジャスコね。同じジャスコでも色々中のお店が違うのね」

唯「それはそうだよ、同じだったらまたあずにゃんカップが置いて無いじゃない」

紬「それもそうね。それじゃ、カップ売り場はどこかしら」キョロキョロ

さわ子「カップ…?無いわよ、そんなの」

唯「いやだなぁ、前のジャスコじゃなくてここの店舗だよ」

紬「ふふっ、そうですよ先生。余り早とちりが過ぎると遅れちゃいますよ、色々と」

唯「早いのに遅れちゃうの?なんだか不思議だね!」

さわ子「だから何よ、さっきからその色々は何にかかってるのよ!?…じゃなくて、たまにここの店舗も利用するから知ってるのよ」

紬「それじゃ、本当にカップを扱ってる店舗が入ってないんですか!?」

さわ子「だから言ってるでしょ、ファンシーショップの一つも無いわよ。この辺りは主婦層が多いから入っている店舗もスーパーみたいな作りなのよ」

律「お、本屋があるじゃん。寄ってこうぜ!」

澪「何言ってるんだよ、そんな事しに来たんじゃ無いだろ。カップを探さないとさ」

律「大丈夫だって、案外小さい店舗だし唯達だけでも十分だろ?」

澪「うーん…、そういえば今日は週刊アスキーの発売日か。仕方ないなぁ、少しだけだぞ」

律「やりぃ、さすが澪、話が分かるぜ!ほら、早く早く」グイッ

澪「コラ、押すなよ。…それにしてもやけに混んでるな」

律「そういやそうだな。この辺り本屋ってねーのかもな」

タッタッタッタッ…ドサッ!

「あ……」

澪「痛たっ……、なんだ?」

澪「コラ、お店の中で走ったらいけないぞ。ほら、私も手伝ってあげるから早く拾って」サッ

「はい……ごめんなさい」ゴソゴソ

澪「ほら、次からは気を付けるんだぞ」ポンッ

「うん…!ありがとうお姉ちゃん」タッ

律「…へぇ、澪って意外と小さい子供の扱い得意なんだな」

澪「聡の相手もしてたしな。これくらい何て事ないさ」

律「さっすが澪ちゅわんー、頼りになるわぁ」

澪「茶化すんじゃないの。ほら、買うものさっさと買って探しに行くぞ」

タッタッタッタッ…ドサッ!
バサバサバサッドッサァーーン!!

唯「あ……」

澪「……………………」

唯「あぁ…!?大量に山積みされてた漫画本が!ど、どうしよ…」ゴソゴソ

律「ほ、ほら行って来いよ澪…。こういう扱いは得意なんだろ…」

澪「し、知らない…。大きい子供は私の管轄外だし…」

唯「ちょっとー、律っちゃんと澪ちゃんも見て無いで手伝ってよぉ!」

律「おい、デカイ声出すなよ!?仲間だと思われちまうだろ!」

唯「何を言ってるのさ、律っちゃん隊員。私達は深い絆で結ばれた仲間じゃないのさ!どんな時でも一蓮托生だよ」

律「お前の場合はどんな時じゃなくて、こういう時だけだろ!」

澪「やれやれ…、ほらここでゴチャゴチャ言ってる暇があったら手伝うぞ」タッ

律「全く…、仕方ねぇな」


唯「ありがとう律っちゃん、澪ちゃん!でも何で本屋なんかに居たの?」

律「え…!?あぁ、そりゃ色々あってさ」

唯「もしかしてサボろうとしてたの?酷いよ、こんな時に!」

律「違うってば、それよりカップはあったのかよ?」

唯「うぅん、この店舗にはカップを扱ってるお店自体無いみたいなの…。酷いよね、ウー太」サッ

澪「そういう事か…、通りで小さい訳だな」

律「うん…?お前そんなデッカイぬいぐるみどうしたんだよ」

唯「違うよーウーパールーパのウー太だよ。こんな所に居るなんてビックリだよね!」

律「ビックリじゃねぇよ、お前もちゃっかりサボってんじゃねぇか!?」

唯「ち、違うって…!これは、そう!ウー太もあずにゃんカップを探すのに役に立つかなってさ!」

律「本屋に甚大な被害を与える事にしか役立ってねぇよ!そんなの持ってるからぶつかるんだよ!」サッ

唯「あふぅ…!返してよぅ律っちゃん!」

澪「こんな事してる場合じゃないだろ。早くさわ子先生達と合流しないと!どこに行ったんだ?」

唯「うーんと…確か地下って言ってたかな」

律「地下?そんな所で何してるんだよ」



さわ子「…後は野菜ね。けど一人暮らしだと、どうしても余らせて腐っちゃうのよね」ガラガラ

紬「そういう時は100円ショップ等を利用すると良いですよ」

さわ子「100円ショップ?何故なのかしら」

紬「最近だと、野菜や果物の一人分を販売していたりするんですよ」

さわ子「へぇー、そうなのね。100円ショップは余り利用しないから気付かなかったわ」

紬「後は、冷凍食品等は日持ちするんで…」

ダッダッダッ

唯「さわちゃぁぁぁん!さわちゃぁぁ……はふぅ!」グイッ

澪「だから、店の中で走り回るなって言ってるだろ!今度は陳列棚を崩しちゃうじゃないか」

さわ子「どうしたのよ、そんなに慌てて?いい歳して子供じゃないんだから…」

律「さわちゃんこそ、そんな娘と母親みたいなごっこ遊びしてんじゃねーよ!いい歳して……、なんだから」

さわ子「そんな遊びしてないわよ!?私はこんな大きい娘が居る歳じゃないわよ」

紬「そうよ律っちゃん…、さわ子先生に謝って。先生はまだ……、なんだから」

さわ子「さっきから何を三点リーダーでぼかしてるのよ!別にいいでしょ、放っておいて!」

澪「そうだぞお前達。さわ子先生の婚期は今はどうでも良いんだよ。それよりもカップを…」

さわ子「どうでもよか無いわよっ!それはどうでも良く無いのよ澪ちゃを!」

澪「ご、ごめんなさい。……って大変なんだな」

唯「………ほえ?」

唯「よいしょっと…よいしょっと!」ガチャガチャ

さわ子「ちょっと唯ちゃん!その袋には卵が入ってるんだからゆっくり運んで頂戴」

唯「ダメだよぉ、ゆっくりしてたら時間が無くなっちゃうよ!」

さわ子「時間って何よ…?」

律「実はさぁ、もう一個隣のジャスコまで送って欲しいんだよ」

さわ子「えぇ!?今の時間から?そんなの無理よ」

唯「えー、さわちゃんのケチ!このウー太あげるからさぁ」サッ

さわ子「別に要らないわよ、そんな気持ち悪いぬいぐるみ」

唯「き、気持ち悪い!?こんなにカワイイのに…」ガクッ

さわ子「そろそろ学校に戻らないといけないし…。あなた達もでしょ、部室にカギは掛けたの」

紬「あ…。そういえば、すぐに帰ってくるつもりだったからまだ掛けていなかったわね…」

さわ子「ほら、早く乗って頂戴よ」バタン

澪「唯、ほら早く行くぞ。置いて行かれるぞ」

唯「いい…。私はそれでいいよ…」

さわ子「何言ってるの?唯ちゃんだけ歩いて帰るつもり」

唯「帰らない…、私はあずにゃんカップを手に入れるまで帰らないよ。みんな悪いけど部室の戸締まりお願いね」

澪「お願いって。お前まさか一人で探すつもりかよ?」

唯「言ったでしょ…。私は例え0.01%の確率が残っているのなら諦める無いんだよ!」

澪「ゆ、唯…。お前なんでそこまで…」

さわ子「そうよ、カップなら他のを買えばいいでしょ」

律「……やれやれ、しゃあねぇな」バタン

唯「り、律っちゃん?どうしたの…」

律「悪いけど、私も行くわ。部室の方は頼んだぜ」

澪「律まで、何を馬鹿な事言ってるんだよ!さわ子先生の言う通り他のカップでいいじゃないか」

律「唯の様子を見てりゃ分かるぜ。どうやら自分の保身だけで言ってるんじゃねぇみたいだしな」

唯「律っちゃん、本当にいいの!?」

律「お前が言っただろ?私達は一蓮托生、こうなったらトコトン付き合ってやるよ」

唯「り、律っちゃん隊員!ありがとぅ」ガバッ

さわ子「本当に良いのね?行っても…」

紬「待って下さいさわ子先生!私も…、私も降ります」

さわ子「ムギちゃんまでなの?」

紬「ふふっ、私も一度一蓮托生って言うのをやって見たかったのよ」

澪「……………あいつら」


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最終更新:2010年10月23日 21:15