~~~

ある日、和尚のさわ子は小さな容器を大切そうに持っていました。

その様子を小僧の唯と律は目撃しました。

律「なぁ、あれなんだと思う?」

唯「なんだろ」

律「答えはな、水飴だ」

唯「水飴!」

律「あぁ、さわちゃんは水飴を一人占めする気だぜ」

唯「えー、ずるくない!?」

律「だよな。よし、問い詰めよう」

律「おい、さわちゃん!」

さわ子「何?」

律「私達に隠し事ないか?」

さわ子「はぁ?あるワケないでしょ」

律「やっかましい!こちとら、ネタはあがってるんだよ」バンッ

さわ子「えっ、えぇ?」

唯「さわちゃんさ。あの容器だよ」

さわ子「容器……あぁ、あれね。あれがどうしたの?」

律「あれを一人占めする気だろ?」

さわ子「はぁ?」

律「大丈夫。和には黙っててやるよ」

さわ子「?」

律「だからよ、その中身を私達にも分けてくれないか?」

さわ子「分けてって、ダメよ。後で必要なんだから」

律「それを今、私達が必要としている!」

さわ子「ワケ分かんないわね。あっ、これから秋山屋さんの所に行かなきゃ」

律「逃げんのか!?」

さわ子「逃げないわよ。じゃあ、私行くからね」

唯「さわちゃん!」

さわ子「それと、容器の中身は勝手に出さないでね。後で処理が面倒だから」スタスタ

律「行っちまいやがった……でも、処理が面倒って事は」

唯「水飴だね。あれ、ベタベタしてるもん」

律「そーゆー事だ。容器はさわちゃんの部屋だ」

唯「取りに行こう!」ダッ

二人はさわ子の言い付けを破りました。

律「へっへーん。水飴、ご開帳~」カパッ

唯「うわっ、なんか臭うよ」

律「あれだろ。きっと高級品なんだろ」

唯「あぁ、果物の王様も臭いもんね」

律「それと同じ理屈だ。よーし、出すぞ」

ドロ~リ

律「見てみ、この透明さ」

唯「間違いなく水飴だね」

律「よし、分けるぞー」

律は水飴なるものを均等に分けました。

律「んじゃ、いっただきまーす」パクッ

唯「はむはむ」

律「なんか、微妙だなおい」

唯「うん。良く食べる水飴より、甘くない」

律「きっと、庶民の私達に高級品は理解できないという事か……」

唯「とりあえず、食べちゃおう」

二人は水飴なるものを完全に食べ尽くしました。


一方、和は買い物に出かけて、ようやく寺に戻って来ました。

和(はぁ、井戸端会議も疲れるわ)

ガラッ

和(あら、唯と律がいないわね)

和(和尚様は確か、澪の所に行くって……)

和「唯ー、律ー、何処にいるの?」

唯「ここだよ、和ちゃん」

和(あそこは、和尚様の部屋ね)

和「何やってるの……って、マジで何やってるの?」

唯「水飴食べてたの」

律「和の分はないけどな」ニシシ

和「別にいいけど……てゆーか、水飴食べて虫歯にならないでよ」

律「歯のケアはばっちり!」

和「ふん。でも、なんか臭うわね」クンクン

唯「高級品の水飴だからだよ」

和「えっ、高級品の水飴って臭いもんなの?」

律「果物の王様が臭いのと、同じ原理だよ」

和(何それ)

和「ねぇ、それって本当に水飴なの?」

律「だから、そうだって」

和「なんか変な感覚とかはない?」

唯「そういや、舌がバリバリする」

律「唯もか。私も舌がもバリバリするぞ。いや、パリパリか?それに、舌と歯がたまに引っ付く」

和(バリバリする。引っ付く)

和「あんた達、もしかして……」

さわ子「たっだいまー」

律「やべっ、さわちゃんだ」

唯「ど、どうしよう!」

律「和!ここは、いつものアレで」

和「えぇ!?」

唯「お願い、和ちゃん」ウルウル

和「あーもう、仕方ない!」ペロ、クルクル

ポクポクポク、チ~ン♪

和「これだ!」ダッ

律「お、おい!それって、さわちゃんの大事な壺」

唯「ど、どうするの?」

和「こうする。ふん!」ガシャーン

律「あー、さわちゃんの大事な壺を割りやがった!」

唯「和ちゃん!!」

さわ子「いいから。あんたらは、泣く準備でもしてなさい!」

律「なんで?」

さわ子「ちょっと、何よ今の音!!」

和「いいから、ふんっ!!」ガツン

唯・律「あんぎゃー!!」

律「み、澪のより痛い!」

唯「うぅー」

和「いい、泣いてなさいよ!」

さわ子「一体、何事……って、これは?」

さわ子が見たのは、自分の大切な壺が無残に割れ、唯と律が号泣し、和が容器の中身を舐めている光景でした。

和(正確には、舐めるフリね)

律「うわーん」バタバタ

唯「うぇーん!!」

さわ子「これは一体……」

和「申し訳ありません。和尚様」

和「和尚様が大事にしてる壺を私達の不注意で割ってしまいました」

さわ子「えっ?」

和「なので、私は和尚様の謝罪の意味を込め、死のうと容器の中身を舐めてますが、死ねません」グスッ

さわ子「えっと……」

和(容器の中身で死ねりゃ、苦労しないわね)

唯「さわちゃん、ごめんなさい!」

律「私達、死んで詫びるから!」

和(少し、大袈裟過ぎるかしら)

さわ子「バカね。あんた達」ニコッ

さわ子「あんな壺、あんた達の命と比べたら屁でもないわ」

和(おや?)

さわ子「いい、壺はまた買えばいいの。でも、あんた達の命は買えないのよ。いくらお金を出しても買えないの」

さわ子「だから、軽々しく死ぬとか言っちゃダメよ」

さわ子「いい?」ナデナデ

律「私達を……許してくれるのか?」

さわ子「許すも何も、今の私は和尚です。そして、小僧である三人は、私にとっては大切な娘も同然です」

唯「さ、さわちゃ~ん」ポロポロ

さわ子「ほら、みんなおいで」バッ

唯・律「さわちゃん!」ダキッ

唯・律「うわーん」

和(なんか、予想外な展開ね)ポリポリ

さわ子「和ちゃん。あなたもどう?」

和「えっと///」ポリポリ

和「キャラに合わないというか……」

さわ子「今日くらい、いいんじゃない?」

和「……では、お言葉に甘えます」ダキッ

和(こういうのも、ありよね)

和はしばしの間、さわ子に甘えた。

普段、甘えるようなキャラでない和にとって、それはとても新鮮な気分だった。

さわ子「ところで、何を舐めてたの?」

和「和尚様が持っていた容器の中身です」

さわ子「あぁ、りっちゃんが欲しがってたやつね」

律「てへへ」

さわ子「でも、あれで死ねるもんなの?」

和(まずい)

律「ま、まぁ……いいじゃんか!」

唯「そ、そうだよ!」

さわ子「ふーん。あぁ、そうそう。りっちゃんの為に、あれ買って来たわよ」

律「あれ?」

さわ子「もう、りっちゃん欲しがってたじゃない」

律「あぁ、あれね」アセアセ

さわ子「今日、澪ちゃんの所に行ったから、ついでに買っておいたわよ」


さわ子「とんちゃん印の水糊・工作用」


唯・律「へっ?」

さわ子「その容器にあったやつよりも、臭いは数倍キツいけどね。これが欲しかったんでしょ。でも、臭いでラリっちゃダメよ」

律「み、みず……のり?」

唯「み、水飴じゃないの?」

和(あちゃー)

さわ子「水飴って?」

唯「だ、だって……りっちゃんが」

律「あれ、水飴じゃ……ないの?」

さわ子「はぁ?そんなの、一言も言ってないわよ」

律「えっと……つまり?」

和「早い話が、律のはやとちりね。ただ、あの臭いで糊なのは把握してたけど、和尚様が帰って来て、言ってる暇が」

律「ゆ、ゆい~」スタスタ

唯「り、りっちゃ~ん」スタスタ

さわ子「おい、何処に行く気だ」

律「ちょ、ちょっと」ガクブル

唯「ト、トイレ」ガクブル

ガシッ

さわ子「テメェらに使わすトイレは……ウチにはねぇんだよ!!」

唯・律「ひぇー!!」

その後、二人はさわ子同伴で病院に行った。

糊を落とすのに時間が掛かった。

医者はなんとか、糊を落とすのに成功し、口内やら食道やらを洗浄した。

そして、やっぱり二人にさわ子の雷は落ちた。
壺の件より、さわ子の服に糊が付いたのが許せなかったそうで、修行の意味も込め、外国に飛ばされた。



……

梓母「梓、早く寝なさい」

梓「はーい。一緒に寝ようね、あずにゃん2号」ナデナデ

2号「にゃーん」

梓「くぅー、可愛いです!やっぱり猫ちゃん最高です!」ダキッ

2号「にゃ、にゃーあ」

梓「将軍は、偉大なのです!」

梓「わっはっはー」



紬(梓×2号……需要がないわね)


6
最終更新:2010年10月28日 05:19