「…律っちゃん」
「ん?」
声まで甘くなってしまった
「胸触ってもいーい?」
いまの自分の声が照れくさかった
だから無言で頷いた
唯の右手が触れる
シャツの上からでも手の温もりがわかった
「胸も柔らかい」
「当たり前だろ…」
くすぐったいような感覚の中に心地よさが混ざる
次第に目を開けている力さえ失われていった
「えっと…気持ちいい?」
何も反応しない私に不安を覚えたのか、唯が無粋なことを聞く
また無言で頷いた
「えっとえっと…声とかは?」
我慢してるに決まってるだろ!
と言ってやりたかったけど、そんなこと自分で言うのもどうかと思ったから何も言わずにいた
「ひょっとして我慢してる?」
相変わらずのKYぶりを発揮する唯
「…バカ唯」
小声で叱ってやった
「でも我慢したら身体に悪いよ!」
お前は説教強盗か
「だから自分に嘘ついちゃダメだよ!」
お前は熱血教師か
心の中でいちいちツッコミを入れた
漏れそうになる声を我慢するために
「手、入れるね?」
「…うん」
シャツの裾から入り込んできた唯の手が私の乳房を包む
「わぁ」
「ち、小さくて悪かったな」
だけど唯の驚きは別の理由からだった
「律っちゃんの胸だぁ」
本気で喜ぶ
「触らせ甲斐もあるというものだ」
なんて思う余裕はなかった
唯の手が動くたびに、手のひらが乳首を転がす
「……………ん……………ん」
喘ぎ声というものは我慢しようとして出来るものではないと、身を持って知った
「………ん………んん」
声が漏れる感覚がどんどん短くなっていく
それでも必死に耐える
しかし唯からのトドメの言葉
「我慢しなくていいよ?」
それを聞いた瞬間、堤防が破れたように波が広がった
私の身体中に
「ん…ぁん」
「可愛い声」
「バカ…んん…」
シャツ越しに唯の手を握る
その行為を唯は勘違いしたようだ
「もうやめる?」
「…どっちでもいい」
「じゃあやめない」
再び手を動かす
止められてはいたらガッカリしたのかな?
自問したって答えはでるはずもない
「律っちゃん」
「…何?…ん」
「ベッドいこ?」
「え?でも、だって…ぁん…恥ずかしいか…ら…」
唯が立ち上がる
シャツの中に手を入れられている私も、一緒に立ち上がらざるを得なかった
右手を掴まれ、ほとんど無理やりベッドに誘導される
「ちょっと待って唯!えっとやっぱりその何というか」
焦りまくる私
「律っちゃん」
「へ?」
「電気は消した方がいいよね?」
突っ走る唯
「え?えっと、そりゃまぁ消し貰えたほうがありがたいけど…」
「わかった!」
ドアの横にあるスイッチをオフにする
暗闇
セミの声
遠くを走る電車の音
他には何も無い
唯が戻ってきて私を抱きしめる
少し長めのキス
それから私は唯に操られているかのように、ベッドに仰向けになった
唯の右手が私の頭の下に差し込まれる
左手はシャツの中でゆっくりと動いている
「脱がせてもいいかな?」
「…たぶん」
可笑しなやりとり
シャツを脱がされると蒸し暑い空気が肌を包んだ
両手は反射的に胸を隠している
暗いから大丈夫とかそういう問題ではない
その両手を唯がほどく
「暗くて見えないよー」
見られたくないから電気を消すよう言ったんだ
「じゃあ、えっと…舐めます!」
「えっと…唯」
「どしたの?」
「…宣言しないでくれる?」
「りょーかい」
そう言うと私の胸に舌を這わせた
「ぁん!」
あまりにやらしい声だったの自分で驚いてしまった
そしてそんな声が出てしまうくらい…気持ちよかった
思わず唯の頭を抱きしめる
声はどんどん大きくなっていってるはずなのに…
私の耳に届くそれはどんどん小さくなっていく
意識が朦朧としてきた
でも胸から広がっていく波はハッキリと感じとれた
「…気持ちいいのかなぁ?」
ついさっき、唯から発せられた疑問
いまなら答えてやれる
だけどそんな余裕はすでに無く、私は唯の頭を抱きしめ続けた
「腕痺れちゃった」
「あ、うん」
頭の下から右手を抜き取りながら唯が言った
「律っちゃんエッチだねー」
無責任なことを言い放つ
「バカ!」
「えへへー」
首筋に口付け肩へ、そして右腕から指先へと
長い時間をかけて丁寧に舌を這わせた
その間も左手で胸を弄んでいる
その左手が下がり、パジャマ代わりのハーフパンツの中へと入ってきた
「ちょちょちょ!唯!」
「へ?」
「な、何してんの?」
「下も触ろうと思って」
「い、いきなりは止めろよな!」
「へ?だって宣言するなって律っちゃんが?」
「………」
「えっと…宣言はしなくてもいいけどさ…」
「ふんふん」
「一応何するかだけ教えてくれると助かる…かな」
「りょーかい」
「いや、ホントにわか…ぁ…」
再び乳首に吸いつく
そして左手ては…
私に初めての快楽を与えるために、下着越しにそれを探していた
「!!」
声にならない声
初めて触れられたそこは、喜びのためだけに存在するように思えた
「唯!ちょっとストップ!お願い!」
助けを求めるような口調で懇願する
「どったの律っちゃん?」
「えっとその…ヤバい…」
「何が?」
「気持ちよすぎる…そこ…」
唯が私の下半身に目をやる
「そんなに?」
「うん…」
「えっと、じゃあ…触らないほうがいいの?」
「たぶんすごい声出ちゃうと思うんだ…」
「困ったねぇ」
真剣に悩む唯
「じゃあずっとキスしててあげる!」
「え…でも…」
「ね?」
「うん…変な声出しても笑わない?」
「笑わないよ」
「じゃあ…強くしないなら…触ってもいい」
「ゆっくり触るね」
唇が重なる
そして…
「……!」
ホントに電流が走った気がした
それも身体中の隅々まで
「あ…はぁ…!」
重ねた唇から声が漏れる
どうにかなってしまいそうな快感
唯の手が下着の中に入り込む
直接その突起に触れる
すると電流の強さはさらに大きくなった
「ゆ…い」
「なーに?」
「イっちゃい…そう」
「律っちゃんイっちゃうの?」
「たぶん…んん!」
いままでイったことなんてなかったんだから、それは想像でしかない
「唯…私おかしくなっちゃうよ…唯」
「大丈夫だよ律っちゃん」
「ん…ダメ…ぇ」
「我慢しなくてもいいよ!」
「唯…イっちゃう…イっちゃうよぉ!」
「頑張れ律っちゃん!」
なぜか励まされる
でもツッコミをいれる余裕なんてとっくに無い
「唯!唯!」
「律っちゃん!」
「あ!あぁ!!!」
自分がどんな声を出したのかも分からなかった
全身を包み込む波に、ただ身体を預けていた
ゆっくりと波が引き、意識が鮮明になってくる
目を開ける
暗闇の中、唯が見つめているのがわかった
「大丈夫律っちゃん?」
「あんまり大丈夫じゃないかも…」
「いまどんな感じ?」
「なんかもうどうなってもいい感じ」
「もっとする?」
「たぶん死んじゃう」
「そっか…じゃあやめよっか」
「うん…ごめん」
「えへへー、大丈夫だよ」
「唯」
「どったの?」
「抱きしめてて」
「うん」
「明日起きるまでだよ?」
「うん」
「おやすみ」
「おやすみー」
…セミの大合唱で目をさます
ぼやけた目で左隣を見る
唯の寝顔
ずっと抱きしめててくれた
嬉しくて思わずキスしてしまった
トイレにいくために起き上がり、階段を下る
トーストの香り
「おはようございます」
憂の元気な声
「おはよ」
「もうすぐ朝ご飯できるから、お姉ちゃん起こしてきて下さい」
「オッケー」
トイレに入ると少し不安になる
(憂に聞こえてないよな?)
直接確かめるのは余計に怪しいから、何も言わずに唯の部屋に戻ることにする
「律さん」
階段の一番下で憂に呼び止められたら
「夕べは…その…おっきい声でしたね」
「え!?」
やっぱり聞こえてしまっていた
なんとか取り繕おうとする
「いや、あれは…」
「大丈夫ですよ!」
「え…?何が?」
「フフ…」
意味不明な言葉と微笑み
「大丈夫ですから…」
「こんどは私の部屋にも…きて下さいね!」
「へ!?」
「もちろんお姉ちゃんがいないときに、ですよ?」
いま私はどんな顔をしているのだろう
憂に曖昧な返事を残して階段を昇る
やっぱり浮気になるのかな?
そう考えて苦笑した
ただ1つ言えることは…
私はもう、この姉妹から逃れられなくなってしまった
唯を起こす
その寝顔を見て
それも悪くないな、と思った
おわり
最終更新:2010年10月30日 02:19