――殿の間
律「……」ドキドキ
澪「……」ドキドキ
紬「お父様、お友達を連れてきました」
紬父「おお、そなた達が紬の友達か」
律「そうです!」
紬父「話は聞いておるよ」
澪(聞いてるってどういう風に聞いてるんだろう……)
紬父「これからも紬と仲良くしてやってくれ」
律「はい!」
紬父「ところで唯殿とはどちらかな?」
唯「あ、私です!」
紬父「うむ」
紬父「実は紬から唯殿は三味線の腕が相当なものだと聞いておってな」
唯「いやあ、それほどでも」デヘヘ
紬父「一つ演奏を聴かせてくれないかのう」
唯「はい!喜んで!」
紬父「斎藤、三味線を」
斎藤「はっ」
紬父「これでひとつ」
唯「では……」
ベンベン、ベンベン
紬父「おお……」
紬父「まさかこれほどの腕だったとは……褒めてつかわすぞ」
唯「ありがとうございます!」
紬父「ところで唯殿」
唯「はい?」
紬父「そなた……以前わしと会ったことはなかったかのう」
唯「え……」
唯「ごめんなさい、分からないです……」
紬父「ふむ、わしの思い違いかのう」
唯「……」
その後、唯達は楽器を演奏したりお茶をしたりと楽しい時間を過ごした。
――夜 うどん屋
律「いや~、今日は楽しかったな~」
澪「そうだな」
澪「久しぶりに琵琶も弾けたし」
律「色んな楽器があったもんな~」
唯「……」
唯(ムギちゃんのお父さんは私に会ったことがある気がするって言ってた……)
唯「……」
律「おーい、唯」
唯「え、あ、何?」
澪「どうしたんだ?」
澪「ボーっとしてたぞ?」
律「はしゃぎすぎて疲れたんじゃないのか~?」
唯「あはは、そうだね……」
澪「?」
律「今日は早めに寝とけー」
唯「うん」
――――
その後も唯たちは度々城を訪れては5人で楽器を演奏したり、お茶を飲んだりして楽しい時間を過ごし、
絆を深めていった。
そんな生活が続いたある日……
律「……」ズズ
律「……できた」
律「できたぞー!」
澪「!」ビクッ
澪「きゅ、急に大きい声出すなよ……」
律「できたんだよ!」
澪「なにができたんだ?」
律「新しいダシだよ」
澪「え?新しいダシ?」
律「このダシで作ったうどんだ」
律「食べてみてくれ」
澪「う、うん」
澪「……」ズルズル
律「……」ジー
澪「……!」
律「どうだ!?」
澪「すごいおいしい……」
律「だろ!?」
澪「ああ」
澪「でもどうしたんだ?急に」
律「いや~、いつまでも唯に頼ってばっかりじゃだめだからな」
律「お金にも少し余裕が出てきたし、新しいを味研究して完成させたって訳だ」
澪「そうだったのか」
律「梓もなんかダシ変えろって騒いでたからな~」
澪「おかしいです!って言ってたな」
律「あ、今の似てる」
澪「そ、そう?」
律「うんうん」
コンコン
律「こんこん」
澪「え?」
律「ん?」
澪「誰かきた?」
律「お客さんかー?」
澪「今日は定休日だぞ」
律「はいは~い」
ガラガラ
女A「こんにちは」
律「えーと……どちらさんで?」
澪(女の人が二人……)
律「はあ……」
律(ん?平沢?)
憂「東の平沢城から来ました」
律「平沢城!?」
澪「え、じゃあ……」
憂「私は平沢家当主の次女です」
律「な、なんでうちに?」
澪「あの……今日は定休日……」
憂「お姉ちゃんらしき人がこちらに居ると聞いたので」
律「お姉ちゃん?」
和「唯のことよ」
澪「え?唯?」
律「じゃあ君は唯の妹さん?」
憂「はい」
澪「ん?待てよ……」
澪「と言うことは……唯は平沢家当主の娘ってことか!?」
律「ええ!?」
律(平沢家って言ったら東の土地を治めてる一族じゃないか……!)
律(唯はそんな身分の奴だったのか!?」
和「あなた達知らなかったの?」
律「あ、ああ」
律「なんせ唯は記憶が……」
唯「りっちゃん、どうしたの~?」
憂「お姉ちゃん!?」
和「唯!」
憂「お姉ちゃん!」ダッ
唯「え?お姉ちゃん?」
憂「……!」ギュッ
唯「え?何!?」
憂「お姉ちゃん……会いたかったよ……」
唯「あの……どちら様……?」
憂「え……私だよ、憂だよ……?」
唯「え?え?」
和「どうしたの?唯」
律「私から説明しよう……」
律は憂と和に道に倒れていた唯を助けたこと、そして唯は記憶を失ってることやこれまでの事を説明した
憂「そんな……」
和「まさか唯が記憶を失ってるなんて……」
唯「……」
律「あの~……」
律「そちらの状況も教えてもらえないかな?」
憂「そうですね……私が説明します」
憂「先ほども言いましたが、お姉ちゃんは平沢家当主の娘で私はその妹です」
和「私は唯の幼馴染で、今は平沢家専属の用心棒みたいなことをしてるわ」
澪「はあ」
憂「ちょっと事情があって、お姉ちゃんがお城を飛び出して行っちゃったんです」
和「最初はお腹空かしてすぐ帰ってくるだろうなんて思ってたのよ」
憂「でも夜になっても次の日になってもお姉ちゃんは帰ってこなかった……」
和「何かあったんじゃないかと思って、みんなで唯を探したわ」
和「でもそんなに遠くに行くはずもないと思って平沢家の領地内しか探さなかったの」
憂「そしてお姉ちゃんを見付けられないまま時が過ぎていった……」
憂「そしてある時、三味線の上手い短髪の女の子が琴吹家の領地のうどん屋さんに居るって噂を聞いたんです」
和「すぐにそれが唯だって思ったわ」
和「唯はもともと三味線が上手かったのよ」
律「そうだったのか……」
澪「しかし、唯が殿様の娘だったなんて……」
律「ああ、驚いた」
唯「……」
憂「ねえ、お姉ちゃん……何も憶えて無いの?」
唯「……うん」
憂「そうなんだ……」ジワッ
和「憂……」
憂「お姉ちゃん……せっかく会えたのに……」ポロポロ
律「……」
澪「……」
唯「……」
唯(なんだろう……)
唯(思い出せないんだけど……なんか懐かしい感じがする……)
憂「うう……」ポロポロ
唯「……!?」キーン
唯「うう……え……あ……」キーン
律「唯!どうした!?」
唯(あれ……なんか……!)キーン
憂「お姉ちゃん!?」
唯「……」
澪「大丈夫か……?」
和「もしかして何か思い出したの!?」
唯「ううん……思い出しそうだったけどだめだった……」
和「そう……」
唯「でもね……なんか懐かしい感じがする」
憂「お姉ちゃん……」
――――
和「じゃあ私達は帰るわ」
和「今、唯を連れて行っても混乱するだけだろうから」
律「そうだな……」
和「憂、帰るわよ」
憂「はい……」
和「じゃあとりあえず唯のこと、よろしくお願いします」
律「ああ」
和「それじゃあ」
律「うん」
憂「お姉ちゃん……」
――夜
澪「あれ?唯は?」
律「さっき散歩に行ったよ」
澪「散歩?こんな時間にか?」
律「まあ今日は色々あったからな……」
律「一人で考える時間も必要なんだろ」
澪「ああ、そうだな……」
律「しっかし……」
律「唯が平沢家当主の娘とはなあ……」
――夜道
唯(私が殿様の娘……?)
唯(信じられないよ……)
唯(これから私はどうすれば……)
唯(りっちゃんや澪ちゃんとの生活も楽しいし……)
唯(あずにゃんやムギちゃんと遊ぶのも楽しいから……)
唯(私……記憶が戻らなくてもいいと思ってた……)
唯「……」
――――
ごろつきA「おい、あれ見てみろよ」
ごろつきB「んあ?」
ごろつきA「あれだよ、あそこの一人で歩いてる女」
ごろつきB「ああ、あれか」
ごろつきA「ありゃうどん屋の奴だぜ」
ごろつきB「うどん屋って女だけのあのうどん屋か?」
ごろつきA「そうそう」
ごろつきA「なんでもそのうどん屋は最近儲かってるらしい」
ごろつきB「ほう」
ごろつきA「そのうどん屋の女が夜一人で歩いてる……」
ごろつきA「あとはわかるな?」
ごろつきB「まさか……」
ごろつきA「あの女を誘拐して身代金を要求すれば、たんまり金が手に入る」
ごろつきB「お前天才」
ごろつきA「ぐはは!そうと決まれば早速」
ごろつきB「よっしゃ」
唯「……」
ごろつきA「よう、嬢ちゃん」
唯「え?」
唯(何この人たち……!?)
ごろつきB「ちょっと俺達と来てもらおうか」グイ
唯「え……あ……」
唯(え!?何!?)
ごろつきA「うへへ」
――うどん屋
律「唯遅いなー」
律「まあそれだけ考えることがあるってことか……」
律「唯も大変だな……」
律「ふああ……」
律「寝むい」
律「先に寝ちゃおうかなー」
律「……」
律「……ZZZ」
――翌朝
律「まだ唯が帰ってない……!?」
律「どうしたんだ……?」
律「……」
律「捜しに行こう」
ガラガラ
律「ん?」
律「扉に何か挟まってるぞ」
律「これは……手紙?」
律「……」ガサガサ
「女は預かった。金を用意して西の廃村に来られたし」
律「!?」
律「こ、これって……」
律「唯が誘拐された!?」
律「た、大変だ!」
律「澪!起きろ!」
澪「う~ん……どうしたんだ?」
律「唯が……唯が誘拐された!」
澪「え?」
律「唯が何者かに誘拐されたんだよ!」
澪「なんだってー!?」
律「はやくいくぞ!」
澪「いくってどこに!?」
律「唯を助けにだよ!」
最終更新:2010年10月30日 21:34