――町
純「でさー」
憂「あはは、何それー」
ドン!
梓「あいた!?」
野武士「いてえ!」
梓「あ、ごめんなさい!」
野武士「ああん!?ごめんで済むと思ってるのかあ!」
純「そっちがぶつかって来たんでしょ!」
憂「じゅ、純ちゃん……!」
野武士「なんだとお!?」
野武士「切り捨てる!」シャキーン
梓「ひいっ!?」
純「梓!」
憂「待って!」
野武士「ああん!?」
憂「……」スッ
純「短剣……」
野武士「へっ!そんな短剣でやり合おうってか!?」
野武士「上等じゃねえか……って、ん?」
憂「……」
野武士「短剣に刻印が……」
野武士「あれは……平沢家の家紋!?」
野武士(や、やばい!)
野武士「あはは……いやー、俺もちゃんと前見てなかったかなー……なんて」
憂「……どこか行ってください」
野武士「し、失礼しましたー!」ピュー
梓「あはは……あはははは……」ガクガク
憂「大丈夫?梓ちゃん」
梓「うん……」
梓「怖かったよ……」ジワッ
憂「もう大丈夫だよ」ナデナデ
梓「うん……ありがとう……」グスッ
純(う~ん、やっぱり凄い人だった)
憂「もう帰ろっか?」
梓「うん……」
――うどん屋
律「ええ!?」
澪「切り捨てられそうになった!?」
梓「はい……」
純「でも憂が助けてくれました!」
唯「すごいよ憂!」
紬「でも無事でよかったわ……」ホッ
梓「ほんとに怖かったんですよ……」
澪「でも流石憂ちゃんだな」
澪「そういう時でも冷静に行動できるんだから」
律「澪はその場で腰抜かしそうだけどな」
澪「そんな状況だったら誰だってそうだろ!」
律「あははー、そうだなー」
澪「私だって……いざって時はだな……」モンモン
澪「し、しっかり落ち着いてだな……」モンモン
澪「そう、冷静に行動するもん!」バッ
律「そういば梓ー」
梓「なんですか?」
澪(聞いてなかった……)シュン
律「三日後に唯のお城に行くんだけど梓もくるか?」
憂「律さん達うちにいらっしゃるんですか?」
唯「うん!お父さんにうどん食べさせてくれるんだよ!」
憂「へ~」
憂「前から食べてみたいっていってたもんね」
梓「三日後ですか……ちょっと都合悪いですね」
唯「え~……」
律「そっかー」
律「じゃあ、やっぱり私と澪だけだなー」
澪「うん」
律「唯、そういうことだ」
唯「わかりました!」
紬「今度都合いい時、私も行きたいわ」
唯「うん!」
純(あれ、私誘われてないや)
――3日後
律「ついたー」
澪「こっちの町も賑やかだな」
律「人はこっちの方が多いかもなー」スタスタ
律「いくぞー」
澪「ちょっ……勝手に入っていいのか?」
律「う~ん、でも出迎えもないみたいだし」
澪「でもお城に勝手に入るのはちょっと……」
律「じゃあ、誰かに声かけてみるか」
澪「うん」
律「あ、丁度誰かいる」
律「……」
澪「……」
律「声かけろよ」
澪「り、律が声かけてよ……」モジモジ
律「仕方ないなあ」
律「すみませーん」
家来「む、何奴」
律「あのー、私達唯の友達なんですけど」
家来「おお、話は聞いていますぞ」
家来「案内しましょう」
律「ありがとうございます」
――城内
唯「いらっしゃい!」
律「おい、唯」
律「出迎えにでも来てくれればよかったのに」
澪「入りずらかったんだぞ」
唯「ごめ~ん」
憂「こんにちは」
澪「こんにちは、憂ちゃん」
唯「ささ、そんなことより」
唯「殿がお待ちかねですぞ」
律「あー、はいはい」
澪「はは、殿様なんてもう慣れっこさ」ガクガク
律「足が波打ってるぞ」
澪「まるで骨を抜かれたようだよ」ガクガク
律「別に緊張することもないだろー」
唯「私と話す時みたいにしてれば大丈夫だよ~」
律「いや、それはまずいだろ」
唯「まあまあこちらへ」
――殿の間
唯「連れて来たよー」
唯父「おお、そうか」
律「こんにちはー」
澪「こ、こんにちは……」
唯「こっちがりっちゃんで、こっちが澪ちゃんだよー」
唯父「初めまして、唯の父親です」
律「は、初めまして!」
律(唯のお父さんってこんなに若い人だったのか……)
澪「……」ドキドキ
唯父「いや~、唯がいつもお世話になってるようで」
律「いえ、こちらこそ!」
唯父「以前唯を助けてくれたお礼を言ってなかったね」
唯父「本当にありがとう」ペコッ
澪(殿様に頭下げられた……)
律「いや、私達も唯に色々と助けてもらいました」
律「こちらこそありがとうございます」
唯「そうだよ~、私だって人助けしてるんだよ~」
唯父「そうなのかい?」
澪「はい……!」
澪「私も……唯には色々と教えてもらったって言うか……」モジモジ
唯父「唯も人に感謝されるぐらい成長したんだね」
唯「えへへ~」
唯父「ああ、そうそう」
律「はい?」
唯父「今日はすごく美味しいうどんが食べれるって聞いたんだけど……」
律「あ、はい!」
律「今日はそのために来ました!」
唯父「わざわざすまないね」
唯父「調理はうちの台所を使っていいよ」
律「はい!」
――――
律「できました!」
澪(台所広かったなあ)
唯父「おお、随分はやかったね」
唯「りっちゃん!私のは!?」
律「ちゃんと作ったよ」
澪「どうぞ」
唯父「ありがとう」
唯父「いただきます」
唯父「……」ズルズル
律「……」ドキドキ
澪「……」ドキドキ
唯「♪」ズルズル
唯父「おお!」
唯父「これはうまい!」
律「本当ですか!?」
唯父「うん、今まで食べたうどんの中で一番おいしいよ」
律「ありがとうございます!」
唯父「うん、それでね」
唯父「ちょっと君たちに話があるんだ」
澪「え?話?」
唯父「今は琴吹氏の城下町でうどん屋をやってるんだよね?」
律「そうです」
唯父「前に唯から、大きい家を建てて店もっと大きくするのが夢だって聞いたんだけど」
律「え、あ、はい!」
澪「!」
律「まあ、もっとお金が溜まったらの話ですけど」
唯父「じゃあその夢を私が叶えてあげるってのはどうかな?」
澪「え!?」
律「ど、どういうことですか?」
唯父「大きい家と大きいお店を作ってあげるってことだよ」
律「ほんとですか!?」
唯父「唯を助けてくれたお礼だよ」
唯父「琴吹氏の領地に勝手に建てることはできないから、こっちの町だけどね」
澪「こっちの町ってことは……引っ越さないといけないってことですよね?」
唯父「そうなるね」
律「う~ん」
澪「律、それは……」
律「少し考えてもいいですか?」
唯父「急に言われても困るだろうしね」
唯父「ゆっくり考えるといいよ」
律「はい!」
――唯の部屋
唯「ねえ、見て見て!」
律「これは……三味線の撥?」
唯「そうだよ!」
律「なんでこんなに沢山あるんだ?」
唯「可愛いから集めてるんだ!」フンスッ
律「可愛いか……?」
澪「なあ、律」
律「ん?」
澪「さっきの話だけど……」
律「ああ」
澪「律はどうしようと思ってるんだ?」
律「私は……お願いしようと思ってる」
澪「……」
律「だってこんな機会もう2度とないかもしれないんだぞ?」
律「こっちの町の方が大きいし、店も大きくすればもっと人があつまる」
律「いいことじゃないのか?」
澪「そうだけど……」
澪「でも引っ越すことになるんだよ?」
律「もっと大きい家に住めるんだからいいじゃないか」
唯(二人とも真剣に話してる……)
澪「……律はそれでいいの?」
律「どういうこと?」
澪「……いいよ」
律「?」
律「とにかく、今回の話は受け入れようと思ってる」
律「唯のお父さんの好意も無駄にできないしな」
律「いいか?」
澪「……律がそういうなら」
律「そうと決まれば、早速唯のお父さんに伝えておこう」
律「唯、帰る時にでももう一度お父さんに会えるか?」
唯「うん、大丈夫だよ」
律「よし」
――殿の間
唯父「じゃあ、そういうことでいいんだね?」
律「はい!お願いします!」
唯父「じゃあ大急ぎで新しい家とお店を作らせよう」
唯父「完成次第、引っ越しの業者をそちらにむかわせる」
唯父「詳しい日程とかは後で手紙を送るよ」
律「ありがとうございます!」
澪「……」
澪(律……)
――翌日
紬「ええ!?」
梓「じゃあ引っ越すことになったんですか!?」
律「ああ」
紬「いつなの?」
律「家と店が完成してからだからまだ未定かな」
梓「そうですか……」
紬「この家はどうなるの?」
律「空き家になると思う」
律「買い手もいないだろうし」
梓「そういえば澪先輩はどうしたんですか?」
律「澪ならどっかにでかけたよ」
梓「どっかって……」
律「澪、最近変なんだよなー」
紬「変?」
律「なんか元気ないっていうか」
梓「どうしたんでしょう?」
紬「心配ね」
最終更新:2010年10月30日 21:51