後夜祭。
校庭の真ん中で燃える炎の周りで、ダンスを踊る。曲はマイムマイム。
でも私は、その輪に入らず。
少し離れたところで、座って見ていた。
りっちゃんと澪ちゃん、恥ずかしながら踊ってる。お祭りの後は寂しい。
夕闇がそれを包んでいる。
唯「終わっちゃうな」
エリちゃんとアカネちゃん、踊り上手いな。
唯「これが、燃え尽き症候群ってやつかな」
ライブは、どうだったのだろう。
わたしたち放課後ティータイムはあの後、部室で泣いて。
もう三年生なのだ。
笑い声が校庭に響く。
私のライブも、告白も。過去になってしまう。
唯「姫子ちゃん」
そもそも、なんで私は姫子ちゃんが好きなんだろう。
唯「ん~わからん」
隣の席になって。
お喋りして。
唯「でも、好きなんだからしかたないよね」
姫子ちゃんの返事を聞きたい。
こんな感情も、時間がたてば風化しちゃうのかな。
エラくセンチメンタルな気分になるのは、後夜祭という雰囲気のせいかな。
姫「ここ、いいかな?」
姫子ちゃんが、来た。
唯「うん」
自分でも、信じられないほど落ち着いている。
姫「よいしょ」
姫子ちゃんが私の隣に座る。
唯「姫子ちゃん、おばちゃん臭いよ~」
姫「唯」
見つめられる。
唯「なに?」
姫「ライブ、見たよ」
唯「うん」
姫「カッコよかったよ」
唯「うん」
姫「ごめんなさい」
唯「うん」
そっかぁ。
今度こそ振られたれちゃった、へへ。
姫「誤解してた。私」
唯「へ?」
姫「唯、あの曲」
唯「姫子ちゃんだよ。私が好きなのは姫子ちゃん」
姫「…嬉しい」
唯「へ?」
姫「あんな告白された後だと、言い出しづらいけど。私と付き合ってください」
唯「ほんとに?」
姫「好きだよ、唯」
唯「姫子ちゃん」
姫「誤解しまくりだったね、私も唯も」
唯「いや~お恥ずかしい限りで///」
姫「笑ってくれた」
唯「姫子ちゃんも笑って?」
姫「笑わせて?」
唯「えっと、なにすれば」オロオロ
姫「ププ。あははは!私ね、気がついたんだ。唯見てると、笑っちゃうの」
唯「え~?酷いよ姫子ちゃん」
姫「唯見てると、幸せな気分になる」
唯「そ、そんなに見つめるなよ、て、照れるぜ///」
姫「キスしよっか」
唯「へ?へへ///」
姫子ちゃんの顔が近づいて。
目をつぶる。
すると。
唯「はにするの~」
ほっぺを伸ばされた。
姫「だって、唯の頬っぺた、柔らかくて気持ちーんだもん」
唯「なにを~」
私も姫子ちゃんのほっぺを伸ばす。
姫「これが、始まりだったね」
唯「め、面目ねぇ」
姫「唯のせいじゃないよ。あ、そうだ。あの時のキス、本気だったの?」
唯「はい。いや、ほんの出来心で、つい」
姫「そっか♪」
唯「許してくれる?」
姫「あげない♪」
唯「え~?」
姫「罰として、毎日頬っぺたを触らせること!」
唯「わかった!」
姫「それから、私にパフェを奢ること!」
唯「ご、ご無体な」
姫「今度デートしようね?」
唯「パフェはその時に?」
姫「パフェはその時に♪」
唯「むぅ。しかたない」
姫「唯」
ちゅ
ほっぺにキス。
唯「///姫子ちゃん、ほっぺホントに好きだね~」
姫「頬っぺたに惚れたの」
唯「そ、そうなの」ショボン
姫「って、唯、落ち込まないでよ~冗談だよ」
ちゅ
キスした。
姫子ちゃんの手に。
唯「私は手!」
姫「なんとまぁマニアックな」
唯「あれ?落ち込まない」
姫「唯とは違うの」
唯「なんかずるい」
姫「大好き、唯」
唯「大好き、姫子ちゃん」
緩やかに流れる音楽。
辺りはもう暗くて。
ここまでは炎の明かりも届かない。
姫「唯」
唯「姫子ちゃん」
唇を軽く重ねて。
一度抱きしめあって。
もう一度だけ――――――
姫子ちゃんが立ち上がる。
姫「唯、踊りに行こう!」
手を差し伸べられる。
唯「ラジャー!」
手を握る。
もう、離さない。
おわり
最終更新:2010年11月03日 01:46