紬「あ、別に他意はないのよ?ただ、手を繋いでると歩幅とか歩くペースとか合わせやすいから」

律「そっか。じゃあ、つなごうかな」

紬「うん!…じゃあ、はい」

律「うん…」ぎゅっ

紬「ふふっ。りつちゃんの手、小さいね」

律「まあ…こんなだからな~」

紬「…でも、あたたかいわ」

律「むぎのてもあったかいぞ。おかあさんみたいだ」

紬「え~?私はお姉さんのほうがいいな~」

律「ははっ、ごめんごめん!」

紬「ふふふっ」

紬「でも…なんだか本当にお姉さんになったみたい。ねえ、りっちゃん…お願いがあるんだけど…」

律「お願い?」

紬「私のこと、お姉ちゃんって呼んでくれない?」

律「……はい?」

紬「あっ!ち、違うの!あの、あのね!あの、そのね!」

律「お、おちつけよ、おちつけってば!」

紬「あ、うん…ごめんね。あの、私って一人っ子でしょう?」

律「いや、しらなかったけど」

紬「だからね…兄弟がいる人が…昔からすごくうらやましかったの」

律「…そういうもんなのか?」

紬「…うん。だから、妹か弟に、お姉ちゃん、って呼んでもらうのが夢だったの…」

律「…そっか」

紬「…ご、ごめんね。忘れて」

律「つむぎおねえちゃん!」

紬「!!…りっちゃん…!」

律「へへへ…いいよ。むぎのいえにおせわになってるうちは、わたしはむぎのいもうと!!」

紬「…うん!ありがとう!えへへ、うれしいなあ」

律「ねえ、つむぎおねえちゃん?」

紬「ふふふっ、なあに、りっちゃん?」

律「わたし、アイスクリームがたべたいな」

紬「あらあら。もう、しょうがないわね~。お母さんには内緒よ?」

律「わーい!おねえちゃんだいすき!」ぎゅっ

紬「はうん!」キュン!

律「…さすがにやりすぎだな、こりゃ」

紬「そ、そんなことはない!そんなことはないわ!」


紬「さあ、りっちゃん。アイスクリーム屋さんに着いたわよ♪」

律「おおっ!やったあー!」

紬「どれが食べたい?」

律「えっとね、えっと、おもいきってトリプルさんだんがさね!」

紬「あらあら、そんなに食べたらお夕食が入らなくなっちゃうわよ?」

律「あう…そっか…うぅー…」

紬「もう、しょうがないんだから。今日は特別よ?」

律「わあい!おねえちゃんありがとぉ!」だきっ

紬「はうん!」ズキュキュン!

店員「へいお待ち!」

紬「はい、りっちゃん」

律「おほぉー!すげー!すげーでかいぞ!」

紬「ふふふっ、良かったね、りっちゃん!」

店員「可愛いねえ。妹さんですかい?」

紬「え?あ、その…」

律「うん!つむぎおねえちゃんだよ!」

店員「優しいお姉ちゃんで良かったねえ、嬢ちゃん。またおいでな!」

律「ばいばーい!」タタタッ

紬「あ、りっちゃん!走ると危ないわよ~?…もう!」

紬「しかし…本当の姉妹だと…思われちゃった。……むふ、むふふふふ」

律「しかしほんとにでかいなこりゃ…チビになるのもわるくない…かな?」

律「あっ!!」こてん

べちゃ

紬「あっ!?り、りっちゃん!?大丈夫!?」タタタッ

律「いたたた……へへ、ころんじゃった…」

紬「大丈夫?痛くない?どこか擦りむいたりしてない?」

律「よいしょっと!へいきへいき!……あっ!?」

紬「え?…あ、アイス…」

律「うっ…!ううう~!わたしのアイスぅ…!」じわっ

紬「りっちゃん…」

律「な、なかないぞ!わたしはこうこうせいなんだ!アイスがたべられなくなったくらいで…なかないぞ!」ぐっ

紬「…いい子、いい子」ナデナデ

律「ひゃっ!?……むぎ…」

紬「りっちゃんは強い子ね。うん、えらい!」ナデナデ

律「……えへへっ!」

紬「さあ、帰りましょうか。ほら、お姉ちゃんのアイス分けたげるね」

律「うん!ありがとう、おねえちゃん!うん、うまいっ!」



紬「さあ、着いたわ。ここが私の家よ」

律「…でかっ!!」

紬「そう?まあ今のりっちゃんだからそう見えるのかもね」

律「いやいやいやいや、そんなレベルじゃないから…すごいなこりゃ…」

紬「さあ、遠慮なく入って。今日からしばらくはここがりっちゃんのお家よ~♪」

律「はあ…みにあまるこうえいです…」

紬「只今帰りました~」

律「お、おじゃまします…」

斉藤「お帰りなさいませ、紬お嬢様…おや?そちらの方は?」

律「あ、あの…わたし…」

紬「今日からしばらくの間、私が預かることになったの。だからよろしくね?」

斉藤「は。しかし………わかりました。そちら様は何とお呼びすればよろしいので?」

紬「ほら、りっちゃん、自己紹介よ」

律「あ、あの、た…たいなかりつです!はじめまして!」

斉藤「初めまして、律お嬢様。私は執事の斉藤と申します。ご入用の際は何なりとお申し付け下さい」

律「は、はい!ありがとうございます!……りつおじょうさまか…」

紬「とりあえず、子供用の服を何着か見繕って頂戴」

斉藤「は。かしこまりました」

紬「さあ、りっちゃん、私の部屋に行きましょう♪」

律「う、うん…」

律「うわあ…いえのなかもひろいなあ…」

紬「ここが私のお部屋よ。さあ、入って」

ガチャッ

律「おおお!なんだこのひろさ!たいいくかんかよ!」

紬「ここが私とりっちゃんのお部屋よ~♪疲れてるでしょう?ゆっくりしてね、今、お茶淹れてくるから」

律「あ、うん!ありがとー!」

ガチャッ、バタン

律「はあー…これがかくさしゃかいか…うおっ!おひめさまベッドだ!」

ぼふん

律「あはっ、やわらかーい!すごいすごい!ごろごろしてもおっこちない!」

律「はふーっ………てんじょうが…たかいな…」

律「どうして…こんなことになっちゃったのかな…」

律「このままもどれなかったら…どうしよう…」ぐすっ

律「むうん!だめだめ!ないちゃだめなんだ!わたしはつよいこなんだからな!」

律「……みお…」


紬「りっちゃんお待たせ~♪」

律「あ…むぎがもどってきた。お、おかえりー」

紬「お夕食まではあと一時間くらいだから、もう少し待っていてね?さ、お茶どーぞ♪」

律「うん!いただきまーす!ふーっ、ふーっ…あちっ!」

紬「あっ!大丈夫!?」

律「うん…したもおこちゃまになっちゃってるみたいだ…」

紬「ほら、カップを貸して?ふーっ、ふーっ、ふーっ、ふーっ…さあ、これで大丈夫よ」

律「うん!ありがとう!…はあ、おいしい…」

紬「そう?よかった~♪」

紬「あ、そうそう…」

律「ん?なに?」

紬「はいこれ、りっちゃんのお洋服よ。私のお下がりなんだけど…ごめんね、今はこれしかなくて」

律「ううん!ありがとう!へえ、かわいいなあ…」

紬「さっそく着替える?」

律「うん!うわあ、こんなふくきるのうまれてはじめてだ」

ごそごそ

紬「…おうっ?…おおお、ふおおおおお」

律「んしょ…っと。ど、どうかな…?にあう?」

紬「りっちゃん…ちょっとこっちいらっしゃい」

律「え?…う、うん」てこてこ

紬「…かーわーいーいー!!」がばっ!

律「はわっ!?」

紬「やあんもう何コレ!?何コレかわいすぎー!きゃーっ!きゃうーっ!!」ぎゅぎゅぎゅっ!

律「またかぁ~!!」

コンコン

斉藤「紬お嬢様、お食事の準備が整いましてございます」

紬「ハァハァ…わ、わかりました~、ありがとう」

斉藤「…失礼致します」

律「またきせかえにんぎょうにされた…」

紬「さ、りっちゃん、ご飯よ。お腹すいたでしょう?」

律「う、うん…それはもう…」

紬「たくさん食べましょうね♪さあ、食堂に行きましょう?」スッ

律「…うん!」ぎゅっ

紬「広いから、迷子にならないようにね?手を離しちゃ駄目よ?」

律「はーい!」

ガチャッ

律「おほー!すごい!パーティーかいじょうかよ!?」

紬「ごめんなさい、ホールは今日は使えないの…ここで我慢してね?」

律「いや、じょうだんなんだけど…つーかホールがあるんだ…」

斉藤「さ、律お嬢様はこちらでございます」スッ

律「あ、ありがとう、さいとうさん…うわぁ…すごいりょうり…」

紬「さあ、食べましょう?私もお腹すいちゃった」

律「あれ?わたしたちだけなの?むぎのおとうさんとか、おかあさんとかは?」

紬「お父様もお母様も、今日はお仕事でいないの。…一緒にお食事することなんて…年に数えるほどしかないわ」

律「むぎ…」

紬「でも、寂しくなんかないのよ?…もう慣れっこだし。それに…」

律「それに?」

紬「今日は可愛い妹と一緒だもの!」

律「…うん!」

紬「さあ、いただきましょう!手を合わせて~!」

パシン!

紬律「いただきます!」

紬「さありっちゃん、気にしないでどんどん食べていいのよ。たくさん食べて大きくならないと!」

律「はーい!…しかしどこからてをつけたらよいものか…じゃあまずこのスープから…」ずっ

律「…なんだこりゃ!?うんめえ!!」ずずずずず

紬「ふふっ、お口に合ったようでよかったわ~♪」

律「もぐもぐ!はふはふ!ばくばく!これおかわり!」

紬「無心に食べてるわね~」

律「もぐもぐ!はむはむ!もぐもぐ!」

紬「………可愛い」キュン!

斉藤「…」キュン!



そのころ平沢家では

唯「でねでね、りっちゃんがしゅわしゅわ~ってなって、ロりっちゃんになっちゃったんだよ!」

憂「へえ~、そうなんだ!すごいね!(お姉ちゃん何言ってんだろ…)」

唯「でね、もうロりっちゃんがすんごいかわいいの!すんごいかわいいんだよ!?」

憂「へ~、いいなあ(律さんが…ロリ?…ゴスロリってやつを着たのかな?)」

唯「澪ちゃんもあずにゃんもはぐはぐ~ってしてね!もちろん私もはぐはぐぎゅ~って!」

憂「いいなあ。私もはぐはぐしたいなあ(ゴスロリ着たくらいで律さんがそんなに可愛くなるかな…?)」

唯「はあ…いいなあむぎちゃん…」

憂「(何で急に紬さんを羨みだしたの!?)」



……

律「はあ~、たべた~!もうはいんない!」

紬「ふふっ!満足した?」

律「うん!あ、でもちょっとくやしいかなあ」

紬「どうして?」

律「だってからだがもとのおおきさだったら、もっとたくさんたべられたのにさ~」

紬「ふふふっ、りっちゃんたら、よくばりさんなんだから!」

律「あはははっ!」

紬「ふふふっ!…じゃあ、お部屋に戻りましょうか」

律「うん!ごちそうさまでした!さいとうさん、ありがとうございました!」

斉藤「い、いえ…こちらこそ!」キュン!


ガチャッ、バタン

紬「さて、と…何かして遊びましょうか?それとも映画でも観る?」

律「うーん…ちょっとたべすぎたかもしんない。すこしやすませて~」

紬「ふふふ、いいわよ。じゃあお姉さんがベッドまで運んであげましょう!」

律「おねが~い」

ひょいっ

紬「さあお姫さま、ゆっくり休むとよろしいですわ」

律「うむ。くるしゅうない~」

律「……なあ、むぎ…」

紬「…なあに?」

律「私…これからどうなるのかな…?」

紬「……そうね…」

律「このままじゃ…いえにもがっこうにももどれないし…」

紬「……」

律「いつまでもむぎのいえにおせわになるわけにもいかないし…」

紬「私のことなら気にしないでいいのよ?私自身は…本当にりっちゃんと一緒だと楽しいし…」

律「…わたしも…いまのままでもいいかなあ、なんておもうこともあるよ」

紬「!…だ、だったら…」

律「でも、やっぱり…ちがうんだよな…それにな」

紬「それに?」

律「いまのままじゃ…みんなとバンドができない…それが、それがつらいんだよ…」ぐすっ

紬「…安心して」

律「…?」ぐすっ、ぐすっ

紬「私が…私がきっとりっちゃんを元に戻してみせるわ!」

律「むぎ…」ひぐっ、ぐすっ

紬「どんな手段を使ってでも、絶対に元に戻す方法を見つける!そして、またみんなで演奏をしましょう?」

律「…う、うん…!」ぐすっ

紬「だから…もう泣かないこと!りっちゃんは強い子なんだから!ね?」

律「…うん!わかった!もう…なかないよ!」

紬「よろしい!…いい子、いい子」ナデナデ

律「えへへ…やっぱりむぎはおかあさんみたいだ」



そのころ中野家では

梓「律先輩がこのまま元に戻らなかったらどうなるんだろう…」

梓「ドラム不在はバンドとしてありえないよね」

梓「そういや前に唯先輩がドラムやってもいい的なこと言ってたよね…」

梓「…いやいやいや、あの人がリズム隊とかありえないありえない」

梓「…ちびっ子のままでドラムやらせるとか…」

梓「『あーん!ペダルにあしがとどかないよー!』」

梓「『ふえーん!うでがつかれてうごかないよー!』」

梓「………かわいい」


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最終更新:2010年11月06日 03:26