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アパート『メゾン・ソアラ』の扉を叩いたのは18時5分前の事である
インターホンを押すとドアが物々しく開いた

今日は我が大学KO大学の新入生説明会であった
新入生説明会を経て学生証等の配布を受け
晴れて私もKO大学生の仲間入りである

さてさて我がばら色の大学生活では何をなすべきであろうか
学友とともに学問に精進するもよし
異性との健全な青春に心ときめかせるもよし
撥弦楽器の道を究めんとするもよし

求めよ、さすれば与えられん


私がへとへとになって愛しの六畳一間に帰ってきたのは
15時過ぎのことである

と言うのもこの時期は学生の交友の場である
サークルの新入生勧誘の時期でもあるからだ

サークルとは
伴に学問に精進する者
大学生活の苦楽を分かちあう者
将来の伴侶として伴に人生を歩んでいく可能性がある者
不純性行為に思いを馳せる者
研究レポートの参考文献になるレポートを持つ者
麻雀という闇遊戯にふける者
免罪符である『出席カード』の密売人
等がなす集団活動である

今から『新入生募集』と書かれた大量にうけとったビラを選別作業に入る

梓「これとこれはこっち」

選別の基準は
一見の価値がありそうなもの
貴重な火力発電の燃料になってもらうもの
の二つである

束になったリサイクル燃料を可燃ごみに投入したところで
せっせと今日ポストに入っていた物の選別に入る

新設の美容院の紹介葉書
ピザ屋の広告
すし屋の広告
キャバクラの勧誘葉書

ん、これは何の紙であろうか

私が手にした一枚紙にはこう書かれていた

新入募集中
興味があるなら来たれし

……これも可燃ごみか

することもないのでギターの練習をしていた17時40分頃のことである
突然携帯電話が鳴り出した
着信は唯先輩からだった
Pi
梓「もしもし」

唯「あ、あのさ、あずにゃん」

梓「何ですか?」

唯「み、みたかな?」

梓「見たって何をですか?」

唯「今日ポストに…」

梓「ああ、キャバクラの勧誘が入ってましたね」


梓「え、どうしたんですか、唯先輩?」

唯「新入募集中!興味があるなら来たれし!」

Pi ぷーぷー

梓「(ああ、あのくだらんビラ、唯先輩が入れたのか)」
 「(くだらない広告だとおもって捨てちゃったよ)」

火力発電の燃料入れから
先ほどの紙を取り出す
裏面にはこう書かれていた

場所『メゾン・ソアラ』
時間18時丁度
(連絡先○○○-○○○○)

この連絡先はまさしく先ほどの着信と同じ番号であった

梓「はあ、じゃ、行こうかな」

私は自転車に乗って走りだした
唯先輩のアパートは神社を越えたすぐ先にある

唯「あ、あずにゃん!来たんだ!」ダキ

梓「唯先輩が呼んだんじゃないですか」
 「てか、玄関先で抱きつくのは止めてください」グイ

紬「あずさちゃん、久しぶりー」

梓「お久しぶりです、ムギ先輩」ペコ

私のアパートからKO大学まで東に3駅
西あるにN女子まで2駅
両大学の距離は実質5駅で40分弱もない
この街は両大学の学生にはうって付けの場所にある
そのため結構両大学の学生がこの界隈に住み着いている
私と唯先輩もその内の一人である
そのため私と唯先輩のアパートは距離にして1キロ弱でしかない
勘違いしてもらっては困るのだが
決して唯先輩の近くに住みたいがために
他の好条件の物件をけったりなんかしてないんだからね

こんな偶然が起こるものであろうか

そうこれは運命である
神様が決めたのだからしかたがない


そんなこともあってこちらへ越してきてからは唯先輩とはよく会う
というかすごく会う
というか昨日も私の部屋に来てたし
おとといも唯先輩の家に行ったし

だから玄関先で抱きつくのだけは止めてほしい
近くの人の視線が気になる

紬「あらあら」

この今お茶の準備をしている人は紬先輩、愛称ムギ先輩である
高校のときは同じバンドでキーボードをしていた
有名企業の社長さんの娘であり
幻想通りの典型的なお金持ちである
ぽわぽわしていて
外見は美人の憂もはっきりと認める美人
性格もしっかり者で
勉学も優秀

演奏技術も幼いころにコンクールで入賞したことがあるというだけあって一級品であり
その上作曲までこなす秀才っぷり
まさに皆があこがれるような非の付け所のないような人物である

紬「梓ちゃん、嬉しいんだけど、いったい誰に話してるの?」
 「うふふ」


そんなこんなで3人でお茶をしている18時20分ごろ
玄関のインターホンがなった

これまでの唯先輩とムギ先輩との会話は
実に他愛のないものなので割愛させていただく
本当に内容のない話であったため
記録を取るのも取るに足りなく、そもそも取る準備さえもなかった

唯「りっちゃんと澪ちゃんかな?あずにゃん、ちょっと出てきて」

唯先輩とムギ先輩が何やらもそもそとやっているため
私が玄関を開けることとなった

梓「(家主が開けなくていいのか?)」

玄関先にいたのは一見高校のときの先輩の姿である

しかしその先輩が私と唯先輩を見間違えるだろうか

私は腕時計を見た
今は逢魔が時
玄関のドアの先にいるものは化け物か狢の類である可能性が高い
そんなものを唯先輩のアパートに入れる訳にはいかない

律「っておい!聞こえてるぞ!誰がたぬきだ!」ドンドン!

まさにこれはポルターガイスト現象である

律「梓、悪かったよ、てか開けてくれよ!」

澪「ミエナイキコエナイミエナイキコエナイ…」

律「おい」

ガチャ
律「ったくもー、お前ってやつは…」

この人は律先輩である
担当はドラム
元気いっぱいの人だ
一言で言えば性格はガサツで大雑把

でもみんなに対する思いやりも欠かさないし
芯がしっかりしていてまとめ役でもある
まさリーダーにふさわしいく

律「って、梓誰に話してるんだよ!」
 「ってゆーか、私、別にしっかりしてねえし、思いやりもねえし!」///

こう照れ屋さんで可愛いところも魅力的な人である

律「お、おい!止めろよ」///

このように実にいじりがいのある人物だ、ぷぷ
実際この集団での一番の苦労人はこの人であろう

で、隣にいるこの黒髪美人の人は

澪「ミエナイキコエナイミエナイ…」

めんどくさいからいっか

律「おい…」

律「おい、唯、言われた通り酒買って来たぞー!」

梓「って、何でお酒…」

唯「今日はあずにゃんの再加入歓迎パーティだよ!」

梓「は?」

全く脈絡のない話である
人違いであろうか
今までの文脈に再加入パーティなんて文字があったであろうか
私自身これまでの記憶を文字に記して読み返してみて全く記憶にない
唯先輩の部屋に来るまでの間に
平行世界へさまよったであろうか

さらば今までの私がいた世界
アディオス

そんなこんなで考えているうちに再加入パーティと称する飲み会が始まった
しかしこのムギ先輩が別に持ってきたという焼酎『爆弾ハナタレ』
一体いくらする代物であろうか?

律「それにしても梓も大学生か」←カルーアミルク

紬「一年って早いわね」←焼酎

澪「そうだな」←麦酒

唯「そうだねえ」←カシスオレンジ

梓「何か会話の内容が親父くさくないですか?」←焼酎

律「カルーアミルクおかわり!」

唯紬澪梓(か、かわいい!)

そんなこんなで日常会話が続き
本題に入ったのはなんと2時間後のことである
澪「梓が再加入で放課後ティータイムもやっと本来の力が出せるな」←麦酒、酒豪

紬「そうねえ」←麦酒、酒豪だが種類関係なし

唯「そうだねえ」←カルーアミルク、人並みに飲めるが甘い酒専門

梓「え」←焼酎、実は酒豪、焼酎派

唯澪紬「え?」

梓「私、まだ加入するなんて一言もいってないですが」

唯澪紬「え?」

律「うー、澪!気持ちわりぃ!」←下戸

梓「今日だってこの紙一枚で来たようなものですし」パシ

紬「新入募集中…」

澪「興味があるなら来たれし…」

澪「ゆ~い~、何が私にまかせておいてだよ!」

唯「えへへー」

律「澪ー、きもち悪い!」

澪「律、ちょっとお前は黙っててくれ!」

梓「私だってギターをまじめに練習てうまくなりたいですし」

唯「う」

梓「メンバー集めておいて毎回お茶会って言うのも」

澪「う」

梓「やっぱりバンドって言うのは音楽活動してなんぼなんじゃ?」

紬「う」

梓「違う大学に通ってますし」

唯澪紬「う」

梓「そもそもですね・・・」クドクド

唯「(あずにゃんってお酒はいると説教口調になるよね)」

澪「わ、私達だってちゃんと活動してるよな!」

紬「え、ええ。そうね、最近は新曲も作ったし、ね、唯ちゃん」
 「(お茶会が7割だけど)」

唯「うん、ムギちゃんのお菓子も相変わらず美味しいし!」

澪「唯、お前もちょっと黙っててくれ」

澪「そ、そうだ梓、明日練習見に来ないか?」

梓「練習、ですか?」

紬「そ、そう、駅前のスタジオでやるの!」

梓「スタジオでですか」

唯「駅前に美味しいお店が、ムグ!…」

紬「ほら唯ちゃんこのケーキおいしいわよ」

澪「(ナイス、ムギ!)」

ムギ先輩に強引にケーキ口につめこまれてるよ
うわあ

唯「あずにゃん!明日来てくれるよね」ダキ

梓「ぐ」

澪「梓!頼む」ダキ

梓「(澪先輩…大きい///)」

紬「梓ちゃん、お願い!」

梓「(自分から胸押し付けるなこのガチレズ野郎!)」

梓「わ、わかりました、行きますよ」
 「ですから、離れてください」グイ

唯「あ、あずにゃーんありがとう」ダキ

ヒョイ

ズテーン!

唯「……澪ちゃーん、あずにゃんが避けたー!!」

澪「駅前のスタジオに15時な」

唯「し、しかと!?」

梓「15時ですね、分かりました」

紬「じゃあまた乾杯ね!」

澪「そうだな!」

律「か、かんぱー……」

澪「お前はおとなしく寝てなさい」

それからさらに2時間後くらい

紬「じゃあ、私はそろそろ帰るね」
 「今日は楽しかったー、じゃあまた明日ね」

梓「私も楽しかったです」ペコリ

澪「ん、こんな時間か、私達も帰るか、律」

律「うー頭いたい」

澪「お前は自分の飲める量考えずに飲みすぎなんだよ」
 「じゃあ私達もここで、また明日な!」

梓「はい」ペコリ

バタン

さてそろそろいい時間ですし
私も帰るとしましょうか

唯「zzz」

梓「おい」

梓「唯先輩私も帰りますね」

唯「zzz」

て寝てるし

梓「おきてください、私、そろそろ帰らないと」ゆさゆさ

唯「zzz」

起きない……だと
ゴクリ


家主が飲み会で寝たままの状態で帰るわけにはいかない
このまま最後の門番である私が帰れば鍵を開けっ放しということとなってしまうのである
女子大生の一人暮らしの家を
朝まで鍵を開けたままにしておくのはまさに鬼畜の所業である

それにこの部屋は唯先輩の部屋である
ますます無用心にしていいものか、いや、よいわかがない!
おてんとう様が許しても
中野梓は決して許せぬ

それに先ほど揺らしたおかげで、衣類が少々乱れてしまっている
ゴクリ

梓「唯先輩いい加減」

唯「ううーん」グイ

梓「キャ」

ドン

梓「いった、頭打った」

仰向けで寝ている唯先輩上に転ばされてしまった
まさにベタな状況である!
しかしベタな状況ほど王道ではないか!!
神様のお導きではないか!!!

まさか起きている?

梓「起きてるんですか?」

唯「zzzz」

状況を整理する
今まさに仰向けで寝ている唯先輩の上に覆いかぶさっている状況である

寝たふりであろうか?


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最終更新:2010年11月09日 22:37