憂「……えっと……澪先輩、どうかしたの?」

唯「ん~……ちょっと大富豪の罰ゲームでね。素直になってみて、って言ったらこうなった」

憂「……まさか、お酒が入ってるんじゃないよね?」

唯「私たちまだ高校生だよ~? さすがにソレはないよ~」

紬「ただちょっと、テンションには酔っちゃってるかもしれないわね~」

憂「はぁ……まぁでも、あんな澪先輩って、なんだか新鮮ですね」

唯「さっきはもっと新鮮だったんだよ」

憂「そうなの?」

唯「うん。後で話してあげるよ、憂」

憂「うん……楽しみにしてるね、お姉ちゃん」

律「あぁ~、もう……埒があかねぇ……」

澪「だったら律達が先に入って来たら良いだろ?」

律「そんなことしたら、お前が暴走を続けたままだろ?
 ちょっと風呂入って頭冷やして来い」

澪「私はいつも通りだ!」

律「今までの一部始終を録画して明日にでも見せてやりたいよ……良いからほら!
  さっさと風呂入って来いって!
  もうお泊りは決まってるし、入らせてもらえるんだから入って来い。
  そうじゃないとお前のそのキレイな髪、痛んじまうぞ」

澪「うぅ~……」

律「……はぁ……しゃあねぇなぁ……」

律「……なぁ澪、お前は梓と離れたくないんだよな?」

澪「ああ!」

律「よしっ! 良い返事だ! じゃあ梓と一緒なら風呂に入るな?」

澪「うん!」

梓「いやちょっ――」

律「じゃあ梓と一緒に入って来いっ!」

澪「よし梓! 行こうっ!」

梓「いやだからちょっと待ってください!」

律「あ~? なんだ梓? イヤなのか?」

梓「イヤ……じゃないですけど……でもこの会話の流れはおかしいでしょうっ!」

律「ん~? そうか?」

梓「そうです!」

律「澪が風呂に入りたくない
  →理由は?
  →梓と一緒にいたい
  →なら梓と一緒なら風呂に入るのか→
  もちろん!
  →じゃあ梓も一緒に入れば良い。
  ……うん、どこもおかしいところはないな」

梓「おかしいでしょどう考えても!
  特に私と一緒にいたいの後の結論が唐突過ぎます!」

律「気のせい気のせい」

梓「それに私自身にイヤかどうかも訊いてないじゃないですか!」

律「さっき訊いたらイヤじゃないって言ったじゃないか」

梓「ぐ……! でもそれとこれとは話が――」

律「ああ~もう……ほら、澪も梓に頼め」

澪「なあ梓、お願いだ。
  私と一緒にお風呂……入ってくれないか?」

梓「くっ……ひ、卑怯です律先輩!」

梓(こ、こんな頼み方されたら、断れない……!)///

澪「……でも……そうだな。梓がイヤだって言うんなら、無理強いは出来ないよな。ごめん」

梓「い、イヤじゃないんですよ!?」

澪「じゃあ良いのか!?」パァ~

梓「くっ……わ、分かりました! 仕方が無いから入ります! 入ってあげますっ!!」

澪「やったあああぁぁぁぁぁーーーーー!!!」

律(どんだけ喜んでんだよ、澪のやつ」

憂「……いつもの澪先輩じゃないね……」

唯「うん。いつもの澪ちゃんじゃないよ」

紬「お、女の子二人で! お、お風呂っ!」

唯「ムギちゃん、どうしたの?」

紬「ゆ、唯ちゃん! 私たちも二人で入ってみない!?」

唯「え? う、うん。私は別に良いけど……」

紬「やったっ」グッ

憂(小さくガッツポーズしてる……ムギ先輩もいつもとちょっと違う……のかな?)

澪「じゃあ唯、憂ちゃん。お風呂借りるな」

梓「お、お借りします……」///

唯「うん、ごゆっくり~」

憂「行ってらっしゃ~い」

律「はぁ……やっと行ってくれたか……っつか、梓は何を恥ずかしがってるんだ?
  風呂ぐらい、去年の合宿で一緒に入っただろうに」

紬「それは違うわよ! りっちゃん!」

律「うわムギ! って、え? 何が違うの?」

紬「合宿とか修学旅行とか、そういうのとはまた違うものがあるのよ! 友達の家でのお風呂って!」

律「そ、そうかぁ~……?」

唯「あ~……確かにそうかもねぇ~……。
  ムギちゃんの別荘のとか、修学旅行の時とかのお風呂って、
  湯船が広いから心も開放的になるじゃん。
  でも家のだとそうはいかないもんね~」

憂「言われてみたら、確かにそうかもしれないね」

律「ん~……私には分からんなぁ……」

唯「じゃありっちゃんも一緒に入る?」

律「あの二人とか?」

唯「ううん。私とムギちゃん」

律「いつの間にそんな約束してたんだよ……いや、でも私は止めとくわ」

唯「え~? なんで~?」

紬「そうよりっちゃん。家主の唯ちゃんが良いって言ってるんだから良いじゃない。
  絶対に楽しいわよ」

唯「それともやっぱり恥ずかしいの?」

律「そうじゃねぇよ。
  唯の家の風呂を見たことはねぇが、さすがに一般家庭の風呂に三人は窮屈すぎるだろ」

唯「そうかな~?」

憂「う~ん……確かに、うちのだと狭いかもしれないね」

唯「そっか~……」

律「そ。だから私は、最後に一人、ノンビリと入らせてもらうさ」

~~~~~~

脱衣所前

澪「……どうしてこうなった……」

梓「あ、正気に戻りましたか、澪先輩」

澪「ああ……ここに来るまでの間に、アレなんでこうなったんだろ?
  って冷静に考え出したら、今までの私がとんでもないことしてたんだって気が付いた」

梓「……まぁ、気にしないで下さい。アレが素直になった澪先輩なんですね」

澪「うわああぁぁぁぁぁ……」///

梓「ちょっ、そんなに落ち込むことは無いんじゃないですか?」

澪「だって……だって……ずっと梓の前で頑張ってきてたのに……。
  頼りになる先輩として頑張ってきたのに……」///

梓「ああ~……いえ、でも、私の中ではまだ頼りになる澪先輩のままですよ?」

澪「…………本当か?」

梓「ええ、本当です。
  むしろ、今までよりも可愛い澪先輩が見れて、余計に好きになりました」

澪「す、好きって……」///

梓「そう言って照れる澪先輩しか今まで知りませんでしたけど、
  抱きつき返して愛情を返してくれる澪先輩も知れて、私は嬉しいんですよ。
  だからほら、気にしないで下さい」

澪「そ、そうか……そうだな、うん。
  別にさっきまでの私が私じゃない、って訳でもないしな」

梓「そうですよ」

澪「……で、どうする? 梓? 本当に一緒にお風呂、入るのか?」

梓「えっと……」

澪「その……わ、私は……梓と一緒なら入りたいと……思ってるけど……」///

梓「澪先輩……。……うん、なら一緒に入りましょう」

澪「良いのか? その、イヤなら戻っても――」

梓「私だって、イヤだったら徹底抗戦してましたよ」

澪「それって……」

梓「さ、最後まで言わせないで下さい……恥ずかしいです」///

澪「あ、ああ……ごめん」///

澪「で、でも……さすがに一緒に脱衣所に入るのは……恥ずかしいかも……」///

梓「だったら、先に澪先輩が入ってください。後で私が入りますから」

澪「そ、そうか? じゃあそうしよう」

梓「はい」

~~~~~~

梓「し、失礼しま~す」

ガチャ

澪「ど、どうぞ……って言うのはおかしいか」

梓「いえ、そんな……」

澪「…………」

梓「…………」

澪「……その、入ってこないのか?」

梓「す、すいません、澪先輩……見られているとちょっと恥ずかしいので、後ろを向いてもらっていて良いですか?」///

澪「あ、ああ……そっか、そうだよな。ごめん。先輩なのに配慮が足りなくて」///

梓「い、いえ……」///

梓(中に掛かってるタオルなら前ぐらいは隠せるからコレを借りて、と……)///

澪「その、どうする? 一緒に浸かるか?」

梓「いえ、さすがに二人も入ったらお湯が溢れちゃいます。
  そしたら後の皆さんが困ることになるので」

澪「そ、そうか。確かにそうだな」

梓「ですので、私が先に髪と身体を洗わせてもらいます。そして後で交代しましょう」

澪「わ、分かった」

梓「はい」

澪「…………」

梓「…………」

澪梓*1

澪(う~ん……梓はタオルで前を隠してるからもう見ても良いって言ったけど……。
  でもなんか、こう、ジックリと見続けてたら失礼な気もするしなぁ……。
  でもだからって、どこを見てろって話になっちゃうんだけど……)

梓(うぅ~……恥ずかしい部分とかは隠せてるけど、
  でもやっぱり胸の大きさとかは隠せないからなぁ……。
  澪先輩に見られてるかと思うと、緊張しちゃう……)///

澪(……にしても梓、髪を下ろすと本当に私ソックリだよなぁ……。
  目つきとか身長が違うだけで、他はほんとんど一緒だ。
  ……でも、梓の方が私より可愛いよなぁ……。
  やっぱ身長が低かったりすると、そういう部分で可愛く見えるから羨ましい。
  ……私も梓みたいだったら良かったのに)

梓(澪先輩ってば胸も大きいし、背も高いし、カッコイイし今日みたいにメチャクチャ可愛い時もあるし……。
  そういうのが分かってるだけに、余計に緊張しちゃう……。
  ……というか、私自身自分の身体に自信が無いから、こんな緊張しちゃってるんだろうけど……。
  ……はぁ……私も澪先輩みたいに、身長が高くてプロポーション抜群な大人の女性になりたいな……)

澪(梓の髪ってキレイだなぁ……私も手入れは欠かしてないけど、
  梓の方が絶対キューティクルだ。
  ……洗うのとか大変なんだろうなぁ……。
  ……そうだ)

澪「なあ、梓」

梓「は、はい!?」

澪「その、梓の髪、洗わしてくれないか?」

梓「……はい?」

澪「いや、イヤなら良いんだ。ただちょっと、洗ってみたいなって思って」

梓「そ、その……澪先輩が、私の髪を?」

澪「やっぱり、ダメだよな?」

梓「いえ! いえそんな! そんなことないです! むしろお願いします!」

澪「そ、そうか!? それじゃあ早速――」

梓「…………」

澪「…………」

梓「……どうかしたんですか?」

澪「いや、その……梓、恥ずかしいから、背中を向けてくれないか?」///

梓「あ! す、すいません! 配慮の足りない後輩でっ!」///

澪「いや……良いんだ。うん、良いんだ」///

澪「やっぱり……梓の髪ってキレイだな……」

梓「そ、そうですか……? ありがとうございます……」///

澪「ああ……ずっと、こうして洗っていたいよ」

梓「そ、それはさすがに……」///

澪「ふふっ、そうだな。
  でも、梓の髪がキレイなのは本当で、ずっとこうして触っていたいのも本当だよ」

梓「そんな……澪先輩の方がキレイですよ」

澪「そうでもないさ。
  でも……そうだな。
  どうせだったら、もっと梓と一緒にいれば良かったな。
  そしたら梓の髪がこんなにキレイなのも、今よりもっと早く分かったかもしれないのに」

梓「そんな大げさな……」

澪「こんなことなら、去年の合宿でも洗ってやれば良かったよ。
  ……本当に……もっともっと、梓と一緒にいたら……」

梓「……澪先輩?」

澪「…………」

梓「あの――」


4
最終更新:2010年11月10日 21:37

*1 妙に気まずい……