唯「……え?」
律「いや、だからさ……もうこうやって私達と会わないほうがいいんだよ……」
唯「え……ど、どうして!?」
澪「今やお前はトップアイドルだろ?こうやって友達同士でお茶なんてもうできないんだよ」
律「ほら、こうしてる間にも回りでお前に気づいてる奴がひそひそ話してるぞ」
澪「だからな……私達当分会わないようにしよう……」
唯「そ、そんな…………」
翌日!事務所!
唯「もうやだよ!わたし辞めたい!」
憂「で、でもお姉ちゃん……せっかくファンの皆が応援してくれてるんだよ?」
唯「そのせいで友達無くすなんて耐えられないよ!もう絶対やめる!」
憂「事務所との契約があるから勝手に引退すると訴えられちゃうよ!?」
唯「うっ…………じゃ、じゃあ私が飽きられればいいんでしょ!?」
憂「え?」
唯「いいもん!私が引退しなくても人気がなくなっちゃえばいいんだよ!見てなよ!」
憂「お姉ちゃん!」
こうして
平沢唯『最低のアイドルを目指す』作戦がスタートした。
カフェ!
唯「(……とはいった物の……どうすれば人気が無くなるんだろう……)」
客1「……ヒソヒソ」
客2「……ヒソヒソ」
唯「(……自分で言うのもなんだけど、上り詰めるところまで来てしまったような……)」
客1「……ヒソヒソ」
客2「……ヒソヒソ」
唯「(……と、とにかく、なんとしてでも引退しなきゃね!)
客1「あ、あのー……」
唯「……え?」
客2「もしかして、yuiさんですか……?」
唯「え……は、はい……そうですけど」
客1,2「『きゃああああぁああ!やっぱり!』」
客1「帽子とメガネしてるけど絶対そうだと思いました!オーラが出てますもん!」
客2「わ、わたし絶対自慢する!すごいよ!あのyuiさんだよ!?……あ!サインもらっていいですか!?」
唯「え……あ、サイン?……あ、はいちょっと待っ……!」
唯「(……こうやってサインとかばっかしてるから人気が上がっちゃうんじゃ……)
客2「すごいすごい!サインだよサイン!」
客1「私も貰おうっと!」
唯「(………そうだよ……なら逆に冷たく接するようにしていけば人気は落ちるんじゃないのかな……よし。それなら……)
客2「じゃあおねがいしますっ!」
唯「………………」
客2「…………あのー?yuiさん?」
唯「…………ってる?」
客1,2「『……え?』」
唯「調子に乗ってるのかな?って聞いてるんだよ」
客1「え、え、え?あ、あのーyuiさん?」
唯「オフの日に勝手に話しかけてきてさ、騒いで挙句の果てにサインまで要求するなんてよくもまぁそこまで厚かましくなれるものだね」
客2「えっ!あ、ご、ごめんなさい……わたし……」
唯「別に謝るぐらいなら最初から話しかけないで欲しいよ。貴重な休日が台無しになったよ。超、超、ちょー忙しい中取れたオフだったのにね」
客1,2「…………」
唯「大体さ、サインなんてするわけないじゃん。初対面の人に。私のサインを何だと思ってるのかな?親しい人にしか絶対書かないんだよ?それをね……」
30分後!
唯「大体きみ達みたいな芋みたいな服装の人に話しかけられるのだって超恥ずかしいんだから……ってもうこんな時間?」
客1,2「…………」
唯「じゃあね。私を見かけても二度と話しかけないでよね」
客1,2「は、はい……」
唯「(……ちょっとやりすぎちゃったかな…………泣きそうだったよ……酷い事しちゃったかも……)」
事務所
憂「あ、お姉ちゃん!お帰りなさい!」
唯「ただいま」
憂「あの……お姉ちゃん?」
唯「なに?」
憂「前言ってたあれ……嘘だよね?……辞めるとか」
唯「………本当だよ?といっても私から辞めるつもりはないけどねー」
憂「え……?ど、どういうこと?」
唯「来週ぐらいになればわかるんじゃないかなー」
1週間後!
唯「(……あれから声をかけてきたファンに辛く当たってきたけど……効果があったのかどうか……)
定員「いらっしゃいませー」
唯「(今日はフライデーの発売日……どうかバッシングされていますように……!)」
【衝撃!?あのyuiがファンに対して!?】
唯「(…………や、やった…!でかでかと私の記事が表紙に……!これは絶対叩かれてるよ!)
ペラッ
唯「(…………っ!)」
【昨今の常識の無い悪質なファンに1時間も時間を割いて説教するyui。
その姿は近年ファンに媚びる事しか考えていないアーティスト達には見られなかった芸能人と呼ばれる者の誠意と誇りを感じた。
自分への批判は恐れずにただただ信念に沿って行動するyuiは、やはり数年、いや数十年に一人の真のアーティストたる人物なのではないか?】
唯「(…………な、なにこれ…………バッシングされると思ったのに……すごい褒められてる……)」
匿名『私がyuiさんに怒られてる時、yuiさんすごい悲しそうな顔してんたんです……。まるで自分が苦しんでるかのように……』
【yuiは他にも何か言ってた?】
匿名『怒るだけじゃなくて服装とかお勧めのブランド教えてもらいました!こっちの方がいいよって!やっぱりyuiさんはすごい優しいんです!』
唯「(……い、言ってない!そんな事言ってないよ!……いや、確かに芋って言ったけど……)」
【そんなわけで今週のアイドル特集でyuiがダントツの1位を取るのはもはや何の疑問もないだろう!】
事務所!
憂「お姉ちゃんすごいよ!フライデー効果がすごすぎて仕事量が増えすぎだよ!」
唯「あぁそう……よかったね……」
憂「うん!いまからスケジュール組んで半年後まで仕事でいっぱいだよ!」
休日の繁華街!
唯「(…………何が悪かったんだろうか……やっぱりファンに対してじゃ効果が薄いのかも……)」スタスタ
定員「さぁさぁ!今日は1ヶ月に一回の爆裂デーだよ!」
唯「(……もっとこう……!インパクトのある行為をしなくちゃ人気なんて落ちないよね……)」
定員「こんなに出すのはうちだけ!スロットもじゃんじゃんでるよ!」
唯「(…………うるさいなぁ………もうパチンコなんて誰がする………………そうだっ!)」
4時間後!
定員「さぁさぁ!ジャグラー215番のお客さんが7箱目に突入だぁぁあ!」
唯「(…………なんかよくわからないけど……当たってるなら好都合だよ……っ!ここで帽子を取って……)」スッ
客1「…………あ、あれ!?あそこで打ってる奴……あれyuiじゃねぇ!?」
客2「はぁ?何言ってんだよ。yuiがスロットなんてやるわけ…………ってyuiだ!」
客3「まじだ……yuiがスロット打ってる……」
客4,5,6「ざわ……ざわ……」
唯「(…………ここで、駄目押ししとくよ……)
唯「……あああぁぁ!ちょーたのしーい!やっぱりスロットさいこーだよ!じゃんじゃんばりばりじゃんじゃんばりばり!なんちて!」
客1「あのyuiがじゃんじゃんばりばり……」
客2「し、信じられねぇ……」
唯「うっひょひょーい!」
1週間後!
唯「(あれから、yuiが打ちに来る店って看板に書かれるまで足を運んだけど……効果はあったよね……)
定員「いらっしゃいませー」
唯「(……よしフライデー発売してる…………えっと……)」
【衝撃!?休日にスロットで時間を潰すyui!?】
唯「(……や、やった!こんどこそ!)」
【スロットで爆勝ちを収めるyui!その姿はなんとも堂々としたもの!我々が尾行をした期間だけでも80万以上は稼いでいる計算だ!
打っている最中yuiの顔はさながら仕事終わりに一杯引っ掛けている親父そのもの!なんとも19歳とは思えない!】
唯「(……よしよし!いっぱい叩かれてる!……これなら)」
事務所!
憂「お姉ちゃん!ふ、フライデーに載せられちゃったよ!」
唯「あぁ知ってるよ?…………で?」
憂「……でって言われても……お姉ちゃん悲しくないの!?」
唯「悲しいって……なんで?私別に19歳だし、法的にもなんら違反してないよ?……それに私の趣味について文句言ってもらいたくないよ」
憂「そ、それはそうだけど…………うん……お姉ちゃんが良いなら……私も文句はないよ……」
唯「ならこれからもじゃんじゃんばりばり行くからよろしくね」
憂「……う、うん」
一週間後!事務所!
憂「お、お姉ちゃん!」
唯「あ、え?なに憂?」
憂「ちょっとテレビ見て!ほら!」
唯「テレビ……?」
【いま若者の間で史上空前のスロットブーム!?来場数は先週に比べて約50倍!】
【いまやどこの店も満員状態で台に座るまでの待ち時間まで表す騒ぎ!このブームの火付け役はもちろん我らがアイドルyuiだ!】
唯「…………は?」
男『いやぁやっぱりyuiが打ってるって聞いちゃぁ黙っちゃいられないでしょ!』
女『なんかいままで怖いイメージしかなかったけどぉ、yuiが打ってるってきいてぇ、じゃあわたしもぉ?みたいな?』
男『yuiちゃんがスロット好きなんて超意外だったけど、逆に新鮮だよね!』
【今までの怖いイメージ、暗いイメージなどを払拭するかのごとくyuiの働きは、低迷を辿るこの業界ではまさにジャンヌダルクではないだろうか!?】
唯「……ちょ、ちょっと待ってよ……なんでこうなるの!?私はただ…………」
憂「す、すごいよ!すごい!さっきから電話が鳴り捲りでスロットのCMだけで50件以上オファーが着てるよ!?」
唯「ちょっと!なんで!?私知らないよ!ぜんっぜんスロット何か好きじゃないし!全部断ってよ!」
憂「えっ!?断っちゃうの!?何で!?」
唯「いいから!断って!もぉぉおぉぉぉおどうしてこうなるのぉぉおお!?」
最終更新:2010年11月10日 22:57