#1
4月、今年から高校生になりました。
純「憂はお弁当作ってるんだっけ?」
憂「うん、そうだよ」
純「毎朝大変でしょ?私なんて絶対無理だよ」
憂「そう?結構楽しいよ」
純「へぇ~…まぁ憂はそういうの好きそうだもんね」
憂「えへへ」
純「あーあ、私もう購買のパンなんて飽きちゃった。給食が恋しい」
純「今思うとさ、給食って毎回違うメニューだから飽きないじゃん。しかもたまに美味しいのがあるし」
憂「なんかつい最近のことなのに懐かしいね」
純「高校も給食だったらよかったのに!」
憂(お姉ちゃんは給食と私のお弁当どっちが好きかな…)
純「カレーが食べたい…」
憂「純ちゃんは自分でお弁当作らないの?」
純「だから私には無理だよ。毎朝早く起きて作るなんて」
憂「一回やってみればいいんじゃない?慣れれば続くかもしれないし」
純「…こう見えてもさ、中学の時はお弁当生活に憧れてたんだよ」
憂「え?」
純「朝早く起きて、自分の好きなおかずばっかり入ったお弁当作ったりして」
純「カレーとか」
憂「カレーはお弁当には難しいんじゃないかな…」
純「それでね、お昼休みにはみんなでワイワイしながら食べて…」
純「『あ、それ美味しそう。私のと交換しようよ』『うん、いいよ』」
純「なんておかず交換して…」
純「いつの間にか料理も上達して、家庭科の成績も上がったりして充実した学校生活を送りたかったの!」
純「……送りたかったんだけど」
憂「だけど?」
純「私には無理だった。体が動こうとしない」
憂「あはは…」
純「なんか理想と違うんだよね~高校生活。もっと大人になってると思ったんだけど…」
憂「制服もぶかぶかだしね。私もまだまだ子供かな」
純「いや…憂は着実に成長してるよ」
憂「え?」
純(胸が)
純「コホン…とりあえず、立派な高校生になるために部活を頑張ってみようと思う」
憂「ジャズ研だっけ?」
純「うん。先輩みたいにかっこよくなりたいな~って…」
純「あっ、ごめんね軽音部」
憂「ううん、純ちゃんが自分で決めたならしょうがないよ」
憂「それになんとか新入部員も入ったってお姉ちゃん喜んでたし」
純「その新入部員って確か…」
梓「……」
純「えっと確か…」
純「そうそう、それそれ!」
憂「かわいいよね~」
純「なんか高校生に見えないよね」
憂「ギターがすごく上手なんだって。お姉ちゃんが言ってた」
純「へ~」
憂「あと猫耳が似合うらしいよ」
純「猫耳……なぜ猫耳?」
憂「え?」
梓(なんか視線を感じる…)
純「なんか今まで絡んだことないタイプかも」
憂「声かけてみよっか」
純「ん……そだね」
純(悪い子じゃなさそうだし)
憂「あの~…梓ちゃん」
梓「あっ…えっと、憂ちゃんだよね?唯先輩の妹の」
憂「うん、お姉ちゃんから梓ちゃんのこと聞いてるよ。ギター上手いんだってね」
梓「あぁ…そんな言われるほどでも」
憂「でもお姉ちゃんすごい褒めてたよ?」
梓「そ、そう?」
憂「うん!」
憂「梓ちゃんはいつからギターやってるの?」
梓「小学校の頃から…親の影響で」
憂「わぁ、すごいね!それじゃあ上手いのも納得できる」
梓「そんな…私なんてまだまだだよ」
憂「ふふっ、じゃあ今度梓ちゃんの演奏聴かせてね」
梓「う、うん…」
梓(なんか唯先輩と違ってしっかりしてるっぽい…)
純「ねぇ、普段どんな音楽聴いてるの?」
梓「えっ…」
純「憂と中学が一緒だったんだ」
梓「そうなんだ…」
純「ちなみにジャズ研」
梓「ジャズ…ジャズだったらよく聴いてるよ。うちにレコードあるし」
純「へ~いいな~」
純「私はジャズ高校から…」
梓「純ちゃんの好きなバンドは?」
純「うん?」
梓「好きなバンド。ジャズでもいろいろあるでしょ?」
純「う、うん…」
梓「どんなバンドが好き?」
純「え…えっとねぇ…」
純(ヤバい…そういうのはまだよく知らないんだよね…)
純(なんて言える空気じゃないかも…)
梓(やっと音楽を語れる友達ができるかも)ワクワク
純「あー……」
梓「純ちゃん?」
純「……そうだ、梓ちゃんは中学のころどんな給食が好きだった?」
梓「え?」
純「さっき憂と中学の話をしててさ、給食のことで盛り上がってたんだよね~」
純(これでなんとか誤魔化したい)
梓「給食…」
梓(なんでいきなり給食の話題……音楽は?)
純「給食美味しかったよね」
梓「えっと…」
梓(でも…こういう話には乗った方がいいのかな。高校デビューだし、悪い印象は与えたくないし…)
梓「……うん、給食美味しかったよね」
純「だよね!」
純(よし、なんとか流れが変わった…はず)
梓(これでいいのかな…)
純「私カレーが好きだったんだ」
梓「うん」
純「スパゲッティも美味しかったよね」
梓「揚げパンとかも」
純「でもあれ大きいから食べてる途中で飽きちゃうよね」
梓「え、そう?」
純「あれ?飽きない?」
梓「うん、牛乳と一緒なら」
純「あぁ…牛乳と一緒ならね」
梓「うん」
純「……」
梓「……」
梓(あれっ…なんか変なこと言った?)
純(話してたらなんか揚げパン食べたくなってきたなぁ…)
純(お腹すいてきたし…)
純「……」
梓「……」
梓(気まずい…)
純(お腹すいた…)
純「そういえば、憂は料理がすっごく上手いんだよね」
梓「え?」
憂「そ、そうでもないよ~」
純「そんなことないって、お弁当超おいしいから」
梓「へぇ…」
純「家では家事全般やってるんだよね。掃除とか洗濯とか」
憂「そんな…特別なことでもないよ」
梓(やっぱりしっかりしてる!)
純「そうだ、せっかくだしお昼三人で食べようよ」
梓「え…」
憂「そうだね」
梓「いいの…?」
純「もちろん、私班で食べるんじゃなくて好きな友達と集まって食べるのが憧れだったんだ~」
梓(友達…)
憂「梓ちゃんも一緒に食べようよ、ね?」
梓「えっと……う、うん!」
純「じゃあ決まりだね」
梓(友達か…なんだか高校生活うまくいきそう)
お昼
純「ふぅ、購買でなんとか買えた」
憂「お疲れさま」
純「やっぱり2、3年は手が早いよ。人気の商品があっという間になくなっちゃうんだもん」
梓(購買かぁ…そういえば行ったことないや)
梓(今度行ってみようかな…)
憂「梓ちゃんはお弁当なんだね」
梓「うん」
純「お母さんが作ったの?」
梓「ううん、自分で作ってみた」
純「え…マジ?」
梓「毎日じゃないけどね。でも、できる時は自分でやろうかなぁって思って」
梓「もう高校生だし」
純「へ、へぇ…そうなんだ」
純(私の当初の目標を実行してる!?)
梓「でも慣れてないから失敗しちゃって…」
憂「そんなことないよ、美味しそうだって」
梓「えー、憂ちゃんの方が美味しそうだよ」
憂「そう?なら玉子焼き交換してみる?」
梓「あ、うん。食べてみたい」
純「……」
純(なに…このおいてけぼり感は…)
憂「うん、充分おいしいよ」
梓「いや…憂ちゃんの方が圧倒的に美味しいんだけど…」
梓「やっぱり憂ちゃんってすごいんだね」
憂「玉子焼きぐらいでそんな…ねぇ純ちゃん」
純「……」
憂「純ちゃん?」
純「私のドーナッツも交換してー!!」
梓「な、えっ!?」
純「はい、チョコドーナッツ」
梓「あ、ありがとう…」
純「私だって明日からお弁当作ってくるもん!高校生だし」
梓「あ…うん、そうなんだ…」
梓「?」
憂「ふふっ、頑張ってね」
純(よーし…二人をあっと驚かすお弁当作ってやるんだから!)
翌日
純「やったー!今日は購買でいろいろ買えたよ!」
梓「あれ…お弁当は?」
純「え?あぁ、あれね」
純「やっぱ私には無理。起きれないし作れない」
梓「……」
純「それより購買でいかに人気のパンを買えるか挑戦してみようと思うんだ。これも結構楽しいし」
純「目指せゴールデンチョコパン!」ビシッ
純「だからお弁当はいいや。あははっ」
梓「……」
梓(適当だこの人)
#1
おわり
最終更新:2010年11月13日 00:00