#6
純「あ~つ~い~」
梓「夏だもん…」
純「これは地球温暖化だよ…絶対」
梓「地球温暖化ってなんだか知ってるの?」
純「あれでしょ、クーラーとか使うと空気が悪くなって暑くなるっていう」
梓「適当…」
憂「じゃあ世界中のクーラーがなくなればいいのかな?」
純「それはダメ!溶けちゃうから!!」
梓「溶けるの?純って」
純「あ゛~づ~い゛~」
梓「今日は体育で水泳があるんだからいいじゃん」
憂「学校のプールって初めて入るよね」
梓「うん、なんか楽しみ」
憂「お姉ちゃんも今日楽しみにしてたよ」
純「あーつーいーっ」
梓「もう、そんなこと言ってると余計に暑くなるよ?」
純「だってあついんだもん」
純「夏なんてなくなればいいのに」
梓「純って冬だと逆のこと言ってそうだよね」
憂「夏だもんねぇ」
梓「もうすぐ夏休みかぁ…」
純「二人はどっか行く予定あるの?」
憂「う~ん…特にないよ」
梓「私も。今年は家でどこかに行ったりしないからつまんないよ」
梓「純は?」
純「田舎に行く」
憂「いいな~」
純「田舎だから何もないよ」
梓「でも田舎ってなんかいいじゃん。ゆっくりできそうで」
純「あ~つ~い~」
梓「またそれ…」
憂「い、い…イカ」
梓「えっ、しりとり?」
憂「梓ちゃんの番だよ」
梓「え~っと…か、か…」
梓「カラス!」
純「あつい」
梓「しりとりは!?」
純「あつ゛い…」
一時間目
英語
純「あつい…」
二時間目
数学
純「あつ…」
三時間目
古文
純「……」
四時間目
体育
純「プールよ!プール!!」
梓「元気だ…」
着替え中
純「…憂ってスタイルいいよね」
憂「え…えっ!?」
純「胸あるし」
憂「そ、そんな風に見ちゃヤダよ」
純「私もまだ発展途上…のはず」
純「梓は…」
梓「な、なに?」
純「大丈夫、それはそれでかわいいよ!」
梓「いいよ…もうほとんど諦めてるから…」
純「プールだ!」バシャバシャ
憂「水温もちょうどいいね」
純「高校生だしバタフライも泳げるようになるかな」
純「梓はねこかきだよね」
梓「ねこかきってなに?」
純「犬かきみたいな」
梓「猫はおよげないし…」
憂「ねこかきってかわいいかも」
純「はぁ~…水泳の時間は癒される」
先生「じゃーまずは25mを八本ねー」
純「え?」
純「ゼェーッ…ハァーッ…」
憂「じゅ、純ちゃん大丈夫?」
純「高校のプールなめてた…」
梓「私もさすがにつかれた。憂は余裕そうだね」
憂「えへへ」
純「はぁ…はぁ…」
梓「唯先輩も同じくらい体力あるの?」
憂「うーん…ないかな」
梓「だろうね」
純「つかれた…」
先生「次、平泳ぎ八本」
純「うぇっ!?」
梓「仕方ないよ、純」
純「もう水泳やりたくない…」
梓「さっきまで喜んでたのに」
お昼
純「この繰り返される日常にいい加減うんざりしてきた」
梓「……」
憂「……」
純「つかれたの」
梓「水泳で?」
純「うん。いや、毎日に!」
憂「毎日?」
純「だって毎日同じことばかりじゃん」
純「授業受けて、お昼食べて、部活して…」
純「なんにも変わらない日常」
純「なんか退屈!」
純「こう…刺激がほしいの!」
憂「刺激かぁ」
純「日常がガラッと変わる出来事でも起きないかなぁ」
梓「……」
梓(軽音部ののんびりした日常からは脱却したいかも)
純「どうしたら起きるかな?」
純「まさかこのクラスにすでに宇宙人や未来人がいたりして…」
憂「それはさすがにないんじゃ」
純「だよねぇ」
純「じゃあやっぱり憂が超人説が正しいのかな」
憂「ちょ、超人じゃないよ?」
梓「……」
梓「…やっぱり、毎日を変えるにはまず自分を変えるしかないのかもしれないんだよ!」
純「お、梓がそれらしいことを言った」
純「確かに一理あるかも…」
梓「私がしっかりしなきゃダメなんだ!!」
梓(でなきゃお茶ばっか飲んでる軽音部は潰れちゃう!)
梓「今日こそは…必ず充実した練習を!!」
純「梓が燃えてる…なぜかは知らないけど」
憂「軽音部のことかな?」
純「梓がしっかりしないとダメになるって…どんだけ」
憂「あはは…」
憂「私も今日はいつもと違ったことしようかな」
純「なにするの?」
憂「う~ん…夕飯のおかずを豪華にしてみる」
憂「今日は肉じゃがの予定だったんだけど、変更して…」
憂「サーモンのカルパッチョとカボチャのスープとサラダと…」
純「へぇ~カルパッチョかぁ。へぇ~…」
純(カルパッチョ?)
憂「お姉ちゃん喜ぶかな~」
純「けっきょく憂はお姉さんのために頑張るわけね」
憂「えへー」
梓(なら私は唯先輩に厳しくしよう)
純「私はどうしよう…なにしよっかな」
純「……」
純「なにも思いつかない」
憂「なんでもいいんじゃない?」
純「なんでもってのが究極的に難しいんだよねぇ…」
梓「ジャズ研をがんばるとか」
純「いつもがんばってます!」
憂「勉強をがんばるは?」
純「い、一応そこそこやってるよ」
梓「ドーナツを食べない」
純「それは無理」
憂「髪型を変える」
純「それも無理」
憂「動かない」
梓「喋らない」
純「全部やらないと私じゃなくなる!!」
純「もういいもん!一人で考えるから!」
梓「で、どうするの?」
純「……」
純「大人の女性になろう」
憂「大人って?」
純「それは…大人っていったら大人だよ」
純「大人…大人…」
純「……」
純「大人ってなに?」
梓「さぁ?」
キーンコーンカーンコーン
純「あっ、昼休み終わっちゃった…」
放課後
ジャズ研
ボン♪ボボン♪
先輩「今日は気合い入ってるね」
純「はい!」
先輩「どうしたの?急に熱くなって」
純「いやぁ、なんか自分を変えてみたくって…とりあえずいつもの二倍がんばってみようかと」
先輩「ふぅん…自分を変えるねぇ」
純「あれ?…なんかおかしいですか?」
先輩「ううん、別に」
純「でもやってはみてるんですけど…イマイチ変わった実感ないんですよね」
先輩「そりゃそうでしょ、急に変わる人なんていないんだから」
先輩「いきなり突拍子もないことしたって、失敗するだけよ」
純「はぁ…」
先輩「ま、無理しない程度にね」
先輩「二歩進んで一歩退がるぐらいがちょうどいいと思うよ」
純「先輩もそういう経験があるんですか?」
先輩「私?私は…」
先輩「二歩進んで…進んで…」
先輩「退がって…退がって…退がって…」
先輩「ようやく進んだと思ったらまた退がって…」
先輩「ふっ…ふふふ……」
純(聞かない方がよかったのかも…)
先輩「どうせ私なんか…」
純「な、何があったか知りませんけど元気出してください先輩!」
鈴木家
純(先輩も色々大変なんだろうな~)
純(二歩進んで一歩退がる、か)
純「う~ん…」
純母「純、夕飯作る間にお風呂入っちゃいなさい」
純「はーい」
純「……」
純「ねぇお母さん」
純母「なに?」
純「今日のご飯はカルパッチョ作ってよ」
純母「カルパッチョ?なにそれ?」
純「…知らない」
純母「は?」
純「ふぅ、食べた食べた」
純「しかしお母さんがカルパッチョを知らないとは…」
純「新しいものを食べれば新しい自分になれると思ったんだけどなぁ」
純「う~ん……」
純「そうだ、さっき買った本でも読もうかな」
純「読書は教養を高めるし」ガサゴソ
純「あった、これこれ…」
純「!?」
純「こ、これ…」
純「前に買ったやつと同じじゃん!?」
純「しかも梓にネタバレされたやつだし!!」
純「また1500円無駄にしちゃったー!!」ガクッ
純「はぁ…」
純「ねぇ、あの頃の私…なんで買う前に気づかないのよ…」
純「……」
純「ベースでも弾こう…」
純「あ~ぁ…お金ムダにしちゃった…」ブツブツ
純「あっ、ベースの弦張り替えなきゃいけないんだった」
純「え~っと弦…弦…」
純「あれっ……ない…」
純「……」
純「本なんかより弦買いなさいよ…」
純「はぁ…今日は変なことに神経がまわってうまくいかないなぁ…」
純「……」
純「宿題…」
純「あっ!?ノート教室に忘れた!!」
純「うわ~んっ!!もうやだーっ!!」
翌日
梓「はぁ…結局昨日も満足いく練習ができなかった」
梓「私はマジメにやろうとしてるのに…」
純「……」
梓「あ、おはよう純。昨日はどうだった?」
梓「私は全然だめ。うまくいかないよ」
純「……あつい」
梓「もう、またそれ?」
梓「昨日も言ってたじゃん」
純「だって今日もあついんだもん」
#6
おわり
最終更新:2010年11月13日 00:09