#7
平沢家
こんにちは、
平沢憂です。
今日は純ちゃんと一緒に夏休みの宿題をやっています。
お姉ちゃんは軽音部の合宿で家にいません。
憂「純ちゃん、麦茶持ってきたよ」
純「ん…」
憂「ちょっと休憩しよっか」
純「はぁーっ、疲れた」
純「あー、せっかくの夏休みなのに宿題だなんて」
憂「でも早めに終わらせれば後が楽になるよ」
純「うん、憂がいてくれてよかった」
純「私一人じゃサボってたかもしれないし」
憂「……」ソワソワ
純「…どうしたの?」
憂「え?」
純「なんか落ち着きがないよ」
憂「えっと~…」
純「ははーん、もしかしてお姉さんのことが心配?」
憂「心配ってほどじゃ…」
憂「ただ怪我とかしてないかなとか、なにか問題が起きてないかなとか思ってて…」
純「それって心配してんじゃん」
憂「お姉ちゃん大丈夫かな…」
純「心配性だねぇ…あ、テレビつけていい?」
憂「うん、いいよ」
TV『今朝、○○県××市で女子高生5人と思われる死体が近隣住人により発見され…』
憂「えっ…」
純「あ…」
TV『○○警察署では身元の確認を…』
憂「……」
純「……」
憂「……」
純「け、軽音部って四人だったよね…」
憂「梓ちゃんが入ったから…5人だよ」
純「だよね…」
憂「……」
純「……」
憂「……」
純「えっと~…」
憂「そうだ!で、電話すればいいんだ!!」
純「ああそっか!!」
Prrrr、Prrrr…
ピッ
憂「もしもしお姉ちゃん!?」
憂「えっ…あの…」
憂「お姉ちゃんは…」
憂「……」
憂「はい…はい…」
憂「そうですか…」
憂「……」
憂「はい、分かりました」
憂「ではよろしくお願いします…」
ピッ
憂「……」ポロポロ
純「な、なに?どうしたの!?」
憂「よかった~」ポロポロ
純「へ?」
憂「あのね…グズッ…電話したら出たのが律さんでね」
憂「お姉ちゃん今お昼ご飯食べた後でお昼寝して…グズッ…これからみんなで…」
純「ちょっ、落ち着いてよ憂!結局無事だったの?」
憂「うん!元気だって!」
純「なんだ…驚かさないでよ」
憂「ごめんね」
純「まぁ何事もなくてよかったじゃん」
憂「うん、本当によかった」
純「はぁ…気が抜けたらお腹すいちゃったよ」
憂「私たちもご飯食べよっか。昨日の余ったシチューがあるの」
純「ぜひ!」
憂「ちょっと待っててね」
純「…ん?一人だったのに余るほどシチュー作ったの?」
憂「えへへ、ついうっかりしてて」
モグモグ
純「うんっ!おいしい!!」
純「もしお腹いっぱいでもこれはおいしいかも」
憂「…」ニコニコ
純「…なんでそんなに笑顔?」
憂「なんでもないよ。気にしないで」
純「?」
純「ごちそうさまでした」
憂「お粗末様でした」
純「ふぅ…少し食べ過ぎたかも」
憂「純ちゃんがいっぱい食べてくれたから、お鍋も空っぽになったよ」
純「あぁ~…このまま寝ちゃいたい」
憂「体に悪いよ。宿題の続きしよ?」
純「んーっ!……はぁ」
純「勉強したくない…」
純「そういえば夏休みに入ってから梓に会ってないな~」
憂「こんど三人でどこか遊びに行く?」
純「う~ん…今年はジャズ研も忙しいし、お盆には田舎も行くし…」
憂「そっか、残念」
純「まぁどうせ夏休み明けには会えるよ」
憂「みんな早く学校で会えるといいね」
純「でも夏休みは終わってほしくないんだよね~」
憂「あはは」
勉強中
純「うーん…」
憂「……」
純「ねぇ憂、ここ教えて」
憂「えっと、そこはね」
憂「ここをこうして…」
純「なるほど!ありがとう!」
憂「うんっ」
純「……」
憂「……」
純「う~ん…」
憂「……」
純「ねぇ憂」
憂「なに?」
純「休もっか」
憂「まだ10分しかやってないよ…」
TV『それでは問題です』
純「あっ、クイズ番組やってる」
純「これちょっとやってみようよ」
憂「もう、純ちゃんったら」
TV『次の空白に入る文字はなんでしょう』
TV『ioaioeoii□uo…』
純「えっ…う~ん」
純「なにこれ…」
憂「……uかな」
純「え?」
憂「自信ないけどたぶん…いろはの母音を並べたんだと思う」
純「いろは?いろはって確か…」
純「いろはにほへと…と…と…」
TV『正解は‘u’です!』
純「当たってる!?」
憂「やった!」
TV『問題です』
TV『ギリシア古典と密儀宗教のミトラス教に心酔し、改宗して異教復興を企てたが失敗した…』
TV『教会から背教者と呼ばれたローマ皇帝は誰でしょう』
純「ロ、ローマ皇帝??」
憂「えっとぉ…」
純「なんでローマの問題を日本で出すのよ~!」
憂「でも世界史でやったよね?」
純「やったっけ?」
憂「うん」
純「えぇ~…なんだっけ…」
純「こういうのって名前のあとに3世とか4世とかつくよね」
純「ボンジュール3世かな」
憂「そ、そんな名前の人はいないんじゃ」
純「じゃあローマっぽい名前…」
純「ローマってフランスだっけ?」
憂「イタリアだよ」
純「イタリア…ピザ…」
純「ピザーラ3世!」
TV『残り30秒』
純「うわっ!ふざけてる場合じゃない!!」
純「えっとえっと…」
純「キバーラ3世?キバットバット3世??」
憂「3世にこだわらなくても……あっ、分かった!」
憂「ユリアヌスだ!」
純「ゆ、百合アヌス??」
純「アヌスってなに?」
TV『正解はユリアヌスです』
憂「やったー!」
純「本当だ…」
純「こんな変な名前分かるわけないよ…」
憂「えへへー、2問連続正解しちゃった」
純「クイズ番組はもういいや…分かんないし」
憂「じゃあ勉強しよっか」
純「えー…」
憂「勉強すればクイズも分かるかもしれないよ?」
純「うっ…なんか憂に乗せられようとしている…」
憂「えへへ」
純「……はぁ」
純「勉強すっかー」
憂「勉強すっぞー」
純「けっこう続かないね、やりたくないことは」
憂「純ちゃんは今なにやりたい?」
純「そうだねぇ…あっ!」
純「今年まだ海に行ってない!!」
憂「海かぁ」
純「この夏は無理かな…まぁいいけど。水着買ってないし」
純「あ~それと冷やし中華も食べてないや。夏なのに」
憂「冷やし中華かぁ」
純「そういう憂はなにしたいの?」
憂「私はね…みんなと一緒に過ごせたらいいかな」
純「みんな?」
憂「うん、お姉ちゃんと一日中まったりしたり」
憂「梓ちゃんや純ちゃんと遊んだり」
憂「誰かと一緒になにかを楽しめたらいいな~」
純「ふーん…なんかいつもと変わんない感じだね」
憂「でもそれが楽しいから」
純「そっか…まぁそうかもね」
純「はぁ…ようやく終わった」
憂「けっこう進んだ~」
純「んー…ちょっと遅くなっちゃったね」
憂「あっ、夕飯作らないと!」
純「もう?」
憂「今日お姉ちゃんが帰ってくるからいっぱい作ってあげるんだ~」
純「姉好きだね~憂は」
憂「だってお姉ちゃんに会えるんだもん。嬉しいに決まってるよ!」
純「はいはい」
純「あーぁ、私も憂みたいな妹が欲しいな」
純「憂といれば落ち着くし、楽しそうだもん」
憂「純ちゃんがお姉ちゃんってちょっと変かも」
純「じゃあ私が妹で憂がお姉ちゃん」
憂「私がお姉ちゃんか…それはおもしろそうかも」
純「そして梓が三女」
憂「梓ちゃんが三女…ぴったり!」
純「ね、末っ子って感じするよね」
TV『ニュースです。今朝死体で発見された女子高生5人の身元が判明しました』
憂「あっ…」
TV『5人は○○高校の…』
純「……」
憂「……」
純「物騒だね」
憂「うん…」
憂「お姉ちゃんたちは無事だったけど、誰かが亡くなったことにはかわりないんだよね」
憂「せっかくの夏休みなのに…」
純「……」
純「と、とりあえず私は気をつけないと!」
憂「…そうだね」
憂「さてと、夕飯作らなきゃ」
憂「よかったら純ちゃんも食べていく?」
純「…いや、いいよ」
純「二人で楽しみなって」
憂「遠慮しなくてもいいのに」
純「いいっていいって」
純「それにしても憂は頑張るね~、勉強終わったばかりなのに」
憂「お姉ちゃんがいるから頑張れるんだよ」
憂「もしお姉ちゃんがいなかったら、今の私はいないかも」
純「…そういうもん?」
憂「だって誰かのために何かしてあげれるのって、嬉しいでしょ?」
純「あはは…まだ私にはよく分かんないや」
憂「純ちゃんにもできるよ、そういう人」
純「そうかな?」
憂「そのうちね」
純「そういうもんか」
憂「うん、そういうもの」
純「ふーん……じゃ、そろそろ帰るね」
憂「またね」
純「うん、また…暇なときにね」
純「誰かのためにか…」
純「憂は優しいなぁ」
純「……」
純「そういえば、梓も帰ってくるのか」
純「メールでも送っておこっと」
純「なんて送ろうかな…」
純「む~」
純「どこ行ったんだろう」
純「なにしたのかな…」
純「……」
純「まぁいっか、疲れてるだろうし」
中野家
梓「…疲れた」
梓「……」
梓「結局遊びつくしちゃった」ガクッ
梓「体も真っ黒だし……はぁ」
梓「毒されてるのかな…認めたくないけど」
~♪
梓「あ…メールだ」
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From:鈴木純
Sub:合宿お疲れ様!
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帰るまでが合宿だぞ!
不審者に気をつけろ~ヽ(・_・;)ノ
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梓「…?」
#7
おわり
最終更新:2010年11月13日 00:10