#11

先輩B「…なにコレ?」

純「もみじ饅頭です。この前の遠足のお土産で」

先輩B「あ~、あの公園か~」

先輩B「私も去年行ったよ~。紅葉きれいだったよね~」

純「まさに秋って感じですよね」

ガチャッ

先輩「あら?…なにしてるの?」

純「あっ先輩!これ遠足のお土産です」

純「よかったらどうぞ」

先輩「遠足?」

先輩B「一年の時行くじゃないですか」

先輩B「なんとか自然公園ってとこ」

先輩B「私ボート乗った~」

純「あっ、私も乗りました!」

先輩B「漕ぐの疲れるんだよね~」

純「私も腕パンパンになっちゃって」

先輩「……」

純「先輩も行きましたよね?」

先輩「……その日」

先輩「私風邪ひいて行けなかった…」

純「……」

先輩B「……」

先輩「……」

純「あの…えっと…」

純「いっぱいあるんで食べてください…」

先輩「うん…」グスン

先輩B「そういえばもうすぐ学園祭だけど~」

先輩B「純のクラスは何やるの?」

純「へ?私のクラスですか?」

純「お化け屋敷ですよ」

先輩B「あ~…絶対行かない」

純「え!?」

先輩B「お化けは怖くないけど、ドッキリ的なものが苦手なんだよね~」

純「そんな~…来て欲しいです」

先輩B「う~ん…考えとく」

先輩B「先輩はなにやるの?」

先輩「演劇よ」

先輩B「なに役?木とかフナムシとか?」

先輩「違うわよ。ていうかフナムシってなによ」

先輩「私は衣装担当」

先輩B「なんだ、つまんないの~」

純「先輩ってそういうのもできるんですね」

先輩「まぁ…服のデザインとかは興味あったし」

先輩B「そうだ、ジャズ研の衣装も考えてくださいよ!」

先輩B「それで学祭やコンテストの時に着る~」

先輩「そんな余裕あるわけないでしょ」

先輩B「余裕があればやるんですか?」

先輩「そ、それは…」

先輩B「なんだよ、軽音部は派手だったのに~」

先輩「…ッ」

先輩「軽音部は関係ない!それに私たちジャズ研は見た目じゃなくて中身!!」

先輩B「見た目だって立派なパフォーマンスだよね~?」

純「え~っと…まぁ」

先輩「か、かわいい衣装着たいなら軽音部に行けばいいでしょ!?」

先輩「よそはよそ!うちはうち!!」

先輩「そんなに軽音部に行きたいなら軽音部の人になっちゃいなさい!!」

先輩B「相変わらず軽音部コンプレックスがすごい人だ」

先輩「なによ…みんなして軽音部軽音部…」ブツブツ

純「い、いいんですか…あのままで」

先輩B「まぁいつものことさ…不器用な人なんだよ」

純「?」

先輩B「…それよか、学祭とコンテストに向けて練習始めよっか」

先輩B「部長~、みんな集まってんだし始めるよ~」

先輩「わかってる!」

先輩B「いつまでもいじけないでくださいよ」

先輩「いじけてないもん!」

純「…先輩たちって仲いいよね」

同級生「うん」



翌日


梓「~♪」

純「おっと、ご機嫌ですなぁ梓さん」

梓「えへへ、だってもうすぐ学祭なんだもん」

梓「軽音部でライブができると思うと楽しみで」

憂「そっか、梓ちゃんは初ライブなんだね」

梓「うんっ!」

純「いいな~、学祭出れるんだ」

梓「あれ?純はジャズ研で出ないの?」

純「ジャズ研は競争が厳しいのです」

梓「ふ~ん…大変そうだね」

純「まったく、他人事だと思って」

憂「純ちゃんも来年は出れるよ」

純「むぅ…いいもん、今年はお化け屋敷がんばるから」

憂「純ちゃんはなんのオバケだっけ?」

純「ふっふっふ…私は――」

純「ドラキュラだぁ!!」

憂「十字架っ!」

純「うわー!」

憂「ニンニクっ!」

純「ぐわー!」

憂「あとは首を切り落として心臓に杭を打って死体を燃やして灰を川に捨てれば退治完了だよ」

純「こわっ!?」

純「憂はなんだっけ?」

憂「えへへ、魔女」

純「あ~…なんか魔法かけられそうだね」

純「梓は?」

梓「私は…まだ決まってない」

憂「猫娘でいいんじゃない?」

梓「えっ」

純「あー!似合う似合う」

純「ネコミミつけて…」

純「にゃー!!、って驚かせばぴったり」

梓「ぜ、絶対イヤ!!」

梓「ネコミミなんて軽音部みたいなこと絶対イヤだからねっ!」

純「……軽音部って普段なにやってんの?」

梓「え?」

純「ネコミミつけて演奏してんの?」

梓「ち、違う!普通に練習してる!!」

純「…軽音部って謎だよね~」

梓「謎って…」

純「なんか何やってんのかよく分かんないじゃん」

純「本当にマジメに活動してんの?」

梓「うっ…」

梓(マジメかと聞かれると…)

純「ん?」

梓「…してるよ」

純「例えば?」

梓「え?」

純「例えばどんな練習してる?」

梓「れ、練習はしてるよ…?」

純「だから練習内容だよ」

梓「練習内容は…」

梓「……」

梓「普通に演奏して合わせたりミーティングしたり…」

純「それだけ?」

梓「それだけだよ…」

純「ふーん、そうなんだ…」

純「てっきり軽音部のことだから、変わった特訓でもしてるのかと思った」

憂「変わった特訓って?」



純「例えば…」



律『今日の練習は学祭に向けての特別メニュー…』

律『ケーキの早食いだー!!』

唯澪紬梓『おー!!』

唯『ケーキおいしいー!!』

律『食え!ケーキを食うんだ!!』

律『私たち軽音部は、ケーキを食べるたびに強くなっていく!!』

梓『はい律先輩!!』

澪『ケーキを食べると力がわいてくる…!』

紬『エクセレント!!マーベラス!!』

唯『これで学祭のライブもバッチリだねっ!』

律『ケーキが一番、ケーキがあればなんでもできるっ!』

律『いくぞーっ!!1、2、3…』

五人『ダーーーーッ!!』



純「あとは…」



律『今日の練習は、コスプレだー!!』

律『我々のような舞台に立つ人間にとって、見た目は最も重要な要素!』

律『各々コスプレをして自分を磨きあげろー!!』

唯『私はメイドー♪』

澪『私はゴスロリー♪』

紬『私はナース♪』

梓『私はネコでーす♪』

律『そして私はアマゾネスだー!!』

唯『なんでやねーんっ』

五人『あっはっはっは!!』


梓「そんなひどくなーい!!」

純「ごめん、なんかそういうイメージしかなくて」

純「軽音部って奇想天外って感じじゃん?」

梓「少なくとも私は違うよ!誰がネコミミなんか…」

憂「似合いそうなのに」

純「やれやれ、これじゃお化け屋敷で猫娘も無理だね」

梓「私は裏方やるからいいよ…」

女「あっ、中野さん…座敷わらし役が空いてるけどやる?」

梓「えっ」

女「実は予定してた子が急にできなくなって…」

純「座敷わらしだって、かわいいじゃん」

憂「いいんじゃない?梓ちゃん」

梓「ざ、座敷わらし…」

女「どうかな?」

梓「いや…でも私裏方で…」

女「そっかぁ…」

梓「あっ、けど座敷わらしなら…」

梓「いや…そんな格好して唯先輩にでも見つかったら…」

梓「あーでもネコミミしないんだったら…」

梓「いやでも唯先輩のことだから…」

梓「けど…」

梓「う~ん…」

女「ど、どっち…?」

純「優柔不断だな~…」

純「よし!私が決めてあげる」

梓「純が?」

憂「どうやって?」

純「コインを上に投げて」

純「表だったら座敷わらし、裏だったら裏方をやるってことで」

梓「そんな適当な…」

純「んじゃいくよー」ピンッ

ピュー

純「あぁ!?私の100円が飛んでった!!」

梓「……」

純「100円!100円どこ!?」

女「どうする?」

梓「学校終わるまでには考えておく」

女「うん、分かった」

憂「座敷わらしでもお姉ちゃん喜ぶと思うよ?」

梓「それが不安なんだよ…」

純「100円見つかんないよ~!!」

純「うぅ…グスン」

憂「元気出して純ちゃん」

梓「そのうち見つかるって」

純「…で、結局梓はおばけやるの?」

梓「考え中」

純「はぁ~…私の100円が犠牲になったってのに」

梓「勝手に飛ばしたのは純でしょ」

純「むっ」

憂「まあまあ」

梓「…私だってやりたくないわけじゃないよ?」

梓「けどおばけの格好したのを唯先輩とかに見られると、絶対にいじられるからいやなの…」

梓「唯先輩が抱きついてこなければ喜んでやるって」

純「つまりやりたいんでしょ?」

梓「そうだけど…唯先輩がいるからイヤ」

憂「そんな…お姉ちゃん悪いことしてないのに…」

梓「あっ…き、嫌いなわけじゃないの!ただ鬱陶しいっていうか…」

憂「鬱陶しい!?」ガーン

梓「ち、違う!今のは言葉のあやで…」

純「それで結局どうすんの?」

梓「だから、やりたいけど唯先輩が邪魔なんだって!!」

憂「邪魔!?」ガーン

梓「い、今のは言い過ぎた!」

純「鬱陶しくて邪魔な先輩か…」

純「唯先輩もかわいそうだね」

梓「ちーがーうー!そこまで言うつもりはなくてー!!」

梓「唯先輩が喜ぶせいで私に被害が…」

純「優しそうな先輩なのに」

梓「…なにも考えてないだけだよ」

梓「私を見つけるたびに抱きついたりして…」

梓「……」

唯『あ~ずにゃんっ!』ダキッ

梓『ふにゃっ!?』

梓「あぁもう!唯先輩のバカ!!」

憂「バ、バカ!?」ガーン

梓「だからー!!」

純「梓…不器用な子」


HR

キーンコーンカーンコーン


先生「えー、もうすぐ学祭なので準備に必要なものが早めに連絡すること」

先生「以上」

「きりーつ、礼」

純「さて、ドラキュラの衣装でも用意しておこ」

純「座敷わらしも頑張ってね」

梓「うぅ…今になって選んだの後悔してる」

憂「魔女か~…どうしよっかな~」

梓「はぁ…絶対先輩にいじられる」

純「いいじゃん、それで喜んでくれる人がいるんだから」

梓「純は唯先輩のぶっ飛び具合を知らないから言えるんだよ…」

純「…そのうち梓も軽音部に染まってぶっ飛んだりして」

梓「ない!絶対ない!!」

純「あはは!じゃあ私ジャズ研行ってくるね」

憂「いってらっしゃ~い」

梓(私が唯先輩たちみたいに…)

梓「ないない…」


放課後

ガラッ


純「こんにちはー」

先輩B「おいっす~」

先輩「う~…」

純「…なにしてるんですか?」

先輩B「なんか~衣装のことで悩んでるんだって」

先輩「こっちにしようか…それとも…」

先輩B「優柔不断な人だナ~」

先輩「ゆ、優柔不断じゃないわよ!」

先輩「衣装をしっかり選ばないと…着る人に迷惑じゃない」

純「どれも良さそうですけど」

先輩「全然違う。こっちは派手すぎるし…」

先輩「こっちだとおとなしすぎるっていうか…」

先輩「ど、どれにしよう…」

先輩B「やっぱり優柔不断じゃん」

先輩「優柔不断じゃない!」

先輩「慎重なの…」

先輩「そう…私は慎重なの!」

先輩B「はいはい」

先輩「あぁもう…どれにすれば…」

純「かなり悩んでますね」

先輩B「まぁ最後の学祭なんだし…好きなだけ悩ませてあげな」

先輩2「ちょっと、なにやってるの。もう練習の時間よ?」

先輩「ごめん…衣装が決まらなくて」

先輩2「後で決めればいいじゃない」

先輩2「時間はまだあるのよ?」

先輩「そうよね…あとで決めよう」

先輩「ジャズ研の衣装」

先輩2「そっちかい!!」

先輩B「私たちは練習始めよっか~」

純「あ…はい」

純(結局着るんだ…衣装)


#11
おわり



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最終更新:2010年11月13日 00:17